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東京23区、東経139度北緯35度にその学園は存在する。
校名は私立聖薔薇学園。
だが今は別の名前で呼ばれることが多い。
各学部、学科の総生徒数約70万、「聖BL学園」と。
そもそもこのような学園が作られたのは、次世代の魔人を欲した国際的プロジェクトに端を発している。
魔人を生み出すにはその素養を持つ子供を集め、お互いに影響を与え合うように位置づけるのがもっとも安易な方法だ、という基本方針の下、世界各地にその特長を生かした学校作りが行われた。
が、各地に点在する施設運用による魔人発生のシミュレートは予想よりもはるかに低い結果を示すことになり、関係者を落胆させることになる。
が、しかしここである若き天才伝奇小説家の仮説とシミュレートによって、その低い数値をくつがえす画期的な計画が提出される。
千葉県銚子市の小説家、菊地某の示した(後世「菊地レポート」と呼ばれることになる)、そのあまりに細かくリアルで、打算的な予測結果に、時の国連事務総長の秘密機関がそれをバックアップ(実は菊地は重度中二病の末期であるとの噂もあった。が、現実として各界への根回しは非常に見事なモノだったのも事実である)。
国連総会は特別予算を計上し、予定地とされた練馬区を急ピッチで開発し計画を実行に移す。
こうして生まれたのが「聖BL学園」だった。
実際、まとめてしまえば菊地レポートの内容は至って簡単なモノだった。
プロジェクトによって各地に建設された学校を一ヶ所に集中させる。
たったそれだけだったのだ。
が、その簡単なことがどれだけ影響を与え合うかの予測のレベルが尋常ではなかった。
そして、そのプロジェクトを発足させない不利益も素人でも判るレベルで非常に明確に示されていたのである。
国家だけでなく多くの魔人一族からの賛同を得た計画は発動より、たった2年のうちに現実のものとして実働を開始する。
そして、その結果、魔人発生のシステムはさらに5年のうちに効果を発揮し始めた。
世界の国際的利益に重大な影響を与え始め、ますます存在価値を明確にされていったのである。

が、順風満帆に見えたシステムだが、10年の時を経て運用された結果、現実的な諸問題及び、学生たちによる混沌とした歪み(それは魔人故に増幅される傾向にあった)によって、聖BL学園の治安は荒廃し、一般的な警察権力の介入では収まりのつかない状況が多発し始めていた。
さらに岩波事件によって発生した学生運動によって状況はさらに悪化。
一時は魔人特殊部隊の介入までに及び、やっとのことその場を収集するコトになる(逮捕者115名、死傷者204万名)。
これらの(世界でもまれな)特殊ケースに対応するためにも、対策委員会及び、国連は聖BL学園全体を治外法権とし、犯罪の取り締まりなどの警察権及び裁判権などの司法、さらには立法権をも聖BL学園執行部に移行する条約を締結した。
この危うい判断は魔人輩出という聖BL学園の使命を最優先させるための苦渋の決断と言われ、国連では今なおその賛否が問われ続けている。
そして、聖BL学園が正式に設立されて既に20年の月日が経過。
21年目の春、総受けと呼ばれる少年の入学により、かつて無い混乱が巻き起ころうとしていた。 

-祖父の顔は覚えていない。
 覚えているのは、幾度となく投げつけられた、祖父をなじる声。
 そして、そのたびに震えてぼくを抱きしめた、祖母の痩せた肩。
 祖父のぬくもりを覚えていない。
 残されたのは、勲しに謳われた生徒会章。
 その腕章を通してのみ、ぼくは祖父を知る。
 祖母は言う。
 祖父は、ド正義卓也は誇りを知る生徒会長だったと。
 けど、その言葉は、ぼくが受け継いだ「幼児退行パイプカット」の悪名と、祖父のなした凶行の前では空しいだけ。
 でも、だからこそ。
 ぼくは往く。鞄を取って。
 地に落ちた学園を復興するため。
 生きる誇りを、取り戻すために。


聖BL学園は一本の道によって、ダンゲロスとゲノサイデに分かたれている。
岩波事件の折、この道沿いに築かれた砦こそが学共闘結成の始まりであった。
この“やおい道”のかつての名は、“死姦道”、“紅道”。
往事の戦の激しさはその異名に知ることができる。
希望崎学園はこの道の東、導神学園と夢見崎学園の間にあった。
瀟洒な校舎に混じって高く厳めしい塀が続く。
制服の学帽を上げ、木下はその門扉を確かめた。
鉄の飾り格子には、ダンゲロスの名の通り向かい合う獅子の紋章が掲げられていた。


そこはしんと静まり返った職員室。
空調こそあるが、その校舎では夏になるまで電源は入れない。
桜吹雪振る中庭を眺めている男が一人。
目を引くのは輝くような銀縁の眼鏡。
“卒業生”小竹。
歴戦の英雄にして第三次ハルマゲドンの生徒会長。
火で焼いた顔には火傷がいくつもあり、卒業してなお、眼光の衰えることなし。
簡素な背広の胸には愛する者の写真―死ねばいい歩渡―が収められている。

「今度来る木下という男。長谷部は既に顔を合わせていたな」
「幾度か召喚しました。あのボウヤが“最後の一人”になる時にも、その場に居りましたゆえ」
「長谷部、お前の目から見て木下はどのような生徒になるだろうか? 木下は何を求めている?」
「口では祖父が残した学園の汚れをそそぐためと言っております。邪賢王の言葉もありますゆえ。が、私の目から見たところ、少々違いますね」
「ほう?」
「何度かああいう生徒を見たことがあります。何を好き好んでか、人を守るために前に出て、矢面に立って死んでいく。そういった感じの甘ちゃん男子と見うけました」
「ふむ」
「が、鍛えようによっては、生き残れる甘ちゃんになるんじゃないですかね」
「木下は祖父の汚名をそそぐといったな」
「まぁ、あのボウヤのことですから。学園を立て直して有名にすれば汚名をそそげるぐらいにしか考えていないんじゃないでしょうか。まだ、若い」
「ふん。だとしたら、一番無難なやり方ではある。ド正義が、罪を抱え込んで死んでくれたままでいたほうがありがたいという人間は、この学園に結構いる。そしてそいつらに対抗する者にとって、木下が得ようとしている“真実”は、同じように喉から手が出るほど欲しい“真実”であり武器なのだ」
「しかし、今ここでそれが暴かれても危険ですね」
「そうだ、そこまで行くとなると正直、私も立場が危うくなる。長谷部よ、木下という生徒、一般人の中にいるだけで、満足する者か? それとも一般人から飛び出すような者か? 飛び出しかねない者であるならば、目をつけておかねばなるまい」
「あのボウヤ、アレはアレで随分と頭が回るようだ。遅かれ早かれ何か見てはいけないところに目を向けるようになるでしょう」
「そうか。鈴があると便利だな」
「仰せのままに」 


BLスレ>>59まで

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