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*Sacrament ◆zUZG30lVjY 放送が終わってそれなりの時間が経過してもなお、ポルナレフはショッピングモールから動こうとしなかった。 ポルナレフ個人の用件はとっくに全て終わっている。 食事を摂り、休息を取り、店頭の目ぼしい道具も一通り回収し終わった。 今すぐにでも出発できる準備は整っているのだ。 それでもショッピングモールを離れようとしない理由は―― 「――やはり気になるか」 「まぁな」 ポルナレフと綺礼の視線の先。 フードコートの端に設置されたベンチに、件の少女が膝を抱えて座り込んでいる。 彼女が目を覚ましたのは放送の直前だった。 ジル=ド=レェによる宣告を伝える暇もなく放送が始まり、そこで呼ばれた名前を聞くなり、すぐにああして塞ぎ込んでしまったのだ。 「ありゃ重症だぜ。泣き喚いてくれた方がまだマシだ」 放送を聞いた少女の様子はまるで抜け殻のようであった。 泣き崩れるという激しい情動すら忘れたかのように、虚ろな目であそこまで歩いて行き、ただの一言も発することなく膝を抱えた。 文章にすればそれだけだが、実際に目の当たりにしたときの痛々しさは尋常ではない。 思わず呼び止めることすら忘れてしまったほどだ。 「だが、見捨てるつもりはないのだろう」 「当然だ。こんな場所に置いていったら、次の放送で真っ先にアイツの名前が呼ばれちまう」 ポルナレフは一切の迷いなく断言した。 少女の素性は愚か名前すら知らなかったが、そんなものは見捨てる理由にはなりはしない。 そもそも後になって見捨てるくらいなら最初から助けようとはしていない。 彼女を放置して立ち去るのは絶対に選ばれ得ない選択肢だ。 「しかし、いつまでもここに居座るわけにもいかん」 「だから言われなくても分かってるって。くそっ……」 綺礼の発言はポルナレフを咎めているものではなく、あくまで現状を再確認しているだけのものだ。 故にいくら都合が悪くても否定できず、否応なしに厳しい現実を突きつけられてしまう。 ポルナレフには少女を見捨てるつもりなどないが、ショッピングモールに居座り続けるのはリスクが高いのもまた事実。 便利な施設を他の連中が放っておくとは思えず、そんな人の集まる場所を危険人物が無視するはずもない。 放送が終わり、他の連中が移動を始めたであろう現状、無策でここに留まるのは危険過ぎる。 少女が立ち直るまで延々と待っているわけにはいかない。 「……よし!」 そろそろ思い切った手段に出るときだ。 意を決して席を立ち、少女の元へ歩み寄る。 武器になりそうなものは全て取り上げてある。 「なぁ、お嬢ちゃんよ」 少女の反応はない。膝を抱えて顔を伏せたままだ。 ポルナレフは構わず言葉を続ける。 「気持ちはわかる、なんて無責任なことは言わねぇ。だがな、ここでじっとしてたら危険だってことは理解できるだろ」 これまでの四半日で、ポルナレフは早々にDIOと遭遇した以外に危険人物と呼べる者と出会っていない。 最初は『殺し合いに乗る奴なんて少数派だろう』と高を括っていたのだが、死亡者十七人という現実は、甘い見通しを打ち砕くには充分過ぎた。 限られた少数の危険人物ばかりが殺しに手を染めているのなら、いくらなんでもこんなハイペースで死者が出るとは思えない。 DIOのような悪党が想像以上に多いのか、数時間のうちに殺意を固めた者が多かったのか、或いはその両方か。 いずれにせよ、この近辺にも少なからぬ数の殺戮者が存在するとみて間違いない。 そんな連中が放送を期に次なる獲物を探して動き出したとしたら。 このショッピングモールは、その手の連中にとっては絶好の狩場と映ることだろう。 「俺達はもうじきここを離れるつもりだが、お前をここに置いていくおくつもりは毛頭ねぇ。  担ぎ上げられて連れて行かれるか、悲しむのを後回しにしてついて来るか。好きな方を選びな」 「不器用にも程があるな」 「うっせぇ、神父。で、どうするんだ、嬢ちゃん」 少女はポルナレフの声自体が聞こえていないかのように黙り込んでいたが、やがて膝から手を離し、ゆっくり立ち上がった。 提案を聞き入れてくれたと思い、ポルナレフの顔に喜色が満ちる。 ――それが油断になった。 「…………い」 「ん? どうした」 「……ごめんなさい!」 少女がポルナレフの顔めがけて左腕を振るう。 不意打ちだったとはいえ止められないはずもなく、ポルナレフは容易に少女の手首を掴み止めた。 その手に握られていた『青のカード』が、陶器製の容器に姿を変える。 ティーポット。 あらゆる飲料を出現させるカードから現出した紅茶という名の『熱湯』が、ポルナレフの無防備な顔面に直撃する。 「熱っちぃ!?」 どれだけ肉体を鍛え上げようと表皮の感覚までは鍛えられない。 不意打ちで浴びせ掛けられた熱湯に、ポルナレフは思わず少女の腕を離してしまった。 それと同時に、少女のもう一方の手にあった『赤のカード』が一食分の食料を出現させる。 負傷した右手でもカードをつまんでおく程度の握力は残されている。 洋食を乗せた食器が床に落ち、料理が無残に床へ飛び散る。 少女はすぐに屈みこんで食器の肉用ナイフを拾うと、立ち上がる勢いを乗せて切っ先をポルナレフの腹部に突き立てた。 「うおっ……!」 「…………っ!」 ポルナレフが身を屈めた隙を突き、少女はポケットから黒のカードを抜き取り、脇をすり抜けて走り出した。 足を止めることなく黒のカードを解放――手元に現れたのは縛斬・餓虎。 偶然にも少女が最初から所持していた武器だ。 そのまま走り去ろうとする少女の前に、黒衣の僧侶が立ち塞がった。 「待て」 「嫌や! どいて!」 少女は縛斬・餓虎を振りかざし、綺礼めがけて振り下ろした。 次の瞬間、少女の身体は回転しながら宙を舞っていた。 「――え?」 刃を振り下ろす勢いを利用して投げられたのだと気付くより先に、少女は背中から床に叩きつけられていた。 肺の空気がすべて逃げ出し、声にならない苦悶の声を漏らすことしかできない。 ポルナレフも少女も知り得ぬことだが、言峰綺礼の格闘術は八極拳をベースとしている。 八極拳は打撃技ばかりが注目される拳法であるが、密着寸前の至近距離での闘いを前提としているため、当然ながら投げ技にも秀でている。 素人が扱う刃物など何も持っていないのと変わりはしない。 「か……は……っ」 少女は身悶えすることすらできず、仰向けのまま痛みに喘いでいた。 よく斬れる刀を持っていようと所詮は少女。ポルナレフや綺礼との実力差は歴然だ。 ポルナレフを出し抜けたのは無力な少女故に油断を誘えたからであり、凶行を目の当たりにしていた綺礼に敵う道理などなかった。 「しまった、加減が足りなかったか」 悶絶する少女を見下ろしながら、綺礼は反省を口にした。 心得のある格闘者が見れば、綺礼の投げが念入りな手加減を重ねたものだったと分かったに違いない。 それでもなお、受け身すら知らない少女にとっては充分なダメージを与えるに足るものであった。 「しばらく休んでいれば痛みは引く。ポルナレフ、傷の具合はどうだ」 「へっ、ちょとばかり驚いたが大した傷じゃねぇよ。それよりそっちは。やり過ぎてねぇだろうな」 ポルナレフは平然とした顔で綺礼に合流した。 言葉の通り、熱湯を浴びた応急処置も青カードの冷水で済み、腹に受けたナイフも大した傷にはなっていない。 「これでやっと落ち着いて話ができそうだな」 「…………嫌、や」 仰向けになったままの少女の瞳から、大粒の涙がぼろぼろと溢れる。 痛みに泣いているのでも、ポルナレフとの対話を拒絶しているのでもない。 少女の瞳はどこか遠くを見つめて涙を滲ませていた。 「うちは、μ'sの……ために……ううう……」 少女は止め処なく涙を流し続ける。 ポルナレフは綺礼と顔を見合わせ、もうしばらくここに留まることを、ため息混じりに決めた。     □  □  □ ――東條希。 件の少女を救出してから数時間。綺礼は初めて少女の名を知るに至った。 少女――東條希のとりとめもない嗚咽混じりの呟きを聞く限り、彼女の知人のうち二人が命を落としたことは間違いないようだ。 南ことり。矢澤にこ。 どちらかがキャスターの連れていた『亡骸』なのか、あるいはどちらでもないのか。 いずれにせよ、今そのことを伝えるのは逆効果だろう。 「うう……えぐ……」 「ああもう、そんなに泣くんじゃねぇよ。可愛い顔が台無しだぜ?」 ポルナレフは必死に東條希を宥めようとしている。 慰め方がまるで軟派の口説き文句なあたりに性格が出ているように思える。 彼も彼なりに自分の引き出しの範疇で努力をしているらしい。 しかし、柔和に説き伏せることが常に最適解とは限らない。 時には強引に話を聞き出す必要もある。 「……ほんとやりづらいぜ……」 「替わろう。懺悔を聞くのは慣れている」 「む……それじゃ本職に一旦バトンタッチだ」 俗にいう懺悔は教会が定義する七つの秘跡の一つであり、聖職者の重要な職務だ。 秘跡であるが故に、本来は信徒以外には施されることのない恩恵である。 が、そもそも『懺悔』になるのかどうかもも分からないのだから、気にするだけ無駄というものだ。 「東條希。単刀直入に聞こう。君は何を望んでいる」 東條希の嗚咽が止まる。 しばらくの沈黙の後、少女の口がようやく意味のある文章を紡いだ。 「……ウチの、望み……? そんなの、決まっとるやん……」 「話してみるといい。例えどのような望みであっても、今ここで君を害することはないと約束しよう」 「…………」 再びの沈黙。逡巡。そして―― 「ぐちゃぐちゃや……いろいろあり過ぎて、どれが一番かも……」 「目先の目的と最終的な目標を分けて考えろ。今すぐ何がしたいかと、この殺し合いの果てにどんな結末を迎えたいのか。まずはその二つだ」 少しずつ確実に、東條希の思考を整理させていく。 彼女は自分自身の考えていることが自分でもよく分からなくなっている。 そのせいで、ポルナレフから奪った一枚のカードだけを頼りに逃げようとする無謀に打って出たのだ。 飲料と食料を武器に使う発想は、咄嗟の思いつきとしては悪くなかったが、タイミングが最悪だ。 仮に逃げ遂せたとしても、黒カードが一枚だけでは遠からず命を落とすのは間違いない。 どうせ逃げ出すなら、従順なふりをして最大の利益を得られるタイミングを待つべきだった。 東條希はそれすらも分からないほどに混乱していたのである。 「μ'sの、みんなのために……」 「…………」 「ウチは……生き残って……みんなを助けるんや」 「つまり他の誰かを手に掛けるということだな」 「そうや!」 東條希は涙で歪んだ顔を上げ、声を荒げた。 こんなにも感情的になった彼女の声は初めて聞く。 「何が悪いんや! こんな場所に連れて来られて! 殺さなきゃ帰れんなんて言われて……誰でもそうするに決まってる!  殺すのだっておかしくない! 見捨てるのだってそうや! ウチは……ウチは間違ってなんか、ない!」 「ああ、その通りだ」 「そう思ってるの、絶対ウチだけやない! せやから十七人も……え?」 「殺さなければ生き残れない状況に追い込まれ、生き残るために人を殺す。或いは誰かを生き残らせるために人を殺す。  これを罪と呼べるとでも? 罪を負うべきは繭と名乗る元凶だ。己の快楽のために殺人を犯すのでない限り、君が罰せられる理由はない」 綺礼は東條希の憤りを淡々と肯定した。 否定されるとばかり思い込んでいたのか、東條希はただ呆然としていた。 「お、おい神父!?」 「無論、罰するか否かと殺人を止めるか否かは別の問題だ」 慌てるポルナレフを宥めながら言葉を続ける。 「君を止めようとする者がいたとしても、その者を咎めることは誰にもできない。  私とて殺人を推奨しているわけではないことだけは心に留めておいてもらいたい」 信仰に喜びを見いだせず、殺戮すら伴う陰の部署に望んで属した身ではあるが、宗教者としての綺礼の姿勢は本物だ。 父のみならず、誰もが綺礼の献身ぶりを評価した。果ては枢機卿かと持ち上げられることすらあった。 内面の虚を知らぬ者にとって、言峰綺礼という司祭は信頼を寄せるに値する存在であるらしい。 そして恐らくは、東條希にとっても。 「さて、君の最終的な目標は見えた。次は直近の目的――有り体に言えば、この後どう動くかだ。  仲間を救うためにどう動くべきなのか。まずはその第一歩を考えろ。選択肢は幾つもある」 「……ウチは……」 東條希は再び黙りこんだ。 しかし、今回は混乱や困惑のために沈黙したわけではない。 自分の内面を見つめ、考えを深める過程としての沈黙だ。 「ウチはμ'sのみんなを護りたい。みんなを助けたい。どんなに取り繕っても、これが本音や。  そのためなら何だってやる。人殺しだって……優勝だって……でも……」 「…………」 「ことりちゃんと、にこっち……二人を殺した人らだけは、絶対に許せへん。  すぐにでもどうにかしてやりたいって思っとる。矛盾しとるかもしれへんけど、それだけは絶対や」 太腿の上できつく拳が握られる。 折れた骨が治りきっていない右拳ですら、最大限の力を込めて握り締められている。 「確かに矛盾と言えるかもしれんな。だが……」 勝ち残りを狙うだけなら、積極的に人を殺す連中は放っておくのが最善手だ。 放置しておけば労せずして目的に近付くことができるのだから。 無論、放置したために死なせたくない者が殺されてしまう恐れはあるので、絶対に矛盾だとも言い切れないが。 「そいつは正当な感情だ。おれが保証する」 そう口にしたのはポルナレフだった。 剽軽さすら感じられる表情は鳴りを潜め、真摯な眼差しで東條希を見据えている。 「だがな、これだけは忘れるな。復讐ばかりに気を取られて周りが見えないようにはなるんじゃない。  さもなけりゃ、大事なものを今以上に失っちまうことになる」 「そんなこと……ほんとに、あったん?」 「恥ずかしながらな。てめぇの復讐のために突っ走りすぎて、危うく友人を死なせるところだった」 ひどく実感の篭った声で、ポルナレフは東條希に言い聞かせる。 これほどまでに説得力のある進言もそうはあるまい。 「よしっ。これで嬢ちゃんのやりたいこともはっきりしたわけだ。  神父、さっきの戦車にはもう一人くらい乗れそうだよな」 「問題ない。窮屈さを気にしなければ、普通の人間なら四人は乗り込める」 神威の車輪のもともとの持ち主は身の丈二メートルを越える巨漢である。 御者席も相応に広く、綺礼やポルナレフが長身とはいえ少女一人を乗せるだけの余裕は充分に残っている。 三人で出発することを前提に会話を進める綺礼とポルナレフの前で、東條希は戸惑いを露わにした。 「そういうわけにはいかんよ。ウチは捕まるわけには……」 「捕まえるんじゃない。おれ達がお前と一緒に動くんだよ」 「えっ……えっ? ウチ、これからも人を殺す気で、なのに……え?」 ポルナレフは一体何を言っているんだとばかりに肩を竦めた。 「身勝手な理由で人殺しをする奴ならこの場でぶった斬ってるぜ。けどあんたはそうじゃない。  かといって、あんたが誰かを殺すのをみすみす看過するわけにもいかねぇ。  だったら一緒に動いていちいち止めてやるのが一番確実だろ」 「君にもメリットのある話だと思うが。一振りの刀を携えて放浪しても次の朝は迎えられまい」 「それに復讐相手が悪党だっていうなら、おれは止めねぇ。何なら手ぇ貸してやるぜ」 東條希は大きな目を丸く見開いたまま言葉を失っていた。 鳩が豆鉄砲を食ったようとはまさにこのことか。 きっとこの少女は、自分の主張が拒絶され、否定されるとばかり思っていたのだ。 殺人を責められないことも、前提付きではあるが復讐を肯定されることも、完全に予想外だったに違いない。 ましてや全てを知った上で当然のように同行を求められるなど。 「少し待て。戦車を出してこよう」 綺礼は神威の車輪を呼び出すためにフードコートの外へ出た。 あれほどのサイズの宝具だ、屋内で呼び出しては移動時に壁を壊さなければならなくなってしまう。 ポルナレフも後をついて来て、少し遅れて東條希も追いかけてくる。 「下がっていろ」 黒のカードから解放された神威の車輪が路面のアスファルトを軋ませる。 二頭の神牛が開放感を喜ぶように嘶いた。 「う、牛ぃ!? 何でや、戦車だったんと違うん!? 何で牛?」 「君が想像しているのは現代兵器の『戦車(タンク)』だな。これは古代兵器の『戦車(チャリオット)』だ」 「『銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』の使い手がチャリオットに乗るってのもなかなか粋だぜ」 悠々と御者席に乗り込む綺礼とポルナレフ。 しかし東條希は、巨大な新牛にちらちらと視線を送りながら立ち尽くしている。 「別に噛みつきやしねぇよ。ほら、掴まりな」 ポルナレフは左手――東條希の負傷していない腕を握りやすい手を伸ばし、少女の身体を御者席に引っ張りあげた。 何はともあれ、これでようやくショッピングモールを発つ準備ができた。 綺礼は手綱を取ってゆっくり戦車を走らせ始めた。 「これでよかったのか、ポルナレフ。いよいよもってDIOを後回しにすることになるが」 「ああ。悔しいが、現状の手札じゃDIOを追い詰めきれねぇ。前にも言ったが承太郎達との合流が優先だ」 そう言って、ポルナレフは苦々しく首を横に振った。 「前に追い詰めたときはDIOの隠れ家の写真があったから、日没までにそれを探し出せればどうにかなった。  だけど今回は手がかりが少なすぎる。全部の建物をシラミ潰しに探すしかないんじゃあな……」 「確かに、これ以上ないほどの苦行だな。それでは、DIOのことは当人が動き出すまで様子見ということか」 「そういうこと」 綺礼とポルナレフのやり取りを、東條希は怪訝そうに聞いている。 「詳しい説明は後でするが、その、なんだ。DIOってのはおれが追ってる極悪人で、日が昇ってる間は外に出れねぇんだ」 「どこかの建物に潜んでいるのは間違いないが、潜伏先の候補の数を考えると、見つけ出すのは不可能に近い。  だからひとまず、おれの知り合いと合流して戦力を整えようって考えてたわけだ」 「ふぅ……ん?」 東條希は分かったような分からないような曖昧な顔で相槌を打った。 何の前知識もなく『日中は外に出られない』と聞かされても、どういうことだか理解するのは難しいだろう。 後で時間を取って説明してやる必要がありそうだ。 「ところでよ、お嬢ちゃん。答えづらいかもしれねぇが……友達の仇に心当たりはあったりするのか?」 「にこっちの方は全然分からへん。けど……ことりちゃんは……」 辛そうに声を詰まらせながら、どうにか続きを絞り出す。 「筋肉お化けか、目の飛び出した不気味なヒトか……どっちかや……。  どっちも外国人で、二人よりも背ぇ高かった……」 綺礼とポルナレフは顔を見合わせた。 目の跳び出した不気味な長身の男。キャスターの外見的特徴と完全に一致している。 「なるほど……あの三人の誰かが南ことりだったというわけか」 「ちっ、嫌な想像が当たっちまったな」 「……っ! ことりちゃんのこと、何か知っとるの!?」 「えっとだな、知ってるというか何というか……」 言い難そうに言葉を濁すポルナレフ。 綺礼は少しばかり思案し、キャスターの映像に関わる一連の事情を伝えることに決めた。 「我々は南ことりの死体が"ある"場所を知っている。もっとも、既に移動させられた後かも知れないがな」 「ほんまに! え、ど、どこ、どこに"いる"んや!」 「順番に事情を話す。まずは……そうだな、どこから説明するべきか」 神牛の牽く戦車に揺られ、三人はひとまず南へ向かう。 仲間のために殺人すら厭わぬ覚悟を決めた少女。 邪悪な吸血鬼を追いながらも、少女のことを気にかける男。 そして、脱出のために二人とともに行き、二人の行く末を眺める男。 三者三様の在り方を心に抱えながら、彼らは朝焼けの海へと差し掛かった。 【E-6/北岸/一日目・朝】 【言峰綺礼@Fate/Zero】  [状態]:健康  [服装]:僧衣  [装備]:神威の車輪@Fate/Zero  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)      黒カード:不明支給品0~2      各種雑貨(ショッピングモールで調達)  [思考・行動] 基本方針:早急な脱出を。戦闘は避けるが、仕方が無い場合は排除する。    1:ひとまず南へ移動する。以降のことは適宜判断    2:DIOの言葉への興味&嫌悪    3:ポルナレフと希への無意識の関心 【ジャン=ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】  [状態]:肋骨、胸骨体、胸骨柄に罅(応急処置済み。行動、スタンド操作に支障はなし)  [服装]:普段着  [装備]:なし  [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)      黒カード:不明支給品0~3、ヴィマーナ(6時間使用不能。午前まで)、スパウザー@銀魂      不明支給品1枚(希の分) 、不明支給品2枚(ことりの分、確認済み)      各種雑貨(ショッピングモールで調達)  [思考・行動] 基本方針:DIOを倒し、主催者を打倒する。    0:DIOの足取りが掴め次第、撃破に向かう    1:承太郎や花京院と合流する    2:希が凶行に及ばないよう見守る。場合によっては復讐を助ける 【東條希@ラブライブ!】 [状態]:精神的疲労(中)、右手首から先を粉砕骨折(応急処置済み) [服装]:音ノ木坂学院の制服 [装備]:縛斬・餓虎@キルラキル [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10) 基本:μ'sのために行動する。殺人や優勝狙いも辞さない  1:当面は二人と一緒に動く  2:ことりとにこを殺した相手に復讐したい  3:μ'sのメンバーには会いたくない  [備考] ※参戦時期は1期終了後。2期開始前。 *時系列順で読む Back:[[まわり道をあと何回過ぎたら]] Next:[[二度殺された少女たち]] *投下順で読む Back:[[まわり道をあと何回過ぎたら]] Next:[[二度殺された少女たち]] |066:[[I'll smile for yours]]|言峰綺礼|126:[[六人揃えば群雄割拠]]| |066:[[I'll smile for yours]]|ジャン=ピエール・ポルナレフ|126:[[六人揃えば群雄割拠]]| |066:[[I'll smile for yours]]|東條希|126:[[六人揃えば群雄割拠]]|

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