*優勝をめざして ◆DbK4jNFgR6 高坂穂乃果にとって現在の状況は到底受け入れられるものではなかった。 小汚い男に意識を奪われ、目を覚ましたら信頼していたはずのランサーが傍にいない。 本部とか名乗った小汚い男の話では、ランサーは穂乃果を彼に任せて去ったらしいが、そんな言葉を信用することはできない。 口では何とでも言えるのだ。元より、この浮浪者のような中年はランサーを害していた男。 そんなホームレスの言葉など一片たりとも信じるに値しない。 しかし、ならばどうしてランサーはこの場にいないのであろうという疑問が穂乃果の胸に沸き起こる。 (ランサーさんが、こんな小汚いおじさんに私を任せるわけがないよ) まず本部の発言は考えるまでもなく嘘と判断。 このような小汚い中年にランサーともあろうものが、穂乃果を任せるはずがない。 (じゃあ、何で。何でランサーさんは私の傍にいないの?) ランサーが離れたことによって薄れていた愛という名の感情が再燃し始める。 同じくチャームの影響を受けていた千夜はと言えば、ランサーのことなど忘れたかのように、土方十四郎とかいう男の死について悔やんでいるようだった。 薄情な女だと穂乃果は思った。結局、あの女はランサーをボディーガードとして利用する気しかなかったのだ。 だからいなくなれば、ランサーのことなどどうでもよくなる。 (私は違う。私のランサーさんに対する思いは本物だもん) 穂乃果と千夜。ランサーのチャームによって感情を歪められた二人であるが、両者に違いがあるとすれば、それはランサーと行動を共にした時間、そして出会った際の状況である。 千夜よりも長くランサーと行動していた穂乃果の方がチャームの影響を強く受けていることに加え、襲われていたところを助けられたという、ドラマティックなシチュエーションが穂乃果の偽り恋心を強固なものにした。 (何で、何でランサーさんはここにいないの?) ランサーは決してこんな薄汚れた中年男に穂乃果を預けていなくなるような人物ではない。 とすればこの中年男は穂乃果をランサーの手から奪い取った誘拐犯ということになる。 だがそうなると新たな疑問も沸いてきた。どうしてランサーは穂乃果のことを助けにきてくれないのか。 何故、この場に颯爽と姿を現して薄汚れたホームレス中年男、本部を打倒しないのか。 (まさか……!) 最悪の可能性が穂乃果の頭をよぎる。 それはこのホームレスによってランサーが既に殺害されたという可能性。 (違う! 違う! 違う! そんなことあり得ない!) 必至に否定するが、ランサーがこの場に現れない理由が他に思い浮かばないのだ。 穂乃果はランサークラスが最速のサーヴァントであるということは知らないが、その速さについては共に行動していたのでよくわかっている。 この浮浪者が穂乃果を攫ったとしても、彼なら容易に追いつけるはずなのである。 (……あの小汚いおじさんが卑怯な方法でランサーさんを殺したんだ) 最終的に穂乃果はその結論に至らざるを得なかった。 無論、正々堂々戦えばあんな浮浪者にランサーが敗北するなどまずあり得ない。 おそらく前と同様に卑劣極まりない手段を用いて、ランサーを死に至らしめたのだ。 「あ、あああああああああ、ああッ!!!」 両膝をつき拳でドンドンと地面を叩く。両目から涙がボロボロと零れた。 「ど、どうしたんですか!」 ヴィヴィオとかいう小娘がこちらに寄ってきた。心配しているような素振りを見せているが、こいつは合流後あの浮浪者と親しげに会話をしているのを確認している。信用することはできない。 「何でも、ないよ」 笑顔を作ることがこんなにも難しいことであるということを穂乃果は初めて知った。 大丈夫だから、とヴィヴィオに言いながらも、その心中はとても穏やかとは言えなかった。 (こんな浮浪者にランサーさんが、こんな生きていても意味がないホームレスにランサーさんが、ランサーさんの百万分の一の価値もない薄汚い中年の分際でッ!) ドス黒い感情とはまさにこのことか。自分でも驚くほどに口汚い暴言が心中に飛び交った。 本来、高坂穂乃果という少女はこのような思考を行う人物ではない。 穏やかで、優しく、真っ直ぐな心根を持ったスクールアイドルのはずだった。 (……殺す。あのホームレスも、ランサーさんを見捨てた奴らも全員殺してやる) しかし魅了の魔貌が彼女の心を歪めた。それに様々な要因が重なり合った結果、ここに新たな殺人者が誕生することになったのである。 三人の内、女二人は容易に殺害が可能と判断。油断させて後ろから首を絞めれば済む。 しかし、本部はそうはいかないだろう。卑劣な手段を用いたとはいえ、ランサーを倒すということは、認めたくはないが実力者ということになる。 直接的な手段で殺害を試みたところで、返り討ちにされるのは目に見えている。 もたもたしていたら本部がこの場から去ってしまう。キャスターを倒しにいくそうだが、穂乃果からすれば嘘くさいことこの上ない。おそらくまた何か悪事を働くのだろうと推測する。 (そうだ、黒のカード!) ヴィヴィオにはお手洗いだと言ってその場を離れてから残りの黒のカードを確認する。 出てきたのは小袋と説明書。内容に目を通した穂乃果の口元がぐにゃりと歪んだ。 青酸カリ。刑事ドラマなどで犯人が被害者を殺害する際によく用いられるあれである。 この毒薬を使用すれば力で劣る女であろうとも男を容易に殺害することが可能。 3人を殺すことが第一目的。では、その後はどうするのか。本部を殺したところでランサーが生き返るわけではない。 (生き返る……ああ! そうかッ! 優勝すればいいんだよ!) あのモジャモジャのカリフラワー頭が言っていたではないか。優勝すれば願いを叶えてやると。 ここに来て魅了の魔貌による歪みは最大限に達する。本来の彼女であれば絶対に行わないであろう決断は歪められた愛情によってなされた。 頭の片隅にμ'sの仲間たちの顔が浮かんだ気がした。これまで共に歩んできた掛け替えのない友人たち。 けれども駄目なのだ。ランサーと共に過ごした時間の記憶が仲間たちとの思い出を塗り潰してしまう。 それはまるで甘い蜜のよう。ランサーのことを思い出すと幸福感で胸がいっぱいになる。 ランサーを救うためならμ'sを切り捨ててもいいと思わせる程に、彼の存在は穂乃果にとって大きなものとなっていた。 (待っててね、ランサーさん。優勝してすぐに生き返らせてあげるから!) 穂乃果は知らない。ランサーは死んでなどおらず、自らの意思で穂乃果を本部に託したということを。 そして、穂乃果が抱く感情は魅了の魔貌によって植えつけられた偽りの愛情だということを。 【B-2/駅構内/一日目・黎明】 【高坂穂乃果@ラブライブ!】 [状態]:額にたんこぶ、本部に対する憎悪 [服装]:音ノ木坂学院の制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10) 黒カード:青酸カリ@現実 [思考・行動] 基本方針:優勝してランサーを生き返らせる 1:青酸カリを用いて本部たちを殺害。優先順位は本部、千夜、ヴィヴィオ 2:参加者全員を皆殺しにする 3:μ'sの皆を殺すのは残念だけど、ランサーさんを生き返らせるためなら仕方ないよね [備考] ※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか(2期1話以降)。 ※ランサーが本部に殺されたと思い込んでいます。 ※ランサーが離れたことで黒子による好意が少々薄れましたが、上記の理由によって現在では好意が暴走して、それが本部たちへの憎悪に変わっています。 【本部以蔵@グラップラー刃牙】 [状態]:確固たる自信 [服装]:胴着 [装備]:黒カード:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)@Fate/Zero、原付@銀魂 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:こまぐるみ(お正月ver)@のんのんびより、麻雀牌セット@咲-Saki- 全国編 [思考・行動] 基本方針:全ての参加者を守護(まも)る 1:南下してキャスターを討伐する 2:騎士王及び殺戮者達の魔手から参加者を守護(まも)る 3:騎士王、キャスターを警戒。 [備考] ※参戦時期は最大トーナメント終了後 【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】 [状態]:疲労(大)、十四郎を見捨てて逃げたことへの罪悪感 [服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:心愛たちに会いたい 1:十四郎さん… [備考] ※現在は黒子の呪いが消えて土方に対する自責の念に駆られています。 【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid】 [状態]:健康 [服装]:制服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid [思考・行動] 基本方針:皆で帰るために行動する 1:穂乃果さんの様子がおかしいので心配。千夜さんも落ち込んでいるようなので励ましてあげたい 2:アインハルトとコロナを探す [備考] ※参戦時期はアニメ終了後です。 ※ランサーの黒子の呪いについて大雑把に把握しましたが特に重要なことだとは思っていません。 ※黒子の呪いの影響は受けていません。 ※各々の知り合いについての情報交換は済ませています。 支給品説明 【青酸カリ@現実】 高坂穂乃果に支給。 刑事ドラマなどでよく用いられるメジャーな毒物。 *時系列順で読む Back:[[タカラモノズ]] Next:[[]] *投下順で読む Back:[[Strange Fake]] Next:[[]] |054:[[タカラモノズ]]|高坂穂乃果|:[[]]| |054:[[タカラモノズ]]|本部以蔵|:[[]]| |054:[[タカラモノズ]]|宇治松千夜|:[[]]| |054:[[タカラモノズ]]|高町ヴィヴィオ|:[[]]|