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秘宝館 乃亜さん(090705) - (2009/07/05 (日) 21:38:36) の編集履歴(バックアップ)


依頼者名:15-00295-01:乃亜・クラウ・オコーネル:ナニワアームズ商藩国
さま
イベント名:院内散歩





院内散歩



どうかしたのだろうか

病室のベッドに腰掛けながら最愛の人を部屋に迎え入れたヘイリーは、気づかれぬように乃亜の様子を窺う。
看護士に案内されて病室を訪れた乃亜は・・・。そう。どこかおかしかった。
肩に力が入って、どこか呆けて、それでいて顔が赤い。
乃亜が部屋に来るまでの間どんなことがあったのか。世界の情勢が不安定であることもありきっと行方がわからなくなっているだろうヘイリーの捜索を決意していたり、きっと幾日もかかるだろう困難やヘイリーの生死をも覚悟していたり、それなのにまさかすぐ居場所がわかり事態のなりゆきに目を白黒させていたり、とどめとして、ヘイリーのことを看護士に「ああ、あのハンサムさん」などと言われたために乃亜の許容量を超えてしまったことなんて、ヘイリーは知らない。
看護士にお礼を言ったあと、乃亜はヘイリーに話しかけてきた。

「怪我、か?   具合は、どうだ・・?」
「びっくり、している、」

幼子のようなたどたどしさ。
やはり様子がおかしい。
問題ないと返答しながらヘイリーは思った。

「大丈夫・・・か?しゃべりかたが変だが」
もしかしたら体の具合でも悪いのではないかと思いながら尋ねる。

「あなたが病院にいるので、 いまちょっと、たぶんうろたえている」

乃亜の言葉にヘイリーは微笑んだ。
だから様子がおかしかったのか。
頬に触れながら安心してもらえるように伝える。

「大丈夫。休養だ」

確かめるように瞳を見る乃亜。

「ちゃんと休めば、治るのか?」
「・・・・・・・・・ごめんなさい。  色々、大変なことばかり、


乃亜の瞳に翳りをみて、ヘイリーは安心してもらえるように言葉をつむぐ。
「いや。もう、大丈夫だ。ただ、休養を命じられて」
「心配させて済まない。連絡はいれていたつもりだったが」

「うん・・。  え、・・・そ、そうだったのか、すまない」

慌てて詫びる乃亜にヘイリーも慌てる。

「いや。手紙・・・だったんだが」
「ああう、  ごめん、 受け取ってないようだ。  ・・・でも、よかった・・・」

手紙が届いていなかったのか。
だからなおさら心配だったのだろう。
乃亜の心労を思い、そして今ほっとする様子をみてヘイリーは微笑んだ。
そして気持が晴れるにはどうしたらいいのか考えて、空の青さと気持のいい風を思い出す。

「散歩にでかけないか」

「行く」

笑顔で乃亜は同意した。







風が頬をなでてゆく。薄い水色の空。
心労が少しでも和らぐとといいのだがと思いながら、乃亜をリードするようにヘイリーは歩く。
恋人達が珍しいのだろうか。
ヘイリーは看護士たちの視線を感じ苦笑いした。
「歩いても、大丈夫か?」
後をついてくる乃亜が、体を気遣い尋ねる。


そのとき乃亜はそっと自分の上着を握りしめ、何故だか少し顔を伏せ、少し考えたかと思うとヘイリーのほうをみた。
まさか乃亜が、外気に体がさわらないか心配したり自分の上着が小さすぎてヘイリーに貸せないことに気づいて一瞬落ち込んだり外気が上着が必要ないくらいだったので気をとりなおしたりしたなんて気づかないヘイリーは、様子をみて心配になる。

「大丈夫だ、調子は悪くない」
ヘイリーは歩きながら答える。

乃亜は看護士の様子に人気者だなとちょっと笑った後、「そうか、 よかった」と心底安心したような顔でヘイリーを見上げてきた。
安心してもらえたようでほっとするヘイリー。
そして彼女の言葉を少し訂正する。

「自分は、余り面白い人物ではない」
「きのせいだろう」


「欲しいものとか、足りないものなどあるだろうか?」 
「? ハンサムさんだと言われていたぞ?  あなたは、素敵な人だ」

何故か不思議そうな顔をする乃亜。
数日で戻るから、たりないものはないことを話した後、言葉を続ける。

「ハンサムと言うことに関しては・・・ひどい誤解だろう。自分は知的ではない」


考えこむ乃亜。
どうしたのだろう。何が貴女にそんな顔をさせる?
ヘイリーは乃亜を気遣う。

「ええと、 あの、

乃亜を見つめながら、彼女の言葉を待つ。


「入院してるとは思ってなくて、
  差し入れ、しようかと食べ物持ってきてしまってたのだが、 ・・・・置いて行ったら叱られそう、・・か?」

ああ、差し入れの心配をしていたのか。
思いあたる乃亜の不安を一つずつほぐしてゆくヘイリー。

「いや。食べたいな」

「貴方の料理を、自分は愛している」


丁寧に作られた数々の料理。
どれもがヘイリーへの愛を感じさせる。

ヘイリーの言葉にほっとしたように笑う乃亜。


「あ、あり、がとう・・・」
「ちゃんと少し味見してきたから、たぶん大丈夫と思う。」

はにかんだような可憐な笑みをみせる乃亜にヘイリーは微笑んだ。

「・・・・・・・うれしい」



乃亜のしぐさや言動から、あふれんばかりの喜びや愛情や気遣いや優しさを感じる。
どうすれば姫君に還せるのだろうか。どうしたらもっと微笑んでくれるだろうか。



「……お礼ができればいいんだが」

自分に何ができるだろうかと思いながらヘイリーは言葉にする。


「あなたが、居てくれるだけで、私は嬉しい。  ・・何も出来ないのに、
「離れずにいてくれて、 ありがとう」


あまりに可愛い乃亜の言葉にヘイリーは微笑んだ。
頭をなでる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お礼なら、  ええと、今度、  ・・はりーさんの作ったご飯が食べたい・・・」

従順しくなでられながら、乃亜が言った。
私の作った食事か。
考えた後、しばらく料理をしていないなと思った。
姫君の料理にこもった愛情の量。
きっと鈍っている自分の腕で、それに返答できるだけの愛情を料理に込めることができるのだろうか。
かなり難しいように感じた。
しかし姫君が望むなら是非かなえてみたいと思った。

「・・・」

「・・・・・・・・・・・えーと、 難題・・?」


沈黙に不安そうにする姫君に力強く語りかける。


「できるのかまったく自信はないが」
「挑戦してみよう」

乃亜はヘイリーを見上げて嬉しいと笑った。
この笑顔を守るためならどんなことだってできる。


乃亜は少し考えて、ヘイリーに近づくと、頬にそっとキスを落とした。



ヘイリーは乃亜のやわらかい唇にキスした。


そしてキスしたときの姫君の反応と、乃亜の様子がずっとおかしかったことに気づき慌てる。



「・・・すまない」







料理を作ろう。
久しぶりに包丁を研いで、新鮮な食材を調達して。


貴女の愛には及ばないかもしれないが、貴方が望むなら力の限り努力をしよう。
貴女は何がお好きだろうか。

飲物は決まっている。
貴女の好みにあわせた、ストロングなミルクティ。


乃亜、私の姫君よ。

拙いながらも、私の愛を貴方の御許(みもと)へ。



そうしたら貴女は笑顔をみせてくれるだろうか。