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クラッシュ・オブ・リベリオン - (2015/09/09 (水) 14:23:27) の1つ前との変更点

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*クラッシュ・オブ・リベリオン ◆gsq46R5/OE   空に、一条の流れ星が走っていた。   しかしそれは天体現象とは輝きの質が異なり、また、星と呼ぶには妙な形をしている。   極めつけに、その流れ星は空から流れ落ちてくるのではなく――地より天へと流れ“上がって”いた。   自然ではあり得ない不可解な現象だが、生憎と、そもそもこれは自然現象などではない。   魔法のデバイス・ヘルゲイザー。   このバトル・ロワイアルに際して、支給品の一つとして与えられた代物を使用したというだけのことだ。      もっとも――、より正しくは“使用してしまった”と言うべきかもしれないが。  「……ねえ、新八?」  「なんでしょう、にこさん」   志村新八と矢澤にこ。   ヘルゲイザーへ跨りながら二人は、とてもいい笑顔で笑っていた。   男である新八はともかく、どう控えめに見ても美少女なにこなどはとても絵になる。   背景に夜空が広がっていることもあって、それはまさにアイドルの楽曲PVのような光景だった。   されど、隣の芝生は何とやら。   今彼らが浮かべている笑顔は、半ば諦め、ヤケクソ気味のものだ。   彼も彼女も、訓練された魔導師ではない。   なので当然、こんな見事なまでの飛行をしている以上、当然の問題が浮かんでくるわけで。  「これ、ちゃんと止まるんでしょうね?」  「………さあ……」    「さあじゃないわよっ!? えっ!? もしかしてこれ、アフターケア無しとかだったりするの!?」  「お、落ち着いて下さい」      混乱するにこを宥めて、新八は考える。   確か、この箒を動かしたのはにこだった筈だ。   寒……もとい個性的な決め台詞と決めポーズを取って、上機嫌そうにしていたのを覚えている。  「……なんか、凄い失礼なこと考えてない?」     ジト目で指摘するにこから真剣そのものな表情で目を逸らす新八。   それからすぐに彼は何かに気付いたように目を見開き、「あっ」と声をあげた。  「そうか、分かりましたよにこさん!」  「本当!?」  「そもそも、この『箒を飛ばす魔法』を使ったのはにこさんじゃないですか。   なら、きっと止められるのもにこさんなんですよ。まったく制御不能な欠陥品ってわけでもないでしょうし」  「確かに……、そういえばそうね」   となると、それこそ世に言う魔法使いさながらに箒で滑空し、ゆっくり降りていくことになるのだろう。   さっきの魔法……『箒星』には面喰らったが、これだってその内止まる筈だ。   魔法を一度使っただけでにこはあれだけ疲労感を感じたのだから、きっとそう遠くない内に。   後はそこから、このヘルゲイザーを操って安全に着地すれば一件落着。  「でも、そう上手くいくかしら……」     にこは自分達の真下に見える地面を見、表情を曇らせる。   結構な高度だ。   厳密な高さを測らなくとも、この位置から墜落などしようものならどうなるかは想像に難くない。   そして、ヘルゲイザーに乗っているのは彼女だけではないのだ。   もしもにこがミスをすれば、新八も大事故に付き合わせることになってしまう。     「大丈夫ですよ、多分」  「多分って、アンタねえ……」  「為せば成る、為さねば成らぬ、ですよ。   そりゃ僕だって怖いですけど……でも、不思議と心配はしてません。   にこさんなら、なんだか当たり前にこなしちゃうような気がするんですよね」  「新八……」  「なんたって、世界のYAZAWAですし?」  「アンタ、後で絶対痛い目見せてやるからね。覚えてなさいよ」   ギロリと鋭い視線で射抜かれた新八は、口笛を吹いてまた目を逸らした。   まったく、余計な一言がなければちょっと格好いいかなとも思ったのに。   にこは唇を尖らせる。   ……その矢先だった。   今まで上向きに進行を続けていたヘルゲイザーが急に停止し……そのまま、コントロールを失う。  「にこさん!」  「分かってるわ!」   にこは箒の柄をがっしりと握り締めると、自分がこれに跨がり、空を飛ぶ姿を強くイメージした。   途端、襲いかかってくる倦怠感。   箒星を行使した時に比べれば微量だが、それでもこの感覚だけはどうも慣れない。     「こんな箒に振り回されてお陀仏なんて、笑い話にもなりゃしない……!」   しかし、そこは矢澤にこ。   少ない魔力を持っていかれる感覚を堪え、自由落下に身を任せるばかりだった箒を、その場へ留めることに成功する。   額に浮いた脂汗を拭いたい思いだったが、今片手だけでも箒から外そうと思えるほどの余裕はなかった。   これでようやく、第一段階。   次にこの箒を安定させつつ、地面まで帰り着いて始めて成功と呼べるのだ。  「ファイトですよ、にこさん!」  「……応援ありがと。にこにー、頑張っちゃうんだから!」   ゆっくりと。   ゆっくりと。   ゆっくりと。   箒が安定する。   箒が、平衡感覚を取り戻していく。   にこの大きな息遣いがした。   少しずつ――少しずつ。   箒が高度を下げていく。   凄い、と素直に新八は思った。   きっと自分達以上に平凡な、殺し合いとは無縁の生活を送ってきただろう女の子が、今必死に頑張っている。   しかも、それは無駄な頑張りでもヤケクソでもない。   ヘルゲイザーの扱いを土壇場の中で覚えながら、格段にコントロールを安定させてきているのだ。   一際強い風が吹いた。  「ぶっ」   にこの小柄な体が、それに合わせて大きく揺らぐ。   しかし、後ろには新八がいるのだ。   筋骨隆々とまではいかずとも、大の男がクッションになっていれば、それしきの揺らぎ程度で放り出されたりはしない。   逆に、新八の方が危なかったくらいである。   やれやれ――風圧に靡く前髪を片手で押さえ、新八は微笑んだ。  (なんだ。全然、寒くなんかないじゃないですか)   その時、ヘルゲイザーが全てのコントロールを失った。   ヘルゲイザーから放り出されながら、新八は、ゼラチンのような雨を浴びた。 ●  「あ゛……く゛…………」   志村新八は、地へと倒れ伏していた。   その後頭部からはじっとりと血が漏れ、胴も所々赤い汚れを帯びている。   立ち上がろうにも、力がまったく入らない。   どうにかこうにか首から上だけを動かして、自分の足を見て――あ、と思った。   右足が、膝の下辺りから曲がってはいけない角度に曲がっていた。   左足が、足首の先を肉団子か何かのように潰れさせていた。   これでは、なるほど確かに歩けないわけだ。  「な゛、にが」   何が起きた。   にこさんがミスをした?   いや、違う。彼女の操縦は   ――だとしたら、探さないと……   動かない体を動かそうと全身で力を込め、どうにか倒れた体を転がすことは出来た。   瞬間、走る――激痛。   声にすら出来ないような、神経を直接嬲られるような痛みが新八の全痛覚を支配する。   無理もない。   彼は、下を見るだけで高所恐怖症でなくともぞっとするような高度から、受け身さえ取れずに転落したのだから。   考えてみれば当たり前のことだが、少なくとも今の新八にはその程度の余裕さえなかった。   意識が飛びかけるほどの痛みに耐えて体を転がした褒美なのか、幸いすぐににこの姿は発見できた。   新八と同じように地面へ倒れて、どうやらまだ意識も取り戻していないようだ。  「に゛……こ、さん…………」   這うようにして、一挙一動ごとに激痛へ苛まれながら新八は彼女の元へと急ぐ。   そうして辿り着いた頃には、既に這々の体だった。   歩けば五秒とかからない間合いの移動に数分もの時間を費やしたことからも、彼の困憊具合が窺えるだろう。      ――困憊? いや、違う。  「大丈夫、ですか。にこ、さん……」   砕けて軋む手を伸ばして、その肩を揺さぶる新八。   すると、彼女の首から上だけががくりと彼の方を見た。  「―――」   その顔は、美しいスクールアイドルのものではなかった。  「あ……」   左から右にかけて、顔面に抉れたような傷痕が走っている。   恐らく顎下より入ったのだろう傷は、その可憐な容貌を割れたスイカのように変えてしまっていた。   そして彼女は新八と違い、墜落の際にも打ち所が悪かったのだろう。   左の側頭部がぐしゃぐしゃになり、中身をでろでろと垂れ流し、そこに羽虫が一匹止まっている。   それはもう、輝かしいスクールアイドルの姿でも、箒に跨がり夜空を駆け抜ける魔法少女の姿でも何でもない。   ただの、死体だった。  「う……あ、ぁッ…………――――――!」   瞳から慟哭の涙を溢れさせながら、新八は喉が嗄れるような声にならない叫びをあげた。   落ちる瞬間に浴びたゼラチンのような質感の雨が何であったのかを知り、嘔吐さえした。   程なくこれから自分がどうなってしまうのかを知り、女の子一人守れず息絶える不甲斐なさにまた叫んだ。   にこの死を知ってから数分間彼はそうして泣き、吐き、叫び続け。   十分が経つ頃には、ぴくりとも動かなくなっていた。   あの高さから落ちて、無事なわけがない。   木に引っかかりでもしない限りは、即死かそうでないかの些末な違いだ。   そして新八は後者だった。   四肢をほぼ使い物にならない状態にされ、割れた頭蓋から出血し、内臓も落下の衝撃でズタズタ。   そんな有様となりながらも、彼は残酷なことに、僅かな時間だけ生かされた。   同行者の末路と、自分の結末と、これからへの不安を抱きながら残された時間を生き、彼はそれから呆気なく死んだ。 &color(red){【矢澤にこ@ラブライブ!  死亡】} &color(red){【志村新八@銀魂  死亡】} &color(red){【残り54人】} ●   ――仕留めた。   夜闇に飛ぶ、人を乗せた飛行物体がコントロールを失って墜落していくのを確認し、東郷美森は呟いた。      温泉を後にし、市街地へ向かうべく車椅子を進めていた東郷が『それ』に気付いたのは偶然だった。   そろそろ空が白み始める頃ね、などと思って空を見上げた時。   東郷の居る地点よりそう離れていない位置の空に、何かが飛行していることに気が付いたのだ。   最初はドローンのような飛行装置か、そうでなくとも何かしらの道具であろうと思っていた東郷だったが、よく注視しているとどうもそうではないらしい。飛行物体の上に、人のような姿が視認できるのがその証拠だった。   無論、勘違いの可能性も十分にある。   しかし、もしも本当にあれを駆っているのが人間ならば――逃す手はない。東郷はそう判断し、行動した。   わずか一瞬の内に勇者への転身を終え、射程に優れる狙撃用の巨大な銃を取り、後は簡単だ。   銃を扱うことに長けた勇者としての技量を、遺憾なく発揮する。   最初の接敵では不覚を取ったが、そもそも『敵がいる』ことに気付かれてすらいない状況ならば東郷に敵はない。   飛行物目掛け、一発を見舞った。   当てられずとも、混乱を誘って次弾で仕留める腹積もりだったが、弾丸は首尾よく初弾で命中したらしく。   見る間に飛行物体は制御を失っているのが素人目にも分かる落下をし、乗っているシルエットが投げ出されるのを確認すると、そこで東郷は変身を解除し、前述の言葉を口にしたのだった。   あの高さならば、まず即死。   そうでなくとも、致命傷。   よしんば生き永らえたとしても、そこそこの手傷を与えられたのは間違いない。   東郷としては無論暗殺に成功していた方が都合が良かったが、生きていられてもリスクは皆無だ。      月明かり程度の光源があるとはいえ、まだ辺りは暗い。   この闇の中で、姿の見えない襲撃者に当たりをつけるのは尋常なことではない。   当然、リーチのある銃を持っていれば容疑者の可能性は高まるが……東郷の場合は、その心配もない。    転身を解けば、凶器は消えるのだから。   今後、もしも対主催の中へ潜り込まねばならない事態が生じたとしても。   東郷美森が今の殺人で不利益を被ることは、百パーセントあり得ない。  「……変わっちゃったわね、私も」   東郷は車椅子を進める前に、ぽつりとそれだけ呟いた。   されども。その胸中に、迷いのようなものは一切存在しない。   ただ、終わらない悲劇を終わらせるため。そのためなら、少女は外道にでも畜生にでもなれる。 【G-4/一日目・早朝】 【東郷美森@結城友奈は勇者である】 [状態]:健康、両脚と記憶の一部と左耳が『散華』、満開ゲージ:4 [服装]:讃州中学の制服 [装備]:車椅子@結城友奈は勇者である [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)     黒カード:東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である [思考・行動] 基本方針:殺し合いに勝ち残り、神樹を滅ぼし勇者部の皆を解放する    1:南東の市街地に行って、参加者を「確実に」殺していく。    2:友奈ちゃん、みんな……。    3:自分よりも強い参加者は極力相手にしない。 [備考] ※参戦時期は10話時点です ●   若き二つの芽が断たれた、その半時ほど後のことだった。   今はもう動かない二つの屍が転がる『そこ』へ、降り立つ者の姿がある。   全身に痛手を負った、両翼の悪魔。   今はある理由から人間、ひいては殺し合いを良しとせぬ参加者へ力を貸している身の彼を、アザゼルという。  「奇遇だな」   先刻、愚かな人間を一人空より投げ捨ててやったばかりだというのに。   よもや、その矢先に墜落死体などと出会すとは。   アザゼルは悪魔として、これまで幾度となく人を殺め――そうでなくとも、その死を目撃している。   そんな彼だから、全身を隈なく打撲し、手足が歪に痛めつけられた少年の死体を見れば、それが墜落死の類であろうと察しを付けるのは実に容易かった。     「しかし、近くにこれほどの死体を生めるだけの高所もない。   あるとすれば空――俺のように宙を舞うことの出来る人間が、俺と同じやり方で殺したか。もしくは」   二人の近くへ落ちている箒型デバイス、ヘルゲイザーを拾い上げ、小さく微笑んで。  「撃ち落とされたか。不運なことだ」   彼は、名も知らない哀れな犠牲者に同情はしない。   しかし、最後に役に立ってくれたなと傲岸な感謝を抱いてはいた。   少年の方は碌な支給品も持っていないようだが、この箒はそこそこ有用かもしれない。   悪魔らしい略奪精神で、アザゼルはヘルゲイザーをまず奪い取る。   少女に抱かれるような形で落ちたことが幸いしたのか、特に損傷した様子がないタブレットPC。   用途の判別は付かなかったが、後に検証してみる価値はあるか。   そう思い、アザゼルはこれも奪い取ることにした。   それからにこの持つ黒カードを憚ることなく取り出し、死者へ黙祷すらすることなく、それを拝借した。   アザゼルはこの通り、傍若無人で得手勝手な悪魔だ。   殺し合いに乗ってこそいないが、それで他の参加者と足並みを揃えられるかといえば難しいに違いない。   ファバロ・レオーネを嘲ったように。   まだ本性を表す前の浦添伊緒奈へ、支給品を強請ったように。   基本、彼の世界は自分を中心としている。劣った存在である人間ごときに、配慮などは期待できない。    故に当然死者は顧みず、ただそれが生む利益のみを重視する。  「さて。どうやら目敏く空路を狙う輩も居るらしい。一つ休憩がてらに、俺も支給品を検めるとするか」   先ずはにこから拝借したものでなく、自分に与えられたカードの一枚を引き抜いた。     「……カード。外れのようだな」   黒カードより出てきたのは、数十枚のカード束だった。   言わずもがな、どう見ても凶器にはなりそうにない。   不機嫌そうに舌打つと、アザゼルはそのカードを纏めて投げ捨てようと手を振り上げ――  「――――るぅ」   ――ようとして、何かを聞いた。  「るぅは、どこ?」  「……何?」   怪訝な顔をしてカードを見、さしものアザゼルも僅かに驚いた様子を見せた。   そのカードには、少女の姿が描かれていた。   そしてそれが何かを憂いるような表情で、「るぅ」なる人物はどこに居るのかと、アザゼルへ問うているのだ。   彼はまだ知らない。   このルリグ――『タマ』こそが、現状主催者・『繭』へ最も近い存在であることを。   アザゼルが望んでやまない『借りを返す』機会を大きく引き寄せる、重大な意味を持った代物であることを――。 【G-3/温泉周辺/1日目・早朝】 【アザゼル@神撃のバハムート GENESIS】  [状態]:ダメージ(大)  [服装]:包帯ぐるぐる巻  [装備]:ホワイトホープ(タマのカードデッキ)@selector infected WIXOSS  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)      黒カード:不明支給品1~2枚、イングラムM10(32/32)@現実、タブレットPC@現実、ヘルゲイザー@魔法少女リリカルなのはVivid、矢澤にこの不明支給品1枚  [思考・行動] 基本方針:繭及びその背後にいるかもしれない者たちに借りを返す    0:……何だ、こいつは。    1:借りを返すための準備をする。手段は選ばない    2:ファバロ、カイザル、リタと今すぐ事を構える気はない。    3:繭らへ借りを返すために、まずは邪魔となる殺し合いに乗った参加者を殺す。    4:この死体(新八、にこ)どもが撃ち落とされた可能性を考慮するならば、あまり上空への飛行は控えるべきか。  [備考] ※10話終了後。そのため、制限されているかは不明だが、元からの怪我や魔力の消費で現状本来よりは弱っている。 ※繭の裏にベルゼビュート@神撃のバハムート GENESISがいると睨んでいますが、そうでない可能性も視野に入れました。 支給品説明 【ホワイトホープ(タマのカードデッキ)@selector infected WIXOSS】  アザゼルに支給。  小湊るぅ子のルリグ・タマヨリヒメ(タマ)が収納されたカードゲーム『ウィクロス』のカードデッキ。  外見は白髪ツインテールの幼い少女。タマ以外のカードは殆どがただの紙切れである。  ロワに関する説明はどうやら受けていないようだが――。 *時系列順で読む Back:[[Libra]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[Libra]] Next:[[]] |067:[[芸風ノーチェンジ]]|矢澤にこ|&color(red){GAME OVER}| |067:[[芸風ノーチェンジ]]|志村新八|&color(red){GAME OVER}| |050:[[New SPARKS!]]|東郷美森|:[[]]| |060:[[墜落する悪]]|アザゼル|:[[]]|

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