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現れるブルーアイス 破滅をもたらす「白夜天の主」 - (2010/02/11 (木) 20:31:39) のソース
*現れるブルーアイス 破滅をもたらす「白夜天の主」 ◆7pf62HiyTE TURN-05 青氷の白夜龍 攻撃力 3000/防御力 2500 このカードを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、このカードに攻撃対象を変更する事ができる。 嗚呼、風が吹いているなぁ――― 嗚呼、風が冷たいなぁ――― 無数の氷が集まっていき1つの形を成していく――― それは龍――― 青白い氷の龍だ――― 日光の反射もありその姿は非情に美しく見る者が見れば心奪われる事だろう――― いや、美しさだけではない。その龍は全身から白く冷たいオーラを発している様な感じがした――― それだけでわかる。あの龍は自分が考えていた以上に強敵だと――― 間違いなくアレにスバル達フォワード陣は勝てない。 ヴィータやシグナム辺りであっても負ける可能性が高い。 なのはやフェイトが全力全開で戦ってギリギリ勝てるといった所だろう。 いや、単純なパワーだけではない。あの龍には力以外にも得体の知れない力がある様に感じた。『奴』のあの自信に満ちた冷ややかな表情から見てもそれはほぼ間違いないだろう。 故に―――なのは達ですらも1人では勝てない可能性が高い――― 当然、自分が勝てる道理なんてあるわけがない―――セフィロスの時の様に都合良くアーカードをぶつけられるなんてあり得ない――― 嗚呼、熱くなっていた頭が急速に冷えていくのを感じる――― 嗚呼、自分はまた同じ事を繰り返してしまったか――― 『貴方はまた―――守れないかもね―――』 忌々しいあの女の声を思い出した―――全くもってその通りだ、二度と油断はしないと決めたはずなのに熱くなり過ぎた結果がこれだ―――これではあの時と全く同じだ――― 情けない―――何が機動六課部隊長だ、何がオペレーションFINAL WARSの総大将だ。同じ失敗を繰り返す自分にそんな大それたものの資格なんてない――― 自分の大切な物を失って当然だ――― 何も守れなくて当然だ――― 仲間達から愛想を尽かされて当然だ――― 嗚呼、頭が真っ白に染まっていく――― 嗚呼、自分は破滅の光に包まれていくのだろうか――― 悔しい―――自分の無力さが悔しい―――結局自分はたった1人孤独のまま何も守れず何も助けられず散っていくのだろうか――― リインにまた寂しい想いをさせてしまう―――それが何より悔しかった――― 嗚呼、風が吹いているなぁ――― 嗚呼、風が冷たいなぁ――― TURN-01 強欲な壺 自分のデッキからカードを2枚ドローする。 タリナイ――― チカラガ――― それが天上院明日香が感じた事――― 市街地を目的地に定めた彼女は南下して行きE-7の駅へと近付いていった。その際に遠目に幼女が浴衣の少女を襲っているのを見つけた。 幼女はかつての同行者であり自分達を襲ったルーテシア・アルピーノ、浴衣の少女の正体はわからないが浴衣が温泉にあったものと同じ事から温泉に下着を置いていった少女の可能性が高かった。 先程までの明日香ならばその少女が今も無事だった事で安堵していたかもしれない。だが今の明日香にとってはその少女が無事であろうと関係がなかった。 何しろ先程自分を襲った偽物のユーノ・スクライアと同じ偽物の可能性がある。故に相手が誰であろうとも全て敵でしかない、打ち倒すつもりであった。 とはいえ、明日香が2人に接触する事は無かった。明日香が見た時点では数百メートル離れていたのもあったし、ルーテシアは少女を追い回すのに、少女はルーテシアから逃げるのに夢中で明日香の存在には全く気が付かなかったのだ。 更に言えばルーテシアはマッハキャリバーを身に付けていた。その速さで追い掛けていた事もあり、2人の姿はすぐさま見えなくなったのだ。 もしかしたら―――マッハキャリバーならば明日香の存在と異変に気付いていた可能性はあるだろう。とはいえ、マッハキャリバー自身は他の事で手一杯であったため、明日香の事に気を回す余裕は無かっただろうが――― 2人を見失ったものの目的地が市街地ならば何れ出会えるだろう―――そう考え明日香は再び南下を始めた。そして壊滅したF-7を南下する内に彼女から見て右方向、つまり西方向から何やら銃声が響いたのである。 銃声から判断するに戦いが起こっているのは明白、戦いで疲弊した所を自分が仕留めれば良いと考え明日香はその方向へ向かった。 そしてF-6のレストラン跡で戦いの現場に遭遇したのだ。戦っているのは紫の蛇の鎧に身を包んだ男と漆黒の蟷螂の鎧を見に包んだ男。更に近くには紫のツインテールの少女がその戦いを眺めていたのが見えた。 ちなみに明日香は奇襲を仕掛けるつもりであった為、3人に気付かれない様に気配を消していた。その甲斐もあり、戦場にいた3人が明日香の存在に気付く事は無かった。 2者の戦いは一進一退の互角に見えた。故に双方が疲弊してくれれば最後に自分がトドメを刺す事が出来る。また、近くにいた少女は来る前に敗れ去っていたのだろう、問題にはなり得ない。 その時の明日香はそう考えていた。だが、戦いは彼女の予想を超えるものとなった。 漆黒の蟷螂の鎧の男が突如緑色の怪物となったのだ。姿が変わっただけならば別に大した問題ではない。しかし問題はその力、離れた場所にいる明日香自身にもその強大さが身体に伝わってきたのだ。故にすぐにこの戦いの結末が予想出来た。 その予想は見事に当たっている。戦いは最早怪物のペースであった。完全に一方的な展開、しかし紫の鎧の男は最後の最後まで果敢に怪物へと挑んでいった。 紫の鎧の男の力も相当なものなのは理解している。真面目な話、ルーテシアよりも強いと考えて良いだろう。その男ですらも怪物には殆ど歯が立たなかったのだ。恐らく怪物の実力は明日香の想像を越えるものだろう。 「運命の光が見えた―――」 結末は見えた、分かり切った結末に興味はない。故に明日香は早々に戦場を後にしたのだ。戦いの結末は怪物の圧勝、そしてその後は近くにいる者達を襲う、どうなるかなど語る必要もない。 彼女が離れた時には少女の姿も消えていた。彼女にもその運命が見えたのだ。この場から離れるのは当然の判断である。 より大きな力が必要だ―――明日香はそう思い市街地の奥へと入っていった。 言ってしまえばだ、明日香がこの戦いを見る事が出来たのは運命の光の導きだと考えていた。 だがそれは妄想だ。今の明日香に運命を見る事など出来やしない。その結末は彼女が見たものとは全く違うものであった。 IFの話に意味など無いが―――もし仮に彼女がこのままこの場に留まり、当初の予定通りに疲弊した所を仕掛けていたのであれば―――このデスゲームを根底から揺るがす事態に発展する事は無かっただろう――― それはきっと運命の悪戯だったのかも知れない――― TURN-02 青眼の白龍 攻撃力 3000/防御力 2500 高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。 戦場を離れた明日香はビル密集地を歩きながら考えていた―――どうすれば、緑色の怪物の様な強敵を打ち倒す事が出来るのかを――― 勿論、ジュエルシードと夜天の書は自分に大きな力を与えてくれてはいる。故に油断しない限りは並の参加者に後れを取る事はまず無いだろう。 だがそれはあくまでも『並の参加者』というレベルでしかない。緑色の怪物が相手だと全くもって話が違ってくる。 また、幾ら強力な魔法が使えるといっても所詮は使い慣れない武器、一朝一夕に高町なのはやフェイト・T・ハラオウンクラスに到達するとは到底思えない。 強大な力さえあれば勝てるというのは所詮は幻想でしかないのを高い攻撃力を持つモンスターを繰り出す決闘者を何度と無く倒してきた明日香自身がよく理解している。 考えなければならない、いかに強大な相手であっても渡り合える手段を――― その時に脳裏に浮かんだのは先程の戦いだ。あの戦いにおいて2人の男は共に何かのカードを使っていた。それが彼等に何かしらの力を与えていたのは明白である。 「もし、デュエルモンスターズのモンスターが召喚出来るのなら―――」 カードを使う―――それを見て自分達の世界に存在するカードゲームデュエルモンスターズを連想するのは当然の流れだ。 自分達のいた異世界ではデュエルモンスターズのカードが現実に影響を及ぼしていた。あれがこの場でも適応するのであれば大きな力になるのは明白だ。 だが、残念ながら明日香の手元にカードは無い。その事から考えてこの場でも実体化する可能性は高いだろうが、手元にない以上は使う事は不可能だろう。 しかしここで考え方を変えてみよう。明日香が求めているのはデュエルモンスターズのカードではなく。デュエルモンスターズのモンスターの力だ。 要するにだ、デュエルモンスターズのモンスターが召喚出来るのならば極端な話カードは必要ないという事である。 そんな事が可能なのか? 勿論、普通ならば出来るわけがない。しかし今の明日香の手元には願いを叶える石ジュエルシードがある。ジュエルシードの力を使えば擬似的ではあってもデュエルモンスターズのモンスターを召喚する事が可能では無いだろうか? 仮にそれが上手く行くならば、自分にとって大きな力となるだろう。デュエルモンスターズの決闘に近い状況に持ち込めるならば十分強敵と渡り合える筈だ。 だがしかしだ、一体何を召喚すれば良いだろうか? 緑色の怪物といった強者と渡り合う為にはエースモンスターを召喚する必要がある。 唐突ではあるが、ここにいる明日香達のいた世界と限りなく似た世界の明日香達の世界の話をしよう。 その世界の明日香達もまた異世界に飛ばされておりやはりなのは達が彼女達を助けに来ていた。その世界の状況は本当に限りなく似ていたのだ。 違っている事があるならば、その世界ではある者と遭遇した事だ。 その者とはデュエルモンスターズの精霊正義の味方カイバーマン、かつて遊城十代も遭遇したその者はなのは達の力を見る為自身の持つエースモンスターでなのは達と戦いを繰り広げた。 そのモンスターの名は世界にたった4枚しか作られなかった青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)だ。たった4枚しか作られなかった理由は攻撃力3000、守備力2500という強大さ故だ。 勿論、後々にはそれを凌駕するモンスターのカードが幾つか作られてはいるがそれでもその強大さと気高さは決して変わる事はなく、今という時代においても伝説であり、同時にある種の基準となっている事に違いはない。 その青眼の白龍の力はエース・オブ・エースの実力を持つなのはやフェイトと互角、当然スバル・ナカジマでは全く戦いにならない程であり、その存在感はキャロ・ル・ルシエ自身もヴォルテール以上かもと感じていた。 つまりだ、青眼の白龍クラスのモンスターであれば如何様な相手であっても決して負けはしないという事である。 だが、青眼の白龍はあくまでも決闘王・武藤遊戯のライバルである海馬瀬人を象徴するモンスターだ、いかにそれが強大であっても他の誰にもその力を引き出す事など出来ないだろう――― さて、少しでも天上院明日香という人間を知っている方から見れば、今の彼女が普通じゃないのは誰の目にもおわかりであろう。では、今の明日香は一体どういう状態なのだろうか? 実は今の状態に限りなく近い状態になった事が過去に一度ある。 約1年前、明日香は斎王琢磨により洗脳され彼の率いる光の結社に取り込まれた事があった。 運命を見通す力を持つ斎王は『運命』という言葉と自身の力により人々を次々と洗脳していった。その集団がいわば光の結社である(実際の所はその斎王自身も破滅の光によって洗脳されていたわけだったが)。 光の結社に取り込まれた者は皆純白の服を纏っていた。そして、デュエルアカデミアのオベリスクブルーの生徒の大半が取り込まれた事により、ブルー寮は真っ白に染められホワイト寮となったのだ。 そう、光の結社に取り込まれた明日香もブルーの制服ではなく白の制服を身に纏っていたのである。 『成る程、確か今の明日香の服の色は白だ。つまり今の明日香はその状態ということか』―――とお思いの方もいるだろうが、実はそれだけでは正解とは言えない。 というのもだ、細かい状況の説明は省くが明日香が光の結社にいた状態でも斎王よりもたらされたカードを使わず、今までの自身のカードで決闘をしたことがある。 つまり、光の結社に洗脳された状態であっても根底にある性格全てを変えられているというわけではないのである。その時の明日香は遊城十代達と敵対状態ではあったが性格は比較的そのままだったという事だ。 では今の状態は一体何時の状態なのだろうか? 斎王は十代から彼の持つある物を手に入れる為に明日香を差し向けた事があった。その際に彼女を更に深い洗脳状態に落としたと共に新たなデッキを彼女に与えたのだ。 ここまで来れば最早おわかりだろう。そう、その時の状態こそが今の彼女に近い状態なのだ。 だが、何故今またその状態になったのか? 誰も彼女を操る存在などいないはずである。それ以前に、操るにしてもわざわざその時の状態になる事など有り得ないだろう? 考えられる原因は2つ、1つは明日香自身これまでに遭遇した事によりその精神は限りなく疲弊し極度の不信状態に陥いると共に強い力を渇望する状態に至った事だ。 そして、もう1つ―――むしろ此方の方が重要だろう、彼女に力を与えたジュエルシードの悪影響だ。 ジュエルシードの力が夜天の書に影響を与えかつての闇の書の状態の力を幾らか引き出している―――今明日香の装着しているバリアジャケットの外観が彼女の知らない闇の書のもの(色こそ黒ではなく白だが)であるのがその証拠だ。 そもそも闇の書は収集蓄積型の巨大ストレージデバイス。それが明日香の記憶の奥底の経験や知識を幾らか蒐集している可能性はあるだろう。 『いや、今の夜天の書に魔導師じゃない人物の知識や記憶、経験を引き出す等という都合の良い話が起きるわけがない!』―――確かに夜天の書『だけ』ならばその可能性は低いだろう。 だが、忘れてはならない。人の欲望を叶える莫大なエネルギー結晶体ジュエルシードの存在がある事を―――ジュエルシードが夜天の書に影響を及ぼしているならば本来起こりえない事が起こる可能性は大いにあり得るだろう。 ともかく、今の明日香はジュエルシードと夜天の書の力により斎王の手により深い洗脳に落ちた状態に近い状態になったという事である。 違うのはその時の明日香は斎王に従っていたのに対し、今の明日香は純粋に力への渇望に従っている事である。 本筋に話を戻そうか。前述の通りジュエルシードと夜天の書の力があるならばデュエルモンスターズの力を擬似的に再現出来る可能性が高い。 その力が扱えるならば並み居る強者とも十分渡り合えるはずだ。では、明日香は一体デュエルモンスターズの力を再現する事で何を成そうというのだろうか――― TURN-03 アルカナフォースI-THE MAGICIAN 攻撃力 1100/防御力 1100 このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。 ●表:魔法カードが発動された時、そのターンのエンドフェイズまでこのカードの元々の攻撃力は倍になる。 ●裏:魔法カードが発動する度に相手は500ライフポイント回復する。 言うなれば運命の悪戯としか言いようがないだろう――― セフィロスがミッドチルダに来た時に最初に出会ったのが八神はやてであり、その存在はセフィロスに大きな影響を与えた――― そして彼女達に見送られライフストリームの奔流へと還った筈のセフィロスがこのデスゲームの場に辿り着いて最初に出会ったのも別の八神はやてであった――― その時点では殺し合いの打破を目指していた筈のセフィロスが闇に堕ち―――元に戻ったとも言えようか―――全ての者を皆殺しにしようとした切欠も彼女の死によるものだった――― そのセフィロスを殺し―――果て無き闘争の場へと送ったのも―――この地にいるもう1人の八神はやてだった――― そして記憶の殆どが忘却の彼方へと消えても剣士は―――その少女の笑顔だけは決して忘れなかった――― もしかしたら、2人は深い深い運命によって結ばれていたのかも知れない――― しかし―――そんな事など、セフィロスを仕留めた張本人が知る事など決して無く、彼女にとってはどうでも良い話でしかない―――そう、八神はやてにとっては――― その手に握るは所持する者の心の欠損に因ってその力を発揮する魔性の刃憑神刀、そのスペックは既に彼女の頭の中にある。更に奇しくもセフィロスの首輪を手に入れた事で首輪解除の足がかりも得た。 だが、はやての緊張が解ける事はない。最悪の敵であるセフィロスが倒されたとはいえ、まだアーカードが倒されたかどうかはわかっていないからだ。 『ヴィータ』とアギト、そして金居の3人で弱っているアーカードを仕留めに行く手はずにはなっていた。 しかし、アーカードがセフィロスの様にあっさり殺されてくれるとは限らない。一転返り討ちに遭う可能性だってある。 そうなれば今度はどうなるだろうか? 奴はセフィロスとの戦いを楽しんでいた。だが、格好の獲物を横取りされたとなったらどう思う? その矛先は当然獲物を横取りした張本人であるはやてに向けられるのは当然の事だ。つまり、アーカードとの戦いは避ける事が出来ないという事である。 真面目な話、憑神刀の力をもってしてもセフィロスと同等クラスであるアーカードを仕留められる自信は全く無い。 いや、それ以前にセフィロスだって憑神刀を持っていた。その彼ですら互角の相手である以上、それよりずっと実力が下のはやてが勝てるわけがない。 弱っていれば勝機はあるだろうがそれはあくまでも勝機があるというレベルの話だ。その戦いで再起不能になってしまえばその先が無くなってしまう。 「『ヴィータ』達が仕留めてくれる事を期待するしかないな……」 しかし、仮にアーカードを仕留めてくれたとしても状況はさほど好転しない。はやてから見れば不安要素は他にもあるのだ。その1つが金居の存在だ。 金居はアーカードに脅されて従っていると話していたが、どうもアーカードが誰かを脅して従わせる様な人物に見えない為その言動が真実とは思えない。 なにより金居の言動ははやての脳裏に最悪の策士であるクアットロの姿を過ぎらせたのだ。ああいう手合いは自分の都合の良い様に事を運ぼうとする事をはやては身を以て理解している。 確かにあの場では共闘はしたもののそれはあくまでもセフィロスとアーカードと言った倒さねばならない相手がいたからに過ぎない。その2人が退場したならば次にその矛先は『ヴィータ』や自分達に向けられるだろう。 「あの様子じゃ『ヴィータ』が金居の正体に気付くとは思えへん……アギトなら気付けるかも知れへんが……正直微妙やな……」 アーカードに対し感情的になり冷静さを欠いている『ヴィータ』が金居の知略にしてやられる可能性は高い。一方、この事態を比較的冷静に捉えられクアットロという悪人を知るアギトならばそれを察知出来る可能性はあるが対応出来るかまでは微妙だ。 勿論、金居がクアットロと同タイプの者ならば当面は大丈夫かも知れない。だが、そう思っていて数時間前にクアットロにしてやられたという事実がある以上油断は全く出来ない。 更に言えばだ、金居の存在云々を全く別にして大きな不安材料がある。 「『ヴィータ』達が今後も私と共闘してくれるかどうかや……」 確かにあの場では何とか『ヴィータ』とアギトを仲間にする事が出来た。しかしそれはセフィロスが迫っているという緊急事態があったからという要因もある。 一応あの場ではクアットロを全ての元凶にする事で2人を納得させる事が出来た。しかし、実の所それが看破される可能性が無いとは言い切れない。 まず、『ヴィータ』は自分の事を未だに完全に信用しておらず、クアットロという人物を知らないという点。もしかしたら自分の嘘を看破する可能性は十分にある。 また、この場にいるアギトはまだ八神家の一員では無い為、自分の言動を客観的に見て嘘だと看破する可能性があるという事だ。正直、クアットロが悪人という先入観を持っていなければまず信用してくれなかっただろう。 更に言えば、2人がクアットロと自分の会話を聞いていた事がどうしても引っかかる。あの会話を冷静に分析すれば自分が『シャマル』を捨て駒にした事が真実かも知れないと考える可能性は大いにある。 何しろ、クアットロはものの見事に自分が元の世界で家族を失った事を看破し不用意にも自分はそれを認めてしまったのだ。その会話にさえ気付けば自分の言動の嘘に気付く可能性は大いにある。 というよりだ、その辺りの会話が成されている以上、どう考えても自分の方に分があるとは思えない。これでクアットロを悪人に出来たのは彼女の悪名の高さがあったからでしかない。 つまり、2人が冷静に話し合い考えて結論を出せれば、一転して自分が危機に陥るという事だ。貴重な仲間であるはずの2人を敵に回すのが不味いことなのは語るまでもないだろう。 2人にそこまでの知略は期待出来ないだろう? 確かに、そういう意味で考えれば大丈夫ではある。しかし、はやてとしてはそこまで2人を見下すつもりは全く無い。それぐらい考えても不思議は無いと思っている。 それにやはり金居の存在も気になる所だ。金居が2人から話を聞いて入れ知恵を行えばそれだけで話は終わりだ。もし金居が優勝を目指しているのであれば、自分達の不和は望む所だろう。故に策を講じないはずがないのだ。 以上の事から、はやては窮地から未だに抜け出せたとは言えないのだ。ところが、仮にこの状況を抜けたとしても長期的に見ればやはり状況は芳しくない。 最終的にはなのはやスバル・ナカジマ達といった戦力を集結しクアットロやキング等といった敵を排除した上でプレシア・テスタロッサを打倒する算段にはなっている。 ところがここで問題なのはその過程における敵の排除だ。はやてにとっては敵の排除は対象の殺害である。しかし、なのは達にとっては対象の無力化であり決して殺人を良しとはしない。 勿論、殺さないで戦力に引き込めるのであればそれでも構わない。だが、なのは達は害悪しかもたらさないキングやクアットロも殺さないで済ませようと考えるだろう。 はやてはそれを容認するつもりは全く無い。その甘い思考で戦力が削がれ窮地に陥るのは愚行以外の何者でもない。そういった相手は迅速に排除しなければならない。 実はこれが最大の問題である。対主催勢力の殆どは恐らくなのは達と同じ思考、どんな悪人であっても殺したりは出来ない筈、はやてとは決して相容れない思考である。 勿論、機動六課の部隊長及びオペレーションFINAL WARSの総大将である自分の力量を考えればある程度は従ってはくれるだろう。 だが、それも正直アテには出来ない。例えば殺し合いに乗ったキャロ・ル・ルシエと遭遇した場合、自分が幾らキャロを殺すしかないと言ってもなのはやスバルは最後の最後までそれに従わない事が容易に想像付く。故に対立は不可避だろう。 対立自体も大きな問題だが最大の問題は集団内で自分が孤立してしまう事だ。最悪なのは達すらも敵に回す―――いうなれば全ての参加者を敵に回すと言っても良いだろう。 勿論、ある程度は上手く行く様には振る舞うが決定的な部分では相容れない事に変わりはない。まさしくそれはクアットロの指摘通りとしか言いようがない。 「孤立無援か……」 意志は決して消えやしない―――だが、孤独な戦いが辛い事に変わりはない。信頼の置ける仲間がいないというのは辛い事だ――― クアットロにしてやられた後はリインフォースⅡに会いたいとも思った。だが、よくよく考えてみれば数少ない無事な家族がこのデスゲームに巻き込まれて良いわけがない。出来れば彼女がこんな陰惨な遊戯の場にいない事を願う――― ともかく、今は『ヴィータ』達との合流を優先すべきだ。後の事はそれから考えるしかない、はやてはそう思い歩き出そうと――― 「……何や?」 ―――考えたが、奇妙な違和感を覚え周囲を見回した。一見するとセフィロスとアーカードとの戦いによって崩壊した市街地でしかないが――― 「静かや……気持ち悪いくらいにな……」 それは静寂、彼女の回りを静寂が包み込んでいた。 戦いが終わったから静かになった―――恐らく真相はそれなのだろう。だが、何かが奇妙なのだ。長年の経験における勘でしかないが確かに何かがおかしいのだ。 それは何なのか―――『全ての争乱が消えての静寂』もしくは『これから何かが起こる前触れの静寂』―――見当が付かない――― どちらにしても1つだけ確実なのは―――油断は出来ないという事だ。 そして、それを裏付けるかの様に―――一陣の冷風が吹いた――― TURN-04 アルカナフォースEX-THE LIGHT RULER 攻撃力 4000/防御力 4000 このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在するモンスター3体を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。 このカードが特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。 ●表:相手モンスターを戦闘によって破壊し墓地に送った時、自分の墓地からカード1枚を手札に加える事ができる。 ●裏:このカードを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。このカードで効果の発動を無効にする度にこのカードの攻撃力は1000ポイントダウンする。 「冷たっ……何や?」 吹き付ける冷風に対しはやては身構え相手の攻撃に備える。しかし、攻撃自体は今の所繰り出されてはいない――― 「気のせいか……いや、違う! あれは……」 と、前方左方向に白く輝く氷の城が建っていたのが見え、また地面もよく見れば凍結している。 「さっき見た時はあんな城無かった……という事は今出したんか? 一体誰が……?」 と、城のすぐ前を見るとそこには誰かが立っていた。その人物は純白の衣装に身を包んでいた為に保護色となり先程起こった事象と合わせすぐに見つける事は出来なかったのだ。 だが、はやてにしてみればそんな事は重要では無かった。 「な……何で……何でなん……何の悪い冗談なんや……!」 驚愕―――それを見た瞬間、冷静な判断力は完全に消え失せていた。 「……その服は……一体何なんや……?」 故にその人物に対し、真っ先に気になった事を聞いたのだ――― 「……これは聖なる光を現す白の服、この世界は私の力によってやがて白に染まる」 その人物―――明日香ははやての問いに冷たい声で答えた。だが、それははやての求める答えとは違う―――それ故に苛々が募り、ついつい感情的になっていき――― 「色なんてどうだってええ……! その服はな……あの子の服なんや! 何でアンタがそれを……」 はやて達―――八神家にはもう1人家族がいた―――闇の書の管制人格である闇の書の意志という女性―――はやては闇という呪いから解放するかの様に彼女にリインフォースという名前を与えた――― だが、彼女自身が存在し続ける限り闇の書の暴走は止まらない―――故に彼女ははやて達の前から消滅していくしかなかった――― はやてにとってリインフォースは全ての切欠ともいえる存在なのだ。 そして、色こそ黒ではなく白ではあったが明日香の今身に付けているものこそリインフォースの騎士甲冑なのだ。 「私は生まれ変わった……この服はその証」 「違う! その服はアンタが着てええもんやない! 冗談でもそんな事を私に口にするなや!」 「何も聞こえない、私にはそんな声は届かない」 その返答を聞く度にはやての苛立ちは大きく―――いや、正確に言えば『声』だ。 「よりにもよって……『声』まであの子そっくりかい……本当に何の悪い冗談や……」 リインフォースの騎士甲冑を着た少女がリインフォースに似た声を発する―――幾ら別人とわかっていても連想しない訳がない。 真面目な話、自分の大事な家族の姿で現れるなど家族を失っているはやてにとっては悪趣味でしかない。その上、彼女はその服が何を意味しているのかをまるで勘違いしており理解していない。 言うなればリインフォースに対する最大級の侮辱にして冒涜だ、はやてにとっては決して許される事ではない。だが、明日香ははやての心情を決して理解などせず――― 「全ては運命……そして私の力でこの世界は白き光に染まる」 はやての言葉に対し明日香は淡々とそして冷たく答えた。 「何が何やらわけわからへん……もうええ、それ以上その『声』で喋るなや……」 これ以上話しても―――いや、明日香の『声』を聞きたく無かったはやてはすぐにでも明日香を仕留めようと憑神刀を構えた。 先程の氷の城を出したカラクリが気にならないでもないが、憑神刀の力は絶大、自分が優位である事に違いはない、はやてはそう考えていた――― だが、はやては明日香の騎士甲冑と『声』により熱くなってしまい、冷静な判断が出来なくなっていた―――相手の力量すら見極められない位に――― 「魔法発動、「生け贄の氷柱」」 明日香は何処からかカードを出現しそれを掲げた。するとカードが光を放ち明日香のすぐ傍に2本の氷柱が現れた。 「それで盾のつもりか!? けどな、そんなんで私を止められ……」 しかし明日香の狙いは別にあった――― そもそも明日香がはやてと遭遇したのは本当に偶然でしかない。E-5方向に激しい戦闘の音が聞こえたからそちらに向かっただけだ。戦いの後で弱った所を仕留める、それが明日香の狙いであった。 なお、道中で彼女はジュエルシードの力で擬似的に何枚かのカードを作り出していた。やはりジュエルシードは自分の求める力を与えてくれる―――そう思いながらカードを手に取っていたのだ。 さて、明日香がはやてを発見したわけだが、はやては周囲を見回し強い警戒をしているのが見てわかった。それだけではなく彼女の持つ武器が尋常じゃない力を持っているのも見て取れた。出来れば手に入れておきたい所である。 明らかに彼女は強敵だ。だが、今の自分の力ならば倒せるはず、明日香には確たる自信があったのだ。そう、彼女の力が最大限に発揮されればどんな相手をも仕留める事が出来るという――― その為には先手を打つ必要があった。その為にまず永続魔法カード「白夜城―ホワイトナイツ・フォート―」を発動した。これによりはやてが何か罠を仕掛けていてもそれを封じる事が出来るわけだが、実はこれにはもう1つ別の狙いもある。 さて、前述の魔法の発動ではやては自分の存在に気が付いた。とはいえ一気に仕掛けるつもりだった為それについては全く問題ではない。 妙に彼女が自分の着ている服や声について食いついてくるが真面目な話そんな事などどうでも良い話である。故に何事も無かったかの様にあしらったのだ。 その結果としてはやては逆上する結果となったが明日香にとっては好都合、一気にたたみかける事にしたのだ――― 「生け贄の氷柱」―――それを使い氷柱トークンを特殊召喚し、1体で2体分の生け贄となるそれを生け贄に捧げ――― 「氷柱トークンを生贄に―――□□□□□□を召喚!」 |Back:[[貴重な貴重なサービスシーン・なのはロワ出張編]]|時系列順で読む|Next:[[風の中にあるもの]]| |Back:[[貴重な貴重なサービスシーン・なのはロワ出張編]]|投下順で読む|~| |Back:[[楽斗 ――そして終わりなき斗いの歌]]|八神はやて(StS)|~| |Back:[[白き覚醒]]|天上院明日香|~| ----