俺の名前はギコ。

どこにでもいるごく普通のAAだ。

職業は…無い。

自分探しをしている風来坊とでも言っておこう。

俺は他人を信じない。

他人が他人に物を教えられるわけがないと思っている。

お偉いさんに愛想を振りまく親。

友人のいじめや差別を見て見ぬふりをする教師や友人。

俺はそれらに嫌気がさした。

だから旅に出た。

今までいろんなスレを旅してきた。

みんなクソみたいなスレばかりだったぜ。

まぁ、いいスレもあったんだがな、どうも住む気にならなかった。

そして今度俺が訪れたスレの名前は、

[しぃ(゚ー゚*)虐待・虐殺スレッド]

さて、このスレで自分をみつけられるか?


「さてと…そろそろ逝くかな」

おれはスレに足を踏み入れた。

「うっ!!」

このスレ最初のお出迎えは鼻に突き刺さるような血の臭いと腐敗臭だった。

あまりの悪臭に俺は嘔吐感すら覚えた。

「なんだよこの臭い…」

その疑問はすぐ解けた。

スレのいたる所にAAの死体が放置されていたからだ。

「こいつぁ…ヒデェな」

この時俺は直感的に思った。

こんな所に俺が求めている自分はない、と。

「こんなスレさっさとぬけるぜ…!」

俺はペッと唾を吐き捨て出口に向かって歩き出した。


「糞虫が!氏ね!!」

ある虐殺厨が小さいAAの腕を引きちぎる。

「シィィィィィ!!」

また別のところでは火炎放射器やギロチンなどで虐殺している。

はっきり言って惨過ぎる。

こんなことがスレ中でおきているのかよ。

そう思っていると俺の視界の中に何かから必死に逃げている小さいAAが入った。

その後ろから銃を持った虐殺厨が追いかけてくる。

「まてー!!」

バーン!!

虐殺房が銃を発砲した。

「シィィ!」

小さいAAの足から血が出ている。

どうやら弾丸は足に当たったようだ。

「まったく手間かけさせやがって」

あのままあのAAも頃されるのだろうか。

俺はなぜか本能的にあいつを助けなければいけないと思った。

虐殺厨は俺の足音に気付いたのか俺の方を見た。

「あんたこのスレの住人じゃないな。だったらしぃも虐殺したことないんだろ?」

小さいAAの名前はしぃというのか。

「しぃの腕を引きちぎった時の感触は快感だぜー!アンタm…」

バキッ!!

俺はそいつの顔面を殴り飛ばした。

「な…なにs…」

「俺はお前のように弱い者をいじめて快感を得るやつが大嫌いなんだよ!」

俺は頭を思い切り振りかぶってそいつの顔面に

ガッ!!

頭突きを食らわせた。

虐殺厨は鼻血を出して気絶した。

今度はしぃに近づいた。

しぃは虐殺されるのではないかと怯えた目で俺を見ながら必死で足で地面を蹴って逃げようとする。

俺はそいつをヒョイとかかえて頭を優しく撫でてやった。

「大丈夫だよ。虐殺なんてしねぇーから」

それを聞いて安心したのかしぃはそのまま気を失いやがった。

「お…おいおいこんなところで気失なわれてもな…」

こんなところにほっといたら今度こそ虐殺されちまうぜ。

「まいったな…」

まったくめんどくせぇー事になっちまったぜ。


なんで俺はこんな所にいるんだかな。

俺は今あるアパートの内の部屋にいる。

あのまましぃをほっとく訳にもいかなかったから俺はアパートを借りたわけだ。

もちろん管理人も虐殺厨だったからしぃはリュックの中に入れておいた。

なんで俺が他人のためにこんなにもしなけりぁいけないんだ?

まぁ、こいつの傷が癒えたらさっさと別のスレにでも逝くぜ。

しかしこのスレの悪名は噂に聞いていたがこんなに酷いとはな。

こんなスレ来なきゃよかったぜ。

「ん?」

そんなことを考えていた俺はしぃを寝かしておいた布団が動いている事に気が付いた。

近づいて見たらしぃは気が付いたようだった。

「気が付いたか?」

「…ナンデワタシハココニイルノ?」

「覚えてないか…俺が虐殺房からお前を助けた時にお前が気絶したから、ここに運んできたわけだ。あのままほっとく訳にもいかないからな」

「ソウナノ…アナタノナマエハ?」

「俺か?おれはギコ」

「ギコクンカ…フフ、ギコクンアリガトウ」

「お、おう」

なに照れてんだ俺は?

まあいい。

こいつとの関係もしぃの足の傷が癒えるまでだ。

こんな感じで始まってしまったこのスレでの生活。

どうして俺が他人のためにここまでしているんだかな?

その疑問はいつまでたっても解けなかった。


「お会計815エソです。1000エソお預かりします。185エソのお返しです。有難うございました」

他人に頭を下げるのはイライラするぜ!

俺は今コンビ二でバイトをしている。

しばらくこのスレに住む事になったからには食費や家賃を稼がなけりぁいけないからな。

ほかにもバイトはあった。

しぃの駆除、糞虫の駆除・虐待等。

そんなバイトする気なんてさらさらねぇし、頼まれたってしたくねぇ。

しかしコンビニのバイトといっても売ってるのが刀、拳銃・弾丸、火炎放射器等、あまり気持ちがいいものじゃない。

…お、バイトが上がる時間だ。

賞味期限切れ寸前の弁当をもらって、アパートへの帰路についた。

相変わらずしぃは虐殺されている。

虐殺厨には罪悪感ってもんがないのか?

俺には信じられないぜ。

そうしているうちにアパートに着いた。

ガチャ

「ただいま」

「オカエリ、ギコクン」

しぃはいつも笑顔で俺を迎えてくれる。

…なかなか悪いもんじゃないな。

俺は弁当を食べ少ししぃに与える。

その後俺が食休みをしている時、

「シィ、ソトデアソビタイ」

いきなり何言ってんだコイツ?

「あのなぁ、そんなことしたらどんなことになるのか分かってるのか?あっという間に虐殺厨に虐殺されちまうぜ」

そう言っておれはテレビをつけた。

『さあ今夜はしぃ虐殺スペシャルです!しぃ駆除管理局ではどのようにしてしぃを駆除しているのでしょうか?』

場面はスレの中心にあるしぃ駆除管理局に移った。

『局長、どのようにしてしぃを駆除しているのですか?』

『百聞は一見に如かず、見てもらった方が早いです』

そういって二人は別の部屋に移動した。

その部屋は大型の機械が置いてあり、部屋の真ん中にはガラスがあった。

その中には…縄で縛られたしぃが何十匹もいた。

『このスイッチを押しますと…』

カチッ

ゴゴゴゴゴゴ

『なんですかこの音は?』

『まあ中を見ていてください』

しぃがいる部屋の天井がどんどん下がってきているのだ。

しぃ達は何か叫んでいるのか口を大きくパクパクしている。

しかし、その声は聞こえない。

「防音もばっちりですよ』

天井はどんどん下がってきて遂にしぃの頭ぐらいの所まで来た。

そして…

ブツン!

「ハアハア…」

俺はようやくテレビを消すことができた。

しぃは顔を真っ青にしてブルブル震えている。

俺はしぃを強く抱きしめ、背中をさすってやった。

「悪かった。あんな物見せて」

「ギコクンモワタシヲギャクサツスルノ…?」

「バカヤロウ!そんな事するか!必ずお前を守ってやる!」

俺はさらに強くしぃを抱きしめた。

守る?

誰を?

しぃをか?

誰が?

俺が?

馬鹿な。

そんな事あるか。

自分のためにしか生きない俺がなぜ他人を守る?

分からない。

勢いとはいえこの俺がそんなことを言ってしまうとは。

自分に反吐が出るぜ。

なぜ俺はコイツのためにここまでしてるんだ。

何十回も自分に聞いた質問だ。

答えはいまだに分からない。

「アリガトウ」

しぃは小さな声で呟いた。

理由が無きゃ行動を起こしてはいけないのか。

そんなことは無い。

ただ俺がしたいからしている。

ただ、それだけだ。


「有難うございましたー。…眠みぃー」

眠い理由は簡単、寝不足だ。

なぜ寝不足かと言うと深夜近所の公園でしぃを遊んでやってるからだ。

昼間そんなことをしたらたちまち虐殺されてしまう。

だからスレの住民が寝静まった深夜公園で遊んでいる。

おかげで寝不足だ。

「眠むー」

本日十回目の言葉だ。

その後俺はいつものようにアパートへ帰った。

「ただいま」

「オカエリ、ギコクン」

そしていつものように弁当を食べる。

俺が飯を食っているとき、

「ギコクンッテケッコントカスルノ?」

ブーー!!

「ゲホゲホ!」

な、何言い出すんだコイツは。

「ドウナノ?」

「…俺は天涯孤独主義なんだよ」

「シィネ、ギコクンノオヨメサンニナリタイノ」

「へぇー…ハァーー!?」

もはや意味が分からない。

なんでこんな事になるんだよ!?

「イイデショ?」

しぃは屈託の無い笑顔で言った。

イヤだ!、って言ったらこいつ傷つくだろうな。

「…考えておいてやるよ」

「ヤッター!!」

無邪気なもんだなぁ。

ま、そこが可愛いんだけどな。

可愛い?

なに思ってるんだ俺は。

自分がますます分かんなくなってきた。


…午前一時

「そろそろ公園に逝くか?」

「イクイクー!」

俺たちはいつものように公園へ逝った。

「ワーイ!!」

しぃは無邪気にはしゃいでいる。

俺はベンチに腰を下ろした。

しぃはブランコで遊んでいる。

…ここ最近無理をしたせいか?

ものすごい睡魔が襲ってくる。

眠い…寝るな、寝るな俺!

ここで寝たら危険だ。

寝る…な、お…れ…




タッタッタ

「んあ?」

俺は近づいてくる足音で目を覚ました。

しぃか…?

いや、あいつの足の怪我はまだ完治していない。

こんなに早い足音で動ける訳が無い。

ということは…!!

俺は頭を上げた。

視界にしぃに向かっていく虐殺厨が見えた。

マズイ!!

俺はダッシュでそいつに近づいた。

ダカ!

背中にドロップキックを食らわせた。

「おっ、お前はこの間の…!」

そいつは前に頭突きで気絶させた奴だった。

「この野郎…!!」

俺は頭を振りかぶって、

ガツッ!!

そいつの顔面に頭突きを食らわせた。

「ま、またこれかよ…」

また鼻血を流して気絶した。

何とか気絶させれたけど管理局に通報されるのも時間の問題だ!

一刻も早くスレを抜けるしかない!

「しぃ、逃げるぞ!」

俺はしぃを抱えて出口に向かって走り出した。


『ビービービー!!緊急指令!緊急指令!駆除隊隊員は直ちにしぃをかくまった上に隊員に暴行を働いたAAを直ちに逮捕せよ!!なお一緒にいると思われるしぃも同時に捕縛せよ!!繰り返す!!…』

まずいな…。早くこのスレを脱出しなければ…!

スレ出口まであとどん位だよ!?

ピー!

いきなり後ろからふえのの音がした。

「いたぞー!あいつらだ!!追えー!」

ヤベェ!見つかっちまった!!

俺はダッシュで出口に向かう。

しかし、前からも来やがった!

ピー!

「いたぞー!!」

クソ!!

仕方なく俺は左折した。

このままじゃ捕まるのも時間の問題だ!

俺だけだったらまだしもしぃを抱えた状態じゃ…

俺は抱えているしぃに視線を落とした。

しぃは俺の心情を読み取ったのかこんな事を言った。

「ギコクン、ワタシヲオイテニゲテ。コノママジャギコクンマデ…」

「馬鹿言うんじゃねぇー!!言っただろお前を守るって!!お前が頼んでも俺はゼッテーにお前を置き去りになんてしねぇーからな!!」

とは言ってみたものの状況は最悪だ。

俺を追いかけてくる虐殺厨がどんどん増えてきてやがる。

「クッソ…!」

と不意に俺の視界に雑木林が入った。

「しめた!あそこなら!」

俺は雑木林の中に飛び込んだ。


「そっちはいたかー!?」

「だめです!いませーん!!」

俺の考えは甘かったようだ。

雑木林の中に入ればうまくまけると思ったんだがな。

完全に包囲されちまった。

草陰に隠れていても見つかるのは時間の問題だ。

「クソー…!どうすりぁいい…!?」

そう思いながら回りを見回していると木の根に目が留まった。

根がうまく絡み合って小さな洞窟のようになっている。

俺が入るのは無理だがしぃなら…

そう思うのが先か俺はしぃをその中に入れた。

「しぃ、よく聞け。これから俺はあいつらを引き付ける。その間にお前は別のスレに逝け」

「ヤダ!!ギコクンガイカナイナラワタシモイカナイ!」

「しぃ!!このままじゃ二人とも頃されちまう!…俺は大丈夫だ。後からお前をを追いかけるから」

「デモ…!、デモ…!」

しぃは大粒の涙をこぼしながら俺の手を掴む。

「こっちから何か音がするぞ!!」

ヤバイ!!

「いいな!別のスレへ逃げるんだ!!俺も後から追いかけるから!!」

そういって俺は走り出した。

「うおおー!!」

「いたぞー!追えー!」

俺はひたすら走る。

なんで俺はこんな事をしてるんだ?

他人のために自分の命を懸けるなんて。

以前の俺じゃ信じられないぜ。

そう思いながら走っていたら壁に突き当たっちまった。

「しまった!!」

後ろを振り返ると何十人もの虐殺厨がいた。

…まさかこんな形で俺の人生が終わるなんてな。

自分の為にしか生きない俺が他人のために死ぬ…?

以前の俺が聞いたら大爆笑するだろうな。

でも、今は違う。

なぜなら今マジで生きてるんだから。

「ハァー、フゥー…」

深呼吸をして息を整える。

逝くか!!

俺は虐殺厨の集団に向かって突っ込んだ。

バンバン!!

虐殺厨が銃弾を発射した。

ヒュイーン!

俺はそれを紙一重でかわす。

そして一番前にいた奴の顔面にパンチを食らわす。

「うぐ!」

次の奴には殴った反動を使って裏拳を食らわす。

次々と虐殺厨が迫ってくる。

まだいやがるのかよ!

俺はそいつらに向かおうとしたとき、

ガンッ!!

後頭部を何かで叩かれたような気がした。

その直後急に足に力が入らなくなった。

視界がどんどん暗くなってくる。

「チクショウ…!」

「むこ・・・・がき・・つか・・」

虐殺厨が何か言っているのは聞こえたがはっきり聞こえなかった。

地面がどんどん近づいてくる・・・。

「ああ・・・」


・・・
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