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「虹がのぼる、その日まで」(2006/03/21 (火) 04:29:15) の最新版変更点
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「25レスごとのお題で小説を書け!」の50のお題<br>
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作:<b><font color="#008000">暇人</font></b><br>
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<font color="#333333">2005/02/13(日) 03:55:42</font><br>
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雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、<br>
優しい日差しが降り注ぐ、そんな世界の小さな物語。<br>
あるところに、ギコという猫がいました。<br>
ギコは猫なのに真っ黒な翼がある、不思議な猫でした。<br>
ギコは、いつも言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、一人ぼっちが好きだったので、<br>
周りの動物たちは、言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、翼があるギコを仲間はずれにしていました。<br>
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ギコはひとりぼっちが好きな猫だったので、いつも、一人で遊んでいました。<br>
なぜなら、ギコはここに来る前も、ずっとひとりぼっちだったからです。<br>
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寒い冬の日、暑い夏の夜。<br>
どんなに雪が降っても、段ボールの中で寒さをしのぐしかありませんでした。<br>
どんなに暑くて喉が渇いても、汚れたドブの水を飲むしかありませんでした。<br>
お腹がすいても、具合が悪くなっても、誰も助けてくれなかったのです。<br>
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ギコはひとりぼっちが大好きになりました。<br>
とても寂しいけれど、ひとりぼっちを大好きにならないと、苦しくて、寂しくてどうしようもなかったのです。<br>
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ある寒い冬の日、目が覚めると、ギコの背中には翼が生えていました。<br>
そして、今まで寒くて凍えてしまいそうだったはずの体は、とても軽くなっていました。<br>
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でも、ひとりぼっちが大好きで、誰も信じる事ができなくなっていたギコは、<br>
ここに来ても、ひとりぼっちでいようと思いました。<br>
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ある日、ギコがいつも遊んでいる草原から少し離れた河原を歩いていると、一人の人間の女の子が歩いてくるのが見えました。<br>
その女の子には、見覚えがありました。<br>
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「あのガキは……」<br>
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ギコがここに来る少し前、たった一人だけ、ギコを抱き上げてくれた人がいた事を、ギコは思い出しました。<br>
寒い夜、段ボールの中で震えていたギコの背中を、静かに撫でてくれた温かい小さな手。<br>
顔をあげると、そこには、一人の女の子が立っていました。<br>
かじかんだ体を抱き上げると、カバンから魚のフライを出して、ギコに食べされてくれた、女の子。<br>
たった一度だけ出会って、ただ一人、ギコに優しくしてくれた女の子。<br>
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ぼんやりとした顔で、ゆっくりと、こちらに歩いてくる姿を見たギコは、あらん限りの声で叫びました。<br>
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「まだ、こっちに来ちゃいけねぇ!戻れ、このバカ!」<br>
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女の子が顔を上げると、その瞳には、光りが戻っていました。<br>
女の子はきびすを返すと、ゆっくりと河原の遙か向こうに歩いて行きます。<br>
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ギコは女の子の後ろ姿を見送りました。<br>
女の子が消えても、ずっと、ずっと見送っていました。<br>
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ギコの瞳から、大きな涙がポロリと流れ落ちました。<br>
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ギコが草原に戻ると、そこには、一人の大きな男の人が立っていました。<br>
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『悲しみや苦しみが、君を堕天使にしたけれど、もう、翼はいりませんね』<br>
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男の人がヒョイと手を挙げると、ギコの背中から翼が消えました。<br>
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次の日、ギコは誰よりも早く草原にやって来て、みんながやって来るのを待っていました。<br>
やがて、遠い山並みに朝陽がのぼる頃、青空に大きな虹がかかり、沢山の動物たちがやって来ました。<br>
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ギコを見ると、みんな、訝しげな顔をしましたが、ギコは恥ずかしそうに、みんなの元に歩み寄って<br>
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「お、俺も仲間に入れてくんない?」<br>
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ギコは、ひとりぼっちが大嫌いになっていました。<br>
その代わり、みんなの事が大好きになっていました。<br>
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だって、ギコは決して、ここに来る前もひとりぼっちではなかったからです。<br>
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雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、<br>
優しい日差しが降り注ぐ、いつも虹が空にかかる、そんな世界の、小さな物語。<br>
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