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<p>☆7月26日(木)の日記<br /><br />
本日も藍ミリでイミソを打つべく、チャイムと同時に職場を飛び出す。<br /><br />
最近早苗さんに裏道を教えてもらったんだが、この道を通れば、<br />
鴨島まで一つも信号に捕まることなく、一気にバイパスまで出れる。<br />
何で今までこの道使わなかったんだろ?<br />
もっと早くに教えてもらってれば、鴨スタ行くのとか、どれだけ時間短縮できてたことか・・・。<br />
という訳で、今日もその道を爆走しつつ、とりあえず鴨島を目指す。<br /><br />
さてこの裏道、非常に快適なんだけど、最後大きな道に突き当たる手前に、<br />
とても道幅が狭くなってる箇所がある。<br />
普通乗用車2台がギリギリ対向できる程度の幅。<br />
左側が田んぼに面しており、踏み外そうものなら1m下まで落下という、<br />
非常にデンジャラスなゾーンである。<br /><br />
この道を使うのは今日が2回目で、初めて通った時は対向車も無かったから容易に通れたんだけど、<br />
今日はやたら対向車が多く、ちょっと進むのにも かなり困難を極めた。<br />
ぬぅぅ・・・一刻も早くイミソを打ちたいのに。<br />
仕方なく、まだ道幅がマシな部分に停車し、対向車をやり過ごす。<br /><br />
それにしても、何でどいつもコイツも突っ込んでくるかな。<br />
ちょっと先には広い場所があって、そこで待っててくれれば簡単に対向できるのに。<br />
ホント徳島のドライバーには譲り合いの精神が皆無だな・・・イライラ。<br /><br />
何台か車をやり過ごしたあと、俺は目を疑った。<br />
えぇえ!? なんか大型のトラックまで突っ込んできてるぞ!?<br />
対向できんのかコレ!?(汗)<br />
ハラハラドキドキする中、トラックは俺の横を、無理矢理対向しようとする。<br /><br />
くっそ~、愛車擦られでもしたらスロットどころじゃねーぞ(汗)<br />
うぅむ、仕方ない。 左に目一杯寄せてるけど、あと まだちょっとなら寄せれるかもしれん。<br />
更にハンドルを左に切り、恐る恐るアクセルを踏んでみる。 次の瞬間だった。<br /><br />
「ガコンッ!」<br /><br /><br />
ひぃぃぃぃっ!<br />
だ、脱輪してもーた!!!(汗)<br /><br />
い、いや、うろたえるなッ!(汗)<br />
鴨島町民は決してうろたえないィィィッ!!!(滝汗)</p>
<p> </p>
<p>落ち着け・・・素数を・・・素数を数えるのだッ!<br />
素数は私と同じく、孤独な数字・・・素数を数えて、気を静めるのだッ!<br /><br />
2・・3・・・5・・・7・・・<br /><br /><br />
精神を落ち着け、ハンドルを切り直す。<br />
ギアをバックに入れると、慎重にアクセルを踏んでみる。<br /><br /><br />
「ギュゥゥン、ギャルギャル、キュキュキュ・・・」<br /><br /><br />
あ゙ぁぁっ! ダメだ! タイヤが空回りしとる!!(汗)<br /><br /><br />
そそそ素数、素数を数えて落ち着くのだッ!<br /><br />
11・・13・・・17・・18・・・いや、18は素数じゃないッ!<br />
おおお落ち着け、私はパニックを知らない生き物なのだッ!<br /><br /><br />
もう一度心を静めて、ゆっくりとアクセルを踏む。<br /><br /><br />
「キュルキュルキュル・・・」<br /><br /><br />
しかし聞こえてきたのは、タイヤが虚しく空回りする音であった。 もうだめぽ ○| ̄|_<br /><br />
諦めて車を降り、JAFに電話してみる。<br /><br /><br />
俺「あのぅ、脱輪してしまいまして・・・場所は鴨島町の○×付近です。」<br /><br />
係「それでしたら 現場までどのぐらい掛かるか確認して、もう一度ご連絡致します。」<br /><br />
俺「とても狭い道なんです。 他の方に迷惑なので、できるだけ早くお願いします。」<br /><br /><br />
電話を切ると、改めて愛車の惨状を確認する。<br />
左前のタイヤは おもっくそ踏み外し、田んぼ側に落下。<br />
方や右側後方のタイヤは、哀れにも宙に浮いている。<br />
愛車の変わり果てた姿に、ただただ呆然と立ち尽くす。</p>
<p>そうこうしている間にも、続々と対向車や後続車がやってきて、<br />
俺の愛車の横をすり抜けてゆく。<br /><br />
皆一様に、車の中からこの俺を、奇異の目で見つめる。<br /><br />
(あらあら可哀想に・・・)<br /><br />
(きっとギリギリまで車を寄せようとしたんだろうねぇ)<br /><br />
(プッ、こんなトコで脱輪してんじゃねーよw)<br /><br />
(オイオイ迷惑だろうよ。カスが!)<br /><br /><br />
哀れみ、同情、嘲笑、侮蔑・・・<br />
そんな彼等の心の声が聞こえてくるようで、俺はその場に立っているのがやっとであった。<br />
対向車の冷たい視線に晒される中、ようやくJAFから電話が掛かってくる。<br /><br />
俺「もしもし!? あとどれぐらいで到着します!?」<br /><br />
係「えぇと・・・石井町からの出動になりますので、早くてあと30分ですね。」<br /><br />
俺「さ、30分!?(汗) もうちょっと早くなりませんか!?」<br /><br />
係「無理ですねぇ。 急いで参りましても、30分以上は掛かるかと。」<br /><br />
俺「そ、そうですか・・・よ、よろしくお願いします。」<br /><br /><br />
ガックリと肩を落とすと、途方に暮れる。<br /><br />
ちくしょう、JAFめ・・・! ここ数年、事故ったこともないけど、<br />
それでも有事に備えて、毎年高い会員料払ってるのに・・・<br />
こんな大変な時に、今からまだ30分以上掛かるって!? 金返せドロボー!!(涙)<br /><br /><br />
脱輪した者の せめてもの罪滅ぼしとして、愛車の横に立ち、交通整理をする。<br /><br />
俺「はい、ハンドルをもうちょっと左です。 あ、そのまま真っ直ぐで! OKです!」<br /><br />
ちくしょう、何だってこんな目に・・・今日は厄日だ・・・。<br />
今までにこんな屈辱的な経験があったろうか?<br />
もう嫌だ。 こんな状況、もう耐えられないっ・・・!(涙)<br /><br />
その時だった。<br />
近所の民家から息子を引き連れ、ジャッキを片手に オジサンが飛び出してきた。</p>
<p>オジサンは迷うことなく1m下の田んぼに飛び降りると、ジャッキをタイヤにあてがい、回し始める。<br /><br /><br />
オ「うぅ~む、やっぱ高さが足りんか。 オイ息子、ブロックと板、あるだけ取ってこい!」<br /><br /><br />
息子に的確な指示を飛ばしつつ、クルクルとジャッキを回す。<br /><br />
我に返ると、俺は言った。<br /><br />
俺「あのぅ、もう結構です。 JAFも呼んでありますし、もうすぐ来てくれると思いますので。」<br /><br />
オ「うぅむ、ジャッキがうまくはまれば、持ち上がると思うんだけどねぇ。」<br /><br />
俺「いやいや、車が落ちてきたら危険ですし、赤の他人に こんな事させられません。」<br /><br />
オ「まぁまぁ。 困った時はお互い様!」<br /><br /><br />
オジサンは俺の制止を聞かずに、息子と あれやこれやとブロックを積んでいる。<br /><br />
ふと気が付くと、田んぼの中は蚊だらけ。<br />
視認できるだけでも20匹以上の蚊が、周りをウヨウヨと飛び回っている。<br />
オジサンも息子も半袖半ズボンだから、あっという間に蚊が集り、既に何ヶ所も刺されている。<br /><br /><br />
俺「ちょ、蚊が居ますよ! もうホントお気持ちだけで良いですから!」<br /><br />
オ「いや、農家だから蚊は慣れてるよ^^ それにしてもジャッキがはまらんなぁ・・・。」<br /><br /><br />
うぅっ・・・。<br /><br /><br />
俺は2年前の ある日のことを思い出していた。<br />
ある日の夕方頃、突然 友達から電話が掛かってきた。<br /><br /><br />
友「むっし~、石井の農道で脱輪してもーた。 助けに来てくれん!?」<br /><br />
切羽詰まった友達に、俺は こう返事した。<br /><br /><br />
俺「いやぁ~スマン、今仕事で県外なんだよ。 だから無理!」<br /><br />
俺は電話を切ると、そのまま部屋でオナニーをした・・・。<br /><br /><br />
何なんだよ俺は。 最低最悪のクズ野郎じゃねぇか。<br />
それに引き替え、この親子は何だ?<br />
赤の他人の俺のために、危険を顧みず、蚊に刺され、滝のような汗を流しながら、<br />
必死に車を持ち上げてくれようとしている。<br />
俺は今までこんなに感動した事がない。<br />
泣きそうになるのを、ただ必死で堪えるだけだった。</p>
<p>作業から10分ぐらいが経過した。<br />
やはり1mの高さが邪魔をして、うまくジャッキが収まらない。<br /><br />
オ「う~ん、やっぱ無理だねぇ。 男手が4~5人あれば、持ち上がるとは思うんだけど・・・。」<br /><br />
俺「いやいや、ここまでやってくれただけで もう十分です。 あとはJAFの到着を待ちます。」<br /><br /><br />
しかしその時、奇跡が起こった。<br />
対向車の1台が車を停め、中から運転手が降りてきた。<br /><br /><br />
男「俺も手伝いますよ。」<br /><br />
犬の散歩中のオッサンも、田んぼに飛び降りてきた。<br /><br /><br />
オ「ワシも手伝うよ。」<br /><br /><br />
すると それまで素通りしていた対向車や後続車から 次々と人が降りてきて、<br />
みんなワラワラ田んぼに飛び降りてきた。<br /><br />
皆「これだけ居れば持ち上がるよ! みんなで持ち上げよう!!」<br /><br />
俺「み、皆さんっ・・・!!(涙)」<br /><br /><br />
男7~8人が車を取り囲み、かけ声を上げる。<br /><br /><br />
皆「それ行くぞーっ! オーエス! オーエス!」<br /><br />
徐々に持ち上がる車。<br /><br /><br />
皆「オーエス! オーエス!」<br /><br />
徐々に左前方が持ち上がり、そして宙に浮いてた右後方のタイヤが、ついに地面に接地した。<br />
それは今までの人生で、俺が最も感動した瞬間だった。<br /><br /><br />
皆「兄ちゃん、良かったね!」<br /><br />
俺「皆さん、ありがとうございます! 本当にありがとうございます!!」<br /><br /><br />
俺は深々と頭を下げると、一人一人にお礼を言った。<br />
みんな手を振り、その場を立ち去って行った。</p>
<p>俺は車を広い場所まで動かすと、JAFに電話して、先程の民家にお礼に行った。<br />
庭で先程の親子を見つけると、頭を下げて礼をする。<br /><br /><br />
俺「本当にありがとうございました。 見ず知らずの僕のために、あんな親切にして頂いて・・・。」<br /><br />
オ「良いってことよ。 困った時はお互い様^^」<br /><br />
俺「あの、これ少ないんですけど、感謝の印です。」<br /><br /><br />
財布から1万円札を抜くと、オジサンに差し出す。<br /><br />
オ「あっはっは、要らないよw」<br /><br />
俺「いえ、どうしても受け取って下さい。 僕あんなに感動したの初めてで・・・」<br /><br />
オ「いいからいいから。 また困ってる人が居たら、助けてあげてね。」<br /><br />
俺「オジサン・・・!(涙) 分かりました! いつか僕も必ず、人のために努力します!」<br /><br />
オ「ははは、それじゃあね。」<br /><br />
俺「はい! 本当にありがとうございました!!」<br /><br /><br />
俺は車に戻ると、エンジンをふかした。<br /><br />
とても眩しい親子だった。<br />
あの絶望的状況下で、二人が神に見えた。<br />
何て親切な親子だったろう。<br /><br />
そして俺は、いつからこんなクズ人間に成り下がったのだろう?<br />
人と関わるのが苦手で、なるべく他人とは喋ろうともせず、<br />
目線も会わせない様な、卑屈で矮小な人間になってしまった。<br />
面倒事に首を突っ込むのが嫌いで、困っている人が居ても、それが友達だったとしても、<br />
平気で見て見ぬフリをしてしまう、そんな性根の腐った人間。<br />
いつから俺は、こんな最低なヤツになってしまったんだろう。<br /><br />
でも目が覚めたよ。 本当に改心した。<br />
あの親子の温かさに触れ、俺は生まれ変わる事ができた。<br />
今の俺ならあの親子のように、他人のために、迷うことなく田んぼに飛び込めるだろう。<br /><br />
ありがとう名も知らぬ親子よ。 そして手伝ってくれた運転手達よ。<br />
俺は頑張る。 これからは他人のために生きる。<br />
今日をもって生まれ変わる。 俺は成長したんだ・・・!!<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
その後藍ミリに行き、イミソで-17K。<br /><br />
全然成長できてない俺であった _| ̄| ○</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
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<p><font color="#FFFFFF">☆7月26日(木)の日記<br /><br />
本日も藍ミリでイミソを打つべく、チャイムと同時に職場を飛び出す。<br /><br />
最近早苗さんに裏道を教えてもらったんだが、この道を通れば、<br />
鴨島まで一つも信号に捕まることなく、一気にバイパスまで出れる。<br />
何で今までこの道使わなかったんだろ?<br />
もっと早くに教えてもらってれば、鴨スタ行くのとか、どれだけ時間短縮できてたことか・・・。<br />
という訳で、今日もその道を爆走しつつ、とりあえず鴨島を目指す。<br /><br />
さてこの裏道、非常に快適なんだけど、最後大きな道に突き当たる手前に、<br />
とても道幅が狭くなってる箇所がある。<br />
普通乗用車2台がギリギリ対向できる程度の幅。<br />
左側が田んぼに面しており、踏み外そうものなら1m下まで落下という、<br />
非常にデンジャラスなゾーンである。<br /><br />
この道を使うのは今日が2回目で、初めて通った時は対向車も無かったから容易に通れたんだけど、<br />
今日はやたら対向車が多く、ちょっと進むのにも かなり困難を極めた。<br />
ぬぅぅ・・・一刻も早くイミソを打ちたいのに。<br />
仕方なく、まだ道幅がマシな部分に停車し、対向車をやり過ごす。<br /><br />
それにしても、何でどいつもコイツも突っ込んでくるかな。<br />
ちょっと先には広い場所があって、そこで待っててくれれば簡単に対向できるのに。<br />
ホント徳島のドライバーには譲り合いの精神が皆無だな・・・イライラ。<br /><br />
何台か車をやり過ごしたあと、俺は目を疑った。<br />
えぇえ!? なんか大型のトラックまで突っ込んできてるぞ!?<br />
対向できんのかコレ!?(汗)<br />
ハラハラドキドキする中、トラックは俺の横を、無理矢理対向しようとする。<br /><br />
くっそ~、愛車擦られでもしたらスロットどころじゃねーぞ(汗)<br />
うぅむ、仕方ない。 左に目一杯寄せてるけど、あと まだちょっとなら寄せれるかもしれん。<br />
更にハンドルを左に切り、恐る恐るアクセルを踏んでみる。 次の瞬間だった。<br /><br />
「ガコンッ!」<br /><br /><br />
ひぃぃぃぃっ!<br />
だ、脱輪してもーた!!!(汗)<br /><br />
い、いや、うろたえるなッ!(汗)<br />
鴨島町民は決してうろたえないィィィッ!!!(滝汗)</font></p>
<p><font color="#FFFFFF"> </font></p>
<p><font color="#FFFFFF">落ち着け・・・素数を・・・素数を数えるのだッ!<br />
素数は私と同じく、孤独な数字・・・素数を数えて、気を静めるのだッ!<br /><br />
2・・3・・・5・・・7・・・<br /><br /><br />
精神を落ち着け、ハンドルを切り直す。<br />
ギアをバックに入れると、慎重にアクセルを踏んでみる。<br /><br /><br />
「ギュゥゥン、ギャルギャル、キュキュキュ・・・」<br /><br /><br />
あ゙ぁぁっ! ダメだ! タイヤが空回りしとる!!(汗)<br /><br /><br />
そそそ素数、素数を数えて落ち着くのだッ!<br /><br />
11・・13・・・17・・18・・・いや、18は素数じゃないッ!<br />
おおお落ち着け、私はパニックを知らない生き物なのだッ!<br /><br /><br />
もう一度心を静めて、ゆっくりとアクセルを踏む。<br /><br /><br />
「キュルキュルキュル・・・」<br /><br /><br />
しかし聞こえてきたのは、タイヤが虚しく空回りする音であった。 もうだめぽ ○| ̄|_<br /><br />
諦めて車を降り、JAFに電話してみる。<br /><br /><br />
俺「あのぅ、脱輪してしまいまして・・・場所は鴨島町の○×付近です。」<br /><br />
係「それでしたら 現場までどのぐらい掛かるか確認して、もう一度ご連絡致します。」<br /><br />
俺「とても狭い道なんです。 他の方に迷惑なので、できるだけ早くお願いします。」<br /><br /><br />
電話を切ると、改めて愛車の惨状を確認する。<br />
左前のタイヤは おもっくそ踏み外し、田んぼ側に落下。<br />
方や右側後方のタイヤは、哀れにも宙に浮いている。<br />
愛車の変わり果てた姿に、ただただ呆然と立ち尽くす。</font></p>
<p><font color="#FFFFFF">そうこうしている間にも、続々と対向車や後続車がやってきて、<br />
俺の愛車の横をすり抜けてゆく。<br /><br />
皆一様に、車の中からこの俺を、奇異の目で見つめる。<br /><br />
(あらあら可哀想に・・・)<br /><br />
(きっとギリギリまで車を寄せようとしたんだろうねぇ)<br /><br />
(プッ、こんなトコで脱輪してんじゃねーよw)<br /><br />
(オイオイ迷惑だろうよ。カスが!)<br /><br /><br />
哀れみ、同情、嘲笑、侮蔑・・・<br />
そんな彼等の心の声が聞こえてくるようで、俺はその場に立っているのがやっとであった。<br />
対向車の冷たい視線に晒される中、ようやくJAFから電話が掛かってくる。<br /><br />
俺「もしもし!? あとどれぐらいで到着します!?」<br /><br />
係「えぇと・・・石井町からの出動になりますので、早くてあと30分ですね。」<br /><br />
俺「さ、30分!?(汗) もうちょっと早くなりませんか!?」<br /><br />
係「無理ですねぇ。 急いで参りましても、30分以上は掛かるかと。」<br /><br />
俺「そ、そうですか・・・よ、よろしくお願いします。」<br /><br /><br />
ガックリと肩を落とすと、途方に暮れる。<br /><br />
ちくしょう、JAFめ・・・! ここ数年、事故ったこともないけど、<br />
それでも有事に備えて、毎年高い会員料払ってるのに・・・<br />
こんな大変な時に、今からまだ30分以上掛かるって!? 金返せドロボー!!(涙)<br /><br /><br />
脱輪した者の せめてもの罪滅ぼしとして、愛車の横に立ち、交通整理をする。<br /><br />
俺「はい、ハンドルをもうちょっと左です。 あ、そのまま真っ直ぐで! OKです!」<br /><br />
ちくしょう、何だってこんな目に・・・今日は厄日だ・・・。<br />
今までにこんな屈辱的な経験があったろうか?<br />
もう嫌だ。 こんな状況、もう耐えられないっ・・・!(涙)<br /><br />
その時だった。<br />
近所の民家から息子を引き連れ、ジャッキを片手に オジサンが飛び出してきた。</font></p>
<p><font color="#FFFFFF">オジサンは迷うことなく1m下の田んぼに飛び降りると、ジャッキをタイヤにあてがい、回し始める。<br /><br /><br />
オ「うぅ~む、やっぱ高さが足りんか。 オイ息子、ブロックと板、あるだけ取ってこい!」<br /><br /><br />
息子に的確な指示を飛ばしつつ、クルクルとジャッキを回す。<br /><br />
我に返ると、俺は言った。<br /><br />
俺「あのぅ、もう結構です。 JAFも呼んでありますし、もうすぐ来てくれると思いますので。」<br /><br />
オ「うぅむ、ジャッキがうまくはまれば、持ち上がると思うんだけどねぇ。」<br /><br />
俺「いやいや、車が落ちてきたら危険ですし、赤の他人に こんな事させられません。」<br /><br />
オ「まぁまぁ。 困った時はお互い様!」<br /><br /><br />
オジサンは俺の制止を聞かずに、息子と あれやこれやとブロックを積んでいる。<br /><br />
ふと気が付くと、田んぼの中は蚊だらけ。<br />
視認できるだけでも20匹以上の蚊が、周りをウヨウヨと飛び回っている。<br />
オジサンも息子も半袖半ズボンだから、あっという間に蚊が集り、既に何ヶ所も刺されている。<br /><br /><br />
俺「ちょ、蚊が居ますよ! もうホントお気持ちだけで良いですから!」<br /><br />
オ「いや、農家だから蚊は慣れてるよ^^ それにしてもジャッキがはまらんなぁ・・・。」<br /><br /><br />
うぅっ・・・。<br /><br /><br />
俺は2年前の ある日のことを思い出していた。<br />
ある日の夕方頃、突然 友達から電話が掛かってきた。<br /><br /><br />
友「むっし~、石井の農道で脱輪してもーた。 助けに来てくれん!?」<br /><br />
切羽詰まった友達に、俺は こう返事した。<br /><br /><br />
俺「いやぁ~スマン、今仕事で県外なんだよ。 だから無理!」<br /><br />
俺は電話を切ると、そのまま部屋でオナニーをした・・・。<br /><br /><br />
何なんだよ俺は。 最低最悪のクズ野郎じゃねぇか。<br />
それに引き替え、この親子は何だ?<br />
赤の他人の俺のために、危険を顧みず、蚊に刺され、滝のような汗を流しながら、<br />
必死に車を持ち上げてくれようとしている。<br />
俺は今までこんなに感動した事がない。<br />
泣きそうになるのを、ただ必死で堪えるだけだった。</font></p>
<p><font color="#FFFFFF">作業から10分ぐらいが経過した。<br />
やはり1mの高さが邪魔をして、うまくジャッキが収まらない。<br /><br />
オ「う~ん、やっぱ無理だねぇ。 男手が4~5人あれば、持ち上がるとは思うんだけど・・・。」<br /><br />
俺「いやいや、ここまでやってくれただけで もう十分です。 あとはJAFの到着を待ちます。」<br /><br /><br />
しかしその時、奇跡が起こった。<br />
対向車の1台が車を停め、中から運転手が降りてきた。<br /><br /><br />
男「俺も手伝いますよ。」<br /><br />
犬の散歩中のオッサンも、田んぼに飛び降りてきた。<br /><br /><br />
オ「ワシも手伝うよ。」<br /><br /><br />
すると それまで素通りしていた対向車や後続車から 次々と人が降りてきて、<br />
みんなワラワラ田んぼに飛び降りてきた。<br /><br />
皆「これだけ居れば持ち上がるよ! みんなで持ち上げよう!!」<br /><br />
俺「み、皆さんっ・・・!!(涙)」<br /><br /><br />
男7~8人が車を取り囲み、かけ声を上げる。<br /><br /><br />
皆「それ行くぞーっ! オーエス! オーエス!」<br /><br />
徐々に持ち上がる車。<br /><br /><br />
皆「オーエス! オーエス!」<br /><br />
徐々に左前方が持ち上がり、そして宙に浮いてた右後方のタイヤが、ついに地面に接地した。<br />
それは今までの人生で、俺が最も感動した瞬間だった。<br /><br /><br />
皆「兄ちゃん、良かったね!」<br /><br />
俺「皆さん、ありがとうございます! 本当にありがとうございます!!」<br /><br /><br />
俺は深々と頭を下げると、一人一人にお礼を言った。<br />
みんな手を振り、その場を立ち去って行った。</font></p>
<p><font color="#FFFFFF">俺は車を広い場所まで動かすと、JAFに電話して、先程の民家にお礼に行った。<br />
庭で先程の親子を見つけると、頭を下げて礼をする。<br /><br /><br />
俺「本当にありがとうございました。 見ず知らずの僕のために、あんな親切にして頂いて・・・。」<br /><br />
オ「良いってことよ。 困った時はお互い様^^」<br /><br />
俺「あの、これ少ないんですけど、感謝の印です。」<br /><br /><br />
財布から1万円札を抜くと、オジサンに差し出す。<br /><br />
オ「あっはっは、要らないよw」<br /><br />
俺「いえ、どうしても受け取って下さい。 僕あんなに感動したの初めてで・・・」<br /><br />
オ「いいからいいから。 また困ってる人が居たら、助けてあげてね。」<br /><br />
俺「オジサン・・・!(涙) 分かりました! いつか僕も必ず、人のために努力します!」<br /><br />
オ「ははは、それじゃあね。」<br /><br />
俺「はい! 本当にありがとうございました!!」<br /><br /><br />
俺は車に戻ると、エンジンをふかした。<br /><br />
とても眩しい親子だった。<br />
あの絶望的状況下で、二人が神に見えた。<br />
何て親切な親子だったろう。<br /><br />
そして俺は、いつからこんなクズ人間に成り下がったのだろう?<br />
人と関わるのが苦手で、なるべく他人とは喋ろうともせず、<br />
目線も会わせない様な、卑屈で矮小な人間になってしまった。<br />
面倒事に首を突っ込むのが嫌いで、困っている人が居ても、それが友達だったとしても、<br />
平気で見て見ぬフリをしてしまう、そんな性根の腐った人間。<br />
いつから俺は、こんな最低なヤツになってしまったんだろう。<br /><br />
でも目が覚めたよ。 本当に改心した。<br />
あの親子の温かさに触れ、俺は生まれ変わる事ができた。<br />
今の俺ならあの親子のように、他人のために、迷うことなく田んぼに飛び込めるだろう。<br /><br />
ありがとう名も知らぬ親子よ。 そして手伝ってくれた運転手達よ。<br />
俺は頑張る。 これからは他人のために生きる。<br />
今日をもって生まれ変わる。 俺は成長したんだ・・・!!<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
その後藍ミリに行き、イミソで-17K。<br /><br />
全然成長できてない俺であった _| ̄| ○</font></p>
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