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三丁目のユーノ

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「それじゃあ、食べようか、スバル。拾円洋食で悪いけどさ」
「いえ、いいんです!先生と一緒に御飯を食べられるだけでも嬉しいです!」

戦後まもなく、屋台は庶民の貴重な味方であった。
今ユーノとスバルが一緒にいる屋台も、一銭洋食、拾円焼き等と言われるお好み焼きのようなものを出す屋台の一つであった。

この中島昴という少女は、ある縁からユーノが勉強を見るようになった少女である。
ユーノ自身、多少お転婆なところはあるが基本的には素直で礼儀正しいこの少女を好いていた。
そして、スバルはユーノの事を実の兄のように慕っているのである。

「そうだ、スバル。あとでウチにおいで。今度は哲学の本でも読んでみるといい」
「はい、先生!でかんしょですね!」
「うん、今回はその中のデカルトの本でも読んでみようか」
「はい、先生!」

スバルは学ぶ意志こそあるが、この時代の女の子の大学の進学率は低く、また彼女の家はある事情から
大所帯であり、スバル自身、高校や大学に行くだけの余裕はなかった。
彼女の父は先の大戦では少佐だったため、それなりに蓄えはあったのだが、親戚のスカリーさんが
戦争孤児を引き取り、父であるゲンヤ自身、その中に彼自身無関係ではない少女も数人いたためそのたくわえを
スカリーさんの家に渡したのだ。ゲンヤは機械工の技術もあったため、今は自動車の整備工をやっているのだ。
スカリーさんもまた一流の機械工であるため、共同経営をしている。

スバルは家の仕事を手伝いながら、戦後復興の手伝いで日銭を稼いでいる。
ユーノとスバルがであったのは、スバルがそうして稼いだ日銭を片手に古本屋へ足を運び
店主であるユーノに『工学の本が欲しいんです、いい本はないでしょうか』と声をかけたからだ。
スバルは最初、その専門書の値段を見た瞬間、流石に驚いた。
安くて300円、高ければ1000円や2000円もするのだ。
スバルが一日一生懸命働いて稼げるのが400円、そのうち300円は家に入れているため、彼女が自由にできるのは
そこから食費を引いた70円ほどなのである。その日、彼女はこつこつ溜めた320円を持っていたのだが・・・・・・

しょんぼりとするスバルと、そんな少女を見て放っておけないユーノ。
ユーノは一冊の本をスバルに手渡し、かなりの割安でその本をスバルに売った。
そして、勉強したいことがあったら、時間があれば僕で教えられることなら教えるよ。と、微笑みかけた。

それ以降、スバルはこつこつお金をためてはユーノから本を売ってもらい、その本を使って授業をする。
そんな関係になっていた。

ただ、それがまた、主にアリサあたりの神経を逆撫でしたのは言うまでもない。
そのあたりのことはまた別の機会に触れさせてもらう。



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最終更新:2023年11月27日 00:52