MEIKO シナリオ:一章

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MEIKO シナリオ:一章 - (2008/06/15 (日) 23:32:49) のソース

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――誰もいらなかった
たいていのコトは一人でできたし、誰にも頼らずに生きてきた
他人の助けなんて…同情なんていらない

    『さみしいですか?』

どんなに分かりあおうとしても
わかりあえたと思えても
他人は所詮、他人…そう思ってる

    『かなしいですか?』

だから、ずっとひとりだったし…
これからも、ひとりでいい
寂しさなんて

    『ひとりは…』
 





   『ひとりは、さみしいですよね』


A Fairy Tale in the Small Bar
序章『―Prelude―』


	;<背景:黒><ウィンドウモード>
開店前の掃除中
テーブルクロスにシミができているのを発見した。

昨晩…というか今朝までは無かった。……無かったはずだ。
拭いても叩いても取れない。

これは、やっかいな…。

	;<背景:店内>
開店準備は、ほとんど終わっていた。
あとは、このシミを何とかして、着替えて
それから…えっと、そう看板を………


とりあえず、このシミを

ガスっ
	;<画面振動?>


背後からの衝撃。いったい誰が…?
突然の出来事に混乱する思考

――刺された!?
背中、肝臓のあたりに先鋭なモノの感触があった…
…急所じゃないか。背中からとはいえそんなところを刺されているとしたら
………氏んで?いや死んでしまうんじゃ…

くそっ…せめて最期に犯人の顔だけでも………

ふりかえるとそこには

	;<立ち絵:オーナー>
凶器と思しきモノ(ハイヒール付き脚)を折りたたむ犯人の姿が!?
…ヒールは痛いんです。ほんとうに。

【主人公】
「っ…つぅ………なにか?」
【オーナー】
「この店でいちばん偉い、この私が呼んでるにもかかわらず、
 無視しまくった罰よっ!」
【主人公】
「は?」
【オーナー】
「何回呼んだと思ってるの?
 …おそらく3回、あるいは4回は呼んだわっ!」

…このジャ○アンのような(発言をしている)御人。
この店のオーナー兼店長兼厨房全般をやってる…俺の雇い主。
ちなみに、人がまじめに働いてるときにこんなことするのは
この店では客も含めてこの経営者だけだ。

【主人公】
「………蹴り入れられるほどのミスですか?」
【オーナー】
「もっちろんっ!むしろ、か弱い私の蹴りで済むなんて、軽い方ね!
 むしろっ!!」


…かよわい?誰が?どこの誰が?
厨房の壁の一角がヒールの跡でボコボコにされているのを俺は知っている。


【オーナー】
「なに?文句でもあるわけ?そういう目をしてるわっ!
 だいたいねー普段から言ってるでしょっ?
 背中に目をつけるくらいの気持ちで仕事に望みなさいって!」
【主人公】
「そりゃ、ウェイターのときでしょう…」
【オーナー】
「今だって仕事中でしょ?注意力が足んないのよっ!」
【主人公】
「…注意力って、あんたな」
【オーナー】
「…ふふっ……あらぁ…反省がないのかしら?しかたないわねぇ…」

と言いつつ、左脚(軸足)に重心をずらし、回し蹴り(必殺)の態勢に入るオーナー。
…ヤバイ…殺られる……ここは!

		;<暗転>
【主人公】
「スイマセン見てませんでしたごめんなさい
 これからこんなコトが無いように精一杯努力します」

謝罪しつつ頭を下げる。降伏。降参。
これまでの経験上、とりあえず謝っておけ…というのが最良の対応である。
この人と争いになって、得をすることはなく…それはもう、いろんな意味で。


【オーナー】
「…よろしい。“とりあえず謝っとけばいいじゃん”みたいな感じだけど。
 まぁ、いいわ。時間無いし」

	;<立ち絵戻す>



…見透かされている。あっさりと。

【オーナー】
「でね、ちょっと買出しに行って来て欲しいんだ~。開店までちょっと時間あるし」
【主人公】
「…開店準備がまだ」
【オーナー】
「でも料理ができなかったら、準備しても仕方ないわよねぇ?
 だってタマゴが無いのよ!?
 それなのに今日のおススメはプレーンオムレツなのよっ!?」
【主人公】
「(…この無計画女)」
【オーナー】
「従業員、なにか言ったかな?」
【主人公】
「…今日のおススメを変更とか?」
【オーナー】
「やよ。だって、今日オムレツの気分だし」
【主人公】
「………」
【オーナー】
「なにか問題でも?」
【主人公】
「いえ、何も。ぜんぜん。全く。
 30分ほどで戻ります」
【オーナー】
「お願いねー」

		;<暗転>
	………





	;<独白モード>
	;<背景:商店街みたいな?>





スーパーで卵を購入。
今日がお一人様2パックな日ではなくてよかった。

オーナーの突発的なワガママにつき合わされるのに
慣れてきている昨今。
…自分でもどうかと思う。


にしても…あの店の経営はどうなっているのか。
無計画、無秩序に、そして費用対効果おかまいなく
生産されていく料理、料理、料理。
 
雰囲気は洋風のこじんまりしたバー。
でも出される料理は居酒屋か定食屋風。
そして、ワインやカクテルとともに日本酒、焼酎が消費されていく。
 
ちぐはぐな店だ。
さらに、そんなに客の入る店じゃない。はっきりいって狭い。
しかも来る客はほとんど固定メンバー…。
酒も珍しいものがあるわけでなく料理も普通。しかも料金は割安。
 
いったいどこから金が降ってきているのか…。
まぁ、毎月給料が払われてるし、どうでもいいか。
 
って、そろそろ、時間がやばいかな…ていうか今何時か

	;<画面振動?>
	;<ウィンドウモード>
	;<立ち絵、MEIKO>



――な!?



【主人公】
「わっ!」
【??】
「…!!」


;<暗転>

…歩きながら考え事なんてするもんじゃない。
思いっきり人にぶつかってしまった。

【主人公】
「…すいません」
【??】
「………」
【主人公】
「大丈夫ですか?」
【??】
「………」
【主人公】
「ケガとか」
【??】
「………」

言葉がない…。
人にぶつかっといて挨拶もなしですか…これだから今どきの若者は…。
いや、俺もかなり若者だけど。ていうか、ぶつかったの俺だけど。
…とりあえず、立ち上がる。

	;<背景、立ち絵戻す>


【主人公】
「えっとな」
【??】
「…(ぺこっ)」

	;<MEIKO去る>

	cl r,2


感じ悪い。終始、無言で走り去っていった。
…コミュニケーション能力って、やっぱり大事だよな。
………俺がいうのもなんだけど。

………あ、やば、開店時間過ぎてるし。
やっぱり考え事しながら歩くのはよくないな、うん。

あの人、待たされるの嫌いだからなぁ…。



………


;<背景:店の中,立ち絵:オーナー>



【オーナー】
「遅い!おそいっ!おっそぉーいっ!!」

【主人公】
「すいませんっ」

急いで店に戻ると、予想通りオーナーは不機嫌そうだった。

【オーナー】
「…いや、ま、いいんだけどね。お客入ってないし」
【主人公】
「そろそろ、店たたんだ方がいいんじゃないですか?」

つまり、現在この店の人口は2人ということだ。
普段なら2、3人の客が入ってるもんなのに。

【オーナー】
「む…。き、きっと今日はみんな、お給料日前なのよっ!!」
【主人公】
「…そうですか」

ちなみに今日は15日。
…客たちがみんな給料日前かというには微妙なところだろう。

…店の空気が動いた。少しひんやりした風が店内に入ってくる。
ドアを見ると馴染みの客が一人。

【佐々木】
「お、やっぱ開いてんじゃねーか」
【オーナー】
「あ、佐々木さんっ!!いらっしゃーい!!」
【佐々木】
「なんでぇ、今日はやけに元気がいいなぁ」
【オーナー】
「ううんっ!なんでもないのっ!!佐々木さんっ芋焼酎お湯割りよねっ?」
【佐々木】
「あ、ああ」
【オーナー】
「まーかしてっ!!」
【佐々木】
「………おい」
【主人公】
「はい?」
【佐々木】
「なんかあったのか?」
【主人公】
「佐々木さんが来たから嬉しいんですよ」
【佐々木】
「そ、そうか?そ、そんなこといわれても、俺にゃカカァとガキが…」

佐々木さん…恐妻家。年齢不詳。今年小学校に入学するお子さんがいるらしい。
俺が働き始めるより前から、この店に通っている常連客である。


【オーナー】
「おまたせーっ」
【佐々木】
「お、悪いね………
 あぁ、そうだ。開いてんなら看板だしといた方がいいぜ?」
【オーナー】
「へ?」
【佐々木】
「てっきり、休みかと思ったしな………って、熱ぅっ!!」
【オーナー】
「…おい」
【主人公】
「………はい」
【オーナー】
「…看板出して来い、今スグだ」
【主人公】
「はい…」

目が据わっていた…。

		;<暗転>
…


;<背景:店の外>

看板を出し、照明をつける。
元はといえば、オーナーが開店準備の邪魔を…
などという不満は心の奥底に沈ておく。

今夜も、まだ冷えるな。ん…?

	;<立ち絵:MEIKO>

さっき商店街でぶつかった…。
目が合った。

【??】
「………」

見られてるな…客か?
まぁ、客なら勝手に入ってくるだろう。
ここで「いらっしゃいませー!一名様ごあんなーい!」とか言うほど
俺はノリの良い店員じゃない。


	;<背景:店の中>
	;<立ち絵:MEIKO>
数分もしないうちに、さっきの女が店に入ってくる。
店内をキョロキョロ見回している。…挙動不審だ。
他店のスパイ…なわけないか、こんな店に。

しかし、妙におどおどした客だ。
でもまぁ…客は客だろう。

【主人公】
「いらっしゃいませ」
【??】
「………」

声をかけるが、また無視され…てはないようだ。

というより、なんでそんなに慌てる?


 “お水を1はいください”

そう書いたメモ帳を差し出される。

怪訝な表情になっていたのだろうか。
メモ帳のページを素早くめくる。


 “耳はきこえますが、声が出せないんです。すいません”

あぁ、なるほど。
だから、さっきも無言だったのか。
…まぁ、声が出ようが出まいが俺には関係ないけど。

【主人公】
「かしこまりました。そちらの席でしばらくお待ちください」

そう言って立ち去る俺に、壊れたメトロノームみたいに何度も頭を下げる。
変な客だ。
…




	;<独白モード>
	;<背景:黒>

今日も客は少ない。ただでさえ少ないテーブルが半分も埋まっていない。
まぁ、いつも通りか。

オーダーが緩やかになってきたところで、ウェイターの仕事を切り上げ、
客席の奥に向かう。
こっちが、俺のメインの仕事…だと思う。



	;<背景:ピアノ?なければ店の中>


狭い店にもかかわらず、こんなモノを置いている。
使い古された、もう何年も調律されていないらしいグランドピアノ。

どんな音が出るかもわからない。

…どんな音が出てもわからない俺には、お似合いの楽器。

今日も、誰も耳を傾けることの無い、喧騒に満ちた最低のステージで
それなりの演奏を酒の値段につりあった客の前でかなでる。

最低だけど
今の俺には、心地のいいステージ。



鍵盤を叩く。


頭の中で鳴り響くのは、ずっと昔の音。


		;<暗転>
ずっと昔…そんな風に思えるくらい過去に書いた曲。

曲を書くとき
この感情を込めて曲にしようとか
この感情を聴衆に伝える曲を作ろうとか

そんなことを思ったことはなかった。
ただなんとなく…そのときどきで曲を書いた。

完成した曲は、周りの人間に言わせれば
単調で、深みのない…ただの音の羅列に聞こえるらしい

曰く「お前の曲には何もない」…とのことだった。

理解されるなんて思ってなかった。

理解して欲しいとも思わなかった。

理解されても仕方が無いと思った。
…


	;<ウィンドウモード>
	;<背景:店の中>
曲の最中…ふと、さっきの変な客のことが気になって
カウンター席を見る。
	;<立ち絵:MEIKO>

いた。

こっちを見てる。
…それだけじゃない?え――


歌っている?
声だせないんじゃ…

いや、他の客は…飲んだり、くっちゃべってる。
彼女を気にする者はいない。
口パク?

あたかも聞きなれた曲であるかのように
彼女は詞を紡ぐ。

………おかしい。この曲には詞なんてない。
俺は作曲しかしてない。

この曲を聞くのは初めてのはず…あんな客が来たら忘れるわけない。
…なのに、なんで、あんなに自然に“歌える”?

どんな歌を?…彼女の唇を読む。

【??】
『…ひとりで過ごした、君がいない………誰でもよかった…そばに…』


――なんで、こんな歌詞になる?
わからない。
 なぜ“わかる”?
あのときの…どうして?

【??】
『…言葉なんて、いらなかった………ただ、ぬくもりを…』

………
		;<暗転>


30分ほどの演奏を終えて、またウェイターに戻る。


	;<背景:店内,立ち絵:オーナー>


【オーナー】
「相変わらず下手ね~」
【主人公】
「…ピアノが悪いんです」
【オーナー】
「…そ。はい、仕事。これ運んで。カウンター席のあの子」
【主人公】
「了解」

	;<立ち絵消える>


オーナーのいつもどおりの批評。下手。
別に誰かに聞いてほしいわけじゃないけれど…
でも店の中でまともに俺の演奏を聞いてくれる存在は
素直に嬉しいと思う。



だから…というわけじゃないけど
今日、カウンター席で下手な演奏を聞いて、
“歌っていた”あの客は…変わってる。

【主人公】
「お待たせしました。ジンジャーエールです」

【??】
「…(ぺこり)」
【主人公】
「以上でご注文はおそろいでしょうか?」
【??】
「…(ぺこり)」

酒を飲んでいいのか悪いのか微妙な年齢に見える。
肌は白く…服と合わせて全体的にモノトーン
…って俺は何をじろじろ見てるんだと。

【主人公】
「あのさ」
【??】
「…?」
【主人公】
「さっきの歌のことなんだけど」
【??】
『えっ?』
【主人公】
「演奏中に歌ってただろ?」
【??】
『す、すいませんっ!わ、わたしっ!じゃなかった…えっとメモメモ』

【主人公】
「いや、メモいらないから」
【??】
『で、でも、わたししゃべれないから、書くものがないと』
【主人公】
「いやさ」
【??】
『えっと…あれ?どこに?…すいません。ちょっと待ってて下さい』
【主人公】
「…会話できてるだろ?」
【??】
『………ほんとです』
【主人公】
「………」
【??】
『あれ?どうして?………も、もしかして、わたし声が出て』
【主人公】
「ないけど?」
【??】
『…そうですよね。バカだなぁ、わたしったら』
【主人公】
「…そうみたいだな」
【??】
『………うぅ…フォローとかって』

ちょっと不満そうだった。
話を円滑に進めるためにも種明かしをしておこう。

【主人公】
「唇が読めるんだ。耳、聞こえないから」
【??】
『…え?
 でも、耳が聞こえないなら、ピアノどうやって』
【主人公】
「聞こえなくなったのが5年くらい前で、それまでは聞こえてたから」
【??】
『え…、あ、すいません』
【主人公】
「…なにがすまないのかわからない」
【??】
『あ、そうですね…すいません』
【主人公】
「………」
【??】
『あっ!えっと…そのですね…す、すいま』
【主人公】
「で、歌のことなんだけど」
【??】
『あ、はい』

本題に戻す。このままではいつまで経っても話が進まない気がした。
…この自信なさげな感じというか…腰が低いというか…
オーナーの対極にいるようなやつだな…

【主人公】
「どうやって、歌った?
 あの曲、歌詞なんてないし…第一メロディも作曲したの俺だし」
【??】
『…えっと………なんとなく、です』
【主人公】
「なんとなく?
 なんとなくで、初めて聞く曲で、即興で?」
【??】
『…はい。こんな歌かなって…。
 せんりつはおだやかだけど…ちょっとさみしいかんじ』
【主人公】
「………さみしい?」
【??】
『はい。…す、すいませんっ!もしかしたら、ぜんぜんイメージが違ったり』
【主人公】
「いや…そうじゃな」


	;<立ち絵、オーナー>
【オーナー】
「ほぅ…サボりか、従業員。
 ナンパかぁ…いいわねぇ…青春よねぇ」
【??】
『………』
【主人公】
「いや…そうじゃな」
【オーナー】
「ちょっと、厨房まで来い」

	;<暗転>
今日の仕事運は全体的に低いようだった…。
…


	;<背景:店内,立ち絵:MEIKO,オーナー>
【オーナー】
「ふーん…
 つまり、彼女が演奏中に歌ってて、それが気になったから、声をかけてみたと」
【??】
「…(こくこく)」

彼女の協力をえて、どうにかオーナーの説得を試みる。

【オーナー】
「それって、ナンパじゃん」
【主人公】
「違います」
【オーナー】
「…暗い道では背後に気をつけたほうがいいわ。
 あなた、今日家に帰る途中、突然こいつが」
【主人公】
「俺は、どんな危険人物ですか…」
【??】
「…(がくがくぶるぶる)」

いや、そこまでおびえなくても…
わりと傷つきやすいんだけど俺。

【主人公】
「………」
【オーナー】
「………ゴメン。冗談よ。ウチの従業員に悪い人はいないから」
【主人公】
「(…確かに、オーナーは従業員には入らな)」
【オーナー】
「なにか?」
【主人公】
「いえ。なにも」

思わず、口に出していたらしい。
反省。口は災いの元。

【??】
『あはは…まぁ…わたしは』
【オーナー】
「ん?なに?」
【??】
『あ…』


 “わたしはボーカロイドなので、おそわれても大丈夫です”

【オーナー】
「ぼーかろいど?」

…一般常識のない人だ。
きっとニュースさえ見ないんだろうなぁ。

【オーナー】
「あんたさ、わりと考えてることが顔に出やすいほうだって知ってる?」
【主人公】
「…ボーカロイドっていうのは、歌唱用機械人形のことです」
【オーナー】
「………わざと、難しく言ってない?」


 “ようするに、歌っておどれるロボットです”

【オーナー】
「ふーん、こんなに柔らかいのに?」
【??】
『きゃっ』

今、スゴイとこをさわってた気が…。普通さわるか?太ももの………
見なかった。俺は何も見てない。

【主人公】
「…ええ。まぁ、高級品なので一般には出回ってないですが」
【オーナー】
「じゃあ、なんでここにいるの?」
【主人公】
「…さあ?」


“歌えなくなったので、元いたところにいられなくなって”
【オーナー】
「………ふむん」

 
 “だから、これからどうしようかなって”
【オーナー】
「…行くところが無いってわけね」
【??】
「………(こくり)」
【主人公】
「…オーナー?」
【オーナー】
「あなた…ウチで働きなさいっ!!」


【主人公】
「なっ」
【??】
「!」
【オーナー】
「いいじゃないのーあんただって似たようなもんだしー。気の毒な話だしー」

オーナーの言いたいことはわかる。こいつも一人だから。
だからほっとけない。………俺もこのひとも。

【主人公】
「反対はしませんけど…。
 しゃべれないってことはウェイトレスとかできませんよ?」


“いいんですか?”
【オーナー】
「うん。ま、皿洗いくらいできるでしょ」


“とくいです”
【オーナー】
「じゃ、決定っ!」
【主人公】
「…この店にそんな余裕が」
【オーナー】
「………あ、あるわよぉ。
 ていうか、そんなこと従業員の気にすることじゃないべさ」
【主人公】
「べさ?」

 
“ありがとうございます。せいいっぱいがんばります”
【オーナー】
「うんうん。いいねぇ」

これって法律的にどうなるんだっけ?
人権?ロボットみたいなもんだし…動産になるのか?
………めんどくさいので考えないことにしよう。
オーナーもきっと考えてない。

【主人公】
「はぁ…知りませんよ」
【オーナー】
「なに言ってんの?」
【主人公】
「へ?」
【オーナー】
「あんたが面倒見なさいよ」
【主人公】
「な」
【オーナー】
「まともに会話できんのあんたしかいないんだから」
【主人公】
「………」
【オーナー】
「というわけで…困ったことがあったら、なんでもこいつに言ってね」
【主人公】
「………」
【??】
『あ、あの』
【主人公】
「………」
【??】
『よろしくお願いしますね』
【主人公】
「………ああ」
………
	;<暗転>


ボーカロイド――MEIKO
出会ったのは、春に手が届きそうな少し寒い夜だった。
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