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領主さまが見てる(?) - (2015/08/31 (月) 22:30:49) の1つ前との変更点

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*領主さまが見てる(?) ◆gsq46R5/OE  「酒も飲みてえけど、それより眠ぃや……」   悪魔アザゼルとの不本意な再会を終えた彼は、暫し歩いたところで休憩と洒落込むことにした。   それなりに長い距離を進んだと思うが、一向に参加者と出会う気配がないのは幸運とすべきか、不運とすべきか。   それは定かではなかったが――しかし当のファバロは、穏やかでいいやと呑気に構えていた。   どうせ、急いだところで何かが変わる訳でもないのだし。   男はどっしり構えて、自分の動く時が来るまでのんびりしていればいいのさ。   そんなもっともらしいことを言い訳に自分を甘やかしつつ、草の上に胡座を掻いて欠伸を一つ。  「だーいぶ空も白んできたしなぁ。あったけえベッドにでもありつきてえぜ……」   んでもって、朝起きたら何もかも元通り――とは、行かないだろうけどよ。   ファバロは苦笑しつつ、そのまま地面へ仰向けになって星空を見上げた。   血腥い殺し合いが行われていることが信じられなくなるほどの、見事な星々の絨毯がそこにはある。   まるで、上等な宝石箱だ。   女を口説く上で腐るほど使ってきた文句を、よもやこんな場面で使うとは思わなかったが。  「酒は支給されてなかったけどよ。よく考えりゃ、こいつがあるんだよな」      そんな絶景を見上げながら、取り出すのは青いカード。正式名を、ウォーターカード。   なんでも、これを使えば何でも好きな飲み物が手に入るらしい。   こんなものを出されては、全世界の酒屋が商売上がったりだろう。   益体もないことを考えながらカードを使うと――本当に、ファバロの望み通りに酒が現れた。   酒があるなら肴も欲しくなるが、流石にこの状況であまりのんびり晩酌してもいられない。   瓶を己の口元へ近付ければそれを傾け、一息にぐいっと呷る。  「――――かぁ~~~っ! うんめぇ……!!」   琥珀色の冷たく泡立った液体が上の方からどんどん落下してきて、シャワシャワと泡立ちながら、喉奥へ消えていく。   通り過ぎていった場所から冷たく冷やされていく感覚がひどく心地よかった。   あまりごくごくとは飲まずに、貪欲に啜るようにして呑む。   それがいい刺激になって、ますます食欲が湧いてきた。   こうなっては、堪えることなど拷問だ。   そしてファバロには、進んでそんな拷問を受けたがる嗜好はない。   今度は赤のフードカードを取り出して、そこから酒の肴を引っ張り出す。   酒の肴という漠然とした要求ではあったが、律儀にカードはファバロの要求通りの品々を出してくれた。      熱い熱い、香ばしい玉ねぎのフライに齧り付き、溢れてくる辛味が消える前に酒で押し流す。   こうして適した肴を用意することは酒の味を活性化させ、それどころか一緒に食べる肴の味すらも引き立てる。   あまり行儀の良い酒飲みではないファバロでも知っている、遊び人の常識だ。   それから数分あまりでファバロは酒を飲み干した。   しかし肴が余っていたので、躊躇なく二枚目のウォーターカードへ手を付けた。   彼の至福の時間は、合計で三十分強にも及んだ。  「ふー、旨かった旨かった。たまにはこうやって外で独り呑みってのもいいねえ」   心地よい満腹感と、少しばかりのほろ酔い気分。   おセンチな気分を吹き飛ばすには、やはりこうして酒を呑むに限る。  「つーかこのカードよ、本当に便利なのな。それに比べて……」   ファバロは、二枚の黒カードを取り出して嘆息した。   アザゼルと再会するよりも前、何よりも最初に確認した支給品の二つ。   残る一つがなかなか良い物だったからよかったが、これらは正真正銘、ハズレとしか言いようのないものだった。   一つは、小さな長方形の箱。説明によると、小型テレビなる品物。   そしてもう一つは、――恐らくタヌキであろう――謎の着ぐるみ。   後者の方は一目で明らかなハズレだとわかるが、前者は如何せん用途があるが使い道がないから質が悪い。   このテレビという道具は放送などを優先して傍受できるらしい。   ……もちろん、殺し合いの中で放送が流れる局面など定時に行われる以外にはそうそうない訳で。   一応ボタンを押すと電源だけは点いて白い画面が表示されるのだが、現状はあくまでもそれだけだった。   今一度その箱を取り出して、ああでもないこうでもないと言いながら弄る。   何か使い道はないだろうかと頭を悩ませながら。  「何だ、灯り代わりにでも使えってか?   ……冗談じゃねえ、やっぱハズレじゃねえか。灯りならこっちの白いカードで賄えるっての」   つくづくついてねえ――つぶやき、いっそ投げ捨ててやろうかと振りかぶった、その時。  『――の――ご覧頂け―――――様。私、―――ターのサ―――――、ジル・――――と申し――』  「……は? おいおい、どうした?」   光るだけで、何ら利点の見つからなかった箱。テレビ。   それが、突如男の声で喋ったのだ。   繭の言っていた放送の時間にはまだ早いにも関わらず、である。   慌てて投げ飛ばすべく踏み込んだ状態で体を止め、再び箱を覗き込む。   するとそこには……声の主らしき狂気的な出で立ちの男。   ファバロが彼を見て連想した単語は、『賞金首』の三文字だった。   賞金稼ぎとして狩ってきた悪党どもによく似た胡散臭い雰囲気とイカれた面構え。   声色だけは優しげだが、おいそれと信用できる訳もなかった。  『皆様、各々方の知己朋友の消息を案じ気が気でないことでしょう。   一体どこにいるのか、今も健在なのか、確かめたくて仕方がないことでしょう』   身振り手振りを交えた演説。   ――なるほど、胡散臭いを通り越してこいつは気味が悪い。   不気味な風貌と奇妙に紳士ぶった物言いが、余計にそれへ拍車をかけていた。  『ささやかながら、私がお手伝いを致しましょう』  「あん? お手伝いだ……?」  『さぁみんな、入っておいで』   神父か何かを連想させる態度で箱に映った男が言うや否や、新たな三人の人間が姿を現した。   体のシルエットを見るに、性別は女だろう。   中には男ならば誰もが涎を垂らすような豊満な胸をした人物もいたが、しかし生憎と食指は動かない。   ――邪な考えを巡らせるには、その光景はあまりにも異質だったからだ。  「…………」   一人は顔に。   一人は胸に。   一人は首に。   彼女たちは、一人の例外もなく布を巻いていた。   顔を隠している少女以外は、相当な美貌を有しているようだったが――  「……なるほどな。こいつら、ゾンビか」   ファバロの目は誤魔化せない。   彼は実際にゾンビと戦ったこともあれば、ゾンビの娘と共に行動をしたこともあるのだ。   何よりもその考えを確信へ至らせたのは、彼女たちに巻かれている布。   首や布ならばまだしも、顔までもをあんなに執拗に隠しているのはどう考えても異様である。   そこで察しがついた。大方あれは、死体の損傷を隠しているのだろうと。  『不肖ジル・ド・レェ、僭越ながらこの可憐な少女達を保護させて頂いております。   ご友人の方々は是非とも放送局までお越し下さい。彼女達もきっと喜ぶことでしょう』     白々しい。   全てのカラクリに気付いたファバロからすると、この一連の『放送』は実に滑稽なものに見えた。   だが、そうでない者はきっと容易く信じ込むに違いない。   いささか目立ち過ぎなきらいはあるが、確かに殺し合いを勝ち抜くための戦略としては優れたものだと思う。   ファバロは放送の終了を確認するなり、小型テレビをカードへ収納した。   それから、腕輪に嵌っているマスターカードで自分の位置を確認する。   ――F-1。放送局のあるE-1は、丁度真上のエリアだった。   悪魔と別れ、あてもなく歩く内にこんな所まで来てしまっていたらしい。  「マジかよ」   思わず、乾いた笑いが出た。   つくづく、ツイているのかツイていないのか分からない。 ●   ファバロは結局、E-1を訪れていた。   別に、放送の主……あのジルとかいう男を狙っている訳ではなかった。   少なくとも、今は。何かきっかけがあるまでは、あくまでも様子見に徹する。   賞金稼ぎの腕輪を持っていた頃ならば、進んで狩りに向かっていただろうが、今は腕輪もない。   それに――あの男からは、これまでに幾度となくやり合ってきた賞金首達と一緒くたにしてはならない何かを感じた。   さながら――悪魔か何かのような。邪悪で不気味なものを、画面越しにふつふつと感じたのだ。   ファバロはこう決めた。   暫くは適当なところで様子を伺って、チャンスがありそうならジル・ド・レェを倒す。   ゾンビ使いなんてものをこんな状況でのさばらせておいては、面倒なことになるのが目に見えている。   ファバロ・レオーネに殺される趣味はない。ましてや、あんな気味の悪い男に死後もいいように使われるなど御免だ。   だから、殺せる内に殺しておく。その代わり、あくまで勝負に出るのはチャンスがあった場合のみ。   彼らしい、ストイックとは縁遠い考え。   それでも、いざとなれば殺せる自信があるというから恐ろしい男だった。  「ん?」      さて、何処に身を潜めていようか。   なるべく見つからないような場所で、且つ放送局の要素を常に観察できる場所でなくてはならない。   おあつらえ向きな場所はないものかと周囲を見渡していると。      いつからそこに居たのだろうか。   はたまた、単にファバロが気付かなかっただけなのか。   ――金髪の美女が、白み始めた水平線を背景にファバロを見つめていた。   数秒、時が止まったような感覚へ陥る。しかしそれを引き裂いたのは、女の方だった。  「ちょっ、待て待て待て待て!」   彼女が手にしていた短い棒から――光の刃が突き出した。   それが攻撃的な行動であることはファバロにはすぐに分かり、思わず顔を引き攣らせる。   しかし予想外なことに、待てと言うと素直に女は動きを止めた。   よしよし。二度頷いて、彼女と目を合わせたまま、一歩、二歩と後退りしていくファバロ。   それから彼は、脱兎の如く走り始めた!  (冗談じゃねえ! 何だってよりにもよってイカレたゾンビ野郎のお膝元でこんなことになるんだよ!?)   当然、黙って逃がす美女(ヴァローナ)ではない。   見てくれはちゃらんぽらんの遊び人だが、彼女はファバロを倒すに値する強者だと見なしたのだ。   ヴァローナを発見する前の、あの冷たくすらある目。   自分の障害となり得る存在ならば、排除することに躊躇いはないという目。   あれは断じて、弱者のする目ではない。――そして強者ならば、自分の戦う相手に該当する。   ヴァローナが追う。   ファバロが逃げる。   早朝の鬼ごっこが、会場の端で密かに幕を開けた。   【E-1/放送局近辺/一日目・早朝】 【ファバロ・レオーネ@神撃のバハムート GENESIS】  [状態]:健康、疲労(小)、少し酔っている  [服装]:私服の下に黄長瀬紬の装備を仕込んでいる  [装備]:ミシンガン@キルラキル、投げナイフ@キルラキル  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)      黒カード:黄長瀬紬の装備セット、狸の着ぐるみ@のんのんびより、小型テレビ@現実  [思考・行動] 基本方針:女、自由、酒ってか? 手の内は明かしたくねえんだよ    1:なんだこの女!?    2:チャンスがあればジル・ド・レェを殺す。無理そうなら潔く諦める。    3:カイザルの奴は放っておいても出会いそうだよなあ。リタにも話聞かねえとだし。    4:寝たい。  [備考] ※参戦時期は9話のエンシェントフォレストドラゴンの領域から抜け出た時点かもしれません。  アーミラの言動が自分の知るものとずれていることに疑問を持っています。 ※繭の能力に当たりをつけ、その力で神の鍵をアーミラから奪い取ったのではと推測しています。  またバハムートを操っている以上、魔の鍵を彼女に渡した存在がいるのではと勘ぐっています。  バハムートに関しても、夢で見たサイズより小さかったのではと疑問を持っています。    【ヴァローナ@デュラララ!!】  [状態]:健康、『アーツ 奇々怪々』により若干だが身体能力上昇中  [服装]:白のライダースーツ  [装備]:ビームサーベル@銀魂、手に緑子のカードデッキ  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)      黒カード:グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS、カードキー(詳細不明)  [思考・行動] 基本方針: 武器を集めた後、強者と戦いながら生き残りを目指す。優勝とかは深く考えない。    0: アフロの男(ファバロ)と戦う。    1: 放送局の周辺で他の参加者を待ち受ける。    2: 強そうな参加者がいれば戦って倒したい。特に静雄や黒ヘルメット(セルティ)。    3: 弱者はなるべく手を掛けたくない。  [備考] ※参戦時期はデュラララ!!×2 承 12話で静雄をナイフで刺す直前です。 支給品説明 【狸の着ぐるみ@のんのんびより】 ファバロ・レオーネに支給。 旭丘分校の文化祭で、越谷小鞠が着て腹太鼓を披露した(させられた)時の着ぐるみ。余談だが、非常にかわいい。 【小型テレビ@現実】 ファバロ・レオーネに支給。 会場内で行われた放送や、定時放送を傍受できる。それ以上の用途はない。 *時系列順で読む Back:[[墜落する悪]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[墜落する悪]] Next:[[]] |037:[[Broken Promise]]|ファバロ・レオーネ|:[[]]| |056:[[Strange Fake]]|ヴァローナ|:[[]]|
*領主さまが見てる(?) ◆gsq46R5/OE  「酒も飲みてえけど、それより眠ぃや……」   悪魔アザゼルとの不本意な再会を終えた彼は、暫し歩いたところで休憩と洒落込むことにした。   それなりに長い距離を進んだと思うが、一向に参加者と出会う気配がないのは幸運とすべきか、不運とすべきか。   それは定かではなかったが――しかし当のファバロは、穏やかでいいやと呑気に構えていた。   どうせ、急いだところで何かが変わる訳でもないのだし。   男はどっしり構えて、自分の動く時が来るまでのんびりしていればいいのさ。   そんなもっともらしいことを言い訳に自分を甘やかしつつ、草の上に胡座を掻いて欠伸を一つ。  「だーいぶ空も白んできたしなぁ。あったけえベッドにでもありつきてえぜ……」   んでもって、朝起きたら何もかも元通り――とは、行かないだろうけどよ。   ファバロは苦笑しつつ、そのまま地面へ仰向けになって星空を見上げた。   血腥い殺し合いが行われていることが信じられなくなるほどの、見事な星々の絨毯がそこにはある。   まるで、上等な宝石箱だ。   女を口説く上で腐るほど使ってきた文句を、よもやこんな場面で使うとは思わなかったが。  「酒は支給されてなかったけどよ。よく考えりゃ、こいつがあるんだよな」      そんな絶景を見上げながら、取り出すのは青いカード。正式名を、ウォーターカード。   なんでも、これを使えば何でも好きな飲み物が手に入るらしい。   こんなものを出されては、全世界の酒屋が商売上がったりだろう。   益体もないことを考えながらカードを使うと――本当に、ファバロの望み通りに酒が現れた。   酒があるなら肴も欲しくなるが、流石にこの状況であまりのんびり晩酌してもいられない。   瓶を己の口元へ近付ければそれを傾け、一息にぐいっと呷る。  「――――かぁ~~~っ! うんめぇ……!!」   琥珀色の冷たく泡立った液体が上の方からどんどん落下してきて、シャワシャワと泡立ちながら、喉奥へ消えていく。   通り過ぎていった場所から冷たく冷やされていく感覚がひどく心地よかった。   あまりごくごくとは飲まずに、貪欲に啜るようにして呑む。   それがいい刺激になって、ますます食欲が湧いてきた。   こうなっては、堪えることなど拷問だ。   そしてファバロには、進んでそんな拷問を受けたがる嗜好はない。   今度は赤のフードカードを取り出して、そこから酒の肴を引っ張り出す。   酒の肴という漠然とした要求ではあったが、律儀にカードはファバロの要求通りの品々を出してくれた。      熱い熱い、香ばしい玉ねぎのフライに齧り付き、溢れてくる辛味が消える前に酒で押し流す。   こうして適した肴を用意することは酒の味を活性化させ、それどころか一緒に食べる肴の味すらも引き立てる。   あまり行儀の良い酒飲みではないファバロでも知っている、遊び人の常識だ。   それから数分あまりでファバロは酒を飲み干した。   しかし肴が余っていたので、躊躇なく二枚目のウォーターカードへ手を付けた。   彼の至福の時間は、合計で三十分強にも及んだ。  「ふー、旨かった旨かった。たまにはこうやって外で独り呑みってのもいいねえ」   心地よい満腹感と、少しばかりのほろ酔い気分。   おセンチな気分を吹き飛ばすには、やはりこうして酒を呑むに限る。  「つーかこのカードよ、本当に便利なのな。それに比べて……」   ファバロは、二枚の黒カードを取り出して嘆息した。   アザゼルと再会するよりも前、何よりも最初に確認した支給品の二つ。   残る一つがなかなか良い物だったからよかったが、これらは正真正銘、ハズレとしか言いようのないものだった。   一つは、小さな長方形の箱。説明によると、小型テレビなる品物。   そしてもう一つは、――恐らくタヌキであろう――謎の着ぐるみ。   後者の方は一目で明らかなハズレだとわかるが、前者は如何せん用途があるが使い道がないから質が悪い。   このテレビという道具は放送などを優先して傍受できるらしい。   ……もちろん、殺し合いの中で放送が流れる局面など定時に行われる以外にはそうそうない訳で。   一応ボタンを押すと電源だけは点いて白い画面が表示されるのだが、現状はあくまでもそれだけだった。   今一度その箱を取り出して、ああでもないこうでもないと言いながら弄る。   何か使い道はないだろうかと頭を悩ませながら。  「何だ、灯り代わりにでも使えってか?   ……冗談じゃねえ、やっぱハズレじゃねえか。灯りならこっちの白いカードで賄えるっての」   つくづくついてねえ――つぶやき、いっそ投げ捨ててやろうかと振りかぶった、その時。  『――の――ご覧頂け―――――様。私、―――ターのサ―――――、ジル・――――と申し――』  「……は? おいおい、どうした?」   光るだけで、何ら利点の見つからなかった箱。テレビ。   それが、突如男の声で喋ったのだ。   繭の言っていた放送の時間にはまだ早いにも関わらず、である。   慌てて投げ飛ばすべく踏み込んだ状態で体を止め、再び箱を覗き込む。   するとそこには……声の主らしき狂気的な出で立ちの男。   ファバロが彼を見て連想した単語は、『賞金首』の三文字だった。   賞金稼ぎとして狩ってきた悪党どもによく似た胡散臭い雰囲気とイカれた面構え。   声色だけは優しげだが、おいそれと信用できる訳もなかった。  『皆様、各々方の知己朋友の消息を案じ気が気でないことでしょう。   一体どこにいるのか、今も健在なのか、確かめたくて仕方がないことでしょう』   身振り手振りを交えた演説。   ――なるほど、胡散臭いを通り越してこいつは気味が悪い。   不気味な風貌と奇妙に紳士ぶった物言いが、余計にそれへ拍車をかけていた。  『ささやかながら、私がお手伝いを致しましょう』  「あん? お手伝いだ……?」  『さぁみんな、入っておいで』   神父か何かを連想させる態度で箱に映った男が言うや否や、新たな三人の人間が姿を現した。   体のシルエットを見るに、性別は女だろう。   中には男ならば誰もが涎を垂らすような豊満な胸をした人物もいたが、しかし生憎と食指は動かない。   ――邪な考えを巡らせるには、その光景はあまりにも異質だったからだ。  「…………」   一人は顔に。   一人は胸に。   一人は首に。   彼女たちは、一人の例外もなく布を巻いていた。   顔を隠している少女以外は、相当な美貌を有しているようだったが――  「……なるほどな。こいつら、ゾンビか」   ファバロの目は誤魔化せない。   彼は実際にゾンビと戦ったこともあれば、ゾンビの娘と共に行動をしたこともあるのだ。   何よりもその考えを確信へ至らせたのは、彼女たちに巻かれている布。   首や布ならばまだしも、顔までもをあんなに執拗に隠しているのはどう考えても異様である。   そこで察しがついた。大方あれは、死体の損傷を隠しているのだろうと。  『不肖ジル・ド・レェ、僭越ながらこの可憐な少女達を保護させて頂いております。   ご友人の方々は是非とも放送局までお越し下さい。彼女達もきっと喜ぶことでしょう』     白々しい。   全てのカラクリに気付いたファバロからすると、この一連の『放送』は実に滑稽なものに見えた。   だが、そうでない者はきっと容易く信じ込むに違いない。   いささか目立ち過ぎなきらいはあるが、確かに殺し合いを勝ち抜くための戦略としては優れたものだと思う。   ファバロは放送の終了を確認するなり、小型テレビをカードへ収納した。   それから、腕輪に嵌っているマスターカードで自分の位置を確認する。   ――F-1。放送局のあるE-1は、丁度真上のエリアだった。   悪魔と別れ、あてもなく歩く内にこんな所まで来てしまっていたらしい。  「マジかよ」   思わず、乾いた笑いが出た。   つくづく、ツイているのかツイていないのか分からない。 ●   ファバロは結局、E-1を訪れていた。   別に、放送の主……あのジルとかいう男を狙っている訳ではなかった。   少なくとも、今は。何かきっかけがあるまでは、あくまでも様子見に徹する。   賞金稼ぎの腕輪を持っていた頃ならば、進んで狩りに向かっていただろうが、今は腕輪もない。   それに――あの男からは、これまでに幾度となくやり合ってきた賞金首達と一緒くたにしてはならない何かを感じた。   さながら――悪魔か何かのような。邪悪で不気味なものを、画面越しにふつふつと感じたのだ。   ファバロはこう決めた。   暫くは適当なところで様子を伺って、チャンスがありそうならジル・ド・レェを倒す。   ゾンビ使いなんてものをこんな状況でのさばらせておいては、面倒なことになるのが目に見えている。   ファバロ・レオーネに殺される趣味はない。ましてや、あんな気味の悪い男に死後もいいように使われるなど御免だ。   だから、殺せる内に殺しておく。その代わり、あくまで勝負に出るのはチャンスがあった場合のみ。   彼らしい、ストイックとは縁遠い考え。   それでも、いざとなれば殺せる自信があるというから恐ろしい男だった。  「ん?」      さて、何処に身を潜めていようか。   なるべく見つからないような場所で、且つ放送局の要素を常に観察できる場所でなくてはならない。   おあつらえ向きな場所はないものかと周囲を見渡していると。      いつからそこに居たのだろうか。   はたまた、単にファバロが気付かなかっただけなのか。   ――金髪の美女が、白み始めた水平線を背景にファバロを見つめていた。   数秒、時が止まったような感覚へ陥る。しかしそれを引き裂いたのは、女の方だった。  「ちょっ、待て待て待て待て!」   彼女が手にしていた短い棒から――光の刃が突き出した。   それが攻撃的な行動であることはファバロにはすぐに分かり、思わず顔を引き攣らせる。   しかし予想外なことに、待てと言うと素直に女は動きを止めた。   よしよし。二度頷いて、彼女と目を合わせたまま、一歩、二歩と後退りしていくファバロ。   それから彼は、脱兎の如く走り始めた!  (冗談じゃねえ! 何だってよりにもよってイカレたゾンビ野郎のお膝元でこんなことになるんだよ!?)   当然、黙って逃がす美女(ヴァローナ)ではない。   見てくれはちゃらんぽらんの遊び人だが、彼女はファバロを倒すに値する強者だと見なしたのだ。   ヴァローナを発見する前の、あの冷たくすらある目。   自分の障害となり得る存在ならば、排除することに躊躇いはないという目。   あれは断じて、弱者のする目ではない。――そして強者ならば、自分の戦う相手に該当する。   ヴァローナが追う。   ファバロが逃げる。   早朝の鬼ごっこが、会場の端で密かに幕を開けた。   【E-1/放送局近辺/一日目・早朝】 【ファバロ・レオーネ@神撃のバハムート GENESIS】  [状態]:健康、疲労(小)、少し酔っている  [服装]:私服の下に黄長瀬紬の装備を仕込んでいる  [装備]:ミシンガン@キルラキル、投げナイフ@キルラキル  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)      黒カード:黄長瀬紬の装備セット、狸の着ぐるみ@のんのんびより、小型テレビ@現実  [思考・行動] 基本方針:女、自由、酒ってか? 手の内は明かしたくねえんだよ    1:なんだこの女!?    2:チャンスがあればジル・ド・レェを殺す。無理そうなら潔く諦める。    3:カイザルの奴は放っておいても出会いそうだよなあ。リタにも話聞かねえとだし。    4:寝たい。  [備考] ※参戦時期は9話のエンシェントフォレストドラゴンの領域から抜け出た時点かもしれません。  アーミラの言動が自分の知るものとずれていることに疑問を持っています。 ※繭の能力に当たりをつけ、その力で神の鍵をアーミラから奪い取ったのではと推測しています。  またバハムートを操っている以上、魔の鍵を彼女に渡した存在がいるのではと勘ぐっています。  バハムートに関しても、夢で見たサイズより小さかったのではと疑問を持っています。    【ヴァローナ@デュラララ!!】  [状態]:健康、『アーツ 奇々怪々』により若干だが身体能力上昇中  [服装]:白のライダースーツ  [装備]:ビームサーベル@銀魂、手に緑子のカードデッキ  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)      黒カード:グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS、カードキー(詳細不明)  [思考・行動] 基本方針: 武器を集めた後、強者と戦いながら生き残りを目指す。優勝とかは深く考えない。    0: アフロの男(ファバロ)と戦う。    1: 放送局の周辺で他の参加者を待ち受ける。    2: 強そうな参加者がいれば戦って倒したい。特に静雄や黒ヘルメット(セルティ)。    3: 弱者はなるべく手を掛けたくない。  [備考] ※参戦時期はデュラララ!!×2 承 12話で静雄をナイフで刺す直前です。 支給品説明 【狸の着ぐるみ@のんのんびより】 ファバロ・レオーネに支給。 旭丘分校の文化祭で、越谷小鞠が着て腹太鼓を披露した(させられた)時の着ぐるみ。余談だが、非常にかわいい。 【小型テレビ@現実】 ファバロ・レオーネに支給。 会場内で行われた放送や、定時放送を傍受できる。それ以上の用途はない。 *時系列順で読む Back:[[墜落する悪]] Next:[[逆境に耐える]] *投下順で読む Back:[[墜落する悪]] Next:[[逆境に耐える]] |037:[[Broken Promise]]|ファバロ・レオーネ|:[[]]| |056:[[Strange Fake]]|ヴァローナ|:[[]]|

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