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第二十×章「再来」
小鳥のさえずりが聞こえる今は朝方。
遥か彼方の山頂から微かに太陽が顔を覗かせている。
街を見渡せる丘の上に、その男はいた。
初夏だというのに黒い外套を着込んだその男は、花を片手に立ちすくむ。
目の前には薄汚れた石碑があり、その横には小さな墓がぽつりと建っている。
微かな朝焼けを背に、男は口を開く。
「まさかな…お前までいなくなるとは思わなかったよ」
男はしゃがみ込んで、手に持った花を墓に供える。
男は墓を見据えたまま言葉を紡いだ。
「えとさんが消え、蛹が去ったこの街で、お前だけが残った。だがそのお前ですら消えてしまうなんて、さ」
吹いた風が水仙の花を揺らした。
「思えば―――ここが始まりの場所だったな」
丘には桜の木が青々と葉を茂らせている。この街を全て見下ろすかのようなこの桜は、この街を開拓した三人の人間が植えたものであるという。
桜の葉に思い出を刻み、花に咲かせては酒と共に過去に耽(ふけ)る。そうしてこの街の人々は刻を重ねて来たのだという。
「あの三人の末裔……最後の一人だったのに」
やりきれない憤りを胸に仕舞い、男はポケットから缶を取り出し、一口飲む。そして