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    <title>第１話『ファーストコンタクト』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/50.html</link>
    <description>
      ４月になったばかりの頃、野田康治はオレのアパートへやってきた。
「ほんと、何にもない部屋だね」
そう屈託のない笑顔で入り口に突っ立ている。
「五月蝿い。入るなら入れ」
無愛想に振舞うこのやり取りも、すでに１年ぐらい続いている。
人と接するのを拒絶し、ただ一人でいることを望んだオレの前に野田康治と言う人物が現れたのは１年ほど前の入学式。
しつこく付きまとうコイツに観念して、今では唯一の友人と言ってもいいヤツになった。
「そういえば、ここに来る途中で鶴谷先生に会ってきたよ。何でも、またアレが暴れているみたい」
「オレには関係ない。それはオマエらの仕事だろう？」
なにやら野田は不満そうな顔でこちらを見ているが、その視線を無視してオレは雑誌に再び目を向けた。
「関係ないって・・・石田は元々」
「元々なんだ？石田の家とは縁を切ってるんだ。もう一回言う、オレには関係ないことだ」
そこで会話が途切れた。
野田はコンビニの袋からタマゴのサンドイッチを取り出し、もふもふと頬張っている。

「そういえば、さっきから何読んでるの？」
「マガジン」
「後でボクにも見せて」
「あぁ」

また訪れる沈黙。
あまり多くを口にしないオレと、結構お喋りな野田とは傍から見れば相性は最悪なんだろう。
それでもこうやって沈黙の空間で一緒にいられるのはお互いを否定し合えないほどお互いのことを口にしないからだと思う。
それが友達と言える存在であるのかは分からないが、それがオレ達の暗黙の了解だった。
しかし、野田についての最低限のことは知っている。
少し癖のある髪に、黒縁の細いメガネ、細身の身体と170cmぐらいの身長が童顔である野田のスペックを引き上げている。
あの笑顔を前にすれば、大抵の女は母性本能を擽られるだろうと思われるが、等の本人に自覚がないから始末が悪い。
オレが野田の立場ならすぐにでも使っていると言うのに、もったいない。
「ほらよ」
オレは読みかけの雑誌を野田へ放り投げた。
あまり深くは読んでないが、今の自分にはあまりにも興味がなさ過ぎた。
何に対してもそう。
今のオレの興味は、何もないというのが正しい答えだ。
ただ人の真似事をしている。
それが、今の自分の空白を埋める唯一の手段で、
何もない自分に何かをさせるための方法の一つだった。






石田は変わってる。
最初出会ったときはかなりの無口で、誰も寄せ付けないようなオーラすら感じとれるほど、クールというよりも冷徹といった存在。
そんな彼と僕が出会ったのは、つい１年ほど前のこと。
ある事件をきっかけに僕達の仲は深まり、今となってはこのワンルームの部屋にボクが入り浸るほどの仲となった。
少し長い前髪、一重の瞳に、長い足。
どれをとっても、ボクとは真逆の人。
その目はいつも遠い何かを見ていて、深い闇を感じさせる。
不思議な人物だとは思うけど、今となっては慣れたもの。
こうして丑三つ時になってもボク達はお互い一緒にいて、その場の空気が変わる夜明けごろに自然と眠りに着く。
少し眠った後、二人で学園へ向かう。
寝起きの悪いボクはいつも石田に叩き起こされて、まだ寝たりない頭で外へ出る。
そんな毎日。
ボクの養母『歩おばさん』はいつも
「石田君のところに行くの？次帰ってくるときは連絡してね」
といった具合で、この外泊は当然の如く許されている。
放任主義な養母を持って自由に生活できるのは、今のボクにはとても嬉しいことだった。



時計の針は１２時過ぎを指そうとしていた。




「さて、オレはコンビニに行って来る。オマエはどうする？」
「ボクは・・・いいや、特に用事ないし」
その言葉を聞いて、内心ホッとした。
これから向かうところは、野田と一緒では不都合が多すぎるからだ。
一緒に来たときは先に帰ってくれと言うところだったが、好都合だったためオレは黒のコートを羽織り玄関へと足を運んだ。
外はどんよりと曇り、冷たい風が頬を撫でる。
「・・・雪が、降りそうだな」


扉の外へ出るまでの間、終始野田の視線はオレの背中に刺さっていた。





明るい街頭。
コンビニの前を通り過ぎ、街の明かりすら届かない裏路地へと歩を進ませる。
ビルの雑踏に紛れてポツンと佇む廃屋の前で立ち止まり、周囲の気配を確認してオレは闇の中へ紛れ込んだ。
バタンと扉の閉まる音。
目の前には寂れたバーカウンターと、ポツンと置かれた円卓。
窓から差し込む光はなく、その人は自分と同じく闇の中から姿を現した。
「あれ？今日は来ないんじゃないかと思ったのに・・・」
満面の笑顔で迎えるその人の名は【柊 優子】
オレの知る唯一の女性で、そのまっすぐな黒髪と、蒼い瞳は周りがどんな闇の中だろうと映えて見えた。
「アンタが来いって言ったんだろ、優子。で、今日の仕事内容は？」
「話が早くて助かる。今日はバケモノ相手じゃなくて、人間の形をしたバケモノってところかな」
バーカウンターに腰を掛けたオレの前に一枚の書類が置かれる。
ザッと目を通すと、確かにバケモノ相手じゃないことは分かった。
しかし、これは・・・。

「なぁ、この調査資料は・・・確かなのか？」
優子は頷きながらタバコの紫煙を吸い、悠長に話し出した。
「どうにも、[[執行者]]の連中がヘタ打ったらしくてね。内部の裏切り者の処罰をしようにも、腕利きはみんな出払っちゃってる。そこでうちら【暗殺家業】の出番ってわけ。」

「いい？今回の仕事は報酬が破格な分、それ相応の危険が・・」
「毎回同じこと言ってるじゃねーか。オレはただ、人を殺せればいい。そのためだけの人間なんだからな」

やれやれ、と言った素振りを見せる優子の顔をかれこれ２年ほど見てきたがまだ慣れてはなかった。
どうにも親がいないオレにとっては、優子は姉であり、親でもある存在になっていたようだ。
オレはバーカウンターから腰を上げ、得物の確認をした。
「・・・それ、使うの？まだ隆が使ってるところ、見たことないんだけど」
オレの腰のあたりを見て優子はそう呟く。
「・・・」
無言のまま、コートを翻しオレは一言



「使えるものなら、とっくの昔に使っている」



そう、答えた。














遠くで、誰かの泣き声が聞こえた。
それは嗚咽でも、叫びでも、なんでもなく、ただすすり泣く、今にも周りの雑踏にかき消されそうな声。
「・・・ぅ・・・ぅ・・・ぅ・・・」
白いコートに、大きな瞳。
まだ幼さを残した、キレイと言うよりも可愛いと言ったほうがいい風貌をしている。

彼女は何をするのでもなく、ただ前へゆっくり歩いていた。
行き先もなく、ただ世界から隔離されたことで、彼女自身どこに行けばいいのか分からないのだ。
人ゴミを抜け、住宅街へ。
閑静な住宅街でも、彼女は隔離されたままだった。
すれ違う人たちは、あたかもその少女がいないものと思っているのか、誰も彼女を見ようとはしない。
世界から、自分の存在が、なくなった。
ただ、それだけで彼女は泣いている。
だから、願ったのだろう。

【誰でもいい。私を探して】

ポツンと等間隔で設置されている街灯に、誰かの陰がゆらりと動く。
暗闇に浮かぶ二つの青色の球体。
両手には銀に輝くナイフを手に、蒼い目がコチラを見ている。

【誰でもいい】
誰でもいいと願ったがばかりに、彼女は最悪の人間と出会ってしまった。
されど、嬉しかったのだろう。
今までの悲しい顔とは真逆の、嬉々満ちた笑顔。
スゥと手を伸ばし、何かを掴む。
目に視えないそれに気づいた陰は、自然と身体を強張らせて臨戦態勢を取った。

嬉しい。
何よりも嬉しい。
また、こうして自分と目を合わせてくれる人が現れてくれた。
そう。
この瞬間こそ。


【望月杏】にとっては久しぶりに死線を交わした瞬間だった。



「・・・フッ！！！」
陰が動く。
それと同時に飛び引く少女。
アスファルトの地面は砕け、大きな亀裂を残したまま陰は上空へ飛んだ。
逆手に構えられた双剣が鈍い光を発し、優子のいる空間を歪ませる。
「断」
最短に縮められた言霊を一節。
その瞬間、優子と望月の間の空間は割れ、地面にぽっかりと大きな穴を開けた。
上空からの大気圧縮。
普通の人間ならこの一撃で済んだはずだが、相手は人間の皮を被ったバケモノ。
圧縮された大気圧の中ですら平然とした顔をし、
楽しそうな笑みの中右手を掲げ、
その手に何かを握りつぶした。
『掌握』
四方八方の窓ガラスが一斉に奇声を上げた。
その様子に優子は呆気に取られた。
ありえない。
そうして自分の腹部に突き刺さる痛みに対しても、その言葉は向けられていた。
口から少々の血を流しながらも空中で体制を整える。
腰に装着されたアンカーナイフを投げ、黒い死神は地上に舞い降りた。

「・・・ごぷっ」
大量の吐血。
臓器をえぐられ、それでも立っていられるのはそれなりの死地を乗り越えてきた証。
自分の不甲斐なさを嘆きながらも、自分とは対象に位置するバケモノ相手にナイフを突き出し再び臨戦態勢を取る。

その瞬間
キラリと
遥か遠方から何かが光る。

その視線に気づいた望月が振り返るや刹那、彼女の肩は吹き飛んでいた。
雷音が響くかのように、２発目。
今度は足が吹き飛ぶ。

優子と対象の位置。
それも遥か2kmも先の高層ビルの一角にスコープを構える石田隆の姿があった。
シングルアクションの古風なスナイパーライフルは硝煙を上げながらもその咆哮を止めることはない。
撃徹を起こし、再び照準を狙う。
次は体制を崩した少女の心臓部を狙う。
狙撃においてまずは機動力を殺ぐことが最重要点。
その後、体制を崩した目標の心臓をいただく。
これが、暗殺の定石だった。

そう。
相手が人間ならば、この３発目で仕留められるはずなのだ。

【オオオオオオオオオオオオン】

吹き飛ばしたはずの腕。
吹き飛ばしたはずの足。
その二つが凄まじい速度で再生を開始し、優子へその殺意をぶつける。
その様子をスコープ越しに見た石田はライフルをその場に捨て置き、高層ビルから飛び降りた。
高さは100mを越えるビルの屋上から外装を翻しながら落下する陰。
間に合え。
石田はただそう願い、腰に装着されている何かを手に滑空を開始した。
―残影！！
超超射程の跳躍。
2kmと言う距離をゼロに等しくするための暗殺術。
景色が歪み、瞬きを一度したときには目の前に血塗れの少女が幽霊のように立っていた。

「おい！優子！！」

電柱の陰に埋もれている優子に声を掛けるが、反応がない。
グッタリとしたまま、ただ彼女の鮮血だけがその場に流れていた。
【・・・アハハ・・・アハハハハハ！！】
執行者でない自分で太刀打ち出来るだろうか。
あの優子でさえ一撃で仕留められなかった相手、この窮地を脱する手段は目の前の敵を排除するのみ。
石田は腰に携えられし何かを手に掛け、グッと力を込めて抜き払おうとした。

【ア・・・・？】

眩い光が降った。
それはまさに光の柱であり、天からの木漏れ日に似た暖かい光。
【ギャアアアアアアア！！！！！】

聞こえるのはバケモノの断末魔。


光は数秒照射され、収まった頃には倒れている優子の姿しかなかった。

「・・・おい、優子！！しっかりしやがれ」
駆け寄り、ソッと抱き起こすとか細いながらも小さく呼吸している。
内心ホッとしたが、このまま放っておけば大事に至ると思ったのか、石田は彼女を抱きかかえ立ち上がった。

「・・・・」

「・・・・誰だ！？」

気配に気づき、石田はナイフを誰もいない場所へ投げ放つ。
あまり速いとは言いがたいが、陰が動く。
優子を一旦その場に寝かせ、自分のコートをかぶせた。
敵がいるならば、殺すまで。
そう教えられた石田の血が、その対象を見透かした。

「・・・・執行者か？」

「・・・・」

「何とか言え、返答次第では・・・」

「・・・・・執行者よ」

「オマエも、あのバケモノの仲間か？」

「違う」

「あの学園に腕利きの執行者は出払っていると聞いていたが」

「・・・」

「なんとか言えよ」



そうして、闇の中からその者は姿を現した。


薄暗い中でも分かる、その華奢な手には漆黒の銃を。
小さな身体に纏っている白い防護服。

「暗殺者、石田隆。ランクはA+（プラス）、その名の通り暗殺術に特化しているが・・・」

「さすがに執行者相手では、分が悪いでしょ・・・う！！」
背後で蠢く何かを執行者は一刀のもとに切り伏せた。
この世のものとは思えない断末魔が広がり、
黒い影はその場から消滅した。

「去りなさい、暗殺者。二度とこんなことには首を突っ込まないこと。でないと」




―アナタ、死ぬわよ？




その言葉を最後に、執行者は闇夜に姿を消した。    </description>
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    <title>Mirage-The Device Operation-</title>
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    <description>
      白き夜に舞う、銀の刃
優しい心を持つ少年は、その日

世界の、本当の姿を知る

[[プロローグ～白の季節～]]

[[第１話『ファーストコンタクト』]]

[[第２話『殺人』]]

[[第３話『反作用』]]

[[第４話『照準設定』]]

[[第５話『弓の煎』]]

[[第６話『賢　者』]]

[[第７話『魔眼　の　担い手』]]

[[第８話『血　の　雨』]]

[[第９話『舞い降りる　悪夢』]]

[[第１０話『分岐点』]]

[[第１１話『幻影世界へ』]]

[[エピローグ～桜の季節～]]


[[トップページ]]へ戻る


.    </description>
    <dc:date>2009-08-05T00:08:02+09:00</dc:date>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/24.html">
    <title>第３話『反作用』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/24.html</link>
    <description>
      第３話『反作用』


眩しい。
オレはまだ寝たりない頭をムリヤリ起こし、硬いソファーから起き上がった。
目の前のテーブルには朝日に反射して輝く銀色の刃。
そして、自分の手に目を向ける。
やや力を入れるとボンヤリを浮かぶ十字紋。

「まさか、たった1ヶ月でここまで使えるようになるとはねぇ」

寂れた事務所の奥から姿を現した女性こと『柊優子』はコーヒー片手にそう呟いた。
確かに、オレに魔術的な才能は当初皆無『だった』
されど、何の因果か教えられたことに対してすんなりと体が受け入れた。
感覚としては、昔から知っているものを呼び起こしたような。そんな感じだ。
そんなオレを尻目に事務所のデスクに落ち着いた優子は新聞を広げ、タバコに火をつけうまそうに紫煙を楽しんでいる。
まったく、こっちはここ１ヶ月死に物狂いだったと言うのに。

「いい？一応使い物にはなってるけど、あまり無茶しちゃ駄目だから。なんせ、それの対価は・・・」

「分かっている」
オレは気だるそうにコートを羽織り、事務所を後にした。






―分かっている。





何が分かっていると言うのだろう。
オレには分からないことだらけだと言うのに。





なんだかめんどくさくなったオレはその日、学校をサボった。






―ﾋﾟｯ

いつものワンルームで寝ていたところへメールが入った。
差出人の名は、『野田康治』
内容は至って簡単なものだ。
メールを流し読んだオレはアパートを後にした。
もちろん、腰にはナイフを携えて・・・。




『石田、昨日の件で話したいことがある。
　いつもの廃屋で待ってる』




ビルの隙間を縫って歩くこと数分。
桜門学園の裏手にそびえるかなり古い廃屋がいつもオレ達が落ち合う場所だった。
歩くたびに感じる、何者かの波動。
これが魔術を扱う者となった人ならざる人の直感なんだろうか。
オレにはいまいち分からないが、それでもオレは歩を進めた。
廃屋のぶっ壊れた扉に手を掛ける。
そこは古びた倉庫のようで、いろんなものが乱雑に放置されている場所。
目の前の風景に変わりはない。
いつものオレ達の場所だ。
されど、違うものが一つ。
真っ白の防護服に身を包み、その腰には銃を下げている[[執行者]]


野田康治がそこに居た。



「・・・石田」



オレは腰に手を宛がり、銀色の刃を突き出した。
それは、相容れぬ存在としての対峙。
執行者として野田が向かい合うと言うならば、こちらもソレ相応に答えるのが礼儀だと思った故の行動だ。

「・・・隠してて、ゴメン」


「それでも、僕は・・・」
「御託はいい」

「オマエがあの学園の執行者だということは分かった。ただ、それはオレと刃を交える覚悟があって、か？」

そう。
執行者の表向きの役割は『学園都市の治安維持』
目の前に暗殺者がいる。
平和を乱す者が立っている。
ならば、ヤツは道理に則って、オレを排除しなければならない義務がある。

「オレを、殺すか？執行者・・・！」


「僕は・・・！！」


その瞬間、お互いの距離が一気に縮まった。








２月最後の日、２８日。金曜の朝を迎えた。

今日の学園はテスト明け休暇だが、きっちり部活だけはある。
部活動所属の人間にとっては無意味な休暇制度だ。

そして今日は鬼師範が週一で道場へやってくる日。
師範の性格は簡単に言うと、遅刻したら即破門にされかねないという超堅物の師匠だ。
そのことがサッと朝のボケた頭を横切り、目が覚めた。
自室から出て、キッチンへ向かう。
パンの焼けた匂いがしたので朝食はすでに用意されているとわかった。
「おはよう、母さん」
「おはよう、康治。コーヒー？紅茶？」
この人は『野田 歩』
一応ボクの母親だ。

常に元気が座右の銘で、そのままほんとにいつも元気なのだ。
逆に深刻そうな話をボクは、生まれてこの方聞いたことがないんだけど。

しっかりしているものの、歳の割りにキャピキャピして近所からは「一緒にいて楽しい人」としての人気があるとかないとか。
まあ、そんなんだから親が参加する学園行事にはすべて出さないようにボクはしている。
クラスメイトの前でキャピキャピされたりでもしたら・・・。
僕の学園生活はそこでピリオドを打つことになりそうで怖い。

「で！どっちなの！？コーヒー？紅茶！？」
「・・・コーヒー」

どうがんばっても朝からこのテンションについていく気にはなれない。
ボクはすでに出されている食パンに噛り付きながら新聞を覗き込んだ。
めぼしいニュースはない。
と、いってもボクはもっぱらテレビ欄と一面しか見ない派なのでめぼしいニュースなど見つかるはずがない。
コーヒーを手に持った母さんが戻ってきた。

「そういえば地方面にさ、『行方不明の女子高生未だに戻らず』なんてニュースが載ってたわね。物騒な世の中よねぇ～」
ボクのコーヒーを啜りながらそんなことをいい始める。

「どうでもいいけどそれボクのコーヒーじゃないの？」
「だれが淹れてくるって言った？それぐらい自分でしなさい！」
この母あってこの子あり。
ボクがそこそこ口が立つのはこの人譲りなのかもしれない。

「・・・行方不明か。どうせ家出して帰ってこないとかそういうオチっぽいけど。」

その答えに母さんも同意していたらしく、『私も昔は親の目を盗んで・・・』とか長い昔話をし始めた。
こうなっては、もはや誰も止められない。
ボクは適当にその話を聞き流し、朝食を胃へ流し込んだ。

「それじゃあ、行ってきます｣
「それでね、私が初めて家出したときに兄さんが・・・って、もう行くの！？私の話は！？」

学園よりも私の話とやらを優先させる母さん。
ボクはため息をついて、もう一度『行ってきます』と念を押して家を出た。




扉が閉まる直前まで、母さんの昔話は加速していた。





ボクはひたすら自転車をこぐ。
軽く自己ベストは更新しただろう。
最後のコーナを全力で曲がりきる。
ゴールは目の前まで迫っていた。
僕は鉄ごしらえの無駄にでかい門を潜り抜けるとすぐさま右のポケットから時計を取り出す。
「１２分前・・・かぁ・・・」
結構早めについたことに少し後悔する。
あぁ。布団が恋しい。
５分でも長く眠りたいボクの性格はたぶん一生治らないだろう。治ってたまるか。
駐輪場に自転車を置いて、部室へ急ごうとした。


そんなとき、ふと理科棟へ目をやってしまったのが間違いだった。


その棟窓の奥にいる担任がタバコの紫煙を撒き散らしながらコッチを向いて、笑顔で手招きをしているのが見える。

部活をとるか、学園存続を取るか。


ここで下手にあの手招きを断ればボクの楽しい楽しい学園生活は残り一年を残して終わりかねない。
それほど担任に対する立場は弱いものだった。
しかし、部活でも無断欠席したら師匠になんて言われるかわからない。
それほど師匠に対しても、立場は弱いものだった。

どうしよう、と少し葛藤してみる。

葛藤時間、ものの数秒。
むしろ最初から答えは出ていた。



「・・・携帯で部長に連絡入れとこう・・・はぁ・・・」
腹痛とか適当に理由作れば破門だけは免れるだろうと考えたボクはすぐに連絡をとった。






―ピッ

なんとか口実は作れた。
今日のボクは「腹痛で理科棟トイレに引きこもってる弓道部員」ってことになった。
我ながらすごいウソをつけたと関心し、踵（きびす）を返して部室とは逆方向に位置する『理科棟物理準備室』へ足を運ぶことにした。



私立[[桜紋学園]]。
この地方の中枢核となっている学園で、元々女子高だったところを経営難から１０年ほど前に男女共学にしたという私立の学園。
校舎は３錬。
理科実験室などが軒を連ねる「理科棟」
職員室や事務系の部屋が多い「教職棟」
そして生徒が日々勉学へ精進する場所「学生棟」
この３つはそれぞれ２階に連結橋なるものがあって、学生達はそこを行き来して日々の集団生活を送る。

そして理科棟だけはもう一つ、別の大きな渡り廊下で連結されていて、その奥には『時計塔』が聳え立つ。
これは学園の象徴として存在しているだけだ。
足を運ぶ生徒は皆無だと言ってもいいほど。

ボクたち理科系進学コースの人間はほとんど「理科錬」で過ごすことが多く、文学系の生徒との関わりは極めて薄い。
まさに「隔離」とも言うべき指導体制。
そんなところに混ざってしまったボクは当然「落ちこぼれ」になるのは目に見えていた事実である。
石田もその1人に該当し、まあ・・・似てるもの同士が一緒にいることはさほど珍しいことじゃない。

俗に言う「馬が合う」といったところ。
そんなボクたちの世話を受け持ってしまった不幸な担任が、今目の前にいるこの「鶴谷国重（つるたにくにしげ」、その人である。







「先生。ボクは部活のために学園へ来たんですよ？」
ムッとした顔でイスに座ってコーヒーを飲んでるのんきな先生を凝視した。
「まあそう硬いこと言うな。コーヒー飲むか？」
朝母親に飲まれたことを思い出し、いただくことにした。

「・・・今日はなんの用です？この前整理した『ナマズ』の観測データはあれでいいはずですよね？」

ボクはちょくちょく先生に物理準備室に呼ばれてはパソコンでナマズの観測データやら物理資料のデータの整理をさせられていた。
『うちの学園の爺さんどもではパソコンを効率よく動かせないだろう？』という簡単な理由からボクは呼ばれているらしい。
たしかに学園の教職員の平均年齢は４６、７歳ぐらいだと思う。
んでもって、ボクが爺さん達よりパソコンを効率よく使えるのは確かだ。
それでも一応生徒に雑務をやらせるこの先生の思惑はいまだよく分からない。
なに考えてるんだろう。

「野田君は分かっているようで分かってないな。今日呼んだのは別件だよ。とりあえず、今朝新聞読んできたか？」
「一応読んだことは読みましたけど、テレビ欄と一面だけです。スポーツとか芸能とかには興味ないんで」

淹れたてのコーヒーを啜りながら準備室にある古いソファーに腰をかける。
「おまえらしいといえばそうだが・・・。私が言ってるのはテレビ欄のちょうど裏側の記事のことだよ」
テレビ欄の裏側・・・今朝母さんが言ってた「アレ」のことかな。

「それってどこかの女子高生が行方不明で未だに帰ってこないって記事ですか？」
渋い顔をして先生はうなずく。
古臭いイスをキィキィ鳴らしながらボクのほうを向いた。

「それと今日呼ばれたのと何か関係が？」
先生は意外そうな表情をしている。
なんか、マズイ事でも言ったかな。

「・・・今朝は妙に飲み込みが早いな。そう、すごく関係がある」

ボクは今朝で何度目かのため息をついた。
今月も平和に終わりそうではない気がしてきた。
今は気のせいだと思いたい。

「実は『どこかの女子高生』はうちの学園の子でねぇ。行方不明、それだけ聞くとただの家出娘のようにしか世間は聞き取らない」

「されど、我々の世界での話をするのであれば、行方不明になったその時刻の観測データから少量のデヴァイス使用の反応が検出されている」


「と、言いますと・・・やはり彼らの仕業ですか」

デヴァイスの使用反応・・・すなわちI.V.O.L.Sの犯行の可能性が高い。
嬉々としてデヴァイスを振り回し、それを偶然目の当たりにした不運な女子高生は消された・・・と、いつのも事例だとこんな感じなんだけど。

「執行者、野田康治。執行部権限により彼らの討伐。拉致された女子高生の保護を急務とし、今夜任務に当たれ。」

「まあ、相手のデヴァイス使用の反応もかなり弱い。執行者候補生として実戦訓練と言うことだ」


先生は引き出しから黒い何かを取り出して、机の上に置いた。
それと同時に銀色に輝く銃弾を１発。

ボクは何も言わずその銃と弾を手に取ったのと同時に、久しぶりの感触に違和感を覚えた。

「前のより結構重くなってませんか？・・・。」
愚痴をこぼした。
大体２キロほどだろうが、細腕のボクにはひどく重く感じられる。

「文句を言うな。一応使い勝手はそのままにしたんだが、強化する過程で重くなってしまってな。まあ、問題はないだろう」

対I.V.O.L.S用兵器『[[Device]]』
人としての能力が数倍まで引き上げられている彼らに対抗する唯一の手段。
警察が何人束になっても太刀打ち出来ない者に対し、基本執行者は一人で立ち向かう。
それが執行者。
『魔を断罪するもの』の名を馳せる由来だ。

執行者候補生であるボクにはまだDeviceの携帯許可は出ておらず、毎回任務のたびに先生に手渡しされる。
今回の装備はかなり軽量で、１２発銃弾が装填されているカートリッジと銀色に輝く特殊弾が1発。

これで、ボクは何度目かとなる『不可思議な戦い』へと足を運ぶこととなった。

本当はこんなことしたくないんだけど、コッチ側の世界のモノが関与しているなら行くしかない。
ボクは覚悟を決めて、その場を後にした。





―時計塔の針は午後７時半を指そうとしていた。
今まで情報収集やらなんやらで走ってたらこんな時間になっていた。
図書館でいろんな文献を調べたり、親友に連絡を取ってイロイロ聞いてみたり。
聞き込みができない状況だったのでそこそこ大変だった。
まあ、ほとんど先生からもらった資料だけで『誰がこんなバカげたことをやっているか』なんてもんは予想がついた。


当然、学園内には夜の静けさが広まろうとしている時間帯だ。
部活動のほとんどは午前中で打ち切られ、今学園内にいるのはボクと警備員のおじさんぐらいだろう。
いや・・・もう1人ぐらいはいるか。
酷く冷たそうな廊下の床を足音も立てずに歩く。
こんなことをやり始めて身についた芸だけど、未だ身を助けたことはないムダなものだ。

―窓の外には月が雲で見え隠れしている。

あの日の晩もこんな感じの月だったろうか。
今ではあやふやになりつつある記憶の中に、唯一焼きついている光景・・・その１つに『月』があった。
白く光る月を見て、ボクはとても悲しい気分になったのを覚えている。
それぐらいしか覚えていない。
あとは忘れてしまった。

ボクは制服の上からお気に入りの黒いジャンパーを羽織り直して学園を歩き回った。
さすがに２日連続でこの学園に来るとは思えないけど、だけど

―なんとなく、今夜も来るような予感があった。

そんなことを思慮しながら夜は無常にも更けていった。








―警備員のほかに誰か知らない人が混ざってる・・・
私は屋上からそいつが学園をうろついている様子を観察していた。
メガネを掛けていて黒いジャンパーの・・・なんとなく影の薄そうな少年を監視している。
「あの人は確か・・・。あぁ。目当ては私かな？」

「私だといいなぁ」
自然と笑みがこぼれる。
この超不自然現象の起こるゲームに考えてもみない飛び入り参加が舞い込んできた。
それだけで私は満足だった。
そう。この学園の誰でもいい。ちょっとぐらい障害となる人物ぐらい出てこないとなぁ。

―セミロングの髪が風に揺れ、その顔が月下の光にさらされた。
「そう・・・早く私を捕まえないと・・・どんどんエスカレートしちゃうんだから」

そう言い残して、彼女・・・本田千尋（ほんだちひろ）はその場を後にした。





冬の冷たい風を掻き分けて、私は理科棟を走った。
薄暗い廊下はそれだけでも気持ちが悪いというのに、私は自分の快楽のためにいまココにいる。
普段の私ならキャーキャー騒いで真っ先に走って逃げるに違いない。
普通の女の子のように振舞うに違いない。
それでも私は知ってしまった。

―破壊する楽しさを、誰かを犯す快楽を。

私は破壊衝動に身を任せ、様々なものを破壊していった。
廊下のノルタイル、窓ガラス、そして・・・。

「ひ・・・バ、バケモノ・・・！？」

グシャリとひしゃげる首。
飛び散る鮮血に私の心は高揚した。
やっぱり一番、人の死に際が美しい。
つい数秒まで人だったその物体は肉隗と化し、もう一人の警備員の目の前で転がっている。
そして、もう一人の警備員は私の前で『タスケテ』と懇願していた。

「タスケテ・・・？こんなに楽しいゲームなのに？助けるも何も・・・」


「あなた達、げーむおーばー」


私の身長よりも遥かに大きいその男は、まるで赤子の手を捻るかのように軽く吹き飛んだ。
しかし、ブツかったところがよかったのかまだ息がある。
彼にとっては生き地獄に近い状況なんだろう。
大丈夫。
私は生き地獄を続けさせるような非道な人じゃないから。

一気に、楽に、殺してあげる。






―なんか楽しいそうだけど・・・いったい何が楽しいの？

やさしい問いかけ。
この声には聞き覚えがある。
私のクラスメイト・・・いつも影の薄そうな「ただクラスにいるだけ」という存在の人がなんでこんなところに？
私は少し身を震わせた。
いるはずがない。

じゃあなんで？

あ。

そっか。
屋上から見えた黒いコートの少年は・・・今目の前にいる少年自身だ。
バカだ私。
感動に打ちひしがれてる場合じゃない。

さぁどうしようか。
まだこの『力』の本当を見たことがない。
今後の実験がてら、彼で試してみようかしら。
警備員の人たちはとっても弱くて、ゲームにならなかった。

正直、飽きてきたところだった。

彼はどうやって私に懇願してくるのだろう？
恍惚とした顔を浮かべ、私は彼へ近づく。

「楽しくなりそう・・・アナタ、ハ、私を満たしてくれる？」



私はさらに彼へ近づく。

黒いコートにクセっ毛のある髪、メガネを掛けていていかにも貧弱そうな体。
あぁ。
彼が泣き叫ぶ姿が見てみたい。
私に助けを求め、叫び、狂う姿を見てみたい。


漆黒のグローブに力をこめる。
あとは言葉を発するだけ。
私が口をあけると同時に彼も口をあけた。
「あ。待って。ボクは別にキミと戦いに来たわけじゃなくて・・・えー・・・」
私はあっけにとられた。
彼の緊張感のなさに呆れた。
今私はあなたでゲームをしようとしているのにも関わらず・・・。

「やっぱり・・・戦わなくちゃいけない？」

この人・・・前から分かってたけど相当なバカだわ。
そんなの・・・答えなんて分かりきったことなのに。


私はキッと彼を睨んだ。


「いや。こんな楽しいゲーム、私は降りたくない」

一瞬、集中下駄箱が静寂に包まれる。
彼はハァ、と言うため息をつく。
そして、その瞬間この場の空気が変わった。


「・・・人殺しがゲーム・・・ね。」


「先生には確保を頼まれたけど、そんな生ぬるいことで終われない・・・かな」



そして、右手をポケットから出し中空へ晒す。
それは私の同意の意志を示すもので。

彼にもその意思は読めたみたい。

―磨かれたノルタイル廊下が二人の姿を映し出す。

―それはまさに「鏡」のような床

―わずかな光も反射して、両者の顔を照らし出す。

―１人はセミロングの髪を揺らしたセーラー服の少女。
―もう１人はクセっ毛にメガネを掛けた黒いジャンパーの少年。

彼らのとった距離は約６ｍ。
周りは誰もいない。

ただ、存在（あ）るのは。



「アナタは、私を満たしてくれる？」



２月最後の夜、無秩序な破壊衝動・・・『狂気』を持つ異端者が野田康治の前に対峙した。



「・・・ボクは、キミを止める」

そうして、彼は黒き剣を手に執った。

第３話『反作用』END    </description>
    <dc:date>2008-11-24T12:12:35+09:00</dc:date>
    <utime>1227496355</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/46.html">
    <title>エピローグ～桜の季節～</title>
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    <description>
      私は中村美沙。
ごく普通の女子高生。
好きなものは甘いもの全般。特にアイスクリームが好き。ハーゲンダッツは高いけど、コンビニへ行くと絶対買う。
嫌いなものはコーヒー。苦いから。
そんな普通の私にも、人生の転機が訪れました。
ちょっと学園に残って課題をしていた帰り、私はありえない事件に遭遇しました。
それが、屋上を人間では考えられない跳躍力で飛び跳ねる陰と、校舎の陰をすごい速さで走る一人の少年の姿で・・・。
すっごく驚いた。
あぁ、これは夢だ。
課題している途中で寝ちゃって、それでこんな変な夢を見ているんだと自分に言い聞かせて、ほっぺたとかつねってみたけど、いたかった・・・。
一度見たら気になる性質の私は、その陰が向かう方向に行ってみたの。

着いた場所は、薄暗い体育館。
ピカピカに磨かれた体育館はさっきまでの異常が嘘なぐらい静かで、冷たい空気が相まって私の背筋を凍らせる。
怖いなぁ・・・はやく帰ろう。
そう思った次の瞬間、天井が落ちてきました。
何がなんだか分からなかったけど、私は体育館に放置されていた体操マットに包まって飛び交う激しい衝突音に体を震わせて耐えた。

シーン。
突然静かになって。
瓦礫の中から一生懸命出てきたら、遠くのほうで人が倒れていて・・・。


何がなんだか分からなかった。


それからは、私もよく覚えていない。
なんだか小さな女の子と、野田君が銃で戦って、いつの間にか朝になってた。
分からないことだらけだったけど、分かったことが一つだけ。
野田君は、私をいつも護りながら戦っていたこと。
華奢な背中しか見てなかった私には彼がどんな顔で戦っていたのかは分からないけど。
でも、すごく、悲しそうだった。

私はこの学園が好き。
あんなバケモノが私の好きな学園をむちゃくちゃにするのを見てきて、辿り着いた私の結論。
だから、私は言ったんだ。
「[[執行者]]になる」って。





「え・・・？」
野田康治は戸惑いを隠せなかった。
そのデジャブは他ならぬ自身が体験したそのままの事象。
これから彼女の身に起こる悲劇と、戦いの連鎖を、彼女はまだ知らない。
そして、彼女は自分でこの非日常の世界へ進もうとしていた。
むしろもう進んでいるのか・・・？

「私、こう見えて体術は結構自身があるの！！だから・・・私も野田君のように誰かを護れる存在になるって・・・！」

「・・・・・」

こうなった人間はもう誰も止められない。
一度走り出した滑車は、始動以上の衝撃を与えない限り止ることはない。
そして今、彼女を止める術を野田康治は持ち合わせていなかった。
俯いてしばし考える。
近い将来、僕はまたこの学園へ訪れることになること。
そのときに起こる戦いの渦中に彼女の存在がいること。

未来はもう、悲劇へと進みだしていること。


こんなとき、黒崎葵ならどうする？
野田康治に出来ることは、何か？

様々な疑問を打ち払うように、その者は姿を現した。


「あら、紅い子しかいない？」
「あぁん？石田ってヤツはもう逃げたか・・・仕方ねえ、野田ってヤツだけ拘束すっか」

校舎の屋上から二人を見下ろす二人の執行者。
彼らの姿はまさに中世の騎士のような風貌で、野田康治はその姿に見覚えがあった。

「アトラス・・・！！」

桜門の精鋭中の精鋭。
常時学園にいるわけではないが、今回の騒動で各地から召集を掛けられ戻ってきたと思われる執行者としては異端の集団。
野田康治は片腕で中村美沙を制し、腰に下げられた双影の剣を展開する。
独特の粒子光と、眩い力の波動を二人にぶつけるも、微動だにしない。

「はぁん。これが英雄の息子の力か・・・とても激戦続きの身体とは思えないがなぁ！！」

「ちょっと奥山君！！先行しないの！！」

野田康治に向かって飛び掛る騎士。
手には槍のようなものを持ち、一目散にコチラへ突進を開始した。
そして、その奥で指示を出している女は巨大な銃を野田康治に向け射撃体勢に入る。

「中村さん、よく見ていて」

「これが、キミの進もうとする道。執行者同士で殺しあわなくちゃいけない、そんな世界だ・・・！！」


相手の突進に合わせ、野田康治も宙を飛ぶ。
双影の輝きは陰を打ち払い、桜門へその牙を剥いた。



「うおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」


眼の色は朱。
あの雪の日から、
あの出会いの日から、

彼の色は、消えることがなかった。
















季節は少し流れた。


冬から春へ。
桜の咲き乱れる校内を一人歩く少女の姿が一つ。
長いノルタイルの廊下に響く足音の主の目的地はもうすぐ傍まで迫っていた。
足を止め、彼女が見るのは【物理室】と書かれたちょっと古びた理科棟の教室。
ここに来れば、自分もがんばれる気がする。
あの日二人の同級生に挑戦状を叩きつけられたからには、自分も何とか同じ場所に立たないといけないと思ったのか。
はたまた、純粋にこの学園を護りたいという正義感からか。

重く、錆び付いた扉に手を掛けて彼女は躊躇っていた心を振り払うように一気に開け放った。

「・・・騒がしいわね」

晴天の眩しい日の光を浴びて、誰とも知らない人が物理室の一角に佇んでいた。

「この学園の執行部に志願したいと思い、ここに来ました」

「なぜ？」

突然の申し出に光の影で顔もよく分からない人はクスリと静かに笑った。
そうして、執行者の道へと進もうとする少女に一言。

「・・・執行部への志願は何人たりとも断りはしない」

「そうですよね？先生。」





物理室の奥からゆっくりと車椅子で近づく男。
名を【鶴谷国重】


「我が剣となりて、この学園を護るべき者。・・・ついに来たか」



そうして中村美沙の物語は始まった。
これから起こる大きな争いの一端を担うと、今の彼女に知る術はなかった。





「さて、始めようか。あの二人が私の計画・・・[[Device]] Operationの【真実】に近づくまでの間、キミにここの指揮系統の全権を任せる・・・」




「いいかね？葵君｣





「はい。すべては先生の望みを適えるために・・・」








Mirage1-The Device Operation-END    </description>
    <dc:date>2008-11-24T11:59:22+09:00</dc:date>
    <utime>1227495562</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/25.html">
    <title>第４話『照準設定』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/25.html</link>
    <description>
      第４話『照準設定』













少し広い、この集中下駄箱でボクたちは睨み合っている。
正確に言うと一方的に睨んでいるのは目の前の少女だけで、ボクに全然睨む気すら起きない。

なんでも「人殺しをゲーム」だとか「いや」とかダダこねられて、今強行手段に出ないといけない状況になってしまった。

もっと穏やかにことを進められたら、それに越したことはないのに。
こんなことなら気づかれないように後ろから忍び寄って羽交い絞めにでもしてさ。
そのまま拘束すればよかったかなとも思った。

されど、そんなことはすでに後の祭り。
目の前では殺気に満ちた「元」クラスメイト本田千尋（ほんだちひろ）が今か今かと右手をこちらに差し出して襲う機会を伺っている。

「・・・・」

彼女は睨んだままピクリともしない。
「・・・」
「・・・」
静寂が世界を支配する空間に、一陣の風がふく。
彼女の長い髪が揺れ、冷たい風が頬を撫でた。
その瞬間、両者の足が微々に動く。
本田さんの手がピクリと動いたことを視認するや否や、自然と体が跳ねていた。


―縮・・・！！


グッと握られた手。
刹那、頬に何かが掠める。
その頬からは血がにじみ、傷口が熱くなった。
着地と同時に銃を構えるも、本田千尋は人では考えられないほどの高さまで跳躍し、再び開いた手を一気に握りつぶした。



―断・・・！！



廊下十に響く爆音と、学園中の窓ガラスが一気に割れたかのような奇音が鳴り響く。

「さぁ、遊んで！！アハハハハハ！！」


その言葉にも、ボクは応じなかった。
出来るだけ戦わずに彼女を説得したい。
先生はボクに言った。
『確保しろ』と。
でも、銃を渡されたときに、先生の目はこう言っていた。
『確保出来なければ、[[執行者]]としての責任を全うしろ』と。


責任。
力を持つ者は、その力を暴走させたものを消す責任がある。
だから、ボクは銃を受け取った。

だけど、出来るなら・・・。


そう考える中、彼女は再び右手をボクの方へ掲げ、
ドンッと、
鈍い音のする『何か』をブツけた。


とっさに気づいたときには遅かった。
回避はギリギリ間に合ったけど、それでも少しまともに受けてしまった。
あの、『衝撃破砕』の力を。


「・・・ぶ・・」

咳き込んだのと同時に口の中に血の味が広がる。
血の味ほどマズイものはない。さっさと吐き捨てよう。
「・・・・うっ・・ぐ」
「あれ？粉々にならないや・・・ちょっと弱かったかな？それともキミの身体が丈夫なだけ？」
絶対的に後者はありえない。
それでもさっきの一撃でどっかの内臓を損傷してそうだ。
かなり痛い。
少しはこんなことに関わるようになってガマン強くはなったと思うが、やっぱり痛いものは痛い。

「・・・・照準」
ボクは銃のトリガーに手をかける。

硬く、冷たい手触り。
そりゃこんな寒空の中放置してたらこうなるのもムリはない。
「うん？。やっと逃げ回らずに私と遊ぶ気になったの？でも残念・・・」


「アナタは、次で粉々にする」

今度の右手はボクの心臓部を確実に捕らえている。
次で終わらせると言うのも強ちありえない話でもなさそうだ。
口元がかすかに動く。
相手を確実に死へともたらさんとする『命令』が発せられる。


―・・・衝・！？






言葉が途中で途切れる。
目の前には、硝煙の煙を吐く真っ黒な銃。

彼女は自分の頬をなぞる。
グローブにべっとりとついた血。
ボクは確かに銃を使った。
だけど、彼女には弾道が『見えなかった』のだろう。

だから、当の本人は口をあけたまま固まっている。
たぶん何が起こったのかよく分からない状況なのだろう。

「え・・・」

目の前の少女が目をパチパチしている。
すぐさまボクは接近し、相手の首を捕まえ、壁際まで吹き飛ばした。
軽い身体は人形のように投げ飛ばされ、壁への衝突と同時に廊下へズルズルとその身体を落としていった。

すぐさまカートリッジを交換し、ボクはゆっくり彼女の元へ歩み寄った。




「・・・ゴホッ・・・動かないで。」
真っ黒の銃身は少女の額と垂直に当てられていた。
その銃に無駄な装飾は一切なし。
ただ機能性だけを追及したとしか思えないその外観からはあの物理教師の趣味が伺える。

「なに・・・それ・・・？」
少女はまだ目を丸くして銃を突きつけているボクの瞳を見ていた。
その目は一言で表すなら『純粋』。
違う色を入れたらすぐにでもその色に染まりそうな白というイメージだ。
ボクはトリガーに手を掛けたまま少女に話しかけた。

「キミの手にしている『力』の正体。
　それは『対イヴォルス用高次元兵器』名を[[Device]]と言うんだ。
　この兵器は普通の人が使っても意味がない。
　使えるのは、人ならざる者。要するにイヴォルスとなって人知を超えた者か、ボク達執行者しかいない。
　能力は『衝撃破砕』。文字通り相手へ空気振動による高圧縮の衝撃をぶつけ、対象者の内部を破壊する。
　外的な損傷力はそこそこ。
　だけど、まともに受けた者の身体の中は・・・ただ事では済まない


　思い出した・・・？」



ポカンと長々とした説明を受けていた少女は、不思議そうな目でコチラを見ていた。
そして、
「なんで、キミはそんなに詳しいの？」
と、問う。
答えは至極簡単なこと。

「データはすべて目を通した。キミが執行者としてそれを使っていた経緯、そして狂気に犯され、今に至るまでの流れ。すべて」


だから、ボクに討たせないで。
同じ執行者だった者同士で、なんで戦わないといけないの？と。

「分かったら、おとなしく保護されてほしい。ボクは嫌いなんだ。同じ執行者だったのに・・・その仲間を手に掛けるなんてこと」

そう。
あまり、と言うか好きになれない。
ボクが銃を執って、力を持つ者をただひたすら断罪することが。
悲しいから。
キミが狂気に囚われていなければ・・・どこかでボクと一緒に戦っていたのかもしれないのに。

そのときだった。
俯いて考え事をしている少女の様子が少し変化を見せたのは。

ニタリと笑い。
そして、その笑いは大きく、大きくなっていく。



「アハハハハハハ！！！へぇ・・・そうなんだ・・・。てっきり私は『魔法』とかいう奇跡に近い部類かと思っちゃった」

何が嬉しいのか、嬉々とボクに話しかけてくる。
なんだ、この余裕は。
『力』のタネ明かしをして、すでに追い詰められていると言うのに。
おかしい。

まだ、彼女は何かするつもりなんだろう。
だけど、この状況では・・・何も・・・。


「・・・執行者ね。思い出したわ。私は桜門所属の執行者本田千尋。本来アナタとは戦う運命にない者」


「けどね」


ソッと銃身に手を触れる。
小さな手が銃をなぞり、悩ましい軌跡を描いた。



「私はもう、執行者じゃないんだ。ゴメンネ☆」




ボクは目を窄（すぼ）めた。
まずい。
そう思ったときはすでに時遅し。

飛び引くボクの身体に対し、彼女は咄嗟に銃身を掴んだ。
グローブ、『力』を発するその手で。

ニタァ、と。悪魔の微笑みが見えた。


―衝、破砕


骨が軋む。
酷く醜い音が身体を駆け巡った。
「ぐ、あ”、あ”あああああああああ・・・！！」
銃を持つその手をムリやり振り払い、彼女と距離を取る。
おぼつかない足取りで、衝撃が走った右腕を抱きかかえる。

人形のように力の抜けた右腕。
その激痛に眩暈を覚えるけど、ボクは懇親の力でその場に踏みとどまる。

まずい。
思いっきり油断した。
彼女の心はすでに狂気で満たされているというのに、ボクは何甘いことを言っていたんだ。

殺す気で掛からないと、逆に殺される。
この場合は粉々にされるという表現が適切か。

でも、さっきので銃を持つ利き手に力が入らない。
衝撃破砕によって内部の筋肉、神経、骨、そのすべてを粉砕された今、力が入らないのならこの腕に意味はない。

目の前の少女が好機と思ったのか、ボクの懐へ潜り込む。
そして嬉々揚々と右手をボクの心臓へ翳（かざ）し、満面の笑顔でこう言った。

「じゃあね☆アナタはなかなか楽しめた」

言葉を口にする。
たぶん。
ボクの死は完全の保障されたも同然なこの状況を少女は楽しんでいる。
一人の人間の命が、自分の手の内にあるだけで、彼女は笑うのだ。

そんな、気持ちを持つ、元は人間だったのに、そんな境遇の少女が、目の前にいるだけで・・・。


なんだか無性に悲しくなった。


―・・・振、動・・・・砕！！


命令を発する。
彼女の付けるグローブからは高次元物質特有の極光を発し、その光にボクは飲み込まれる。

そして身体は、人形のように後方へ吹き飛ばされた。


衝撃によって『ほんの数秒間』、ボクは意識を失う羽目になった。









-intermission-
何かがおかしい。
すごい光で彼を吹き飛ばしたはずなのに。

『彼は、まだ身体を見られる状況で保っている』

なにかが違う・・・。
なにかが・・・。
何が違う？
彼はなんでバラバラにならないの？

そんな疑問が私の中でグルグルと回っていた。
警備員のときは、もっと、こう、グチャ、って感じで。
血の雨が降るはずなんだけど。


彼の場合は、まだ何か・・・。


「・・・・ゴフッ・・・・・・」

目の前の少年が四つんばいになって起き上がった。
「・・・なんで！！！！」
「・・・・・・・・・・・ん？」
「なんで起き上がれるの！？おかしいじゃない！！だって・・・だってコレは・・・！！」


「まあ何も防御策を練ってない警備員とかは、さっきの一撃で葬れるんじゃないかな？」


「・・・・・・・え？」

そう言って彼は銃を拾い、マガジンを抜き取った。
見るからに普通の弾層。
でも、彼は『違う』と言った。
『見るべきところはそこじゃない』と。


血を吐きながら、彼はこう私に言った。

「まだ開発中の対高次元兵器用防御シールド。ボクもキミと同じでね。先生の部屋から拝借してきたんだ」

「さて、これで分かったでしょ？キミの攻撃はボクには効かない」

その言葉を聞いた瞬間、私は・・・目の前まで迫る『　』の二文字が頭を過ぎった。

「―――っ！！」

瞬時に左手へ持ち帰られた黒の銃が私へ向けられる。
顔を苦痛で歪めながらも、俊足で接近する少年自身に対して目を丸くしている私がいる。

血を吐きながらもその速度は普通ではありえない『一足飛び』。
冬の冷たい空風を切り裂いて。

彼の紅い目は、私を捉えていた。

-intermission-END





ひたすら駆ける。

自分の間合いまで走れ。
瞬時にトリガーへ指を掛ろ。
『力』を発動させるための命令を銃へ下せ。

真の銘は言葉にしなければ、その『奇跡』は起こらない。

これが『Device』に共通する発動条件。
この銃にも『力』がある。
固有の、世界に唯一つの、断罪する力が。

そう、これはただの暴力の力じゃない。
暴力を無闇に行使して、いいものじゃない。

すなわち、力を消すための、正しき心が持つための、剣。

「ヒ・・・ッ」
少女から恐怖に怯える声が聞こえる。
右手をかざし、いくつもの衝撃の塊を乱暴に発している。
そんなものが当たるわけもなく。
ただ数センチの移動だけで、ボクは衝撃の嵐を回避する。

リロードされた銃弾を確認し、目の前に迫る衝撃を打ち落とす。
また一つ、また一つ撃墜される。

「こないで・・・」

それでも突進速度は緩まない。
ただ前へ。

「こないで・・・こないでよ・・・」

ただ、ひたすら前へ。

「こないでぇぇぇぇぇぇ！！！！！」


「Aiminift、Shift」

真銘が発現された瞬間、銃身からいくつもの銃弾が少女目掛けて発射された。
その数、３。
狙うは足、腕、そして右手に装着されたDevice。

銃弾は直線ではなく、目標に向けて追尾を開始していた。
少女は恐怖ゆえにその場でジタバタしている。
普通ならば、当たるはずもない銃弾は、的確に少女の左足、右肩、右の手の甲を貫いた。

絶対必中。
高次元で確立されたその銃は、弾丸の速度を限界まで加速させ、
銃身は高速リロード、
そして、特殊な術式を施された銃弾は自身の眼で捉えた者を逃がさない。


ゆえにその銘を『Aiminift（エイミニフト）』

『絶対必中』の特殊効果を持つ、彼の剣。






-intermisson-
「アアアアアア！！！」
今度は彼女が数メートル吹き飛ばされることになった。
それも当然。
３点同時射撃。
貫かれた勢いは殺されないまま、華奢な身体を吹き飛ばす。


断末魔の後に訪れるのは、静寂。
その静寂にただ立つのは、一人の少年の姿。

Device。
狂気に犯されていた者が、そして『執行者』が使うことによって奇跡を起こす、兵器。
このDeviceと彼女が出会った偶然を、彼は心底恨めしく思った。

でも、答えはまだ出ない。
鶴谷から聞いた結末には、まだたどり着いていない。

だから、彼は戦うことを選んだ。
こんなことを繰り返さないためにも・・・。と。




銃を降ろし、彼はこう呟く。

「こんなこと、いつまで続くんだろう・・・」

それに対して、狂気に犯されし者は紡ぐ。

「・・・アナタに、それを知る必要はない・・・」


気が付いた時にはすでに遅かった。
右手を高々と天井へ掲げ、最後の力でその兵器に命令を下す。



―衝・・・！！



「・・・崩れろ、崩れろ・・・崩れろ！！！」


「みんな壊れちゃえ・・・ハハハハハ！！！｣

そして、戦いの舞台は轟音と共に崩れた。


-intermisson-END







「ハァ・・・ハァ・・・ハァ！！」
逃げろ。
逃げなきゃ。
またアイツが、私を討ちに来るかもしれない。
だから、今学園が混乱しているスキに・・・逃げ切らないといけない。

ただ、私は逃げることだけに集中した。
傷ついた足を引きずりながら、傷ついた腕を庇いながら。

学園の外へ繋がる門までたどり着くことに成功した。
このまま外へ出れば、そのまま姿を隠して傷を癒すことが出来る。
そして、またあの楽しい時間を味わうんだ。
人が潰れる、その快楽に浸るんだ。

そう、未来予想図を自分の中に組み立てて、笑った。

「・・・一番最初に殺すのは、キミ。野田康治。・・・首洗って・・・待ってなさい・・・よ」



冬の、冷たい空気が頬を撫でた。
火照った身体に、ちょうどいい風が、私を突き抜ける。
気持ちいい。

目を閉じて、私は一気に熱い息を吐き出した。




と。


そこで、意識が途切れた。


今は鈍い痛覚だけが身体を支配する。


痛い、だけど、これは、彼から受けた傷の痛みじゃなくて。


じゃなくて・・・？



「本田千尋の抹殺命令により、貴女の命を頂いた。」


「滅せよ、異端者」


ピントのずれたカメラのように、私の目はすでに光を失っていた。
でも、それでも。
唯一、私には見えた。



冷たい空気に乗って、暗闇に浮かぶ二つの蒼き眼が。

私の命を奪った。

赤色の涙を流し、私は、ただ私は、その眼に対して言いたかった。
言いたいのに、口が、もう・・・。








そして、最後に少女の口からはこう発せられたという。
『紅と蒼の瞳、それは私達と似た・・・狂気』


第４話『照準設定』END    </description>
    <dc:date>2008-06-01T23:31:55+09:00</dc:date>
    <utime>1212330715</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/51.html">
    <title>第２話『殺人』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/51.html</link>
    <description>
      第２話『殺人』

暖かなまどろみ。
けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音すらしない朝。
窓からは朝の日差しが降り注ぎ、私の覚醒を促す。
でも、まだ寝ていたい。
身体がムショウに重くて、このまま寝ていたいと思うのは人の必然だと思う。

―・・・ぃ・・・・

誰かの声が聞こえる。
少々低い声だから、男かな。
それでも起きない。
そう腹を括った私は、目を閉じたまま布団を被り直した。

―おぃ・・・


―・・・起きろ！！


ガバッ。
その声に聞き覚えがあった。
周囲を見渡すとそこは寂れた私の事務所の寝室で。
私はいつの間にかパジャマに着替えていて。
ふと視線を横に流すと、学生服の人物がコチラを睨んでいた。

「・・・早く起きろ。メシだ」
「・・・石田・・・君？」

キョトンとした顔のまま、彼は首をかしげた。
「あぁ、オレは石田だが？」
「・・・そう。あ。いただきます」
ベットの隣に置かれたトーストとコーヒーをいただく。
サクサクとした触感と、コーヒーの苦味が体に染み渡る。
やっぱり朝ごはんはコレじゃないと・・・。

「って！！何で！？私は・・・あれ？」

「３日だ」
「は？」
「優子があの日重傷を負って、眠りについてから3日たったと言った」
「ちょ、嘘でしょ？」
「いや、本当だ」
そう言って彼はカレンダーを差し出した。
たしかに今は14日、あの日から3日もたっている。
私はパジャマをたくし上げ、自分の身に何が起こったかを確認した。

「・・・これじゃあ、仕事にならないなぁ」

身体が受けた傷は思いのほか酷かった。
腹部損傷。
頭部負傷軽微。
左足首負傷。
それでも、体が動くんだから不思議だった。

「これ」
「なに？」
一枚の紙を渡されて驚愕した。
そこに書かれていたものは。

『診断書　柊優子　殿
　内臓損傷2箇所
　頭部負傷
　左足首負傷
　右大腿骨骨折

　以上、魔術医療措置により完治。
　しかし、魔術回路に損傷があり、こちらは魔術的措置が無効化されたため自己治癒に頼らざるを得ない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上』


「・・・ようするに、ほんとの意味で仕事出来ないってことね」
「そのようだ、魔術回路をやられてるんじゃあ、昨日みたいな芸当も回復するまでは出来ないだろうな」

そう。私は一応魔術師の血を引いているから、それを自分の体に通すことで超人的な動きを可能としている人間。
それがなければ、普通の人間と同じ非力な存在。

「ねぇ？石田君」


「私の代わりに仕事しない？」


「・・・オレは殺すことぐらいしか出来ないとこの間言ったばかりなんだが」

壁に寄りかかった彼に対し、私は少し残念そうな素振りをした。
それが効いたのか、彼自身も困っているようだ。
『モノ』で釣ってみようかしら。

「・・・じゃあ、私のとっておきあげる。って言ったら？」

そう言って私は机に置かれたナイフを拾い上げた。
刃を抜くと、真っ白の刀身があらわになりその不可思議さを物語る。

「流動剣。まあ、これを扱うにはキミにもう一つとっておきを教えないといけないだけど」

「それでも、嫌？」

少し上目使いでキラキラと期待の眼差しをしてみる。
ほら、ちょっと揺れだした。
もう一押し。
何か。
何かないかな・・・。

「キミの起源は『滅奪』だったよね？それを生かそうとは思わない？」

「・・・はん。オレはそんなオカルトは・・・」

「へぇ～。今よりもずっと強くなるかもしれないよ？」

「・・・クッ」

落ちた。
何か悔しそうだけど、この際手段を選んではいられない。

「・・・いいだろう。、その契約、乗ってやる」
その瞬間彼の手を取り、ブンブンと上下に振った。
石田君はほんと分かりやすいなぁ。
こう冷徹そうに見えて、まだ年頃の男の子って感じは否めない。
可愛いヤツめ。

「じゃあ、この流動剣ともう一つのとっておき。教えるね」





そうして、私達の契約は始まった。
動けない私の代わりに暗躍することを選んでくれた石田君。
彼には本当はこんなことは似合わないと思いながらも、それでも血は争えない。
「・・・ほんと、そっくりね」
「あ？なんか言ったか？」
「いえ、何も」









オレは流動剣を手にその場を後にした。
一応これでも学生の身。
学校へは行っているものの、そのほとんどをサボって屋上で寝ていることが多いオレにとっては行くだけムダなことのように思える。
しかし、これもムダなんかではない。
大体、このあたりの都市『桜木』の裏で起こる事件の鎮圧担当はオレが通う学園『桜門』の治安自衛部隊・・・通称『[[執行者]]』がこの地を護っている。
ヤツラは様々な武器を通して奇跡の力を扱う。
あるものは光の弾丸を操り、あるものはありえない速度で移動出来たり、
あるものは魔術に近い業を扱うものもいると聞く。
ただ、治安を護る役目である執行者は数そのものが少ない。
だから、オレや優子のような暗殺を家業とする者が必要なわけであって、実際のところ幼くして両親を亡くしたオレにとっては、金銭面であまり苦労していない。

金銭面は二の次。
オレは、なぜだか殺人衝動に駆られる。
これは人を殺したぐらいでは到底収まらないレベルのもので、そんなときに優子がこの仕事を持ちかけた。
要するに、執行者が仕損じて逃した人ならざるものを排除する仕事。
殺人とは似て非なるモノ。
そんな日々を送ることで、オレは自分自身の中の殺人衝動を抑えているに過ぎない。

あれはいつだっただろうか。

人を殺すことに満たされなくなるのと同時に、

満足の行く時を過ごせたのは・・・。










「石田・・・隆・・・」
何度も何度も書類に目を通すが、その名に間違いはなかった。
「普通の人間が、狂気相手にここまで戦えるとは、な」
否。
野田康治が手を下すまでもなく、こいつは目の前の狂気を滅していただろう。
『石田』とは、それほどの力を持つ血族なのだ。

「・・・」
「まあいい。報告は受領した。おつかれさま」

終始暗い顔をした少年の背中を見つめつつ、私は書類をデスクに放り投げた。

月夜に浮かぶ書類には、石田隆の顔写真、身長、体重、生年月日、その他もろもろ、すべての情報が書き記されている。






codename：black wing





黒翼。
それが、彼の新しい名だった。    </description>
    <dc:date>2008-06-01T23:15:31+09:00</dc:date>
    <utime>1212329731</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/45.html">
    <title>第１１話『幻影世界へ』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/45.html</link>
    <description>
      気がつくとそこは、瓦礫の山だった。
手には重厚な造りのハンドガン。
重たい身体を起こすも、全身から悲鳴があがるほどの痛みで方膝を付くのがやっとのこと。
頭痛が激しいが、今のところ収まりつつあるのが現状だ。

ゆっくりと立ち上がると、目の前に小さな身体が横たわっている。


ドクン。


心臓が高鳴る。


ドクンドクン。


その半鐘は速さを増し、身体が熱くなってゆく。
痛みはもうほとんど感じない。
されど、この感覚に僕は覚えがあった。
そう、ついさっきまで僕はこの『何モノかの衝動』に駆りたたれるままに銃を振るって、白い少女と刃を交えて、白い光に包まれて、

記憶が交錯する中、僕の脳裏に一人の人物が姿を現した。

【野田宗司】

その名を思い出した瞬間、再び激しい頭痛に襲われた。
嘔吐感、寒気、全身に迸っていた熱が一気に取り払われる錯覚。
これが絶対的な恐怖。
あの夏の日、僕が[[執行者]]となると同時に発現したもう一人の僕。

―そレガ、オマエの、ホンしツ、ダ

酷いノイズに塗れた声が響く。

―戦ウ力が存在シナガラ、ナゼ


―ナゼ、戦わナい？


自問自答のように、頭に言葉がグルグルと回る。
僕は争いごとが嫌いだ。
中学のときもそれが嫌いで、いつもいじめられているような性格で。
それなのに、
僕に戦えと、もう一人の僕が命じる。
もう嫌だ。
もうこんなのたくさんだ。


そうして、


現実から目を逸らして、生きてきた。



負けないで。
アナタはまだ弱いけど、だけど、こんなことには絶対負けない。
たとえ病魔に心を蝕まれようとも
アナタの強き想いは、必ずアナタに打ち勝てる






ハッと現実に引き戻される。
白い少女は身体を引きずりながらも、手には銀色のナイフを持ったまま、まだ戦う意思を僕に投げかける。
なんで、僕なんだ。
なんで、執行者なんだ。

なんで・・・なんで・・・。


「・・・ひぃ」


突如、少女の後ろから声が聞こえた。
それはこの場にはあってはならないほどの可愛らしい悲鳴。
こんな血なまぐさい夜に、誰もが予期し得なかっただろう。
白き少女の後ろ。
瓦礫の山の延長線上に、僕の知る友達『中村美沙』がいた。


「なぜここに・・・！？」

今まで気がつかなかったことを後悔した。
比較的他の都市よりも執行者が大勢いる桜門とは言え、普通の学生もいる。
彼女はそのうちの一人。

その様子に、僕はデジャブを感じた。
この状況。
執行者と狂気の対峙時に突如介入する一般人。


これは、まさに２年前の自分自身の状況に他ならない。
なら、末路は決まっている。
狂気に犯された者は、真っ先に彼女を狙うだろう。
そして、その病魔を犯させ、第二の媒体を得る。


「・・・アナタも、死にたい？」


白い少女は予想通り、中村美沙を新たな標的として認識した。
今の傷ついた身体から乗り換えるつもりなのか、はたまた暴走した殺人衝動に任せて犯すのか。
どちらにしても、この場に彼女を護れるだけの力は・・・。


力は・・・


「・・・今度は僕が、先輩のように・・・なってみせる・・・！！」

痛む身体に鞭を打ち、一足飛びで白い少女を横目に跳躍した。
残り少ない力のすべてを四基に叩き込み、怯える少女の元へ文字通り一足飛び。
着地時に巻き上げられた土埃に目もくれず、僕は再び[[残影術]]を行使した。


「が・・・ぐっ・・！！」

無理な残影２連に身体はさっきから悲鳴をあげっぱなしだが、今はそんなことよりも安全な場所への移動を最優先に考えた。
高速移動しつつ中村美沙の腕を掴み、銃口を望月杏に向けた。
想像するは、光の弾丸。
着弾後周囲へ光を拡散させ、一瞬でも隙を作れ。

トリガーへ力が込められ、窮地脱兎を確信した。
されど、僕は信じられない光景を目にする。

自分よりも遅く動いたと思った白き少女は、
ただ指に力を入れればいいだけの動作よりも、早く活動する異様を。

透明の刃が走る。
僕は直感した。
今腕を握っている中村美沙に向けられた明確な殺意を。

狙いは的確かつ、必殺。
とてもじゃないが、目に見えない殺意を見えているこの異常な世界にこの子はいてはいけない。
トリガーに掛けられた指を離し、僕は銃を持つ手で少女に向けられた不可視の狂気を受けた。
ザクッ。
刃が腕に刺さると共に地へズレ落ちる。
血は出ない。
この腕はもともと義手であり、痛覚は通っているけれども、人一人を護れるなら安い代償だ。


「の・・野田君！？腕！！！」
僕の後ろに隠れている少女から困惑の色が出ている。
映画でも、CGでもなく、今目にしているのは本物の腕で、戦場だ。

「僕はいいから！！しっかり掴まって！！」

僕が叫んでいるのが珍しいのか、目を丸くしながらも素直にしがみついてきてくれた。
慎ましい胸が腕に当たっている。
少し顔が熱くなったけども、そんなことを考えている場合じゃない。

さっきの残影術乱用によってほとんど感覚がズレている足に渇を入れて、僕達は廃墟となった体育館を後にした。


















「ハァ・・・ハッ・・・」
走る。
「・・・・」
ひたすら走る。
この学園に逃げ場がないことを分かりつつも、比較的安全な場所を必死に考えていた。
「・・・野田君・・・？」
どこがいいだろう？
教室、いや、もうイヴォルスによって占拠されているに違いない。
物理室、鶴谷先生に預けたほうがいい？
否、石田との会話で発覚した疑念がある。

「野田君！！」
背中におぶったままの中村さんの声でハッとした。
僕は足を止め、中村さんを背中から下ろした。
背中に残る暖かみに少し動揺して中村さんから目を逸らすけれども、当の少女はむくれた顔でこちらをジッと見ている。

「・・・説明してくれる？」

それもそうだろう。
あんな状況に出くわして、見ず知らずの少女とクラスメイトである僕が危なっかしいものを手に戦って、
挙句の果ては体育館を廃墟にして、僕は右腕を切り落とされた。

ちなみに、銃はまだ切り落とされた手が握っている。



「説明してよ！！なんなの！？突然体育館は崩れるし、野田君の右腕はいつの間にかなくなってるし！！」

僕が取り乱したいぐらいの状況で、中村さんが取り乱してくれるから自然と冷静になれた。
状況は劣悪。
武器もない。
右腕もない。
執行者としての力のほとんどが臨界点を突破しつつある。
頼みの石田も負傷。



石田・・・？



「そうだ・・・あそこなら・・・」

「何！？今度は何なの！？」
僕は自然と笑みを浮かべ、子供を諭すように声を掛けた。
「安全な場所、見つけたんだ」
と。











学園の地下へと続く薄暗い階段をひたすら下る。
結構なところまで降りているのにも関わらず、石田の気配は未だにしない。
自分であのAMSを解いた？
もしくは、誰かに解かれて拉致されたのか？



様々な不安が過ぎる中、重厚な造りの扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。



そして、僕達はこの世のものとは思えない地獄を垣間見ることになった。

「うっ・・・」
後ろから付いてきた少女はその場に倒れこみ、ゲホゲホと吐いていた。
確かに、この惨劇は少し前までの僕なら少女と一緒に即倒していただろう。
微量ながら高次元粒子が空中をさ迷っている。
察するに、ここで戦闘があって、石田はあの身体で数十体の人間を死体にしたのだろう。

「・・・本当に、安全な場所はない・・・のか・・・・」

―かくれんぼは、おしまい？

死体の山の一角、うっすらと極光が垣間見える中
白い少女はどこからともなく僕達の前に姿を現した。
中村さんを背後へ庇いながらジリジリと後退するも、彼女との距離は５ｍにも満たない。
一足飛び、いや、あの無色透明の刃ならどれだけ距離が離れていようとも的確に僕達の命を穿つだろう。

僕は僕自身の非力を悔やんだ。
圧倒的な力の差を見せ付けられ、一執行者である人間が互角に戦うこと自体がそもそもの間違いだった。
十分、戦い抜いた。
出来れば葵さんのように、背に隠している少女だけでも守り抜きたい。

出来れば石田のように天性の戦闘術が欲しい。

出来れば・・・。


否。


「・・・出来れば、じゃない」

「？」

「・・・やらなくちゃ、いけない」

目の前の少女はキョトンとしているが、その殺意は消えることなく、明確な敵意をぶつけてくる。
私情を切り捨てなければ、
執行者は、迷ってはいけない、






覚悟は、遠の昔に、
決めていたのだから。



薄暗い地下空間にボンヤリと灯る、紅き点。
その数は２。


「・・・フッ！！」

手を振りかざし、無色の刃が瞬時に形成され
今まさに２人の命を奪おうと滑空を始めた。




白き少女は、自分の目を疑っただろう。
無色の刃を投擲した後、
自分の動作よりも遅く活動したはずの人間が、
それよりも速く動くことがない事象概念を打ち破る様、
そんな人間がこの世にいることは、まず考えられない。

執行者にとっての武器は、必ずしもその手に執るものがすべてではない。
そう。
無から有を生み出す奇跡を今、少年は目覚めさせようとしていた。


人には必ず持って産まれた『起源』が存在する。
起源はその者の持つ特性であり、人間であれば誰しも持っている素質である。
起源は自覚して発現させるモノ、
そして、無自覚のまま一生を終えるモノとの２種類。

野田康治は言わずもがな、後者に属するはずの人間だった。
されど、彼は欲した。
戦うこと、争うこと、憎みあうことを拒み続けた彼が始めて世界に向けて望むは『護れる力』


歴史上では語られることのなかった彼の両親から受け継いだ起源が今、開花のときを迎えた。


起源の名は【識解】
Dianoiaと呼ばれる、論理的戦術式。



無色透明だった刃の形状を僕は初めて見た。
刃渡り50cm、片刃、切っ先は真。
投擲速度は速くない。
敵のすべてが情報となって脳を焦がす。
白き少女の首を引っつかみ、突進速度を維持したまま僕は投げ飛ばした。
軽い身体であったためか、思いのほか遠くへ飛ばすことが出来た。

駄目だ。
このままじゃあ戦えない。
僕はさらに欲する。
戦うための剣、この手に目の前の敵を討つ力。

目に入る景色の中に浮いて見える二つの試験管があった。
大きな試験管、一つは強奪された新型のディヴァイダー。
もう一つは空の容器と見えていたが、今なら分かる。

手を伸ばす。
試験管に向かって、僕は言葉を紡ぐ。


「其の魂に宿りし者へ」
「神より賜いし神罰代行の責　我に負わせよ」

試験管から微量の高次元粒子が放出される。
言葉に答え、封印を解かれる日を待ちわびたかのような詩を其の者は続ける。

―禊を進む者　我が銘を紡ぐ者
―歓喜に満ち溢れる詩　凶刃の賛歌　天と地の盟約を交わす


詠唱は自己暗示に過ぎない。
兵器から声など本来聞こえるものではない。
されど、聞こえるのだ。
契約の儀、声の聞けない者は執り行えない。


「剣よ　代行者よ　我が願いを聞きいれよ」

―我が名は　双影　願いを受け　答える者

「我が名は　野田康治　契約は完了した」



眩い光と共に、左手に確かな重みを感じた。
大きさは約80～90cmほどのショートソード。
片刃で、銀色に輝く刃は室内にあふれる高次元粒子を反射してその輝きを増す。
そして、瞬時に武器から流れ出す多くの情報。
神の手によって造り出され、多くの時代を担った者の手を渡り、
時代を護る者、次は自分の番であることを理解した。


そして・・・・。

―康治・・・私の・・・子・・・。


懐かしい声が一瞬、聞こえたような気がした。
暖かい。
すべてを包み込むような声。
心強い。
僕は左手に力を込め、動けるかどうか確かめる。
（・・・動ける！！）
溜められた高次元粒子を解放し、目の前の狂気と対峙する。
僕の背で恐怖に震えている少女をこの場から救い出す。
その想いだけで、決着をつける。
この数年で起こったこと。
一度は望月杏に殺されたこと。
僕はもう、繰り返さないと決めた日のこと。


すべてが、その全部が、僕にとって掛け替えのない思い出だった。


地を駆ける。
一気に近づく望月杏の顔。
彼女は猛突進を繰り出す僕に対して、笑顔で答える。
シングルアクションで放たれる無色の刃が展開される。
数は６。
すべての刃が抜き放たれ、胸、左腕、両足、首筋を的確に貫通させる。

「うおおおおおおお！！！」

死に際の痛みに耐えながら、ひたすら前へ、前へと跳躍する。
実際即死クラスの攻撃だが、なぜか体は軽かった。





勝負は一瞬だった。
血だらけの身体で、望月杏と言う少女に突き立てられた一本の剣。
断末魔はなく、静かに倒れる小さな身体を僕はソッと受ける。
自然と眼からは涙がこぼれていた。
悲しいのか、哀れみなのか、その真相は自分でも分からない。
今の感情が何であるか。
不意に、少女の口が開いた。
声は出ていない。
血を吐きながらも、その口は何かを発しようとしていた。

最後の最後で僕は自分の眼に残るありったけの力を込めた。
知りたかった。
彼女の最後の言葉を聞き取りたかった。

されど、希少技能であっても限界はあった。

僕は最後の言葉を知ることなく、彼女の最後を看取った。
サラサラと砂のような光を地に零して、消え行く身体を最後の最後まで抱きかかえた。





もう涙は流れない。
一生分の涙を、枯れるほど流したから。
そうして、じっとりと湿った地下室に静寂が訪れた。



「殺したの・・・野田君？」

後ろから中村さんが僕の背に問うてきた。
無言で立ち上がる僕に肯定の意思を汲み取ったのか、それから地下室を出るまでの間会話はなかった。
外はたぶん、まだ戦場。
今の僕の身体で、中村さんを護りながら学園から出ることは出来るのだろうか。


否。やらなければならない。
出来なければ、愛した少女を手に掛けてまで護ったものに未来はないから。
ゆっくりと地上への扉に手をかける。
外はいつの間にか闇夜から茜色の光が差し込んでいた。
目を細め、僕達は外の世界へ一歩を踏み出した。

「よぉ・・・。遅かったな・・・康治」

不意に名前で呼ばれ、朝焼けの光に照らされる一つの陰に気がついた。
ボロボロの学生服を身に纏い、静かに佇む者。
周囲にはゆうに数十体の死体が転がってた。
その様子から今までの激戦の様子が伺い取れる。
フラフラとした足取りでコチラに近づく人影。
そこでようやくその人物が誰か把握した。


暗殺者石田隆は血煙の立ち込める中、嬉々とした表情でそこに居た。


「これ・・・全部石田が？」
「どうにもこうにも、オレをあの地下室に近づけないように配置した凄腕の執行者共だったんでな。」

「手加減なしで、片っ端から殺した。今この場には猫一匹いないだろうな」

「何も殺すことはなかった・・・なのに・・・」

「オレの前に立ちはだかる障害はすべて斬り捨てる。オマエもすでに知っていることだろう？それに、オマエの様子からすれば望月杏を殺したみたいじゃないか・・・１人殺すことと、１００人殺すこと、両者とも殺人を犯したことに変わりない」

その言葉に僕はやっと石田の異様に気がついた。
石田隆の本来あるべき姿、暗殺者としての彼が人の心を失わせていると。


「僕は・・・認めない」

「何？」

「キミの存在を・・・認めない！！」

「じゃあ、どうする？ここで殺り合うか？その腕で、その体で・・・？」

「キミを止めることぐらいなら・・・出来る」


剣を持つ手に力が入る。
実際のところ傷はいつの間にかほとんど癒え、今は痛みしか残っていない。
勝つためではなく、彼を止めるだけなら今の自分でもなんとかなると踏んでの決断だった。

「え・・・？なんで・・・？これ？なんで！？」

中村さんは今の状況を飲み込めていない。
石田は今回のことだけではなく、今までもこんなことを繰り返してきた。
友達として親友として彼の生き方に口を挟むつもりはなかったけれども。
それでは何も解決しない。何も生み出さない。彼に待ち受けるのは、殺人鬼としての暗い未来しかないと、今確信したからこそ。

僕は、すべてを護ると決めて剣を執る。


「・・・・・」

「・・・・・ふん」

「興が殺がれた。オレは先に行くとしよう」


納刀音と共に、石田は踵を返し校門へ歩いていった。
「これから先、そんな甘い考えが通用するとは、思えん」

背中越しに伝えられる。
僕も剣を腰に納め、その背中に答える。

「それでも、僕は戦う」


そうして、石田の姿は朝の極光の中に消えていった。
残るのは中村さんの唖然とした表情と、僕の虚しい闘争心だけだった。
ここで石田と剣を交えていたら、彼はどう変わっていたんだろう？
僕はこれから先、誰も殺さずに戦い抜けるのだろう？

様々な不安と、焦りが募る中、中村さんが口を開いた。





「・・・私ね、執行者になろうと思うの」


「え・・・？」


この突拍子もない言葉で、僕の長い長い夜は終わりを告げた。
本当に・・・長い夜が。

第１１話　END    </description>
    <dc:date>2008-02-19T22:59:13+09:00</dc:date>
    <utime>1203429553</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/49.html">
    <title>プロローグ～白の季節～</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/49.html</link>
    <description>
      人はこの世界へ産まれたそのときから、善と悪の二面性が存在する。 



善はすなわち世界に対して善きと思える心。 
悪はすなわち世界に対して憎しみを持つ心。 



その二つは表裏一体。 
人が争いを止めない要因の一つである



一人の女の話をしよう。
彼女は世界を変えるためにその青春を犠牲にし、力を付け、友を得て、そして、世界に立ち向かうための信念を手に入れた。
世界を変えるほどの力を持つ女は、その力を持ってして世界の流れに逆らった。

されど、結果は惨敗。

世界は今も変わらず、人は人を憎み、争い、その血肉を食い合う存在であり続けた。

女は嘆いた。
自分には何も出来なかった。
一度は死を選ぼうとしたこともあった。
しかし、彼女は死ねなかった。
死ぬことで、逃げることが嫌だったのだ。


そうして、彼女は虚無でありながら生きながらえた。
世界を巻き込んだ戦争、【最後の審判】を乗り越え、ただ唯一の生き残り。
友の死を見届け、多くの人と出会い、別れを繰り返すこと幾星霜。
彼女にとってもう何度目か分からない寒い季節が訪れた。



この女の名は【雪乃】
白い雪のような肌。
漆黒の闇に解けるような黒髪に、まだ幼い顔立ちをしているが、歳相応の身体の女生徒。

多くの人が生活をする大国【桜木】の中心部に位置する【桜門学園】、そこに彼女の姿はあった。

「・・・雪・・・？」
どんよりとした空から落ちる雪に、季節の到来を感じ取ったのだろうか。
彼女は遠い虚空を眺め、ただ白い息を吐き捨てた。
手に持つ紅茶で暖をとりながら誰もいないグラウンドを黙々と歩く。
身体の芯が冷え切る前に帰ろうと、誰もがそう思うだろう。
しかし、彼女の行く方向は校門とはまったく逆の方向に位置する弓道場だった。





弓道着に着替えた雪乃は、道場で静かに瞑想する。
心を落ち着け、これから行う弓執りへ気持ちを切り替えるのだ。
「・・・・」
彼女が弓道を始めたのが１２年前。
とある少年からそのイロハを教えてもらい、始めは興味がなかったが、今となっては弓こそ彼女の生きがいとなっていた。
静かな空間で、自分との戦いに時間を使うことに有意義を感じ取ったのだろうか。
ここ数年で彼女は弓執りとして恥じない腕を身につけた。


一人、道場に響き渡る弦の音に耳を傾ける。
その時間は彼女にとって掛け替えのないものだった。
弓と一緒にいる時間は、自分に弓を教えてくれた少年のことを思い出させてくれる。
過去を忘れないための、一種の儀式に近いもの。


―■■■■■■■■


フト、雪乃は何かの呪文を口ずさむ。


―■■■、■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■


続け様に３節。


―■■■■■、■■！


紡ぎ終わると、彼女の手には一本の光の矢がどこからともなく握られていた。
眩い光と、キラキラと不思議な粒子を放つ矢を弓に番（つが）え、
28m先にある的に狙いを定めた。
ギリギリと撓（しな）る弓と、今にも切れそうなほど限界まで引き伸ばされた弦。
その限界を悟った刹那、彼女の弓から光の矢が解き放たれた。


高速を越え、音速のレベルに達しようとする矢は吸い込まれるように的へ走った。
パンッと、軽快な音と共に突き刺さる光の矢。
バキンと、豪快な音と共に弾け飛ぶ的。



「・・・ハァ・・・ッ・・・ハ・・・」



苦しそうに肩で息をし、額からは汗が流れていた。
無理もない。
何を思ったのか、彼女はここ数年使っていなかった【魔術】をムリヤリ発動させたのだから。
彼女が少年から学んだのは【弓】と【魔術】
その少年は言った。
―自分は、魔を討つ者。[[執行者]]でありながら、魔術師なんだ
と。
そうして、一人の少女に少しだけ自分の知識を分け与えた。

それが、彼女の人生の中で唯一『楽しい』と思える時間だった。
『生きている』と実感できる時間だった。


しかし、少年はもう彼女の前にはいない。
『いつか、きっと、また会える』と彼女に言い残してこの世界から消えた彼女にとっての唯一であった。
あれから、もう１２年の時が過ぎようとしていた。

弓を仕舞い、道場の片隅で飲みかけの冷めた紅茶を啜りながら彼女は想いに馳せた。

「いつになったら・・・迎えに来てくれるのかな・・・・」

長い髪が揺れるとともに、彼女は嗚咽もなくその場で涙した。
たくさん失った。
たくさん消えた。
たくさん泣いた。


それでも、彼女のことを世界は、許そうとしなかった。










少年の名は【光一】
一人の少女と出会い、その少女を変えた人物。
名門の魔術師の家系【野田】に生まれながらも、執行者として別の道を選んで最後の審判へと参戦した歴史上でその多くを語られない陰の英雄。

そして、彼はもうこの世にはいない。
されど、彼は約束した。
『いつか、きっと、また会える』と。
しかし、それは彼女にとっては呪いに近いものだった。
少年が変えようとした世界で、地獄を生き続ける少女にとってそれは死よりも辛い現実だった。

「雪乃・・・あれほど使うなと言っておいたというのに、キミは」

「・・・・」
弓道場に現れるのは、一人の男。
この草臥れきった世界で、彼女のことを知る唯一の人物だった。

「でも、これはアノ人が残してくれたモノだから」


「忘れたくは、なかった」


男は深いため息をつくものの、観念したような素振りで彼女の様子を見守った。
彼にとっても、彼女にとっても、アノ人の存在は掛け替えのないもの。
そんな懐かしい感覚に浸るも、男はすぐさま切り替えてとある報告書を彼女に差し出した。

報告書【入学者一覧】
その中に、一際目立つ名を持つ者がいた。


「・・・野田・・・？」

驚きを隠せない様子の女に、男は続けて説明した。

「野田康治。来年の春にこの学園へ入学するようだ。保護責任者の名は野田歩。光一の妹のところにいる子が、何の運命かオレ達の元へ来る。」


「どうする？雪乃？」

「どうするも何も。私はただ見守るだけだから」

「そういうと思った。ここに新しい編入者の戸籍がある。この少年を傍で見守るなら、使うといい」


そうして渡される戸籍の名。



「・・・黒崎、葵・・・」



この日、雪乃と言う人物は世界から姿を消した。
代わりに得た名【黒崎葵】となり、新たな時代を紡ぐ子を見守る。
その手には自分の姉の剣【Ixion】を手に、
その手にはアノ人が残してくれた【魔術】を手に、


彼女の戦いは、始まった。    </description>
    <dc:date>2008-02-17T19:55:29+09:00</dc:date>
    <utime>1203245729</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/43.html">
    <title>第９話『舞い降りる　悪夢』</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/43.html</link>
    <description>
      今回の任務の不可思議なところは、2点。
まず、このような任務は普通僕らみたいな並みの[[執行者]]には与えられない。
重要な[[Device]]の警護とあれば[[アトラスの七剣]]が出張ってくるはずであり、僕ら２人だけで護りきれと言うほうがどうかしている。
そして、機を狙ったかのようにタイミングよく襲撃する狂信者。
すべてが出来すぎている。
誰かのシナリオの上で踊らされているような錯覚に陥るのも、無理な話ではない。



このような再会を果たすように、誰かが仕組んだ。
そう、僕達二人は思った。








その名に、僕達二人は戦慄を覚えた。
さっき、なんと彼女は言った？
アノ人の言う通りだって？

呆然と立ち尽くす僕に石田の激が飛ぶ。
「しっかりしろ！！野田！銃を執れ！！」
その言葉にハッとして、急いでホルダーに手を掛け銃口を向けた。


生きていてくれただけでも、嬉しかった。


されど、この状況は・・・。


どこかで見た・・・デジャブを感じる。



再び対峙した少女は、虚ろな目で僕を見据える。

あれが狂気。[[I.V.O.L.S.]]と呼ばれる病原体に犯され続けた結果。執行者と同じ力を持ちながら、ただ破壊衝動だけで突き動かされるバケモノ。

「野田・・・！！！」

撃てない・・・。
銃を執る手が震え、目の前の現実から目を逸らしたくて。
だから銃を持っていても、トリガーが引かれることはなかった。
それを見た少女はクスリと不気味な笑みを浮かべ、循環円を展開させた。
その光は地下室を包み込み、一気に爆散。


そして僕は・・・目を逸らした。


残されるのは静寂と、血の匂い。
「石田・・・！？」
その場に崩れる石田を支え、ただその名を呼んだ。
血はいつの間にか止まってはいるものの、意識はまだ朦朧としている。

―この場で戦えるのは・・・僕だけ・・・

そう思い、ただひたむきに出口を見た。
外の光が漏れる重厚な扉の先に何を見たのか。
石田は怪我をしているけど、外に連れ出すと誰に狙われるか分からない。
ここに居てもらおう。
ポケットの中から小さなチップを取り出し、石田に握らせる。
そして、小さな声で始動キーを発動させた。

『A.M.S・・・Stand by・・・石田を護って』
白い光が循環円として展開され、石田の周りに薄いシールドを発生させる。
これで相当強い衝撃が直撃しない限り、大丈夫。

銃を手に、僕は登る。
光の先にある暗闇の地を。
いつもより長く感じるその道を。
一歩一歩踏みしめるように、扉を目指す。


外の寒い空気が肺を満たし、月下の下、一つの陰が動いていた。
望月杏。
執行者として、目の前の狂気は討たなくてはならない。
だけど・・・今の僕に出来るのだろうか。

葛藤と迷いが心を支配する中、僕の顔に向け迫り来る殺気を感じ取った。
鋭い轟音。
狙いは一点、それを寸前のところでかわす。
無色透明の刃が、コンクリートに刺さり白い煙を巻き上げている。
射出角からして、彼女は僕より上にいる。


銃に弾丸を込めつつ、次々と迫り来る透明の刃を撃ち落とす。
静かな学園に響き渡る銃声と、轟音。
ただ僕は、自分に浴びせられる強烈な殺気を黙殺するしか・・・。

手段が、なかった。




-intermission



気が付けば自分の眼前に広がるのは薄っすらと靄掛かった世界。
手を動かし、まだ動けることを確認し、オレはその場から動こうとした。
されどその行為は不完全に終わった。
なぜか。
答えは簡単だった。

自分の目の前にあるのは高次元物質を圧縮して展開される防御壁だから。
それは外部からの高次元での干渉を遮断し、自分の身を護る。
しかし反面、術者以外はその解除が出来ない特性を持つ。
オレはため息をついて、その場にへたり込んだ。
「あのバカ・・・何考えてんだか・・・」
オレを動けないようにして、右手の不自由な執行者は戦いに赴いた。
こんな状況でだ。
二人してやっと断罪出来るか出来ないかと言われる相手を目の前にしてだ。

沸々と怒りが表面化され、オレは自分のDeviceに命令を下した。


破壊は考えないほうがいい。
これほど強固なアンチマテリアライザー。
まず物理攻撃では突破は不可能。
逆に高次元物質での破壊はただ自分のコアが削り取られるだけで、無意味な力を割くだけだ。


「流れを司りし者よ、その銘の元、真の姿へ還り戻れ」

「Phase、リミット・・・ブレイク」

その瞬間、眼前に広がる薄い壁は一気に取り払われた。
立ち上がると少し立ちくらみがしたが、オレ自身こう言った細かな高次元粒子操作が苦手であることを承知して行った行動だ。

犠牲になった精神力は、この際目を瞑ろう。


「ほぅ・・・後輩でそこまで出来るヤツがこの学園にいたなんてな・・・」

「・・・・」

突如暗闇から発せられる声。
声の質、明確な執行者の波動、


察するに、この学園に残っていたと思われる執行者によるもの。

味方ならどれだけよかったことだろう。
この窮地を脱し、野田の元へ急行出来る。

「・・・さて。俺達がなぜここにいるか、分かるか？」
「・・・・」

「分からないなら話してやる。」
「・・・・・・」




ナイフを持つ手が少し強くなった。
機会（チャンス）がこんな形で目の前に降ってくるとは予想することが出来なった、歓喜。

この学園に存在する執行者の数はたかが知れている。
数は両手で数えられるほど、少ない。
その少数精鋭の執行者達が、今オレを狙って明確な殺気を奮い立たせている。


今、オレの目の前に『すべての好機』が存在している。




数は７。
様々な得物を携え、今にもオレに襲い掛からんとジリジリと距離をつめようとしていた。。
７人のうちの一人が西洋剣のようなものを抜き払い、この地下空間に鋭い風切音を奏でる。



切っ先に捉えるは、オレの首。




「学園所有のDeviceを強奪させた容疑により、投降してもらおうか。執行者石田隆。」
「・・・」
「罪状は・・・そうだな、あらかた学園への反逆罪だろう。オマエが何を企んでいるのか、[[学園長]]にはお見通しだったようだ」

クスクスと笑いが起こる。
この状況下で先輩方は余裕の顔でオレを『反逆者』として拘束しようとしている。

まんまと策に嵌った。
野田が気づいた異変。
オレも察していたことではあるが、あえてそのことへの言及は避けた。




―まったく、馬鹿ばかりだ。


「どうした？はやくDeviceを我々に預け・・」

目の前の景色が一瞬歪んだ。

眼球が熱く燃え滾る錯覚に陥る。

映るモノは、自分に襲い掛かる執行者達。

これなら持つモノすべての内部構造を把握出来る。

しかし、この感覚は一体・・・？


「おい！！！これ以上時間を取らせるようなら強行す・・」


身体が自然に、跳ねた。
途中まで紡がれた言葉を最後まで聞くことはなく、一連の動作が終わったときにはナイフの刃は銀色から赤色へと変わっていた。
絶命のセリフすらない。
ただ、一瞬にして肉隗へと人間だったものは変わってしまった。


返り血を浴びながらも、その眼だけは蒼色で。


「う、うわあああああ」

目の前に迫る恐怖と、

「タス、タ、タタタタタスケ・・ヒグッ！？」

咽返る、血の匂いで充満する空間。


「バケモノ・・・バケモノオオオオオオ！！！」
突きつけられた槍の切っ先を寸前で避け、銀の軌跡を走らせる。
狙うは相手の両足、機動力を根こそぎ奪い取りその後心臓へ一突き。
ショック死する者もいれば、その場でジタバタともがき苦しむ者もいる。
その様子をオレは何の感慨もなく見下ろしている。

血の雨で濡れた防護服は黒く染まり。

オレを見上げ、助けを請う者はこう言った。




―黒き翼・・・反逆の銘は貴様を一生ユ





あぁ、背負ってやる。
ただし、それはオレだけだ。
野田には・・・過酷すぎるから。
さぁ、行こう。

反逆者は反逆者らしく、アイツへ会いに行かねばならないだろうから。

地上へと繋がる階段を登り、ニタリと笑う。
ここまではすべて想定通り。



後は、詰めるだけだった。


intermission out



白い息を吐きながら、僕はひたすら走った。
空から降り注ぐ幾重もの透明の刃を受けながらも、少女のいると思われる場所まで一直線に。
少女の身体能力は人としてはるかに超越したものがゆえに、小さな陰が校舎の屋上を駆け跳ねている。
目で追うのもやっと。
学園内でも特に大きな体育館の上へ少女の陰が落ちたのを確認して、僕の足はさらに速さを増した。

早く会って、キチンと確認したい。

もう２年も前のことだけど、それでも行方不明になった少女が突然目の前に現れたからには自分の眼で確かめたかった。

少女の姿が徐々にハッキリとしてくる。
月に掛かった雲がゆっくりと僕と少女の姿を照らす。

真っ黒な銃とは対照的な真っ白の刀身。
純白のローブに身を包み、金色の鈴の耳飾がチリンと一音。
やけに冷たく、それでいて懐かしい感覚に陥る。

「杏・・・？」

呼びかけにまったく応じない。
ただ銀の刃を不規則に揺らし、体育館の屋上に立っている。


もっと近くで見たい。
一歩。
コチラの世界の人間じゃないと、言って欲しい。
また一歩。

ドクン。



心臓が跳ねる。


激しい眩暈と、嘔吐感に襲われる。
頭が割れるほど痛い。
眼が熱い。


ドクン！！


―アイツハ、オマエヲ


声が聞こえる。
なんだか嫌だ。
この声は・・・聞きたくない。


―アイツハ・・・オレヲ・・・



止めてくれ。
それ以上は、言わないでくれ。
僕は・・・本当に・・・。

聞きたくな・・・！！
―アイツハオレヲコロシタ！！！






「うわあああああああああああああああ！！！」

頭上の少女へ向けて瞬時に銃口を向ける。
紡がれる銘は『Aiminift』
装填された特殊弾頭に込められた高次元粒子は周囲の微量な光を吸収し、巨大な力の塊となる。
照準を合わせる。
まず狙うは女の足。
機動力を殺ぎ、その後俺が味わった苦痛と恐怖をアノ女ニ。

コノ世ノ不浄物ニ、執行ノ鉄槌ヲ。

人ノ摂理カラ遠ク離レタ者ハ、生キタ屍同然。


俺ガ殺シテモ、何モ問題ハ　ナイ




引かれるトリガー。
高次元物質特有の発光色に包まれる空間。


一瞬見えた男の横顔は笑顔。
戦いを楽しむ狂信者のように、ただ彼の心は歓喜に満ちていた。


されど、紅き眼を持つ者は、笑いながら涙を流しているようにも見えた。

第９話　ＥＮＤ    </description>
    <dc:date>2008-02-11T22:58:40+09:00</dc:date>
    <utime>1202738320</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/47.html">
    <title>アトラスの七剣</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/47.html</link>
    <description>
      ：アトラスの七剣|
　桜門学園が保有する[[執行者]]の精鋭集団。全７名で構成されており、そのすべてが希有能力者と言う破格の者の集まりである。

：Ⅰ.黒崎葵|
　七剣の頂点に君臨する最強の執行者。ある夏の日以降行方不明となったが、Mirage2にてその存在を確認。愛剣【Ixion】を手に、今もその力は健在。

：Ⅱ．柊沙耶子|
　格闘型[[Device]]【拳王】を保有するクロスレンジでは黒崎葵以上の実力者である執行者。中村美沙の師。性格はかなり無口で、命令には素直。

：Ⅲ．奥山肇|
　遊撃型Device【オーネイト】を保有する好戦的な執行者。Deviceの特徴が劣化版十六支元と言われることを嫌う。通常の執行者から一気にナンバーⅠへ上り詰めた黒崎葵を嫌悪している。

：Ⅳ．香月由美|
　遠距離砲撃型Device【PSG-T】を保有する指揮官的な執行者。自ら前へ出ることは稀で、その希有な頭脳を持ってして戦略的勝利をいくつも手にしてきた。事実上彼女がナンバーⅠであったが、黒崎葵の手腕に感服し席を譲ることになった。

：Ⅴ．冬樹風香|
　射撃型Device【Aiminift/Aussaulter】を保有する銃器マスター。野田康治のAiminiftはこのDeviceが原型であり、彼女は二艇で戦いに赴くことを好む。どのような手段を用いても勝ちを掴むという理念が彼女の勝利をもたらす。義理の弟がいる。

：Ⅵ．高坂セツナ|
　槍型Device【ブリューナス】を保有するアトラスの騎士中最年少執行者。若干13歳にして卓越した槍術を持ち、人懐っこい人柄と戦闘狂としての２面を持つ。野田康治と同じく狂気に犯されながらその能力を逆に利用して執行者としての力を高めた希有な力の持ち主。

：Ⅶ．桜|
　素性が分からない謎の執行者。小さな身体であるものの、潜在能力だけはナイツオブラウンド中最高位と言う変わった存在。Mirage2での鍵を握る。    </description>
    <dc:date>2008-02-11T22:54:59+09:00</dc:date>
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