「20日目」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

20日目 - (2009/06/12 (金) 00:34:06) のソース

場所 教室

あの日あれだけ明るくなったがやっぱり学校で笑顔は見せなかった

峯岸「おうおう~最近霧ちゃんと随分仲がイイじゃねーかよ~」

幸一「そうかな~普通じゃない?ね、霧島さん」

レン「普通だね」

(アッサリね、分かってはいたけど)

転校してきた時と違うのはトッシーとも話しをしてくれるようになった事

峯岸「霧ちゃんさ、どっか部には入んないの?」

レン「興味ないし…」

峯岸「なんだったらサッカー部のマネージャーやんね?今なら桜井とセットで2人共面倒見るぜ」

幸一「オレはおまけか」

レン「…ちょっとごめん」

席を立つと教室を出て行った

幸一「ほら~霧島さん怒っちゃったじゃないか」

峯岸「そうか~?オレはお前らの事を考えてだな…」

幸一「どうせ何か企んでるんだろ?」

峯岸「企んでねーよ!何にもないって」

男子「おーいトッシー忘れんなよ、今日中に入部しなかったら明日の飯おごりだからな」

峯岸「ちょ!シー!」

幸一「まぁそんな事だろうと思ってたよ」

峯岸「どうせ入るならそれを有効活用しないとな、頼む!お前からも言ってくれ」

幸一「嫌だよ」

峯岸「期限が今日までなんだよ~お前が言えば霧ちゃんも考えてくれるかもしれないじゃん」

幸一「残念ながらオレにそこまでの発言権はないな」

峯岸「イヤお前ならできる!桜井幸一って名前がオレにそう告げてる!」

幸一「もう意味すらわかんねぇ」

峯岸「お…オレが負けるのか…このオレが!」

幸一「トッシー負けなれてるだろ」

峯岸「…」

峯岸「クソー!否定できない自分が情けないぜ!」

幸一「それにしても霧島さん来ないな」

峯岸「あーウンコだな」

幸一「おい!」

峯岸「いくら可愛くてもウンコはする」

幸一「そこは黙っておけよ」

男子「トッシー!ちっと来てくれ朝練で1人怪我しちゃってさ」

峯岸「マジか!何処だ」

男子「今部室に運んだ所だよ」

峯岸「うし、オレも行くわ。桜井、又な」

幸一「おう、じゃ」

トッシーは何人かのサッカー部員と教室を出て行った

霧島さん最近教室に居ない時が結構あるんだよな

又イジメを受けているんじゃないかって心配になっちゃうよ

ガラッ

霧島さんは相変わらず涼しい表情で席につく

幸一「霧島さん何処に行ってたの?」

レン「別に…」

幸一「まさか、又呼び出されてたとか」

レン「…」

幸一「やっぱり」

レン「…トイレだよバカ」

幸一「え…」

(じゃ…トッシーの言うとおりう…なのかな)

幸一「ごめん」

レン「何が」

幸一「何でもない、気にしないで」

(やっぱり言いにくいよな、特に女の子は…)

レン「気持悪いんだけど…ハッキリ言ってよ」

(ハッキリ言えるかよ!)

幸一「い、言えない」

レン「…ふ~ん、言えない事を想像してたんだね」

幸一「え…違う!トッシーが」

レン「峯岸君のせいにするんだ」

幸一「初めに言ったのはトッシーで」

レン「何を言ったの」

(ううっ!まずい!これは何とか話しをそらさないと)

幸一「あ、そうそう駅前に新しいアイスクリーム屋ができたらしいよ、放課後行ってみる?」

レン「何を言ったの」

(怖え~!怒ってるよ)

幸一「言うけど…怒らないでね」

レン「内容による」

幸一「霧島さんが席をたったのはトイレで…大きいのをしてるからって」

(うわー!!もう死にたいよ!)

レン「…」

幸一「怒った?」

レン「…怒ってないけどあきれてる」

幸一「反省してます」

レン「確かにトイレに行ったけど、ちょっと気分が悪くて」

幸一「大丈夫?」

レン「変態さんに心配されるようじゃ重症かもね~」

幸一「なんでオレだけ…」

確かにここ数日の霧島さんは様子がおかしかった、風邪でも引いてるのかな

放課後 ガレージ

幸一「霧島さん、今日は止めておいた方がいいよ。凄く体調悪そうだし」

レン「大丈夫」

幸一「でも…」

レン「飛べるうちは飛びたいじゃないか」

なんだろう…なにか引っかかる言葉だな

レン「軽く流すだけ」

そう言うとミラーのエンジンをかけ勢い良く飛び出していく

(何もなければ良いんだけど…)

それから数分間、異常は見られなかった

幸一「何時見ても凄い技だよな~心配して損した気分だ」

幸一「どうせ涼しい顔して飛んでるんだろうな~見てやろう」

双眼鏡に目を通すとミラーへ向ける

CG 苦しむレン

幸一「えっ!?どうしたんだよ!」

(明らかに苦しそうだ!何があったんだよ!?)

ミラーは大きな円を描くと裏山の奥にある少し広い広場に不時着した

幸一「見えない!無事に着地できたのか!?」

とにかくミラーへ走った

嫌な予感は当たった、やっぱり止めるべきだったんだ

そんな後悔の念に悔やまれながらたどり着いた

機体は何箇所か破損しているが大きな外傷は見当たらなかった

コックピットに霧島さんは横たわっていた

幸一「霧島さん!」

(駄目だ!意識が無い)

保健室に…いや救急車を待っていたのでは間に合わないかもしれない

病院に運ばなければ!

幸一「病院!病院!病院!!一体何処にあるんだよ!」

気持ばかり先走ってしまい落ち着いて判断ができなくなっている

幸一「落ち着け!落ち着くんだ…病院」

あ!

確かこの先に聖華病院があるじゃないか!

行った事がないから正確な場所は把握できない

でもバスの道は1本だったから道をたどっていけば!

どうやって運ぶ…ミラー

未だ動くか!?

コックピットに入るとエンジンをかけるが動かない

幸一「頑張れミラー!動いてくれ」

幸一「頼む!霧島さんを助けたいんだ!」

ブロロロ!!!

幸一「かかった!」

最新機体じゃこうはいかない、ミラーの古さと頑丈さがここ一番で役に立った

幸一「皮肉だな、古い方が新型を上回るなんて」

一気に加速させると離陸を試みる

(滑走路でもない所で離陸なんて上手くコントロールできない!)

やるんだ!やれるはずだ

加速するにしたがって木が目の前に立ちふさがる

(上がれぇぇ!)

思いっきりバーを引く

ミラーは間一髪の所で上昇した

幸一「ははっ!オレもやればできるもんだな」

時間はない、目立った傷こそ無いけど内出血とかしてるかもしれないし

できるだけ揺らさないようにしながら病院目指してミラーを飛ばした

移動 聖華病院

看護婦「診察ですか?」

幸一「すいません!急いで見てもらいたいんです」

事情を説明すると何人かの医者に連れられ霧島さんは病院の奥に運ばれていった

幸一「死んだりしないよな…」

やっと仲良くなったんだ…やっと笑顔を見せてくれるように、2人でジョンソンの所に行って遊んだり…なのに

会って間もないのにこんな心が引き裂かれる思いをするなんて

何でも良い!無事でいてくれれば…

藤田「ねぇ」

幸一「あ、はい」

声をかけてきたのは看護婦のお姉さんだ

藤田「貴方がレンちゃんを運んできてくれたのね」

幸一「はい!…ってレンちゃん?」

藤田「あれ?そっか、未だ聞いてないんだね」

幸一「聞いてない…何がですか?」

何でこの看護婦さんは霧島さんの下の名前を知っているんだろう…カルテを見たから。

いや、それじゃレンちゃんという呼び名は説明がつかない

藤田「ねぇ、名前はなんて言うの」

幸一「桜井幸一です」

藤田「やっぱり幸一君か」

幸一「やっぱり?!」

オレの名前を知ってるのか

ただでさえ気が動転しているのにレンちゃんだの幸一君だの、どうなっているんだ!?

藤田「ごめんなさいね、ちゃんと説明するから中に入って頂戴」

幸一「はい」

移動 病院内

藤田「それじゃ1つずつ話していくわね」

藤田「まず私の名前は藤田瞳、ここ聖華病院の看護婦をしているわ」

藤田「幸一君は知らないかもしれないけど、レンちゃんはこの病院から通学しているの」

幸一「え!?入院しながら学校に行ってたって事ですか?」

藤田「まぁ分かりやすく言うならそういう事になるわね」

藤田「ちなみに私はレンちゃんの担当看護婦をしてるの」

幸一「何処が悪いんですか?」

藤田「レンちゃんの病気はウイルス性のものなんだけど現在ワクチンは無いの」

幸一「治らないんですか」

藤田「今の段階では完治は無理ね」

そんな!あんなに元気だった霧島さんが重病だったなんて…

藤田「でも薬である程度症状は抑えられるから」

幸一「霧島さんは助かるんですよね」

藤田「今検査をしているはずよ、まずはそれが終わるのを待ちましょう」

幸一「いくら呼んでもまったく反応しなかったんです、全然意識が無いみたいで」

藤田「そう…」

幸一「藤田さん、よく平気でいられますね。正直オレは心臓の鼓動がハッキリ聞こえるくらい高鳴っていて、

こうして話しているので精一杯ですよ」

藤田「私達が焦っても何も解決しないわ。幸一君も少し落ち着いて」

幸一「…そうですよね。頭では分かってるんですけど」

藤田「貴方の事を話していたからどんな子かなって思ってたのよ」

幸一「霧島さんが?」

藤田「ええ、レンちゃんは今通っている泉学園を含めてもう3回も転校しているの」

幸一「そうなんですか…初めて知った」

思えば霧島さんの事って全然知らなかったんだよな…それにしても3回って多すぎだよ

藤田「最近変わったのよ、それまで学校の話しなんて全然しなかったのに」

藤田「それによく笑うようになったかな」

藤田「時々外出する事もあったけど1時間程度で戻ってくるのにこの前の休日なんて朝出たっきり夕方になっても戻ってこないんだもん」

(ジョンソンの所に行った時だ)

藤田「何かあったんじゃないかって心配したわよ」

幸一「それ、オレが夕方まで付き合わせちゃったんです。スイマセン」

藤田「やっぱりそうなんだ、レンちゃん戻ってきても何も話さないんだもん」

幸一「まさかこんな事になってるとは思ってなくて…」

藤田「幸一君は気にしないで良いのよ、むしろ感謝してるんだから」

幸一「感謝?」

藤田「レンちゃん今まで色々辛い思いをしてきたから何とか助けてあげたかったの」

藤田「でも私にできる事なんて話しを聞いてあげるくらいで学校では役に立てないもの」

藤田「そんな時に幸一君の話しを聞いたの」

幸一「霧島さんオレの事なんて言ってました?」

もしかしたら霧島さんオレの事…

藤田「変なやつが声かけてきて気持悪いって言ってたかな~」

幸一「うげっ!そ、そうですか…」

とんだ勘違いだな

藤田「幸一君、お願いがあるんだけど聞いてくれるかな」

幸一「何ですか」

藤田「レンちゃんを守ってあげてね。何時も強気でいるけど本当は大人しくて弱い子なんだから」

幸一「オレにできるのかな…」

藤田「もぅ!ここまで話しを聞いたんだから覚悟を決めなさい」

幸一「…やれるだけ、やってみます」

藤田「レンちゃんには幸一君しか友達がいないのよ、それを考えてあげて」

幸一「…はい」

声「藤田さん、緊急外来まで来てください」

藤田「はい、今行きます」

藤田「ちょっとココで待っていてね」

幸一「霧島さんをお願いします」

藤田「えぇ」

藤田いなくなる

本当にオレ何も知らなかったんだな…

藤田さんに話しをしてもらったせいか、さっきより随分落ち着いて考えられる

幸一「確かにオレが慌ててもしかたがないよな」