*世界一歪んだ親孝行 ◆45MxoM2216 ジャック・ハンマーは、放送よりも前に先ほどの激闘による気絶から目覚めていた 平和島静雄の攻撃は確かに苛烈だったが、狂気の沙汰としか言いようがないドーピングによって極限まで高められた彼の肉体にしてみれば、致命傷には程遠かったのである ましてや、今の彼は極制服…それも2つ星の極制服を身につけているのである これは、四天王達が身につけている特別なものを除けば、最も強力な極制服である 生命繊維が織り込まれたこの制服により、ジャックの身体能力は更に上昇している 本来の物に比べ燃費が悪化しているとはいえ、幸いにも先ほどの戦闘でオーバーヒートすることもなく、まだまだ健在であると言えよう よって、ジャックが放送前に目を覚ましたことは、自明の理だったのである 「…」 どうやらこの学ランは、思った以上の拾い物だったらしい 電信柱に背を預けながら、ジャック・ハンマーはそう思考した 先ほどの戦闘、流石のジャックも危機感を覚えたものの、身体に残るダメージは驚くほど小さい 強いて言えば頭に鈍痛が残り、軽い脳震盪が起きているぐらいだが、どちらも無視できる程度だ …まぁ、彼の基準では小さかっただけで、普通の人間なら確実に病院送りになっていただろうが… 一体どういう理屈なのかは分からないが、やはりこの学ランには身体能力を高める作用があるようだ 先ほどの華奢な少女があれほど自分の攻撃に耐えられたのも納得というものだ だが… 「足りんな」 やはり足りない 先ほどの男との戦闘を糧にし、より自分の力を高めることはできただろう だが、相手との実戦を通して地道に強くなる… そんな常識的な行動「だけ」では、あのを範馬 勇次郎を超えられるとは思えない やはり、並行してこの学ランのような強力な支給品も集める必要がありそうだ そう考えると、先ほどの男との戦いに敗れ、支給品を奪えなかったのは惜しかった 今から追いかけても余程運が良くなければ会えないだろうが、一応追ってみるか… と、そこまでジャックが考えたところで… 『――おはよう。午前6時、定時放送の時間よ』 放送が、始まった… 正直な所、ジャックにとって放送がそこまで重要だとは思えなかった いくら超人じみた人間が数多くうろついていようと、あの父や弟が死ぬとは思わなかったし、誰が死のうと他の参加者は糧と割りきっているジャックにとっては関係なかった とはいえ、まだ自分には少しとはいえダメージが残っているし、ここで休憩がてらに放送を聞くのも悪くないだろう そう思い、ジャックは電信柱に背を預けたまま、放送に耳を傾けた 「…禁止エリアか」 しっかりと放送を聞いて正解だったらしい 三時間後、一部のエリアが封鎖されるとのことだ このゲームが始まってすぐに猫のような女学生と遭遇したせいで、改めてルールを確認していなかったジャックは、その情報を得ることができて安堵する 三つの禁止エリアは、いずれも自分のいる場所からは遠かったが、いずれ訪れる可能性がある以上、知らずに踏み込んでしまう危険があった 『さあ、次はお待ちかね、ここまでに命を落とした方々の発表といきましょう。 一度しか言わないから、よく聞くことね』 次は死亡者の発表らしい さほど興味はないが、他の人間がどれだけ殺しあっているかを知るのも有益ではあるだろう 『【宮永咲】 【神代小蒔】 【範馬勇次郎】 ―――――――――』 その瞬間、このゲームが始まって以降崩れることのなかった彼のポーカーフェイスが崩れた 彼の母は、国連軍の兵士であった 任務で範馬 勇次郎を殺害しようとするも返り討ちにされ、陵辱された上に盾として利用され、勇次郎を逃がしてしまう そして彼女は任務失敗の責を問われ投獄され、陵辱の際にできた子供を獄中で出産した その子供が、何を隠そうこのジャック・ハンマーである そういった経緯を持ち、彼は範馬 勇次郎を超えることにあるいは腹違いの弟の範馬 刃牙以上に固執することになる 狂気の沙汰としか言いようのないハードトレーニングやドーピングを続けたのも、今日強くなれるならば明日はいらないと公言していたのも、全ては範馬 勇次郎を超えるためである その勇次郎が死んだ…シンダ? 「―――――――――――――――――――――ガアアアアアァァァア!!!!!」 ジャックは叫んだ 叫んで、いつの間にか涙が流れていた 例えばこれが一度闘う機会を逃しただけなら、彼もここまで錯乱しなかっただろう だが、勇次郎は死んだのだ もう二度と闘うことができなくなってしまったのだ 例え一般的な親子ではなかったとしても、互いに闘うことしか考えられないような関係だったとしても、その姿は―――涙を流しながら叫び、父を喪って悲しむその姿は… ただの、普通の若い男のようであった… 『さあこれで全員、残りは53人。マスターカードで名簿をご覧なさい。』 「ガアアアアァアアアアア!!!」 繭の声は、ジャックの耳をほとんど素通りする 耳には入っていても、その内容を上手く咀嚼できない 『脱落した人の横に、赤いバツ印が付いているはずよ。 あなたの大切なお友達が死んでしまったのなら、その子のために頑張りなさい』 「グアアアアアアアアアア!!!!」 タイセツナオトモダチ? 勇次郎とは、そんな関係ではない… 『ここまでで17人、素晴らしいペースよ。余程叶えたい願いがあるのね。』 カナエタイネガイ? そういえば、最初にそんなことを言っていたな… 「…ん?」 そうだ、最初の白い部屋であの女は言っていた 生き残った参加者には、どんな願いでも叶えると どんな願いでも叶える… 普通なら一笑に付すようなことだが、魔法といった事象を目の当たりにした今、あえてそれを否定するようなこともない ならば…死者蘇生も可能なのではないか? どんな願いでも…そう言われて真っ先に思いつくものは何だ? 一攫千金か、不老不死か…それこそ死者蘇生か おそらくはそういったものが主であろう なんでもというからには、それらもできると考えるのが自然だろう であるならば、自分は…ジャック・ハンマーは、優勝を目指そう これまでのように勇次郎を倒すことだけを考えるのではなく、ゲーム全体のことを考えて行動しよう 先ほど泣き叫んでいて後半の放送を聞き逃してしまったが、かろうじて頭に残っている内容から判断するに、このゲームは順調に進んでいるのだろう ならば、自然と生き残った参加者は死んだ者の支給品を手に入れているだろう しばらくは放送前と同じように、施設を回り支給品を集めるという方針で問題ないはずだ その後の方針は、支給品集めの結果から判断することにするとしよう そして優勝し…勇次郎を蘇生する 蘇生して、闘い、また殺す そう、殺すのだ 勇次郎との闘いは、正しく死闘になるだろう…おそらくは、どちらかが死ぬまでの 自分は日に30時間という矛盾を抱えて強くなった そしてジャック・ハンマーはここに今、新たな矛盾を抱えた それも日に30時間という、あくまで比喩の範囲の矛盾ではない 殺すために生き返すという、本物の矛盾を抱え… ジャック・ハンマーは優勝へ向けて動き出す すでに、平和島 静雄との再戦はジャックにとって些事となった 強力な支給品を求め万事屋、ゲームセンターを経た彼は、近場かつまだ調べていない場所…映画館へと足を向けた 【F-6/一日目・朝】 【ジャック・ハンマー@グラップラー刃牙】 [状態]:頭部にダメージ(小)、軽い脳震盪(無視できる範囲)、腹八分目、服が濡れている [服装]:ラフ [装備]:喧嘩部特化型二つ星極制服 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10) 黒カード:刻印虫@Fate/Zeroが入った瓶(残4匹) [思考・行動] 基本方針:優勝し、勇次郎を蘇生させて闘う 0:映画館へ向かう 1:人が集まりそうな施設に出向き、出会った人間を殺害し、カードを奪う。 2:機会があれば平和島 静雄とも再戦したい [備考] ※参戦時期は北極熊を倒して最大トーナメントに向かった直後。 ※喧嘩部特化型二つ星極制服は制限により燃費が悪化しています。 戦闘になった場合補給無しだと数分が限度だと思われます。 *時系列順で読む Back:[[誰かの為に生きて]] Next:[[それでも『世界』は止まらない]] *投下順で読む Back:[[誰かの為に生きて]] Next:[[それでも『世界』は止まらない]] |063:[[噴火する平和]]|ジャック・ハンマー|116:[[Mission: Impossible]]|