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Just away! - (2015/08/10 (月) 15:11:34) の1つ前との変更点

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*Just away! ◆RPDebfIIlA 殺し合い。 突如集められた総勢70人の前で、繭という少女が課した理不尽なゲーム。 海に囲まれて外界と断絶された謎の島で繰り広げられる、血を血で洗うバトルロワイアル。 互いの命の奪い合いの果て、最後に残った者は願いを一つ叶えられるという。 しかし、それを良しとせず、どうにかして抵抗しようとする者も大勢いる。 古代中国では「蠱毒」という、ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、共食いさせる呪術がある。 この殺し合いはまるで人間で共食いさせる「蠱毒」そのもの。 そんな人の命を虫ケラと同等にしか見ていないような狂気のゲームなど、断じて許せるものではない。 一方で、殺し合いに乗る者もいる。 それは殺し合いに巻き込まれた大事な人を救うために敢えて残酷な選択をする者もいれば、 願いを叶えるために乗った者、あるいはちょっとした認識のズレから殺人を犯す者、 あるいは純粋に戦いを楽しみたいだけの者まで様々だ。 D-4南方に立つチャイナ娘・神楽は、主催者の繭に立ち向かわんとする者達の一人であった。 「あのモジャモジャ女ァ!!ふざんじゃないヨ!!私が夜兎族だからって殺し合いに乗ると思ったら大間違いアル!!」 支給された黒いカードから出てきた番傘を片手に、どこにいるかもわからない繭へ向かって叫ぶ。 神楽は戦闘種族の生き残りでありながら、命ある者を殺すことを非常に嫌っている。 夜兎の血、夜兎の本能に屈さず、その力を誰かを護るために使うことを願う彼女にとって、殺し合いは到底受け入れられるものではなかった。 「でも…あそこには夜兎族が私の他にいたアル」 集められた白い部屋、大勢の人間の中でちらりと見えたその姿を神楽は思い出す。 その顔を見間違えるはずがない。神楽とは正反対の、闘争本能のままに生きる夜兎。 その名を確認するために、腕輪の白いカードに映る画面を見る。 「銀ちゃんに新八、マヨ、ヅラ、マダオに……バカ兄貴…!」 そこには慣れ親しんだ面々に加え、神楽の兄の名前があった。 その名は神威。風化したはずの夜兎の風習「親殺し」を実践し、神楽の父・星海坊主の片腕を奪った戦闘狂。 あいつのことだ、殺し合いを心から楽しんで嬉々と人を殺してまわるであろう。 そんな危険な人物を放っておくわけにもいかないし、神楽には夜兎の血に流されて殺戮の限りを尽くす兄を止める役目がある。 「神威は私がなんとかしなきゃいけないネ」 兄をよく知る神楽は、神威を見つけ出すべく動くことに決めた。 一刻も早く神威を見つけ、なんとしてでも止めなければ最悪の場合数十人が彼の犠牲になるだろう。 幸い、神楽の知る人物はあっさりと殺されるタマではない。 銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラとは今まで何度も死線を超えて来たし、マダオも妙に悪運が強いのでそう簡単には死なないだろう。 できるなら合流したいが、あいつなら大丈夫だ、と思えるくらいには信頼できる。 そうとなったら、ここでじっとしているわけにもいかない。 どこへ向かおうかと周囲を見回していると、ある建造物が神楽の目に入った。 二つの玉の間にそびえ勃つ棒。神楽のいるD-4地区からはっきりと見えるくらいには巨大な一物。 夜の中でも煌々と輝いている金属の兵器。 その名も――。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 ◆ ◆ ◆ 怪我に構うことなく、花京院は走り続ける。 ここまでの全速力で走り続けたら普通の高校生ならばばててしまうのだが、この状況が殺し合いであれば話は別だ。 生き延びるため、こんなところで死なないためにも疲労で膝をついている暇はない。 あの超人・範馬勇次郎を一瞬の内に葬った見えざる敵を振り切らなければならない。 (『ハイエロファントグリーン』に反応はない。もう追ってきてはいないのか…?) 花京院は研究所を出てからは『ハイエロファントグリーン』を紐状にして自分の背後数十mまで展開し、追ってくる敵を探知しながら逃げていた。 しかし後ろを振り返っても敵の姿は闇夜のせいで見えず、『ハイエロファントグリーン』の紐が破壊された感覚もない。 一度は撒いたかとも思ったが―― (いや、安心するにはまだ早いッ!) 花京院は足を休めることなく走る。 敵のスタンド能力が詳しくわかっていない以上、立ち止まることは死を意味する。 暗闇の先に、敵スタンド使いの本体が潜んでいてもおかしくないのだ。 幸い、このまま南下すれば旭丘分校へ続く橋があるはずだ。 そこを経由すれば、当初の目的地である旭丘分校へ行くことができる。 「あれは…」 花京院がしばらく走り続けて、そろそろ橋に到着するかという頃。 前方を見据えると、鉄製で先端部がデカくなった棒とその左右に鎮座している玉が見えた。 それが一体ナニかは考えたくもないが、恐らくは端を渡りきってすぐの場所にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲なるものだろう。 そして橋の入口付近に、人が立っていることに気づく。 背丈が花京院より頭一つ分小さい、チャイナ服を着た少女だ。 そういえば白い部屋に集められた者の中には巻き込まれた無関係な少女、果てには小学校に入っているかどうかもわからないほど幼い女の子もいた。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 花京院に背を向け、何故か視線の先にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の感想を言っている。 このゲームに乗っているかどうか問い正したいところだが、事態は一刻を争う。 「すまない、そこの君!」 すかさず話かけた――が。 「誰アルか!」 少女の得物の番傘を突きつけられる。 ここが殺し合いの場であるからか、ピリピリした雰囲気に陥りやすい。 「今は信じてもらうしかないが、僕はこの殺し合いには乗っていない!とにかく、話はあとだ!ここを離れないとッ!」 見えざる敵がすぐそこに迫っているかもしれないのだ。 花京院は急ぐあまり、問答無用で神楽の手を引いて橋へ向かおうとする。 「いきなり汚らしい手で触るんじゃないヨ!光ったメロンみたいな一本糞垂らしやがって!!」 このような強引な行動がいきなり受け入れられるはずもなく、手を振り払われた。 仕方ない、と花京院は急ぐ気持ちを抑えて神楽に事情を説明しようとするが、その前に一つ引っ掛かることがあった。 「…光ったメロン、とは?」 「お前の目は節穴アルか!お前のケツの穴からずっと向こうに伸びてんじゃねーか!!もしかしてあまりの恐怖に緑色のウ○コ脱糞したことにすら気づいてないアルか?気持ち悪っ!!」 「…君はスタンドというものを知っているかい?」 「スタンドって何アルか?」 …間違いない。この少女は『ハイエロファントグリーン』が見えている。 花京院の背後から伸びている、紐状になったスタンドが見えているのだ。 腰のあたりから出ていることを差引いても糞と間違われたことには心外だったが、 スタンドの見えない者とは根の部分で分かり合うことが出来ないという考えを持っていた花京院にとってこの事実は衝撃的であった。 思えば、研究所で遭遇した範馬勇次郎も花京院のスタンドを目で追っていた。 スタンドの可視化――これも繭のスタンド能力なのだろうか? …いや、考えるのは生き延びてからだ。 今はこの少女に納得のいく説明をして、共にあのおぞましい敵から逃れなければ! 「信じてくれとは言わないが――」 今のところ『ハイエロファントグリーン』に反応はない。 もしかしたら僕たちの背後には本当に敵はいないのかもしれない。 ◆ ◆ ◆ 「…本当に一瞬で死んだアルか?」 「ああ。その男はあまりにもあっけなく死んだ。ほんの一瞬の間に」 限られた時間の中、花京院の口から範馬勇次郎のこととその死の瞬間、そしてその勇次郎をこの世から消し飛ばした見えざる敵から逃亡中であることが語られた。 花京院の話を聞くに、殺し合いを楽しんでいた勇次郎は神楽の兄と重なる部分がある。 そして、超人とも形容できる戦闘能力を持った勇次郎を瞬時に葬る敵。 神楽も聞いただけでその能力の詳細はわからないが、とてつもなく危険であることはわかる。 「今にもそいつが追いついてくるかもしれない。今すぐ出発しないと僕たちの命が危ないんだ!」 「透明人間だか光学迷彩だか知らないが、敵が見えないことは分かったヨ。でも、これからどこ行くアルか?」 「そこにある橋を渡って旭丘分校へ行く。学生の集まりやすそうな場所だ」 一応、神楽も花京院の言うことを信じており、殺し合いには乗っていないようだ。 しかし、その信頼を得るために思ったより時間を取ってしまった。 敵が近づいてきてもおかしくないのだが、『ハイエロファントグリーン』は敵を感知せず、背後には誰もいない。 ここまでくると撒いたと思ってもいいのかもしれない。 流石の花京院の心も焦燥より安心の占める割合が大きくなってきていた。 「…私は橋渡るの反対アル」 今にも動き出し、橋へ向かおうとしていた花京院を神楽が止める。 花京院が振り返ると、神楽の深刻な表情が見えた。 「あの橋逃げ場少ないし…なんだか嫌な予感するネ」 神楽の直感が、あの橋を渡るな、と告げていた。 戦闘種族としての本能がそう感じさせているのか、単なる勘かはわからない。 「逃げ場が少ない…か」 確かに目前にある橋は人間が5人ほど並んで渡れるかどうかといった幅で、逃げ場が少ないという神楽の意見は的を射ている、と花京院は考える。 花京院が『姿の見えない敵』からここまで逃げることができたのは、いかなる方向にも逃げることのできる外にいたからだ。 だが、もし橋の上のような狭い空間で襲われたら、どこへ逃げればいいのか。 仮に水辺へ身を落とそうとも、水中で動きが鈍くなったところを突かれるであろう。 見えざる敵があの橋の上で待ち伏せしていて、橋を渡ったと同時に範馬勇次郎同様、攻撃を避けきれず消し飛ばされることもあり得る。 待ち伏せ。頭に浮かび上がった可能性を顧みて、花京院は安心に浸って緩んでいた精神を引き締めた。 「――わかった。なら、ここから西へ行って基地を経由して墓地へ向かおう。今は奴から逃げることが最優先だ」 仮に橋に敵が潜んでいるとするならば、目と鼻の先に敵がいることになる。 今は敵から距離を離し、捕捉されないようできる限りの尽力をするべきだ。 その思いの元、花京院は身体に疲労が溜まっているにも関わらず駆け出した。 神楽も花京院に続いて橋を後にする。 月の光が、暗黒から逃れようとする彼らを照らしていた。 【D-4/橋入口付近/一日目・深夜】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(中)、脚部へダメージ(小)、腹部にダメージ(中)、自信喪失気味 [服装]:学生服、『ハイエロファントグリーン』(紐) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:繭とDIOを倒すために仲間を集める    1:少女と共に『姿の見えないスタンド使い』から逃れるために基地方面へ向かう。    2:承太郎たちと合流したい。    3:ホル・ホースと『姿の見えないスタンド使い』には警戒。    4:スタンドが誰でも見れるようになっている…? [備考] ※DIOの館突入直前からの参戦です。 ※繭のことをスタンド使いだと思っています。 ※互いの自己紹介を省いたため、神楽の名前をまだ知りません。 ※スタンドの可視化に気づきました。これも繭のスタンド能力ではないかと思っています。 ※索敵のため、腰から紐状のハイエロファントグリーンを背後から数十mに渡ってはわしています。 【神楽@銀魂】 [状態]:健康 [服装]:チャイナ服 [装備]:番傘@銀魂 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らないアル    1:神威を探し出し、なんとしてでも止めるネ    2:銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラ、マダオと合流したいヨ    3:『姿の見えないスタンド使い』を警戒してるアル    4:結局こいつのメロン色の一本糞は何アルか [備考] ※花京院から範馬勇次郎、『姿の見えないスタンド使い』についての情報を得ました。 ※互いの自己紹介を省いたため、花京院の名前をまだ知りません。 【番傘@銀魂】 日光に弱い体質である夜兎族の標準装備。主に外出時に日傘として差している。神楽に支給。 見た目は普通の番傘であるが、戦闘時にはマシンガンのように弾丸を発射する。 また、砲撃や爆発にも耐えるほどに強度が高く、傘を開けば敵の攻撃を防ぐ盾になり、傘を閉じると棍棒のようにそのまま殴りつけることが可能な殴打武器となる。 悪寒を感じた神楽。それが元で考え直し、待ち伏せの可能性を考慮した花京院。 二人のどちらかが欠けていれば、その命はなかったであろう。 なぜならば、橋の上には文字通り暗黒空間への入り口が大口を開けて待ち構えていたのだから。 D-4とE-4を繋ぐ橋。 夜空の元で、渡る者もいない寂しい場所の虚空に黒点が浮かび上がる。 その黒点は徐々に大きくなっていき、やがてツノのついた不気味な顔を形作った。 その巨大な口の中からは男の姿が見て取れる。 「橋をわたると思ったが…フフ おしい」 ヴァニラ・アイスは、走り去って豆粒のように小さくなっていく花京院と神楽の後姿を見ながら呟いた。 研究所にいた時点で花京院を見失っていたが、花京院が脱出に使った窓枠の方角からD-4南へ向かっていることは分かっていた。 花京院がそのまま橋を渡って南下するであろうことは容易に推測でき、間抜けにも橋を渡ったところを暗黒空間に飲み込んでやろうと待ち構えていたのだ。 橋はそれなりに狭く、たとえ存在を勘付かれようとも逃げ場がない。 そこを渡れば『クリーム』に確実に飲み込まれていたであろう。 「あのくそガキが余計なことを吹き込んだせいで行先を変えたか」 花京院の隣にいるチャイナ服の少女を見て、小賢しいサルが、と内心で毒づく。 あの娘がいなければ、ヴァニラは花京院を葬ることができた。 「まあ、いい……。花京院が他の奴らと群れればまとめて消し去ることができるからな…」 そう言ってヴァニラは『クリーム』で再度姿を消す。 花京院が他の参加者と合流することはかえって好都合だ。 人は集団の中で群れていると安心する。特に殺し合いの状況では、同じ志を持つ者と一緒にいればそれは顕著に表れる。 そして、安心して緊張の糸が切れたところを不意打ちしてまとめて暗黒空間に飲み込めば効率がいい。 「花京院…あの娘も、貴様がいずれ出会う仲間諸共、このヴァニラ・アイスの『クリーム』で消し去ってやる」 花京院が集団の一員になるまで泳がしておくのもいいかもしれない、と思いながら、ヴァニラ・アイスは花京院と神楽を追った。 【D-4/橋上/一日目・深夜】 【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [服装]:普段通り [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~3、範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、範馬勇次郎の不明支給品0~3枚 [思考・行動] 基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする    1:花京院と神楽を追い、殺す    2:承太郎とポルナレフも見つけ次第排除。特にポルナレフは絶対に逃さない    3:花京院を泳がせて、集団で群れているところを不意打ちで一網打尽にするのもいいかもしれない [備考] ※死亡後からの参戦です ※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました *時系列順で読む Back:[[ネクロウィッチ]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[あいあいびより おおきなやまをみた]] Next:[[]] |007:[[穿つべきピリオドは――]]|花京院典明|:[[]]| ||神楽|:[[]]| |007:[[穿つべきピリオドは――]]|ヴァニラ・アイス|:[[]]|
*Just away! ◆RPDebfIIlA 殺し合い。 突如集められた総勢70人の前で、繭という少女が課した理不尽なゲーム。 海に囲まれて外界と断絶された謎の島で繰り広げられる、血を血で洗うバトルロワイアル。 互いの命の奪い合いの果て、最後に残った者は願いを一つ叶えられるという。 しかし、それを良しとせず、どうにかして抵抗しようとする者も大勢いる。 古代中国では「蠱毒」という、ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、共食いさせる呪術がある。 この殺し合いはまるで人間で共食いさせる「蠱毒」そのもの。 そんな人の命を虫ケラと同等にしか見ていないような狂気のゲームなど、断じて許せるものではない。 一方で、殺し合いに乗る者もいる。 それは殺し合いに巻き込まれた大事な人を救うために敢えて残酷な選択をする者もいれば、 願いを叶えるために乗った者、あるいはちょっとした認識のズレから殺人を犯す者、 あるいは純粋に戦いを楽しみたいだけの者まで様々だ。 D-4南方に立つチャイナ娘・神楽は、主催者の繭に立ち向かわんとする者達の一人であった。 「あのモジャモジャ女ァ!!ふざんじゃないヨ!!私が夜兎族だからって殺し合いに乗ると思ったら大間違いアル!!」 支給された黒いカードから出てきた番傘を片手に、どこにいるかもわからない繭へ向かって叫ぶ。 神楽は戦闘種族の生き残りでありながら、命ある者を殺すことを非常に嫌っている。 夜兎の血、夜兎の本能に屈さず、その力を誰かを護るために使うことを願う彼女にとって、殺し合いは到底受け入れられるものではなかった。 「でも…あそこには夜兎族が私の他にいたアル」 集められた白い部屋、大勢の人間の中でちらりと見えたその姿を神楽は思い出す。 その顔を見間違えるはずがない。神楽とは正反対の、闘争本能のままに生きる夜兎。 その名を確認するために、腕輪の白いカードに映る画面を見る。 「銀ちゃんに新八、マヨ、ヅラ、マダオに……バカ兄貴…!」 そこには慣れ親しんだ面々に加え、神楽の兄の名前があった。 その名は神威。風化したはずの夜兎の風習「親殺し」を実践し、神楽の父・星海坊主の片腕を奪った戦闘狂。 あいつのことだ、殺し合いを心から楽しんで嬉々と人を殺してまわるであろう。 そんな危険な人物を放っておくわけにもいかないし、神楽には夜兎の血に流されて殺戮の限りを尽くす兄を止める役目がある。 「神威は私がなんとかしなきゃいけないネ」 兄をよく知る神楽は、神威を見つけ出すべく動くことに決めた。 一刻も早く神威を見つけ、なんとしてでも止めなければ最悪の場合数十人が彼の犠牲になるだろう。 幸い、神楽の知る人物はあっさりと殺されるタマではない。 銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラとは今まで何度も死線を超えて来たし、マダオも妙に悪運が強いのでそう簡単には死なないだろう。 できるなら合流したいが、あいつなら大丈夫だ、と思えるくらいには信頼できる。 そうとなったら、ここでじっとしているわけにもいかない。 どこへ向かおうかと周囲を見回していると、ある建造物が神楽の目に入った。 二つの玉の間にそびえ勃つ棒。神楽のいるD-4地区からはっきりと見えるくらいには巨大な一物。 夜の中でも煌々と輝いている金属の兵器。 その名も――。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 ◆ ◆ ◆ 怪我に構うことなく、花京院は走り続ける。 ここまでの全速力で走り続けたら普通の高校生ならばばててしまうのだが、この状況が殺し合いであれば話は別だ。 生き延びるため、こんなところで死なないためにも疲労で膝をついている暇はない。 あの超人・範馬勇次郎を一瞬の内に葬った見えざる敵を振り切らなければならない。 (『ハイエロファントグリーン』に反応はない。もう追ってきてはいないのか…?) 花京院は研究所を出てからは『ハイエロファントグリーン』を紐状にして自分の背後数十mまで展開し、追ってくる敵を探知しながら逃げていた。 しかし後ろを振り返っても敵の姿は闇夜のせいで見えず、『ハイエロファントグリーン』の紐が破壊された感覚もない。 一度は撒いたかとも思ったが―― (いや、安心するにはまだ早いッ!) 花京院は足を休めることなく走る。 敵のスタンド能力が詳しくわかっていない以上、立ち止まることは死を意味する。 暗闇の先に、敵スタンド使いの本体が潜んでいてもおかしくないのだ。 幸い、このまま南下すれば旭丘分校へ続く橋があるはずだ。 そこを経由すれば、当初の目的地である旭丘分校へ行くことができる。 「あれは…」 花京院がしばらく走り続けて、そろそろ橋に到着するかという頃。 前方を見据えると、鉄製で先端部がデカくなった棒とその左右に鎮座している玉が見えた。 それが一体ナニかは考えたくもないが、恐らくは端を渡りきってすぐの場所にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲なるものだろう。 そして橋の入口付近に、人が立っていることに気づく。 背丈が花京院より頭一つ分小さい、チャイナ服を着た少女だ。 そういえば白い部屋に集められた者の中には巻き込まれた無関係な少女、果てには小学校に入っているかどうかもわからないほど幼い女の子もいた。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 花京院に背を向け、何故か視線の先にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の感想を言っている。 このゲームに乗っているかどうか問い正したいところだが、事態は一刻を争う。 「すまない、そこの君!」 すかさず話かけた――が。 「誰アルか!」 少女の得物の番傘を突きつけられる。 ここが殺し合いの場であるからか、ピリピリした雰囲気に陥りやすい。 「今は信じてもらうしかないが、僕はこの殺し合いには乗っていない!とにかく、話はあとだ!ここを離れないとッ!」 見えざる敵がすぐそこに迫っているかもしれないのだ。 花京院は急ぐあまり、問答無用で神楽の手を引いて橋へ向かおうとする。 「いきなり汚らしい手で触るんじゃないヨ!光ったメロンみたいな一本糞垂らしやがって!!」 このような強引な行動がいきなり受け入れられるはずもなく、手を振り払われた。 仕方ない、と花京院は急ぐ気持ちを抑えて神楽に事情を説明しようとするが、その前に一つ引っ掛かることがあった。 「…光ったメロン、とは?」 「お前の目は節穴アルか!お前のケツの穴からずっと向こうに伸びてんじゃねーか!!もしかしてあまりの恐怖に緑色のウ○コ脱糞したことにすら気づいてないアルか?気持ち悪っ!!」 「…君はスタンドというものを知っているかい?」 「スタンドって何アルか?」 …間違いない。この少女は『ハイエロファントグリーン』が見えている。 花京院の背後から伸びている、紐状になったスタンドが見えているのだ。 腰のあたりから出ていることを差引いても糞と間違われたことには心外だったが、 スタンドの見えない者とは根の部分で分かり合うことが出来ないという考えを持っていた花京院にとってこの事実は衝撃的であった。 思えば、研究所で遭遇した範馬勇次郎も花京院のスタンドを目で追っていた。 スタンドの可視化――これも繭のスタンド能力なのだろうか? …いや、考えるのは生き延びてからだ。 今はこの少女に納得のいく説明をして、共にあのおぞましい敵から逃れなければ! 「信じてくれとは言わないが――」 今のところ『ハイエロファントグリーン』に反応はない。 もしかしたら僕たちの背後には本当に敵はいないのかもしれない。 ◆ ◆ ◆ 「…本当に一瞬で死んだアルか?」 「ああ。その男はあまりにもあっけなく死んだ。ほんの一瞬の間に」 限られた時間の中、花京院の口から範馬勇次郎のこととその死の瞬間、そしてその勇次郎をこの世から消し飛ばした見えざる敵から逃亡中であることが語られた。 花京院の話を聞くに、殺し合いを楽しんでいた勇次郎は神楽の兄と重なる部分がある。 そして、超人とも形容できる戦闘能力を持った勇次郎を瞬時に葬る敵。 神楽も聞いただけでその能力の詳細はわからないが、とてつもなく危険であることはわかる。 「今にもそいつが追いついてくるかもしれない。今すぐ出発しないと僕たちの命が危ないんだ!」 「透明人間だか光学迷彩だか知らないが、敵が見えないことは分かったヨ。でも、これからどこ行くアルか?」 「そこにある橋を渡って旭丘分校へ行く。学生の集まりやすそうな場所だ」 一応、神楽も花京院の言うことを信じており、殺し合いには乗っていないようだ。 しかし、その信頼を得るために思ったより時間を取ってしまった。 敵が近づいてきてもおかしくないのだが、『ハイエロファントグリーン』は敵を感知せず、背後には誰もいない。 ここまでくると撒いたと思ってもいいのかもしれない。 流石の花京院の心も焦燥より安心の占める割合が大きくなってきていた。 「…私は橋渡るの反対アル」 今にも動き出し、橋へ向かおうとしていた花京院を神楽が止める。 花京院が振り返ると、神楽の深刻な表情が見えた。 「あの橋逃げ場少ないし…なんだか嫌な予感するネ」 神楽の直感が、あの橋を渡るな、と告げていた。 戦闘種族としての本能がそう感じさせているのか、単なる勘かはわからない。 「逃げ場が少ない…か」 確かに目前にある橋は人間が5人ほど並んで渡れるかどうかといった幅で、逃げ場が少ないという神楽の意見は的を射ている、と花京院は考える。 花京院が『姿の見えない敵』からここまで逃げることができたのは、いかなる方向にも逃げることのできる外にいたからだ。 だが、もし橋の上のような狭い空間で襲われたら、どこへ逃げればいいのか。 仮に水辺へ身を落とそうとも、水中で動きが鈍くなったところを突かれるであろう。 見えざる敵があの橋の上で待ち伏せしていて、橋を渡ったと同時に範馬勇次郎同様、攻撃を避けきれず消し飛ばされることもあり得る。 待ち伏せ。頭に浮かび上がった可能性を顧みて、花京院は安心に浸って緩んでいた精神を引き締めた。 「――わかった。なら、ここから西へ行って基地を経由して墓地へ向かおう。今は奴から逃げることが最優先だ」 仮に橋に敵が潜んでいるとするならば、目と鼻の先に敵がいることになる。 今は敵から距離を離し、捕捉されないようできる限りの尽力をするべきだ。 その思いの元、花京院は身体に疲労が溜まっているにも関わらず駆け出した。 神楽も花京院に続いて橋を後にする。 月の光が、暗黒から逃れようとする彼らを照らしていた。 【D-4/橋入口付近/一日目・深夜】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(中)、脚部へダメージ(小)、腹部にダメージ(中)、自信喪失気味 [服装]:学生服、『ハイエロファントグリーン』(紐) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:繭とDIOを倒すために仲間を集める    1:少女と共に『姿の見えないスタンド使い』から逃れるために基地方面へ向かう。    2:承太郎たちと合流したい。    3:ホル・ホースと『姿の見えないスタンド使い』には警戒。    4:スタンドが誰でも見れるようになっている…? [備考] ※DIOの館突入直前からの参戦です。 ※繭のことをスタンド使いだと思っています。 ※互いの自己紹介を省いたため、神楽の名前をまだ知りません。 ※スタンドの可視化に気づきました。これも繭のスタンド能力ではないかと思っています。 ※索敵のため、腰から紐状のハイエロファントグリーンを背後から数十mに渡ってはわしています。 【神楽@銀魂】 [状態]:健康 [服装]:チャイナ服 [装備]:番傘@銀魂 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らないアル    1:神威を探し出し、なんとしてでも止めるネ    2:銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラ、マダオと合流したいヨ    3:『姿の見えないスタンド使い』を警戒してるアル    4:結局こいつのメロン色の一本糞は何アルか [備考] ※花京院から範馬勇次郎、『姿の見えないスタンド使い』についての情報を得ました。 ※互いの自己紹介を省いたため、花京院の名前をまだ知りません。 【番傘@銀魂】 日光に弱い体質である夜兎族の標準装備。主に外出時に日傘として差している。神楽に支給。 見た目は普通の番傘であるが、戦闘時にはマシンガンのように弾丸を発射する。 また、砲撃や爆発にも耐えるほどに強度が高く、傘を開けば敵の攻撃を防ぐ盾になり、傘を閉じると棍棒のようにそのまま殴りつけることが可能な殴打武器となる。 悪寒を感じた神楽。それが元で考え直し、待ち伏せの可能性を考慮した花京院。 二人のどちらかが欠けていれば、その命はなかったであろう。 なぜならば、橋の上には文字通り暗黒空間への入り口が大口を開けて待ち構えていたのだから。 D-4とE-4を繋ぐ橋。 夜空の元で、渡る者もいない寂しい場所の虚空に黒点が浮かび上がる。 その黒点は徐々に大きくなっていき、やがてツノのついた不気味な顔を形作った。 その巨大な口の中からは男の姿が見て取れる。 「橋をわたると思ったが…フフ おしい」 ヴァニラ・アイスは、走り去って豆粒のように小さくなっていく花京院と神楽の後姿を見ながら呟いた。 研究所にいた時点で花京院を見失っていたが、花京院が脱出に使った窓枠の方角からD-4南へ向かっていることは分かっていた。 花京院がそのまま橋を渡って南下するであろうことは容易に推測でき、間抜けにも橋を渡ったところを暗黒空間に飲み込んでやろうと待ち構えていたのだ。 橋はそれなりに狭く、たとえ存在を勘付かれようとも逃げ場がない。 そこを渡れば『クリーム』に確実に飲み込まれていたであろう。 「あのくそガキが余計なことを吹き込んだせいで行先を変えたか」 花京院の隣にいるチャイナ服の少女を見て、小賢しいサルが、と内心で毒づく。 あの娘がいなければ、ヴァニラは花京院を葬ることができた。 「まあ、いい……。花京院が他の奴らと群れればまとめて消し去ることができるからな…」 そう言ってヴァニラは『クリーム』で再度姿を消す。 花京院が他の参加者と合流することはかえって好都合だ。 人は集団の中で群れていると安心する。特に殺し合いの状況では、同じ志を持つ者と一緒にいればそれは顕著に表れる。 そして、安心して緊張の糸が切れたところを不意打ちしてまとめて暗黒空間に飲み込めば効率がいい。 「花京院…あの娘も、貴様がいずれ出会う仲間諸共、このヴァニラ・アイスの『クリーム』で消し去ってやる」 花京院が集団の一員になるまで泳がしておくのもいいかもしれない、と思いながら、ヴァニラ・アイスは花京院と神楽を追った。 【D-4/橋上/一日目・深夜】 【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [服装]:普段通り [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~3、範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、範馬勇次郎の不明支給品0~3枚 [思考・行動] 基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする    1:花京院と神楽を追い、殺す    2:承太郎とポルナレフも見つけ次第排除。特にポルナレフは絶対に逃さない    3:花京院を泳がせて、集団で群れているところを不意打ちで一網打尽にするのもいいかもしれない [備考] ※死亡後からの参戦です ※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました *時系列順で読む Back:[[ネクロウィッチ]] Next:[[本性の道]] *投下順で読む Back:[[あいあいびより おおきなやまをみた]] Next:[[本性の道]] |007:[[穿つべきピリオドは――]]|花京院典明|:[[]]| ||神楽|:[[]]| |007:[[穿つべきピリオドは――]]|ヴァニラ・アイス|:[[]]|

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