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シェイクスピア(4) - (2008/02/06 (水) 19:05:53) の編集履歴(バックアップ)


ウィリアム・シェイクスピア
(William Shakespeare)
(1564~1616)

第4期―穏やかな日々(1609~1612)

 時代は移り変わり、ベン・ジョンソンら新しい時代の担い手が台頭していた。しかしシェイクスピアはすでに独自の地位を築いており、今更彼らと火花を散らして主役の座を狙おうとはしなかった。この頃書かれた作品は穏やかな心情で、力みのないもので、代表的なのはロマンス劇と呼ばれる『シンベリン(Cymbeline,1609-1610)、『冬物語(Winter's Tale,1610-1611)、『あらし(テンペスト)(Tempest,1611-1612)の3作である。
共通するのはリアリズムとはかけ離れた、おとぎ話的な世界である。前期に深淵をのぞき込み、人間に対し絶望感すら抱いたかに見えた彼が、晩年に至ってごく穏やかな気持ちに、人間の愚かさも醜さも全て認めた上で、新しい境地に達したのかもしれない。
 『あらし』の第4幕で仮面劇を終えた後、プロスペローに「我々は夢と同じようなものでできており、その儚い命は眠りと共に終わる(We are such stuff as dreams are made on, and our little life is rounded with a sleep.)」と言わせている。これはシェイクスピア自身が晩年に至って抱いた思いだろう。そしてプロスペローはその魔法の杖を折って地中深く埋め、故郷へ帰り隠居生活に入るのである。そしてシェイクスピアもまた筆を折り、隠棲するのである。
 なお、『ヘンリー8世(Henry VIII,1612-1613)、『二人のいとこの貴公子(The Noble Kinsmen,1613)は、当時の新進気鋭の劇作家ジョン・フレッチャーとの共作と言われるが、はっきりしたことは分からない。