勇者の誓い

「勇者の誓い」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

勇者の誓い - (2017/08/31 (木) 21:15:37) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「……ガブモン」 ただ、棒と立ち尽くし勇者プチヒーローは握りしめたヒノカグツチを震わせていた。 我が身可愛さにガブモンを行かせたわけではない、最善の行為が何かと問うならばガブモンに託すことがまさしくそれだったのだろう。 「それでも……それでも僕は……追いたかった」 ガブモンの背を追って、自分もまた付いて行きたかった。 ガブモンを死なせたくはなかった、もうどうしようもなかろうとも、それでも何かがしたかった。みすみすと死なせたくはなかった。 それにハムライガーの末を見届けたかった。わからないけれど、本来のハムライガーの笑顔が見たかった。 だが、駄目だった。 託されてしまった、ガブモンの笑顔とともに剣を――願いを、祈りを、託されてしまった。 「ずるいよ……」 もう、それでプチヒーローはガブモンを追いかけることは出来ない。 信じろと、何もかも信じろと言われたも同然だった。 いや、今からでも追いかければ全てに決着がついたハムライガーの姿を見ることが出来るだろう。 それでも、そんな気にもなれなかった。 ガブモンが一人で行った、決着をつけに行った。 ならば、ハムライガーの呪縛は解けているに決まっている。 きっとハムライガーは救われたにきまっている。 ならば、やはり自分の戦うべき場所は別のところにあるように思われた。 だから、自分の戦いもまた始めなければならない。 プチヒーローは、すうと息を吸った。 息とは――呼吸とは命を動かす。 吸うたびに、吐くたびに、己の命が動いている。 「うん……」 皆が皆、そうだ。 ジュペッタも、ギルガメッシュも、ギリメカラも、ゲルキゾクも、皆が皆死んでいった。 何かを願い、何かを祈り、戦い、そして生き切った。 自分はまだ、生きている。 死んでいった者の分まで生きるというのは陳腐な言葉だけれど、 それでも死んでいった者の分まで命を動かす義務があるように思えた。 「決めた」 勇者は駆ける。 魔王も姫もいないけれど、目的【クエスト】がそこにはある。 「ごめんなさい、放っておいて」 F-5――そこは、かつてプチヒーローが逃げ出した場所だった。 恐怖が一度、勇気を殺した場所だった。 ハムライガーのために、それどころではなかったが、もう一度決着を付けなければならない。 「小さいかもしれませんが、お墓を作ります。ハムライガーのことは……後はガブモンがやってくれます……やってくれたと思います。 だから、心配しないで……眠っていて下さい。後のことは、僕がやります」 そう、ギリメカラもの死体に言って、ライディンで地面に穴を開けた。 ギリメカラの死体は重く、プチヒーローの小さい体がふらついて、それでも途中で落とすこともなく、墓穴の中に寝かせた。 穴を開けるのは一瞬だったが、土を被せることだけは時間がかかった。 剣や盾を使うわけにもいくまい、手作業で穴を掘って少しずつ、少しずつ、ギリメカラの死体に土を被せていく。 「…………」 ギリメカラの死体を埋めながら、ゲルキゾクの死体が視界に入って、何となく彼の墓も作ってやろうとプチヒーローは思った。 彼についてわかることなど、あまりにも少ないけれど、騙し打ちをしてでも、それでも生きたかったのだと思う。 だから、罵ることは簡単だけど、受け入れることも出来ないけれど、それでもお墓を作ってやろうと思う。 「……きっと、帰りたかったんですよね」 ゲルキゾクの死に顔を見た、プチヒーローは己の認識を少しだけ改めた。 本当に、本当に悲しそうな顔だった。 きっと、後悔があるのだろう。何かを為そうとして、それでも出来なかった深い深い後悔が。 「僕はアナタを許します」 ならば、それが罰なのだと思う。 だから、もうプチヒーローから何も言ったりはしない。 「言ってくれれば……僕は勇者だから、きっと解決できたと思うんです」 ただ、哀しい。 もしもゲルキゾクが己を信じてくれれば、帰りたい理由を言ってくれれば、そのために戦えたのだと思う。 もう、今となっては何もかも遅いけれど。 だから、もう何も掌から零したくはない。 『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』 突如、空からモリーの声が響いた。 何かが始まるのだろう。 この殺し合いを終わりへと導く何かが。 プチヒーローはヒノカグツチを握りしめて、強く誓った。 【F-5/湖/二日目/深夜】 【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】 [状態]:体力消費(小)、魔力消費(中) [装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:勇気を与える者になる 【備考】 オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」 死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。 |No.83:[[先見えぬ王道]]|[[投下順]]|No.85:[[レナモンの唄 ~Memories Off~]]| |No.80:[[心重なる距離にある]]|プチヒーロー|No.90:[[剣に勇気を、胸に怒りを]]|
「……ガブモン」 ただ、棒と立ち尽くし勇者プチヒーローは握りしめたヒノカグツチを震わせていた。 我が身可愛さにガブモンを行かせたわけではない、最善の行為が何かと問うならばガブモンに託すことがまさしくそれだったのだろう。 「それでも……それでも僕は……追いたかった」 ガブモンの背を追って、自分もまた付いて行きたかった。 ガブモンを死なせたくはなかった、もうどうしようもなかろうとも、それでも何かがしたかった。みすみすと死なせたくはなかった。 それにハムライガーの末を見届けたかった。わからないけれど、本来のハムライガーの笑顔が見たかった。 だが、駄目だった。 託されてしまった、ガブモンの笑顔とともに剣を――願いを、祈りを、託されてしまった。 「ずるいよ……」 もう、それでプチヒーローはガブモンを追いかけることは出来ない。 信じろと、何もかも信じろと言われたも同然だった。 いや、今からでも追いかければ全てに決着がついたハムライガーの姿を見ることが出来るだろう。 それでも、そんな気にもなれなかった。 ガブモンが一人で行った、決着をつけに行った。 ならば、ハムライガーの呪縛は解けているに決まっている。 きっとハムライガーは救われたにきまっている。 ならば、やはり自分の戦うべき場所は別のところにあるように思われた。 だから、自分の戦いもまた始めなければならない。 プチヒーローは、すうと息を吸った。 息とは――呼吸とは命を動かす。 吸うたびに、吐くたびに、己の命が動いている。 「うん……」 皆が皆、そうだ。 ジュペッタも、ギルガメッシュも、ギリメカラも、ゲルキゾクも、皆が皆死んでいった。 何かを願い、何かを祈り、戦い、そして生き切った。 自分はまだ、生きている。 死んでいった者の分まで生きるというのは陳腐な言葉だけれど、 それでも死んでいった者の分まで命を動かす義務があるように思えた。 「決めた」 勇者は駆ける。 魔王も姫もいないけれど、目的【クエスト】がそこにはある。 「ごめんなさい、放っておいて」 F-5――そこは、かつてプチヒーローが逃げ出した場所だった。 恐怖が一度、勇気を殺した場所だった。 ハムライガーのために、それどころではなかったが、もう一度決着を付けなければならない。 「小さいかもしれませんが、お墓を作ります。ハムライガーのことは……後はガブモンがやってくれます……やってくれたと思います。 だから、心配しないで……眠っていて下さい。後のことは、僕がやります」 そう、ギリメカラもの死体に言って、ライディンで地面に穴を開けた。 ギリメカラの死体は重く、プチヒーローの小さい体がふらついて、それでも途中で落とすこともなく、墓穴の中に寝かせた。 穴を開けるのは一瞬だったが、土を被せることだけは時間がかかった。 剣や盾を使うわけにもいくまい、手作業で穴を掘って少しずつ、少しずつ、ギリメカラの死体に土を被せていく。 「…………」 ギリメカラの死体を埋めながら、ゲルキゾクの死体が視界に入って、何となく彼の墓も作ってやろうとプチヒーローは思った。 彼についてわかることなど、あまりにも少ないけれど、騙し打ちをしてでも、それでも生きたかったのだと思う。 だから、罵ることは簡単だけど、受け入れることも出来ないけれど、それでもお墓を作ってやろうと思う。 「……きっと、帰りたかったんですよね」 ゲルキゾクの死に顔を見た、プチヒーローは己の認識を少しだけ改めた。 本当に、本当に悲しそうな顔だった。 きっと、後悔があるのだろう。何かを為そうとして、それでも出来なかった深い深い後悔が。 「僕はアナタを許します」 ならば、それが罰なのだと思う。 だから、もうプチヒーローから何も言ったりはしない。 「言ってくれれば……僕は勇者だから、きっと解決できたと思うんです」 ただ、哀しい。 もしもゲルキゾクが己を信じてくれれば、帰りたい理由を言ってくれれば、そのために戦えたのだと思う。 もう、今となっては何もかも遅いけれど。 だから、もう何も掌から零したくはない。 『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』 突如、空からモリーの声が響いた。 何かが始まるのだろう。 この殺し合いを終わりへと導く何かが。 プチヒーローはヒノカグツチを握りしめて、強く誓った。 【F-5/湖/二日目/深夜】 【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】 [状態]:体力消費(小)、魔力消費(中) [装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:勇気を与える者になる 【備考】 オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」 死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。 |No.83:[[先見えぬ王道]]|[[時系列順]]|No.85:[[レナモンの唄 ~Memories Off~]]| |No.83:[[先見えぬ王道]]|[[投下順]]|No.85:[[レナモンの唄 ~Memories Off~]]| |No.80:[[心重なる距離にある]]|プチヒーロー|No.90:[[剣に勇気を、胸に怒りを]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: