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グリザイアの兎 - (2015/09/19 (土) 22:39:26) のソース

*グリザイアの兎 ◆DbK4jNFgR6
風見雄二は天々座理世と共に夜道を歩いていた。
目的地はラビットハウス。リゼのバイト先であるという店は、どういうわけか地図に載っていた。
この悪趣味なゲームを開催するにあたって、繭が同じ外観の建物を用意したと考えれば説明はつくが、そこまでする理由は現時点では不明である。
ラビットハウスを目的地として選んだ理由はリゼの仲間であれば、そこを目指す可能性が高いため。
この地図には映画館や公園のような誰でも知っている場所から、音ノ木坂学院や万事屋銀ちゃんのような特定の人間しか知らないような施設が記されている。
後者であれば人探しの手がかりになるわけだが、雄二の知っている特定の施設は地図には存在しなかった。
リゼの知っている場所であるラビットハウスは地図に記載されていたため、そこに向かうことになったのである。
入巣蒔菜の居場所に関する手がかりはなく闇雲に探すしかない現状。とりあえず近場にあった万事屋銀ちゃんなる店は探索したが、雄二が調べた時点では誰もいなかった。
蒔菜がラビットハウスにいる可能性もある以上、この行動は雄二にとっても無駄ではない。
加えて現在地からラビットハウスまでの間にはゲームセンターもある。施設を虱潰しに探していくという意味でも決して非効率ではない行動なのだが、その件でリゼは自分の知り合いを優先してもらって済まない、と申し訳なさそうにしていた。

そんなリゼの手には現在、黒光りする暴力の塊、拳銃が握られている。
ベレッタM92。引き金を引くだけで人を殺傷できる武器。一度は雄二が奪いとり、そして返還したものだ。
人を殺すことの重さを過去の出来事もあって雄二はよく理解している。
手にした銃でリゼが誰かを殺せば、彼女の心は傷つくことになるかもしれないし、場合によってはトラウマを負うことになるかもしれない。
これまで雄二は要人警護をしたこともあったが、間違っても護衛対象に武器を渡すようなことはしなかった。
では何故、今回リゼに銃を渡したのかと言えば、それはここが異常な環境だからである。
既に人が一人死んでいることに加え、ゲームに乗った人を殺す意思のある人間が跋扈している空間。
ここと似たような場所を雄二は知っている。それは戦場。彼はアメリカ海兵隊時代に戦地に足を運んだことがある。
殺人が同然のように行われ、それらが罪に問われず、逆に肯定されているという異常な空間。
戦場で人を殺したくないとか、心が傷つくとか、そんな理由で武器を手放すような真似をすれば、待っているのは死である。

その武器が入っているという黒いカードの確認は既にリゼと共に済ませている。
殺し合いの空間で自分の武器を把握しておくというのは基本中の基本だ。
雄二の黒のカードは三枚。リゼの黒のカードは二枚。数字の上では雄二の方が多い。
だが多いことが必ずしも良いとは限らない。雄二の黒のカードの一枚に入っていたのはマグロに腕が生えた不気味な人形。
蒔菜が見ていたテレビ番組にこんなマグロが登場していた記憶があったのだが、説明書を読むと案の定、そこにはマグロマンのぬいぐるみと書かれていた。
特別武器が仕込まれているでもない不気味なマグロの人形である。
これが外れの支給品であることは明白だった。とりあえず蒔菜に渡せば喜ぶだろうと思い、捨てずに黒のカードに収納しておいたが。

一見すれば外れに見えてそうでないものも存在する。
リゼの黒のカードからベレッタM92に続いて出てきたのは洋服だった。
ここにはいない美浜学園に通う少女の一人が普段着ているのと同じ柄のメイド服である。
これも外れかと最初こそ雄二は思ったわけだが、説明書を読むとその認識は覆されることになる。
メイド服【暴徒鎮圧用「アサルト」】。同じデザインが数種類存在する中でも防弾使用になっているメイド服らしい。
防弾使用というのであれば、この場では有用な装備品であるためリゼに着用を促し、最初こそ躊躇していたもののリゼも生存率を上げるためならばと受け入れた。
本人曰く私には似合わないんじゃないかとのことだが、別にそんなことはないと雄二は思った。

そして雄二の最後の支給品は装飾の施された刃物だった。
見た目こそ派手だが玩具というわけではなく、武器としては十分に有用なのだが、雄二の目を引いたのは説明書に書かれていた文書だ。
アゾット剣【魔力を充填することによって魔術礼装としても使用可能】
魔力。普通に考えればそんなものは存在しない、あるとすれば何かしらの化学兵器に使用する燃料の隠語と読み取れるが、人をカードにする腕輪の存在を知っていればその解釈も変わってくる。
すなわち本当に魔法のようなものが存在するという可能性。この説明書によれば魔術か。
普通ならばあり得ない。リゼが言ったような米軍の新兵器の方がまだ納得がいく。

最初の白い部屋での光景は、最先端のCG技術による立体映像か、或いは参加者全員に薬物を投薬して幻覚を見せていたとも推測できた。
理解の及ばないものを安易に魔法だの魔術だのと決めつけてかかるのは二流の思考であるが、この腕輪とカードだけはどうしても科学では説明がつかない。
目の前に確たる証拠が存在するにも関わらず、その事実から目を逸らし否定し続けるのは三流以下のすること。
腕輪とカードは紛れもない非科学であり、この説明書にある魔術なるものに近いと考えた。
ならば魔術かそれに類する非科学の知識がある参加者と接触できれば腕輪の解除に近づける可能性が高い。
単に腕輪を外すだけならリゼにも言った通り腕を切断するという手段もあるが、それをやった瞬間にカードに封印されては意味がない。
ここで言う腕輪の解除とは白のカードの封印効果を無効化した上で、腕輪を外すことを指している。

非科学の知識を持つものに合えば腕輪を外す手がかりが見つかるかもしれない一方でリスクも存在する。
当初雄二は殺人者であることを隠すことなく堂々とゲームに乗って殺して回る者たちよりも、無害な参加者を装い集団に潜伏して不意打ちや毒殺を狙う人間の方が危険度が高いと考えていた。
だからこそ雄二はリゼと接触する前に彼女の様子を観察して、行動を共にしても問題ない人物かどうかを見極めている。
銃を構えた時点でタイミング良く飛び出して抑え込めたのも、影から様子を伺っていたからに他ならない。
戦う力を持たない女子供であれば堂々と人を殺してまわる人物も十分に危険であろうが、雄二は元軍人であり戦闘慣れしている。支給品でサブマシンガンを引けたのも大きい。
だからと言って油断するつもりもないが、相手が複数いるか薬物でドーピングでもしていない限りは直接戦闘で不覚をとるつもりはなかった。

しかし魔術という非科学の要素が加われば話も変わってくる。
何せ未知なのだ。箒に乗って空を飛ぶのか、口から火を吐くのか、人間離れした身体能力を有しているのか、魔力なるものを動力源にして破壊光線でも撃ってくるのか、現時点ではどれだけ考えようと憶測の域を出ない。警戒することはできても具体的な対策を練ることができないのである。
小説に出てくるような銃弾が通用しない人間がいるかもしれないわけで、そうなれば雄二の直接戦闘での優位性は消し飛ぶ。
参加者を危険度が高い順に並べると、未知の非科学的な能力を有する優勝狙い、脱出派を装って優勝を狙う者、特殊な力、及び人間離れした身体能力を持たない優勝狙いということになる。

――その昔、まだこの国に軍隊があったころ、とある将校がこう言った!

――一人十殺! 多勢に対する無勢に際し、一人で十人の敵を屠るまで玉砕は許さんと!

――だが今は時代が違う! そこで一人十衛! 貴様は国民十人の生命を救うことと引き換えに初めて死を許される。

それはかつて、師匠であった日下部麻子に言われたこと。
半人前だから五人にまけてやると言われ、その言葉に従って雄二は五人の少女を救った。

(なあ、麻子。俺はもう半人前じゃないからな。だからあんたが最初に言った通り十人救ってやる)

天々座理世、桐間紗路、香風智乃、保登心愛、宇治松千夜。
丁度五人いる。美浜学園の少女たちに彼女らを加算すれば合計で十人。
全員救えば最初に麻子が言ったノルマを達成することができる。

もちろん分かっている。それが容易いことではないということぐらい。
リゼ以外の四人はこの場にはおらず今この瞬間にでもゲームに乗った参加者に襲われているかもしれない。
リゼの話では彼女らは至って普通の女学生であり、そんな少女たちが殺人者に襲われれば高確率で死亡するだろう。
そしてそれは蒔菜であっても例外ではない。護身術の心得があるとはいえ彼女も普通の女学生であるということに変わりはなく、高い戦闘技術を持つ参加者に襲われれば死は免れない。
戦場で物事を楽観的に考えることがいかに危険であるかを雄二はよく理解している。常に最悪の状況を想定して行動しなければならない。
今この時、この場にいない人間を守ることは、それこそ神とやらでもなければ不可能だろう。
だからせめて自分の隣を歩いている天々座理世だけは、必ず生きて家に帰そうと雄二は胸に誓った。

【F-7/道/一日目・深夜】

 【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
 [状態]:健康
 [服装]:美浜学園の制服
 [装備]:キャリコM950@Fate/Zero、アゾット剣@Fate/Zero
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0枚、マグロマンのぬいぐるみ@グリザイアの果実シリーズ
 [思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   1:天々座理世を護衛しながら、ゲームセンターを経由しつつ、ラビットハウスに向かう
   2:入巣蒔菜、桐間紗路、香風智乃、保登心愛、宇治松千夜の保護
   3:外部と連絡をとるための通信機器と白のカードの封印効果を無効化した上で腕輪を外す方法を探す
   4:非科学能力(魔術など)保有者が腕輪解除の鍵になる可能性があると判断、同時に警戒
   5:ステルスマーダーを警戒
 [備考]
  ※アニメ版グリザイアの果実終了後からの参戦。

 【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
 [状態]:健康
 [服装]:メイド服・暴徒鎮圧用「アサルト」@グリザイアの果実シリーズ
 [装備]:ベレッタM92@現実
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0枚
 [思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   1:ラビットハウスに向かう
   2:チノたちが心配
   3:風見さんと一緒にチノたちを探す
   4:外部との連絡手段と腕輪を外す方法も見つけたい

支給品説明

【ベレッタM92@現実】
天々座理世に支給。
世界中の警察や軍隊で幅広く使われている銃。

【メイド服・暴徒鎮圧用「アサルト」@グリザイアの果実シリーズ】
天々座理世に支給。
小嶺幸の所有物。入巣家と取引のある軍にもミリタリー用品を納入している会社のオーダーメイド。通常用「インターメディエイト」・運動用「アクティブ」・夏季略装「トロピカル」・冬季寒冷地仕様「ヘビーゾーン」・暴徒鎮圧用「アサルト」・医療従事用「メディック」・冠婚葬祭及び慰霊式典参加用「コンサバティブ」の7種類が存在し、アサルトは防弾仕様となっている。

【キャリコM950@Fate/Zero】
風見雄二に支給。
衛宮切嗣が愛用している銃。原作ではケイネス戦で使用した。

【アゾット剣@Fate/Zero】
風見雄二に支給。
遠坂時臣が言峰綺礼に渡した装飾剣。魔力を充填することによって礼装として使用可能。

【マグロマンのぬいぐるみ@グリザイアの果実シリーズ】
風見雄二に支給。
入巣蒔菜の所有物。マグロに手足が生えたような不気味なぬいぐるみ。


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