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Anemone Heart - (2015/08/14 (金) 05:28:03) の1つ前との変更点

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*Anemone Heart ◆Z9iNYeY9a2 「なるほどな、穂乃果は学校でアイドル活動をして、その集まりでの優勝を目指している、と」 「はい、えっと、だからその…、私自身さっきみたいなゾンビみたいなのとか変な目のあの人みたいなものなんて、見たことなかったし…、それで驚いちゃって…」 「何、それが普通の反応だ。気にすることはない」 「はぅぅ……」 音ノ木坂学院へと向かうランサーは、どうにか落ち着いた様子の穂乃果と会話をしながら歩を進めていた。 人によっては情報自体に有意義といえるものがないと判断するだろうが、ランサーはその会話の中から穂乃果の人となり、そしてそれまでの人生を推察していた。 高坂穂乃果は魔術や聖杯戦争などというものとは無縁の世界を生きていた一般人であるということはすぐに分かった。 問題は、そんな少女を英霊や魔術師も存在するこの殺し合いに巻き込んでいるこの状況だ。 当然人道的に許せる話でないことはいうまでもなく、もし魔術師の観点で見てもおそらく主であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトならば卒倒するのだろうことも容易に考えられる。 聖杯戦争や英霊の存在は魔術師にとっては隠蔽せねばならぬもの。それをこうも公にして一般人の少女と共に集めるなど、正気の沙汰ではない。 (魔術師とはまた別の何者、ということか?) 現状名簿にある知った名はセイバー、キャスター、そして衛宮切嗣。 セイバーであればおそらくあの騎士王のこと、このような下衆な催しに乗ることなく騎士として反抗するだろう。 キャスターは先に顔を会わせた通りだ。どのようなものであっても彼奴が己を曲げることはないだろう。穂乃果のこともありあの時は撤退したが、絶対に倒さねばならぬ相手だ。 衛宮切嗣、セイバーのマスター。主に対してのあの策は決して油断できるものではないが、しかしこのような場ではどのような行動に出るか想像もつかない。 少なくとも最優先で探し、協力を要請する相手としてはセイバーだろう。 彼女と合流することができれば、この上ない味方となってくれるはず。 ふと隣を見ると、安心してお腹が空いたのか穂乃果はカードからパンを取り出して口に加えようとし。 「…あ」 が、何故かランサーがその顔を見るとその手と口の動きを止めて、もじもじしながら手を下げた。 「あ、す、すみませんこんなときに!その、…その、えっと…、ランサーさん、食べます?」 「いや、俺はあまり腹が空かない質なのでな。気にせずに食べるといい。食べられる時間があるうちに蓄えておくというのは重要だ」 「その、別に私も――――」 「…静かに。誰か近づいてくる」 と、何者かの気配を感じ取ったランサーは穂乃果の口の前に指を当てて口を止めさせた。 もしその時ランサーが振り返っていれば、顔を真っ赤に紅潮させ慌てふためく穂乃果の顔が見られただろうが、しかし前を見続けるランサーはそのような様子などいざ知らず。 そうして真っ暗な前方から微かな光を灯しながら歩いてきたのは、学校の制服に身を包んだ少女、そしてそんな彼女を背負って歩くさらに小さな金髪の少女だった。 「あなたは?」 「大丈夫だ、俺たちは殺し合いに乗ってはいない。その子は?」 「名前は分からないんですけど、目の前でいきなり倒れて…。あ、私は高町ヴィヴィオっていいます」 「俺はランサー。こちらは高坂穂乃果だ。  君のような少女には荷が重いだろう。私が背負おう」 「私は大丈夫です…けどやっぱり少し疲れたかな…。それじゃあお言葉に甘えて」 と、少女、ヴィヴィオはランサーに背負った少女を預け。 「…あっ」 「どうかしたか?」 「あ、いえ、何でも」 ふと穂乃果が声を漏らしたことに反応。 一瞬気にかけるも、なんでもないという穂乃果の言葉を信じて流すランサー。 (…あのお姉さん、どうしたんだろう?) ランサーの視界外にいた穂乃果をずっと視界に収めていたヴィヴィオは、そのときの穂乃果の何とも言えぬ表情が何か気になっていた。 ◇ 「ん…十四郎…さん…?」 「目が覚めたか」 ぼんやりした眼を薄く開いた千夜の視界に、一人の男の顔が映り込み。 「ひ、ひゃっ…?!」 「どうやら怪我はない様子だな。名は言えるか?」 「は、わわわ、う、宇治松千夜です!」 真っ赤になる顔を抑えながら、千夜は質問に答えた。 体に傷がないこと、そして自分の名前を言えることから意識と記憶ははっきりしていることを確かめていたランサー。 その後、ランサーは自分とヴィヴィオ、穂乃果について軽い自己紹介をした後、一体何があったのかを問いかけた。 千夜の体に傷はない。ならばその服の血は一体何なのか。 何から逃げてきたのか。 千夜はこれまでにあったことを、分かる限りで話した。 「…金髪で鎧の少女。その娘は確かに金色の剣を持っていたのだな?」 「はい、その人に襲われて、それで十四郎さんが残って…」 「……そうか」 「私が…今どんなことになってるのか何も分かってなかったから……十四郎さんが……。  私が死ぬはずだったのに…、私のせいで……!」 自分を責めるように顔を押さえて涙を流す千夜。 服の血はその時守られた際に付着したその男のものであるらしい。 出血の量から察するに、おそらくその男は。 「あまり自分を責めるな。その男は君を守るために戦ったのだろう?」 「だけど…そのせいで十四郎さんは……」 「確かにそうかもしれない。だけど千夜はそれで目が覚めたのだ。  もし償いをしたいというのなら、悔いることよりも彼の守った命を大切に守っていくことが君のため、彼のためにもなる。分かるか?」 「……あっ」 ポン、とその肩に優しく手を置くランサー。 だが、こちらを見つめる千夜の瞳に妙な熱を感じたランサーはすぐさま手を離し、彼女が来たという方に目を向ける。 「ランサー、さん…」 「君はよく頑張った。その土方という男の想いは俺が汲もう。  …音ノ木坂学院だったな?」 そうしてランサーは、千夜の語った情報に考え込み。 「穂乃果、すまないが音ノ木坂学院に向かうのは少し待ってもらえないか?  もしかするとまだあそこにその千夜を襲った者がいるかもしれない。  俺が様子を見てくるから、安全を確認できるまでは待っていて欲しい」 心配するように見つめる穂乃果に対し、そう返答した。 今のランサーは武器はあるといっても元々持っていた自身の2槍が欠けている状態。 並の相手なら遅れを取るつもりもないが、それでも彼女達がいれば万が一、ということもある。 それに――― 「それに、考えたくないことだが、その千夜を襲った者、少し心当たりがある。  大丈夫だ。もし君の友人と会うようなことがあれば必ず守る。  ヴィヴィオ、二人のことは任せても大丈夫か?」 「分かりました。でもランサーさんも気をつけてください。もし何かあったら私も向かいますから」 「いや、君には二人のことを守っていてもらいたい。俺のいない間に万が一ということがあっても大変だからな。  駅の近くで待って、もし俺が2時間以上戻ってこないようなら君たちの判断で音ノ木坂学院から離れる形で移動して欲しい」 「えっと、……」 「…分かりました」 言いよどむ千夜に対し、穂乃果は不服そうな表情を浮かべつつもランサーの言葉に頷いていた。 「では、ほんの一時の別れだ。必ず戻ってくる」 「ランサーさん、気をt「ら、ランサーさん…!どうか、お気をつけて…!」 ランサーに言葉を投げかける穂乃果をまるで遮るかのように、千夜がランサーに向けて叫ぶ。 そんな3人の少女に見送られながら、ランサーは静かに、しかし素早く音ノ木坂学院へと向けて走っていった。 ◇ (やはり千夜も黒子の呪いにかかってしまったか…) 目が覚めた時のあの少女の反応は穂乃果の時のそれと似通ったもの。 きっと穂乃果と同じように、彼女も呪いにかかってしまったのだろう。 だからこそ、あまり自分が傍に居続けるのは彼女のためにもならない。 しかしあのヴィヴィオという少女は自分の呪いに対しても特にこれといって反応をする様子は見せなかった。 おそらく彼女には何かしら魔力的な素養があるのだろう。 あの華奢な体で千夜を背負っていたことといい、その体運びに見られる訓練された者特有の動きといい。 彼女がただの少女ではないことは確かだろう。 無論、いくら彼女が只者ではないといってもそんな子供に二人を任せることが無責任であることも自覚している。 だが、それでもランサーは引っかかりが抜けなかった。 (セイバー、まさか君が外道に堕ちた、などということはないと信じたいが……) 金髪で鎧を着込んだ少女。 それだけではまだ”彼女”と断定する材料にはならない。 黄金の剣を持っていたという点もそうだ。 自分は破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)と必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を手元に欠いている状態。 逆に言えばこの会場のどこかに別の誰かに配られた可能性だってある。そしてそれはあの騎士王の聖剣とて例外ではないはず。 心境的には信じたい。 だがもしそれが彼女だったならば、あの二人を守りながら戦うことは難しい。千夜を襲ったことから、その何者かは誰であろうと容赦なく斬るつもりでいることは読み取れる。 (せめて、君であったという可能性は間違いであってくれ。セイバー…!!) それでも、ディルムッドはその少女がセイバー:アルトリア・ペンドラゴンであることだけは間違いであることを願いながら、音ノ木坂学院へと向けて走った。 ◇ 「ん?どうしたのクリス?」 ランサーが立ち去ってそう時間の経たぬ頃。 ヴィヴィオの横を浮遊するセイクリッド・ハートがヴィヴィオに呼びかけた。 「え、あのランサーさんから変な魔力が出てたって?」 コクリ ジェスチャーで伝えるクリスはヴィヴィオの言葉で頷くような仕草をとる。 クリスが言うには、あのランサーという男からは何か常時発動型の魔力反応があったという。 ヴィヴィオにも影響を及ぼすものであったため、クリス自身がそれに対する防壁を形成していたため何の影響もなかったらしいのだが。 「それってもし受けちゃったらどんな影響があるの?  ……え、相手のことが好きになる効果?」 クリスのジェスチャーでそれを聞き取ったヴィヴィオは、笑いながら答えた。 「なーんだ。だったら別に何の問題もないじゃん。  だってさ、人が人のことを好きになるってことでしょ?それっていいことじゃない。  それでみんながみんなのこと好きになってくれれば、喧嘩なんて起きないし」 ◇ 何かおかしい。 そんな自覚はあった。 それに気付いたのは、千夜さんと会って以降のことだ。 ランサーさんが彼女を抱え上げた時。 千夜さんが目覚めてランサーさんの顔を間際で見つめていた時。 何か、とても嫌な気持ちになった。 初めてあったばかりの人にこんな気持ちを持ったことなんてなかったのに。 ランサーさんが、安全のために先に音ノ木坂学院に向かうって言った時。 もしその途中でμ'sのみんなと会ったらちゃんと助けてくれるって言った時。 そんなのいいから私の傍にいて欲しいって思ってる自分がいた。 だって、それでもしかしたらことりちゃんや絵里ちゃん、希ちゃんやにこちゃんが危ない目に会うかもしれないっていうのに。 (…どうしちゃったの、私?) 初めて自分の中に生まれたその感情に、戸惑うことしかできない。 近くで、ランサーの向かっていった方に熱のこもった視線を向けている千夜を見て。 心の中で渦巻く黒い感情に。 【B-2/一日目・深夜】 【ランサー@Fate/Zero】 [状態]:健康 [装備]:キュプリオトの剣@Fate/zero [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:騎士道に則り、戦う力のない者を守る。 0:穂乃果、千夜に「愛の黒子」の呪いがかかったことに罪悪感。 1:音ノ木坂学院に向かい、千夜を襲ったという危険人物の存在を確かめる。 2:セイバーは信用できる。しかしそのマスターは……? 3:キャスターはいずれ討伐する。 4:まさかセイバーが…? [備考] ※参戦時期はアインツベルン城でセイバーと共にキャスターと戦った後。 ※「愛の黒子」は異性を魅了する常時発動型の魔術です。魔術的素養がなければ抵抗できません。 【B-2/駅/一日目・深夜】 【高坂穂乃果@ラブライブ!】 [状態]:健康、ランサーへの好意(中)、千夜に対する疎み [服装]:音ノ木坂学院の制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)      黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:誰も殺したくない。生きて帰りたい。 1:μ'sのメンバーを探す。 2:ランサーさんを見てるとドキドキする……。 3:ランサーさんが戻ってくるまで駅にて待つ。 4:何、この感情……? [備考] ※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか。 ※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。 【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】 [状態]:疲労(大)、ランサーへの好意(軽) [服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:心愛たちに会いたい 1:ランサーが心配 2:十四郎さん… [備考] ※現状の精神はランサーに対する好意によって自責の念を抑えられ一旦の落ち着きを取り戻しています。 ※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。 【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid】 [状態]:健康 [服装]:制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid [思考・行動] 基本方針:皆で帰るために行動する 1:駅でランサーさんを待つ。それまでの間は私が二人を守る。 2:もし2時間経ってランサーさんが戻ってこなかったら移動する。 3:アインハルトとコロナを探す [備考] ※参戦時期はアニメ終了後です。 ※ランサーの黒子の呪いについて大雑把に把握しましたが特に重要なことだとは思っていません ※黒子の呪いの影響は受けていません ※各々の知り合いについての情報交換は済ませています。 ※ランサーが離れたことで黒子による好意が薄れるかどうかは不明です。 *時系列順で読む Back:[[たとえ明日を見失おうとも]] Next:[[その遭遇は綻び]] *投下順で読む Back:[[たとえ明日を見失おうとも]] Next:[[シャロと殺意なき悪意]] |010:[[きっと青春が聞こえる]]|ランサー|:[[]]| |010:[[きっと青春が聞こえる]]|高坂穂乃果|:[[]]| |029:[[真の旗]]|宇治松千夜|:[[]]| |029:[[真の旗]]|高町ヴィヴィオ|:[[]]|
*Anemone Heart ◆Z9iNYeY9a2 「なるほどな、穂乃果は学校でアイドル活動をして、その集まりでの優勝を目指している、と」 「はい、えっと、だからその…、私自身さっきみたいなゾンビみたいなのとか変な目のあの人みたいなものなんて、見たことなかったし…、それで驚いちゃって…」 「何、それが普通の反応だ。気にすることはない」 「はぅぅ……」 音ノ木坂学院へと向かうランサーは、どうにか落ち着いた様子の穂乃果と会話をしながら歩を進めていた。 人によっては情報自体に有意義といえるものがないと判断するだろうが、ランサーはその会話の中から穂乃果の人となり、そしてそれまでの人生を推察していた。 高坂穂乃果は魔術や聖杯戦争などというものとは無縁の世界を生きていた一般人であるということはすぐに分かった。 問題は、そんな少女を英霊や魔術師も存在するこの殺し合いに巻き込んでいるこの状況だ。 当然人道的に許せる話でないことはいうまでもなく、もし魔術師の観点で見てもおそらく主であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトならば卒倒するのだろうことも容易に考えられる。 聖杯戦争や英霊の存在は魔術師にとっては隠蔽せねばならぬもの。それをこうも公にして一般人の少女と共に集めるなど、正気の沙汰ではない。 (魔術師とはまた別の何者、ということか?) 現状名簿にある知った名はセイバー、キャスター、そして衛宮切嗣。 セイバーであればおそらくあの騎士王のこと、このような下衆な催しに乗ることなく騎士として反抗するだろう。 キャスターは先に顔を会わせた通りだ。どのようなものであっても彼奴が己を曲げることはないだろう。穂乃果のこともありあの時は撤退したが、絶対に倒さねばならぬ相手だ。 衛宮切嗣、セイバーのマスター。主に対してのあの策は決して油断できるものではないが、しかしこのような場ではどのような行動に出るか想像もつかない。 少なくとも最優先で探し、協力を要請する相手としてはセイバーだろう。 彼女と合流することができれば、この上ない味方となってくれるはず。 ふと隣を見ると、安心してお腹が空いたのか穂乃果はカードからパンを取り出して口に加えようとし。 「…あ」 が、何故かランサーがその顔を見るとその手と口の動きを止めて、もじもじしながら手を下げた。 「あ、す、すみませんこんなときに!その、…その、えっと…、ランサーさん、食べます?」 「いや、俺はあまり腹が空かない質なのでな。気にせずに食べるといい。食べられる時間があるうちに蓄えておくというのは重要だ」 「その、別に私も――――」 「…静かに。誰か近づいてくる」 と、何者かの気配を感じ取ったランサーは穂乃果の口の前に指を当てて口を止めさせた。 もしその時ランサーが振り返っていれば、顔を真っ赤に紅潮させ慌てふためく穂乃果の顔が見られただろうが、しかし前を見続けるランサーはそのような様子などいざ知らず。 そうして真っ暗な前方から微かな光を灯しながら歩いてきたのは、学校の制服に身を包んだ少女、そしてそんな彼女を背負って歩くさらに小さな金髪の少女だった。 「あなたは?」 「大丈夫だ、俺たちは殺し合いに乗ってはいない。その子は?」 「名前は分からないんですけど、目の前でいきなり倒れて…。あ、私は高町ヴィヴィオっていいます」 「俺はランサー。こちらは高坂穂乃果だ。  君のような少女には荷が重いだろう。私が背負おう」 「私は大丈夫です…けどやっぱり少し疲れたかな…。それじゃあお言葉に甘えて」 と、少女、ヴィヴィオはランサーに背負った少女を預け。 「…あっ」 「どうかしたか?」 「あ、いえ、何でも」 ふと穂乃果が声を漏らしたことに反応。 一瞬気にかけるも、なんでもないという穂乃果の言葉を信じて流すランサー。 (…あのお姉さん、どうしたんだろう?) ランサーの視界外にいた穂乃果をずっと視界に収めていたヴィヴィオは、そのときの穂乃果の何とも言えぬ表情が何か気になっていた。 ◇ 「ん…十四郎…さん…?」 「目が覚めたか」 ぼんやりした眼を薄く開いた千夜の視界に、一人の男の顔が映り込み。 「ひ、ひゃっ…?!」 「どうやら怪我はない様子だな。名は言えるか?」 「は、わわわ、う、宇治松千夜です!」 真っ赤になる顔を抑えながら、千夜は質問に答えた。 体に傷がないこと、そして自分の名前を言えることから意識と記憶ははっきりしていることを確かめていたランサー。 その後、ランサーは自分とヴィヴィオ、穂乃果について軽い自己紹介をした後、一体何があったのかを問いかけた。 千夜の体に傷はない。ならばその服の血は一体何なのか。 何から逃げてきたのか。 千夜はこれまでにあったことを、分かる限りで話した。 「…金髪で鎧の少女。その娘は確かに金色の剣を持っていたのだな?」 「はい、その人に襲われて、それで十四郎さんが残って…」 「……そうか」 「私が…今どんなことになってるのか何も分かってなかったから……十四郎さんが……。  私が死ぬはずだったのに…、私のせいで……!」 自分を責めるように顔を押さえて涙を流す千夜。 服の血はその時守られた際に付着したその男のものであるらしい。 出血の量から察するに、おそらくその男は。 「あまり自分を責めるな。その男は君を守るために戦ったのだろう?」 「だけど…そのせいで十四郎さんは……」 「確かにそうかもしれない。だけど千夜はそれで目が覚めたのだ。  もし償いをしたいというのなら、悔いることよりも彼の守った命を大切に守っていくことが君のため、彼のためにもなる。分かるか?」 「……あっ」 ポン、とその肩に優しく手を置くランサー。 だが、こちらを見つめる千夜の瞳に妙な熱を感じたランサーはすぐさま手を離し、彼女が来たという方に目を向ける。 「ランサー、さん…」 「君はよく頑張った。その土方という男の想いは俺が汲もう。  …音ノ木坂学院だったな?」 そうしてランサーは、千夜の語った情報に考え込み。 「穂乃果、すまないが音ノ木坂学院に向かうのは少し待ってもらえないか?  もしかするとまだあそこにその千夜を襲った者がいるかもしれない。  俺が様子を見てくるから、安全を確認できるまでは待っていて欲しい」 心配するように見つめる穂乃果に対し、そう返答した。 今のランサーは武器はあるといっても元々持っていた自身の2槍が欠けている状態。 並の相手なら遅れを取るつもりもないが、それでも彼女達がいれば万が一、ということもある。 それに――― 「それに、考えたくないことだが、その千夜を襲った者、少し心当たりがある。  大丈夫だ。もし君の友人と会うようなことがあれば必ず守る。  ヴィヴィオ、二人のことは任せても大丈夫か?」 「分かりました。でもランサーさんも気をつけてください。もし何かあったら私も向かいますから」 「いや、君には二人のことを守っていてもらいたい。俺のいない間に万が一ということがあっても大変だからな。  駅の近くで待って、もし俺が2時間以上戻ってこないようなら君たちの判断で音ノ木坂学院から離れる形で移動して欲しい」 「えっと、……」 「…分かりました」 言いよどむ千夜に対し、穂乃果は不服そうな表情を浮かべつつもランサーの言葉に頷いていた。 「では、ほんの一時の別れだ。必ず戻ってくる」 「ランサーさん、気をt「ら、ランサーさん…!どうか、お気をつけて…!」 ランサーに言葉を投げかける穂乃果をまるで遮るかのように、千夜がランサーに向けて叫ぶ。 そんな3人の少女に見送られながら、ランサーは静かに、しかし素早く音ノ木坂学院へと向けて走っていった。 ◇ (やはり千夜も黒子の呪いにかかってしまったか…) 目が覚めた時のあの少女の反応は穂乃果の時のそれと似通ったもの。 きっと穂乃果と同じように、彼女も呪いにかかってしまったのだろう。 だからこそ、あまり自分が傍に居続けるのは彼女のためにもならない。 しかしあのヴィヴィオという少女は自分の呪いに対しても特にこれといって反応をする様子は見せなかった。 おそらく彼女には何かしら魔力的な素養があるのだろう。 あの華奢な体で千夜を背負っていたことといい、その体運びに見られる訓練された者特有の動きといい。 彼女がただの少女ではないことは確かだろう。 無論、いくら彼女が只者ではないといってもそんな子供に二人を任せることが無責任であることも自覚している。 だが、それでもランサーは引っかかりが抜けなかった。 (セイバー、まさか君が外道に堕ちた、などということはないと信じたいが……) 金髪で鎧を着込んだ少女。 それだけではまだ”彼女”と断定する材料にはならない。 黄金の剣を持っていたという点もそうだ。 自分は破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)と必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を手元に欠いている状態。 逆に言えばこの会場のどこかに別の誰かに配られた可能性だってある。そしてそれはあの騎士王の聖剣とて例外ではないはず。 心境的には信じたい。 だがもしそれが彼女だったならば、あの二人を守りながら戦うことは難しい。千夜を襲ったことから、その何者かは誰であろうと容赦なく斬るつもりでいることは読み取れる。 (せめて、君であったという可能性は間違いであってくれ。セイバー…!!) それでも、ディルムッドはその少女がセイバー:アルトリア・ペンドラゴンであることだけは間違いであることを願いながら、音ノ木坂学院へと向けて走った。 ◇ 「ん?どうしたのクリス?」 ランサーが立ち去ってそう時間の経たぬ頃。 ヴィヴィオの横を浮遊するセイクリッド・ハートがヴィヴィオに呼びかけた。 「え、あのランサーさんから変な魔力が出てたって?」 コクリ ジェスチャーで伝えるクリスはヴィヴィオの言葉で頷くような仕草をとる。 クリスが言うには、あのランサーという男からは何か常時発動型の魔力反応があったという。 ヴィヴィオにも影響を及ぼすものであったため、クリス自身がそれに対する防壁を形成していたため何の影響もなかったらしいのだが。 「それってもし受けちゃったらどんな影響があるの?  ……え、相手のことが好きになる効果?」 クリスのジェスチャーでそれを聞き取ったヴィヴィオは、笑いながら答えた。 「なーんだ。だったら別に何の問題もないじゃん。  だってさ、人が人のことを好きになるってことでしょ?それっていいことじゃない。  それでみんながみんなのこと好きになってくれれば、喧嘩なんて起きないし」 ◇ 何かおかしい。 そんな自覚はあった。 それに気付いたのは、千夜さんと会って以降のことだ。 ランサーさんが彼女を抱え上げた時。 千夜さんが目覚めてランサーさんの顔を間際で見つめていた時。 何か、とても嫌な気持ちになった。 初めてあったばかりの人にこんな気持ちを持ったことなんてなかったのに。 ランサーさんが、安全のために先に音ノ木坂学院に向かうって言った時。 もしその途中でμ'sのみんなと会ったらちゃんと助けてくれるって言った時。 そんなのいいから私の傍にいて欲しいって思ってる自分がいた。 だって、それでもしかしたらことりちゃんや絵里ちゃん、希ちゃんやにこちゃんが危ない目に会うかもしれないっていうのに。 (…どうしちゃったの、私?) 初めて自分の中に生まれたその感情に、戸惑うことしかできない。 近くで、ランサーの向かっていった方に熱のこもった視線を向けている千夜を見て。 心の中で渦巻く黒い感情に。 【B-2/一日目・深夜】 【ランサー@Fate/Zero】 [状態]:健康 [装備]:キュプリオトの剣@Fate/zero [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:騎士道に則り、戦う力のない者を守る。 0:穂乃果、千夜に「愛の黒子」の呪いがかかったことに罪悪感。 1:音ノ木坂学院に向かい、千夜を襲ったという危険人物の存在を確かめる。 2:セイバーは信用できる。しかしそのマスターは……? 3:キャスターはいずれ討伐する。 4:まさかセイバーが…? [備考] ※参戦時期はアインツベルン城でセイバーと共にキャスターと戦った後。 ※「愛の黒子」は異性を魅了する常時発動型の魔術です。魔術的素養がなければ抵抗できません。 【B-2/駅/一日目・深夜】 【高坂穂乃果@ラブライブ!】 [状態]:健康、ランサーへの好意(中)、千夜に対する疎み [服装]:音ノ木坂学院の制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)      黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:誰も殺したくない。生きて帰りたい。 1:μ'sのメンバーを探す。 2:ランサーさんを見てるとドキドキする……。 3:ランサーさんが戻ってくるまで駅にて待つ。 4:何、この感情……? [備考] ※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか。 ※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。 【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】 [状態]:疲労(大)、ランサーへの好意(軽) [服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:心愛たちに会いたい 1:ランサーが心配 2:十四郎さん… [備考] ※現状の精神はランサーに対する好意によって自責の念を抑えられ一旦の落ち着きを取り戻しています。 ※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。 【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid】 [状態]:健康 [服装]:制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid [思考・行動] 基本方針:皆で帰るために行動する 1:駅でランサーさんを待つ。それまでの間は私が二人を守る。 2:もし2時間経ってランサーさんが戻ってこなかったら移動する。 3:アインハルトとコロナを探す [備考] ※参戦時期はアニメ終了後です。 ※ランサーの黒子の呪いについて大雑把に把握しましたが特に重要なことだとは思っていません ※黒子の呪いの影響は受けていません ※各々の知り合いについての情報交換は済ませています。 ※ランサーが離れたことで黒子による好意が薄れるかどうかは不明です。 *時系列順で読む Back:[[たとえ明日を見失おうとも]] Next:[[その遭遇は綻び]] *投下順で読む Back:[[たとえ明日を見失おうとも]] Next:[[シャロと殺意なき悪意]] |010:[[きっと青春が聞こえる]]|ランサー|038:[[騎士道]]| |010:[[きっと青春が聞こえる]]|高坂穂乃果|038:[[騎士道]]| |029:[[真の旗]]|宇治松千夜|038:[[騎士道]]| |029:[[真の旗]]|高町ヴィヴィオ|038:[[騎士道]]|

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