だけど、生きていく

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  • だけど、生きていく
    目が覚めるとそこは深い森の中だった。 風と共に吹き抜ける湿った草の香りで、ここが故郷の世界だとすぐにわかった。 あぁ、帰ってこれたんだな。 安心してしまって、4本の足が同時にくたっと力が抜けてしまった。 そうしてそのまま、ゴロゴロと寝そべった。 こここそが僕の居るべき世界なんだ、と実感した。 「おいィ? 俺の縄張りに勝手に入るとはいい度胸だなァ」 ぼーっと余韻に浸る僕に、荒々しい声が掛けられた。 ノラモンだ。ロードランナーの一種だった。 そうだ、ゆっくりしてはいられないな、と思った僕はワンパンでノラモンを蹴散らし、あてもなく歩き始めた。 拐われる前とくらべて、気温はほとんど変わってなかった。 時間はそんなに経ってないのかもしれない。 だけどこれ以上ブリーダーさんに心配をかけさせちゃいけない、一秒でも早く帰らなくちゃ。 日...
  • エピローグ
    ...街 レナモン 94 だけど、生きていく ◆5omSWLaE/2 ファーム ハムライガー 95 描き出す未来図 ◆TAEv0TJMEI 悪の秘密基地 ルカリオ 96 手をつなごう ◆TAEv0TJMEI 星空 グレイシア
  • ライガー(ハムライガー)
    ...92 延長戦 94 だけど、生きていく
  • クロス・ソングス
    ...系列順 No.94 だけど、生きていく No.92:延長戦 投下順 No.94 だけど、生きていく No.92:延長戦 レナモン No.96 手をつなごう
  • 延長戦
    ...イガー No.94 だけど、生きていく
  • 描き出す未来図
    ... No.94:だけど、生きていく 時系列順 No.96 手をつなごう No.94:だけど、生きていく 投下順 No.96 手をつなごう No.92:延長戦 ルカリオ No.96 手をつなごう
  • escape
    それはいつもの何気ないありふれた光景。 温かい風がそよぐ育て屋さんの広いお庭で、ポケモンたちと仲良く遊ぶ日常。 あの女の子も綺麗な桃色の髪を揺らしながら、私たちと一緒に遊びを楽しむ。 その様子を微笑ましそうに見守るご主人様と育て屋のおじいさん。 芝生の上で追いかけっこ、日だまりの下で水遊び。 おばあさんがおやつを持ってきたので、みんなでワイワイしながら少し休憩。 食べ終わったらまた遊びの続き、今度はボールを一番遠くへ投げたら勝ちゲーム。 私はオクタンに変身して思いっきり発射、場外まで飛んでいって見事に優勝。 夕焼けの中でキラーンと星になったボールを見て、みんなして笑った。 「メタモンって色んなポケモンに変身出来るんだよね」 うん、すごいでしょ! 実はね、私もっともっと凄いのに変身出来るようになったんだよ。 「え、本当? 見せて見せて!」 ...
  • 手をつなごう
    ...未来へ No.92:だけど、生きていく ハムライガー 未来へ No.92:描き出す未来図 ルカリオ 未来へ No.92:延長戦 グレイシア またいつか
  • 交差して超える世界
    世界は交差する。 人も魔物も交わって。 その先に見える道へ、歩き出す。 グレイシアは、この殺し合いでのスタート地点に戻ってきた。 メタモンとの出会い、ドラゴンとの戦い。 それらは僅か半日程度過去のことで。 流れ星が墜ちる、きららと。見上げた彼女はすうと息を吐いた。 「どうしよう、このキカイの地図が本当なら」 画面にピクシーの指が触れると、方眼紙のようなマス目が地面に広がった。 地形を読み込み正確な情報が表示される。 「相当入り組んでいますね……」 「ソーナンス……」 目的の場所は明滅している。 だからといって簡単にたどり着けるわけではない。 「虱潰し……と、いきますか?」 グレイシアの提案に勝る提案は残念ながら上がらなかった。 一歩一歩、確実に、彼女たちは洞窟を探索する。 来たばかりの時は気付かなかったが、この洞窟、なかなかどうして...
  • 勇者の誓い
    「……ガブモン」 ただ、棒と立ち尽くし勇者プチヒーローは握りしめたヒノカグツチを震わせていた。 我が身可愛さにガブモンを行かせたわけではない、最善の行為が何かと問うならばガブモンに託すことがまさしくそれだったのだろう。 「それでも……それでも僕は……追いたかった」 ガブモンの背を追って、自分もまた付いて行きたかった。 ガブモンを死なせたくはなかった、もうどうしようもなかろうとも、それでも何かがしたかった。みすみすと死なせたくはなかった。 それにハムライガーの末を見届けたかった。わからないけれど、本来のハムライガーの笑顔が見たかった。 だが、駄目だった。 託されてしまった、ガブモンの笑顔とともに剣を――願いを、祈りを、託されてしまった。 「ずるいよ……」 もう、それでプチヒーローはガブモンを追いかけることは出来ない。 信じろと、何もかも信じろと言われたも同然...
  • 上手くズルく生きて楽しいのさ
    「でね、ブリーダーさんはボクにこう言ってくれたんだ────」 「…………あら」 別に情報交換をしようというわけでもない。 彼に話させることで少しでも気を和らげさせることが出来ればいい、 そう思って、わたしはハムライガー君に喋らせていた。 取り留めの無い話だった、 彼がブリーダーさんと過ごす、本当に何のことはない日常。 だからこそ、わたしは胸を痛めていた。 知っているのだから、日常を奪われるというのがどういうことか。 生きるということは旅だ、一寸先も見えない暗黒の中を松明も無くもがき続ける旅だ。 共に歩んでくれる誰かがいたから、わたしはおっかなびっくり進むことが出来た。 進む先の目印は無かったけれど、日常という灯火がいつか帰る場所をはっきりと浮かび上がらせていた。 今はもう無い。 共に歩んでくれる誰かも、家族の待つ温かな灯も失ってしまっ...
  • バトロワ中にエクササイズやったら死ぬ
    カロリーナに戦うことは出来ない。 美を追求するためのトレーニング、そしてダイエット、それが彼女に出来る全てのことだ。 だから、彼女は踊る。 それしか出来なくても、それが出来るのだから、 それをすることを、彼女は選んだ。 ──「戦イナンテヤメテワタシト一緒ニえくささいず致シマ、ショォー!!」 何一つ、打算はなかった。 けれども、 ──「ハァーイ、わんつーわんつーー!!はむノわんつーニモ負ケズニィ!両手両足ヲパンパン!ハイッ!強ク!正シク!美シクゥ!!」 少なくとも、目の前で命が奪われようとしていること。 それだけは嫌だった。 だから、彼女は踊った。 【モッチー(カロリーナ)@モンスターファームシリーズ 死亡】 そら撃つよ。 目の前で隙丸出しで踊ってたら、そりゃゲルキゾクだってガトリング撃つよ。 そっちは...
  • 本編SS目次(時系列順)
    ...街 レナモン 94 だけど、生きていく ◆5omSWLaE/2 ファーム ハムライガー 95 描き出す未来図 ◆TAEv0TJMEI 悪の秘密基地 ルカリオ 96 手をつなごう ◆TAEv0TJMEI 星空 グレイシア
  • 迷い生きる獣達
    終ワリノ風景 何処マデモ何処マデモ荒涼トシタ大地 血、ソシテ死体 生クル者、何一ツトシテ無シ 己ヲ除ケバ 皆ハ逝ク、私ハ生ク ナラバ、何処マデモ何処マデモ、行コウ 何時ノ日カ、逃レタ死ガ私ヲ迎エニ来ルソノ時マデ 太陽は考えうる最も頂点で黄金色の輝きを発していた。 白日の下に晒されたその島は、灼熱でもなく、極寒でもなく、丁度いい気温と言うべきだろう。 風は緩やかに草花を撫ぜつけていき、雲は様々な形を取りながらのんびりと世界の果てへと旅していた。 何をするにも都合が良かった、心地良い気温と緩やかな風に身を委ね木陰の下で夕陽が沈むまで睡眠をとることにも、 体を衝動のままに動かしてただただ遊ぶことにも費やすにも、 特に、殺し合いなどには絶好の日和だっただろう。 先程の傷は粗方癒え、いや癒えずとも動いていただろうが、レナモンは闘争...
  • チャッキー
    ――かたかた、かたり。 かた、かたり。 【名前】チャッキー 【出典】モンスターファームシリーズ 【説明】 オレンジのキャップに赤い蝶ネクタイ、間の抜けた顔が特徴の人形の姿をしたモンスター。 その愉快な容姿とは裏腹に、殺されたモンスターの呪いが込められているため、非常に残忍な性格。 体のパーツを取り外したり、手に持ったナイフを駆使して殺戮衝動を満たす。 【パーソナルデータ】 オス。殺し合いという生き方しか知らないため、食事や睡眠など、生きるために必要なこと以外は殺戮しか行わない。 普段は一切の感情が現れないが、殺し合い中は感情が高ぶり、異常なまでのハイテンションとなる。 一人称は「オレ」 【スタンス】 マーダー 【初期支給品】 グラディウス 【登場話】 +開示する 話数 タイトル 21 絆のカタチ 29 眠...
  • そんなものはない
    王とは何かと問われれば、それは民衆の代表であり、纏め上げる、導くものと答えたい。 暴虐によって国を獲ろうとも、受け継いで王になろうとも、そうであってほしい。 これはあくまで、憧れるものの儚い願いに過ぎないが。 「……この、形容し難い生き物はあなたを襲ったのですね?」 「う、うん……お前ちょっとボコらせろって」 「ソーナンス?」 ぐしゃぐしゃになってもなお生を享受する生き物、キングスライム。 グレイシアはその蒼く美しい瞳を撓ませ、深いため息をつく。 この物体がなぜここまで瀕死に追い込まれているのか、なんとなくだが察することができた。 きっと不相応に戦いに挑んで返り討ちにでもあったのだろう。 グレイシアの予想は正解であったが、彼女の想定以上にこのキングスライムは色々やらかしている。 それを知ってか知らずか、彼女は冷気を帯びた吐息とともに一言。 ...
  • ありがとう
    大空を自由に飛ぶ夢を見た。 それはついさっき体験したばかりの夢だ。 勿論流れる映像も、ついさっきのもの。 もう二度と戻れないけれど、確かに存在した時間の記憶。 高い山に登ることでは見られない、それこそ鳥にでもならねば至れない群青だけの世界。 色のない風も空を溶けこませているようで、頬に胸に体に、触れる風から青色を抱きしめる。 空は何処まで続くのか、高さは果てしないのか、知り得ない情報の一端に触れて否が応にも心が騒ぐ。 最初は緊張していた。 恐ろしい相手からなんとか逃げ切って、追いかけられるんじゃないかと怯えて。 でも長いこと、四方が自由な場所に居ると、そんな気持ちにも羽が生えてふわふわと軽くなる。 「フリスビーみたいにできるかは不安だったけどやってみるもんだなー」 ぼんやりとしていた僕の思いに滑りこむ声。 そうだ、これは夢だから。 「これもガー太...
  • 絆のカタチ
     澄み渡る空気をいっぱいに取り入れ、降り注ぐ柔らかな陽光を全身に受ける。  足裏に感じる岩肌は硬く、吹き抜ける風は微かな冷たさを孕んでいた。そよぐ風の強さと空気の薄さが、標高の高さを物語っていた。  荒野によく似た山地の中腹。そこに佇むのは、茸のような頭部が特徴的なポケモン――キノガッサだった。  その瞳はしかと閉ざされている。故にキノガッサは見ていない。  眼前に在る、巨大で無骨で硬質な岩塊を、その瞳に捉えてはいない。  キノガッサは目を開けない。  黒く閉ざされた視界のままで、キノガッサは、すっ、と足を動かした。  その所作に音も淀みも乱れもない。  自然と一体化した――否、自然そのものの動作で、左手を水平に翳し、左足を前に出す。  その動作に続くのは、右半身の引き絞りだ。流れるように右膝を曲げ、右拳を握り締める。  されどその身は柳のようにしなやかで、緊張めいた力...
  • 黒く蝕み心を染めん
    ゆっくりと歩いていく。 一匹は上機嫌で、幸せそうな様子のまま歩いていく。 もう一匹はそれを眺めて、何かを思案するように、でもそれを彼には見せずに歩いていく。 ふいにこちらを振り向いた上機嫌な獣に、悪魔は微笑む。 だが言葉を投げかけることはない。 彼が発する言葉はどれも、ここにはいない誰かに向けられていて、でもそれは目の前にいる悪魔に向けられている。 彼が見ているのは現実だが、真実ではない。 だからかける必要はない。あちらからかけてくるから。 「あ、ブリーダーさん! 湖だよ、湖! 少し休憩していこうよ!」 「ああ、そうだな。そうしようか」 狼は彼を、ブリーダーと呼んだ。 四足歩行、立派な牙と鼻、一つ目。誰がどう見ても人の姿には見えない。 でも彼から見えるのは、自分を育ててくれた愛しいブリーダーの姿。 それが彼の眼から映る景色であり、現実。 こうしてしま...
  • ~チカラ~
    ――力が、欲しいか? ▼ くだらない、本当にくだらない。 死した龍の亡骸を前にして、レナモンは力なく嗚咽を漏らし続けた。 分かっていた。 言われるまでもなく見せつけられるまでもなく分かっていた。 力を得たところで失われたあの子たちは帰ってこない。 力さえあればと嘆いても、全ては後の祭りに過ぎない。 今更なのだ。今更、今更力を得たところで何になる。 変わらない、何も変わらない。 意味なく理由もなく、無為に力を求めているだけだということくらい遠の昔に理解していた。 理解した上で、それでもと力を求め続けていた――はずだった。 なのに。 何故、こうも心が痛い。 何故、打ち倒した相手へと延々と乞い続ける? 喰らえばいいではないか。 勝ったのだ。 奴は死に、私は生きているのだ。 なら、今まで通り、敗者のデータをものにすればいい。 龍が見せた力...
  • 決勝(1)
    ◇ ――かたり、かた、かた、かたかたかた 生き残った者の特権の一つは感情を露わに出来るということだ。 泣き、笑い、怒り、喜ぶ――死者には出来ない、死者の表情にあるのは最期の感情の残滓のみ。 ならばこそ、チャッキーは嗤う。殺した者の分も含めて、何もかもをも踏みにじって、嗤う。 下顎が上顎が噛合う度に、かたりと音が生じる。 ただの音だ、だが――彼にとっては笑いだ。人形故に己の頬は上がらない。 故に、これが己に張り付いた微笑だ。世界に産声を上げた己の笑いだ。 ああ――この時間が一生続けばいいのに。 不自然なまでに整えられた地面を噛みしめるように、愛おしむように、しっかりと、一歩ずつ足跡を刻んでいく。 一歩一歩足跡を刻む度に、距離が縮んでいく。ああ、いっその事――このまま永遠に歩いて行きたい。 だが、何時までも楽しい時間は続かないのだ。 辿り着...
  • 決勝(5)
    ◇ 全身が凍り付いていた。 昔、聞いたことがある。 モンスターが吹雪を受けた際の完全凍結率――つまりは指の先すら動かせなくなる確率は三割。 その吹雪をありったけ――回避行動も取れぬままに五度受けた。 そして、己の復活を拒むように全身をコロシアムの瓦礫が押し潰している。 成程、氷で全身が脆くなっている。死ぬのだろう。 今まで、自分の死ということを終ぞ思ったことはなかった。 死ぬ寸前まで闘い、戦い終わった後にやっと自分が死んだことを気づくものだと思っていた。 成程、この全身から力が抜けていくような感覚。 全身を泥沼に投げ出したかのような沈みゆく感覚。 これが死か。 成程。 わかった、つまらん。 まだ、自分は闘いを求めているらしい。 全身が凍結し、瓦礫によって押し潰された肉体はあらぬ方向に折れ曲がり、砕けかけているというのに。 それでも、自分は闘いをやめられ...
  • Fantastic Future
     ――――どうして、こんなことになってしまったのだろうか。  流動体の身体を小さく震わせて、わたしは一人考える。  つい先日までは確かに幸せだった、その筈なのに。  たくさんのポケモンの『タマゴ』を作るお手伝いをしてあげると、トレーナーさんは喜んでくれた。  無邪気に笑って、これでまた強くなれると褒めてくれた。  その顔を見たいがために何度も寂しい思いもした。  自分はあの日溜まりの中でずっと暮らしていけるんだと思っていた。  それが崩れてしまったのは――はたしてどうしてだろうか。  トレーナーさんは言っていた。  もっと良い個体が見つかったから、もうお前に使い道はないと。  その時わたしは初めて気付いたのだ。  あの人が見ていたのはわたしじゃなく、わたしと一緒に育て屋さんに預けられたポケモンでもない。  ……全部、生まれる子供のことだった。  強いポケモンが欲し...
  • 力の証
    力というものはそれを持つものによって意味合いが異なるものである。 相手に勝つもの、相手に負けないもの、相手に屈しないもの、生き残るもの。 それはなぜ力を求めるのか。その理由によって変わってくるものだ。 己の力を誇示するため。 何かを守るため。 強いものとして頂点に立つため。 己の身を守るため。 どれもが正解であり、故に答えなど存在しない。 そしてここ、モンスター闘技場の中。 二つの力の形が今まさにぶつかり合っていた。 そこにそれぞれ異なる意味の力を求めて。 ◆ 鬱蒼とした森の中。 向かい合っているのは2体の、モンスターと形容できるだろう生き物。 黄色い体毛を持った2足歩行のキツネのようなモンスター。 サメをイメージする鰭を備えた、ドラゴンのようなモンスター。 互いに面識などない。初対面、そして種族としても初見...
  • チキン・ラン
    ――ザザン、と波音が聞こえてくる。 目の前に広がるは海。塩っぱい潮の臭いが漂う。 砂漠では見たことも感じたことも無い、新鮮な光景と感覚だ。 澄み渡るような美しい蒼さ、世界を覆い尽くすかのような広大さ。 そこにはある種の神秘さえも感じる。普段だったら、彼は呑気に見惚れていただろう。 この場が「殺し合い」の場でなければ―――― 「………………」 森の近辺の浜辺で海を見ているのは、小型のサボテンのような外見をした一匹のモンスター。 彼はサボテンダー。この闘技場に無理矢理呼び込まれた、『参加者』の一人。 ―そう、彼は広大な海に見惚れているのではない。 この場における方針を考えていたのだ。 異常な状況における、自分自身の方針を。 ◆◆◆◆◆ 何でこんな所に呼び出されてしまったんだ? 剣を持った旅人からも常に逃げ延び、此処まで生...
  • CALLING YOU
    死は全てに平等である。 人間、動物、魔物、そして――物言わぬ建造物にまで。 「…………」 廃村を抜け、ベヒーモスは古城――いや、遠目に見て古くなった城だと判断したが、実際はそんなものではなかった。 入ってすぐに、魂が抜けていると――そうベヒーモスは感じた。 修理すれば直せる空間というのは存在する。だがこの城はそうなりそうにない、廃棄された城だ。 主人を失い埃だけを積み上げた高価な家具、最早誰かもわからない肖像画、床に投げ出された古書物。 モリーさえも手を付けなかったのだ。 住む者どころか訪れる者も、この殺し合いが終わってしまえば二度と無いだろう。 城の墓だ――死体が棺桶も墓も兼ねている。ベヒーモスは鼻を鳴らした。 耳を澄ます、戦闘の音は聞こえない。 あの恐竜も追って来れはしないだろう、ベヒーモスはそう判断すると、寝室を探した。 古城の調査の前に、支...
  • 我ハココニ在リ
    人は、奇跡を信じない ◇ 人は時に奇跡を求める。 切羽詰まった時、自分の手ではどうしようもない時、文字通り運頼みの時。 それでもと。それでも自分の願いが望みが、叶ってくれるのではないかと期待する、神に祈る。 もしその願いが真になれば、人はそれを奇跡だともてはやすだろう。 祈ることさえ忘れた絶望的な状況で、奇跡と呼ばれる何かが起き救われたのなら、人は大いに喜び、感謝するであろう。 けれども大抵の場合それは、自分が願い、訪れた時だけに限るのだ。 親しい人間に奇跡が訪れた時はまあいい。 良かったね、おめでとう、と祝えるくらいには人間の心は破綻していない。 だがしかし、それが見も知らぬ人間に訪れたとしたらどうか? 驚くだろうか、感嘆するだろうか、妬むだろうか。 否。 大抵の人間は奇跡が起きたと訊いても、まず最初に疑うであろう。 それってほんと...
  • 眠ったままで
    一匹のデジモンがその日生を受けた。 卵から孵って広がった空は果てしなく、世界は寒かった。 頼りなく震える体を抱いてくれたのは、幼い少女。彼女の細い腕のなかは温かく、デジモンは寒さを忘れた。 少女は、やがて大人になって、デジモンのことを忘れてしまった。 デジモンは悲しみ、再び襲った寒さのために体も心も、卵に閉じ込める。沢山の思い出や進化の記憶をデータの奥底に溶かして、溶かして。 また、また幼い少女に会える日まで、眠ったままで。 「くぅーッ……マンイーターの姐さんにそんな悲しい過去があるとは……! マンイーターの即興でっちあげ凄惨過去話、略して過去バナに涙するブイモン。 ちょろいもんだぜ、と内心ガッツポーズをしつつも「あー気にしないでいーわよ、ホント」なんて気丈に振る舞う。 なんて完璧な演技力、話の構成力! 自身のパーペキさに身震いしちゃうわ! うっかり高...
  • 第一回生存者報告
    チャッキーが刃を振るうたび、肉製のブーメランを叩きつけるたび。スライムたちの体が容易く散っていく。 周囲には青い体液が弾け飛んで、赤く染まったチャッキーのボディがどろりとした青い液でコーティングされる。 その、面白いようにガンガン蹴散らされていく様、鮮やかな剣捌き、演舞の如し。 これぞ"無双"。爽快で痛快な光景。 その華麗な姿に人々は興奮し、熱狂するのである。 かたかたかたと乾いた笑い声を響かせながら、ダークヒーローは画面の外へと姿を消した。 「生中継でお送り致しました。チャッキーVSスライム軍団! 見事チャッキーの圧勝となりました」 「いやぁ、実に素晴らしい戦いでしたねぇ」 「情け、容赦が無いと言いますか。見ているこっちまで手に汗握るようなバトルでしたよ」 テレビモニターは戦いの映像から画面を切り替え、スタジオの様子を映す。 斜め...
  • 命の価値は?
    ◇ 「大丈夫……きっと大丈夫……」 自分に言い聞かせるために、ピクシーは独りで何度も呟いた。 きっと、メタモンは生きている。そう信じなければならなかった。 そうしなければ、罪悪感に心を蝕まれる。 メタモンは自らの意思でアリスを引きつけてピクシー達を逃してくれた。 『だからこそ辛い』 太陽が爛々と輝いて、汗が流れそうなほどに熱い。 それにも関わらず寒い、震えが止まらない。 怖くて……しょうがない。 ──アタシはこんなに弱かったの? 自問自答を繰り返すまでもなく、答えは決まっていた。 しかし、その答えをはっきりと理解してしまうのは嫌だった。 泣きついて、この質問をして、誰かに否定してもらえたらどんなに楽だろう。 だが、他人の答えですらピクシーの震えを止めることは出来ない。 「メタモンは大丈夫、だって……」 強いから...
  • 不定形の王道
    有り体に言うと、暇だった。 青い空、白い雲、それらがゆるりと様変わりしていく過程。 別にぼーっとしているわけじゃあない。 しかしこんなに暇があるのは、珍しいことだった。 だから使いあぐねた時間で、ちょっと意味のある暇つぶしをやってみることにする。 青い色は、見飽きたから。 グレイシア達と別れた後に、会話はなかった。 「ピギィ!ほっぺた擦りむいた!もうちょっと丁寧に扱えよ!」 どこが頬で顔だか分からないボンレススライムは喚く。 「っていうか、本当ににメタモンっていうの助けに行くの?そんなにお前暇なの?」 そう、会話はなかった。 「ちぇーーシカト決め込んでやがるよこのキモい植物」 返事の代わりにため息一つ。これは会話にカウントされない。 「くっさ、お前、その口臭どうにかしたほうがいいよ、お口クチュクチュモン……ギピィイイ」 ぎゅううと締めあげ...
  • 歪みの国のアリス
    誰が殺した 駒鳥の雄を それは私よ スズメがそう言った 私の弓で 私の矢羽で 私が殺した 駒鳥の雄を 鳥さんは死んじゃった。 だからこの歌を歌うの。 どうしてこの歌なのか、この歌を知ってるのかって? 知らな~い。 もしかしたら赤おじさんと黒おじさんから聞いた歌だったかもしれない。 でも別にそんなことどうでもいいの。 だって、誰も聞いてないんだから。 だからね、アリスはもっとたくさん、一緒に歌ってくれるお友達を探すの。 おもちゃも欲しいけど、やっぱり一緒に遊べる人間のお友達がいいなぁ。 ほら、あそこにも。 動物さんが3匹とお人形さんが1個、お友達になれそうな人が1人いるの。 だからね、私は聞くの。 「ねえ、あなたはアリスとお友達になってくれる?」 ◆ 「ソーナンス...
  • 決勝(4)
    ◇ 雷が詠唱者たるモルボルの体を焼きつくした時にハムライガーが思ったことは、まだ生きている――それだけだった。 モルボルを冷気の中で永遠の眠りにつかせんとした氷の棺桶は、王の雷によって葬られた。 成程、名案といえるだろう――彼に残った莫大なダメージを度外視すれば、だが。 そうだ、無感情な感想と共にハムライガーが一瞥だけをくれてやったのも、 まだ、ぎりぎり、なんとか、モルボルが生きている――が、手を下さなくても死ぬからだ。 例え誰かに助けられ命を永らえようと、少なくとも今自分がどこかへと行くのを、その傷で邪魔しようとするのは不可能であるからだ。 だから、 「……待て」 許されていいはずがない、火傷を通り越し、焼き焦げたその身体がこちらに向かってくることなど。 ハムライガーの身体が震えているのは、己が放ったブリザードが故では無い。 傷つけば傷つく程に、研磨される宝石...
  • 決勝(3)
    図らずしも二対二の形になったか、否。 ルカリオとベヒーモスは二であるが、黒き竜とチャッキーは敵同士であるが故に、決して組むことは無い。 二対一対一、これがこの戦場での正確な形だと言えるだろう。 ただし―― 「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 黒き竜の口より紫煙が吐出さされた。 文明の発展により、誰を狙うでもなく生み出された毒――スモッグ。 毒性はあるが、致死性は低い。 排気ガスという性質上、吸い込まないという手段による回避が可能なためである。 呼吸を止めて数秒、吐き続ける相手に一撃をくれてやれば簡単に毒の垂れ流しは終わる。 ただ、黒き竜の目的は当てることではなかった。 「毒だと……」 ルカリオとベヒーモスの二匹が、敵が吐くものの正体に気づかないか。答えは否、気づかないわけがない。 しかし、問題はその先にある。 意識を失ったプチ...
  • サボってんじゃねえよ
    「……案外静かだな、僕の周辺が際立ってるのかもしれないけれど」 森の草木に身を潜めたまま、文字通り植物の如く身動きを取らずに待機していたサボテンダー。 あれから四時間以上は経過しただろうか。 現在までの間、彼は誰とも接触していなかった。 遠くからうっすらと爆発音がしたり、どこからか悲鳴が聞こえたりしたものの、姿は目に入らない。 それはそれで、彼にとっては好都合である。 自分が無駄なリスクを侵すことなく、参加者が減っている証拠なのだから。 特に退屈さを苦としない彼は、そのまま他の参加者が通るのを待ち続ける……。 ……ふと、彼の視界に妙なものが写っているのに気が付いた。 水平線の彼方に見える一つの影を、サボテンダーの空虚な目が捉える。 うみねこか何かか? いや、うみねこにしては少々にデカイような……。 そのうちにそのシルエットは見る見る大きくなり、想像以上に巨...
  • I Wanna Be Your Dog
    タブンネを殺すことで、キングスライムの溜飲は若干下がっていた。 殺害、命を踏みにじる行為こそ王たる者の至上の贅沢であろう。 だからといって、先程からの王に対する非礼全てを発散できたわけではない。 先程殺したタブンネを再度踏み潰す。 命への暴虐こそが王の特権だ。 「ちょっと、やめないか」 そんな暴虐の王を戒める狼が一匹。 種族名をケルベロスといった。 その鋭い眼光は心臓の弱い人間ならば、ひと睨みで全身から体液を垂れ流し死亡したことだろう。 だが、キングスライムはその狼の眼光を真正面から受け止める。 自称王は伊達ではないのだ。 「…………命令だと、ボクは王様だぞ!!」 全身を怒りに震わせ、いやスライムだから震えている可能性も存在するが、 とにかくキングスライムは激怒した。改めて、激怒した。 でもタブンネとキンスラはズッ友だょ……!! 「王か………...
  • 悪の華
    彼女の心は、男性への愛で満ち溢れていた。 どんな男性であっても、彼女は愛することが出来た。 性格も、容姿も、年齢も、人種も、彼女にとって例外など存在しない。 一人一人に違った魅力が有り、その魅力を発見するのが彼女の楽しみだった。 より沢山の男の人の、色んな部分を知りたい。 いっぱい話をしてその人の思想を知り、夜を過ごしてその人の肉体を知る……。 それは一人の男だけに留めることは出来ない。自分の知り合い全てに、同じような関係を築いた。 彼女にとってそれは知的好奇心を満たす行為であり、幸福であり、生き甲斐であったのだ。 反面、彼女に対する世間の目は厳しかった。 彼女のこの行ないは常に批判の的として話題に挙げられていた。 みっともない、汚らわしい、不埒者、尻軽女、ビッチ、社会のクズ、魔女、男喰い……。 人々は聞くに耐えないような罵倒を平然とぶつけてきた。 自分...
  • Reckless Fire
    船は静かに空の闇を漂い、彼の密航を咎める者は星と月以外には誰一人としていない。 ただ、存在を示すかのようにGAKU-RANが星の海の中、軍旗のようにはためいていた。 まだ拳は握らない。 相手が何であろうが、今から始まるものはただの喧嘩だ。 この拳の中に握りしめるのは武器ではない。 握力と決意、ただそれだけ。 これからジャックフロストは殴るだろう。 顔面の形が変わるまでに殴り、自分が誰を殴っているのかわからなくなるまで殴り、許してと懇願されてなおも殴るだろう。 だが、それ以上はしない、他人の命をこの手の中に握る気はない。 「んじゃ、ボチボチ……」 ジャックフロストは拳を握った。 この拳で――くそったれな運命だって、ぶん殴ってやる。 「喧嘩の押し売り……させてもらうホ!!!」 ジャックフロストは思いっきり、飛行船をぶん殴った。 ...
  • 君のとなり
    全てを救うなどということは夢想にしか過ぎない。 どうしても救われぬもの、取りこぼされるものは出てきてしまう。 それが人間界に来てからシャドームーンが目の当たりにした人間たちの生きる現実だった。 救われぬまま不幸の中死に絶えることなど、なんら珍しいことではない。 故に人は神に縋る。仏に縋る。 生きているうちは苦しくともせめて死んだあとは天国に、極楽に行けるよう願うのだ。 それが唯一彼らにとっての救いであり、死んだものを救う方法だ。 けれど。 人は奇跡を信じない。 誰しもが神を信じているわけではない。 あるものは神の存在を否定し、あるものは救われる価値がないと自分に見切りをつけ、あるものにいたってはそもそも救われるという考えさえ抱けない。 それでもまだ死そのものが彼らにとっての救いならばいい。 死ぬことで救われる。死んでやっと救われる。 あまりにも悲しい救いだが、それ...
  • 決勝(6)
    ◇ 「……何が起こった?」 先ほどまで、レナモンが持つスマートフォンには自分達の契約下においたスライムのステータスが表示されていた。 今はもう消えている、何らかの強力な攻撃を受けたのか、急激にHPが減少し、死亡したらしい。 現在、スラリンガルのサーバー内にいるレナモン達にはその詳細はわからない。 「誰かが、彼を解放した……というだけならば良いのですが、実際は」 「あぁ……モリーだろう」 出来ることならば、何事も無く平穏無事にモリーには倒れていたままでいて欲しかった。 だが、あのスライムを倒した者がいるというのならば、未だ知らぬ強力な参加者よりも、モリーが生きていたと考える方が腑に落ちる。 サーバーを抜けだして、再びスラリンガルの心臓部へと戻る。 スライムの死体はそこにはない、戦いは他の場所で起こったのだろうか。 「……む?」 ふらふらと...
  • そんなことよりきのみが食べたい
    ピカチュウは逃げていた。 そりゃあもう逃げていた。 全速力で逃げていた。 まじめに殺しあえって? いやまあ確かに殺すとまではいかずとも襲ってきたのがコラッタやオニスズメなら電撃くらい食らわせたよ。 正当防衛なんだしさ。 でもさ、相手はどう見てもドラゴンタイプなんだよ、ドラゴンタイプ。 しってるだろ ドラゴンはせいなる でんせつの いきものだ! つかまえるのが むずかしいけどうまく そだてりゃつよさは てんか いっぴんだ。 そうどこぞのチャンピオンも言っているらしいじゃないか。 強いんだよ、あいつら。 600族だってごろごろいんだよ。 加えて電撃が効きにくいとあればやってらんないよ。 まあ相手の見かけ的に飛行タイプも兼ねてそうだし、それなら等倍ではあるんだけどさ。 それにしたって、“ドラゴン・ひこう”といえばあのカイリューやボーマンダと同じじゃないか。 ...
  • 君の思い出に
    まるで時間が奪い去られてしまったかのように、 生きるということを忘れてしまったかのように、 声を上げることも、逃げようとすることも、出来なかった。 「ル、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 怪物が産声をあげた。 祝福するものはこの世界に誰一人としていない。 求めるが故に、彼は全てを捨ててしまった。 もう帰れない。 行き着く所まで行ってしまった。 さよなら――彼はそんな言葉を聞いたような気がした。 声の主は解らない。分からなくていい。わかるひつようがあるのか? 今、するべきことは唯一つ。 怪物の――クワガーモンの、スカルグレイモンの、モー・ショボーの腕が、掴めなかった者達の腕が伸びる。 怪物の中の■■が命ずる!■■■■■■が叫ぶ! 『二度と離さぬように!その腕に収めよ!』 迫る四本の絶望、メタモンはそれを大人しく...
  • 決勝(2)
    ◇ 「……そうか、そうなんだね」 生き残りの名前を聞き、プチヒーローはガブモンが成し遂げたことを理解した。 ガブモンは命を犠牲にしてでもハムライガーを救ったのだ。きっと、そうだと信じている。 プチヒーローはガブモンのことを、そしてハムライガーのことも、信じていたのだから。 それでも、沸々と湧き上がる悲しみの感情は抑えきれない。 当然だ、ハムライガーは彼ら二匹共が揃って戻ってくることを願っていたのだから。 「……死んだのだな」 「うん」 ルカリオの目から見ても、プチヒーローの消沈は明らかであった 己のように、元より奪われて来た者も、あるいは平穏無事に暮らしてきた者でも、 誰もが誰も平等に、この場所では何かを奪われずにはいられない。 「ベホマ」 プチヒーローが唱えた治癒呪文は、ルカリオの失った体力を満たしていく。 体を動かすのにも、あるいは波導を多用しな...
  • DARK KNIGHT
    太陽に向けてスティングモンは得たばかりの手を伸ばし、そして掌にその輝きを収めた。 「…………」 もちろん、太陽の輝きは一生物の掌に収められるものではなく、 ただの果てしない距離が錯覚させる手遊びに過ぎない。 収められた太陽は何一つ変わること無く、ただただ穏やかに熱と光を放ち続けていた。 「…………これか」 何一つとして変わらないものに対し、 スティングモンは震える程の力を込めて更に太陽を握り締める。 遥か彼方よりも遠い場所から送られた太陽の過去を握りしめた所で何の意味が無いことなどわかっている。 何も変わらない、何一つとして変わらない。 それでも、スティングモンはただ、掌に収めた太陽を離すまいと手を握っている。 「勝利を掴む感覚というものは」 その為にスティングモンは芋虫の体を捨て、進化したのだ。 己の手を取るために、勝利を掴み、離さない。...
  • きらがぶじゃれじゃれん!!
    「フカフカのようなツルツルのような不思議な肌触りがするよ」 「なぁ、そろそろ拙者にじゃれるのはやめてくれないか?」 4足歩行の厳つい顔を持つ獣、キラーパンサーは成長期爬虫類型デジモンのガブモンにじゃれついている その様子は傍から見ればキラーパンサーがガブモンを押し倒している感じである 正義感が強いものであれば誰かが襲われていると勘違いするだろう そもそもこのような奇妙な光景がどうして生まれたのかは数刻を遡る ◇ 「やっぱりオレは辛い目に遭い続けなきゃいけないみたいだな」 森の中をキラーパンサーは一人呟き続けながら歩き続けている しかしそう呟くのも無理はなかった ……――― かつての彼は野生に生きる魔物としては致命的なまでに体が弱かった 狩りをしようにもすぐ獲物に逃げられ、仮に捕えたとしても振り落とされてしまう そん...
  • ハルモニア
    その男の鶴の一声で、改造され尽くした人の島は非現実的な展開を始める。 海も森も砂地も、すべてが嘘まやかしであったように。 本来予想外であろう情景だが、渦中のグレイシアは冷静にせり上がり変わりゆく大地を観察していた。 いや、彼女は神経を張り詰めていた。 ふざけたあの魔物に似た、巨大な自称モンスターに乗り込む男を、遠巻きに見ながら。 踏みしめる大地は慣らされた、コロシアムの砂地。 先ほどまでの岩肌ではない、無残だった死の跡地すらもう見えない。 彼女たちが守りぬいた帰り道もまた、行方不明だ。 「もういい加減にしてほしいよね……」 うんざりと、しかし笑って。 「ピクシー?」 ソーナンスは心配そうに、投げやりに笑ったピクシーの傍に寄った。 自棄を起こしているのだろうか、無理もない、あまりにも理不尽で唐突な出来事だったから。 誰が予想できるだろうか、島が、会場がひ...
  • さみしさの共振
     目が覚めれば、最高の一週間がやってくるはずだった。  大きなあくびをして、あったかい小屋から外に出て、きれいなおひさまの光を浴びて。  眠たさが吹き飛ぶくらいの爽やかな空気をいっぱいに吸いこんで、おいしい朝ごはんをおなかいっぱいに食べる。  それからの予定は、ずっと前から決まっていた。  大好物のおやつをごちそうしてもらって、ブリーダーさんと一緒に、一日中遊ぶのだ。  トレーニングも、修行も、大会の予定もない。  今日は、ボクのやりたいことを、好きなようにやってもいい、ステキな一週間のはじまり。  やさしくてだいすきなブリーダーさんが、ボクとずっと遊んでくれる、ワクワクする一週間のはじまり。  昨日の夜は、胸がドキドキしてなかなか寝付けなかった。明日、お昼寝をしたくなっちゃったらどうしようって心配しちゃうくらいに、眠たさがやってくるのは遅かった。  それくらい、楽しみに...
  • タチムカウ-狂い咲く己の証明-
    太陽は頂点で照っていたが、この森の中では思い出したかのように偶に木漏れ日が差し込むだけだった。 時間はまるで止まっているかのようだった、風によって奏でられた木の葉の揺れる音が無ければ、 生物がいないこの森は、永遠にその自然のままに時間を止めていたのだろう。 「そろそろかなー?」 止まっていた時はゆっくりと動き出そうとしていた。 モー・ショボーの羽ばたきが、地に落ちた木の葉を舞い上げる。 「ああ」 ガブリアスが踏み鳴らした木の葉が枯れた音を立てて、真っ二つに割れる。 遠目にもわかる巨大な樹木、それは名付ける人間さえいれば神木とも── あるいは、世界樹とも呼ばれるかもしれないその巨大な樹木に向けて、ガブリアス達は歩みを進めていた。 「でもさー、そんな目立つところに行ってどうするの?」 「戦う」 贅が削ぎ落とされた、純粋な闘争意欲がそこにあった。 ...
  • ◆5omSWLaE/2
    ◆5omSWLaE/2 投下作品 00 オープニング 01 邪知暴虐の王 18 悪の華 34 進撃の巨竜 44 サボってんじゃねえよ 50 escape 65 救いの手 67 第一回生存者報告 73 わるだくみ 79 終焉の物語蛇足 87 It s Time to Play 作品に寄せられた感想 CMロワの 1。独自のコンセプトにより書くも読むもとっつきやすいロワを築き上げた。主役でもなければ悪役でもない、けれど世界の何処かでそれぞれ生きているモンスターたちの物語の場を用意してくれた氏に感謝を -- 名無しさん (2013-07-31 19 14 33) 名前 ...
  • 進撃の巨竜
    クーフーリンは駆ける。青空の元、眩い光が照らす荒地を。 見渡す限りに広がるのは大地の鈍い色、その先に見える大海原の青。 差し当たって目指す場所は小さな集落。人工的に作られた建造物、何かがあるだろう。 彼は足を休めることなく、風の如く走り続ける。彼の究極の目的、それは"救うため"だ。 モリーによって狂わされた"己の"世界を、その魔の手から救うために……。 そうしてたどり着いた廃村を散策する。 何かしら役に立つ備品などがあれば集めておきたい。 彼が求める道具は決して武器ではない。武器ならば既に間に合っている。 ……その手に握られるのは世界で最も硬いと言われる金属で作られた槍。 『メタルキングの槍』。 この武器の前には、どんな相手であれども一切の不足など存在し無い。 そしてまた、クーフーリン自身にも戦いに対する迷いは無かっ...
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