タローマン


なんだこれは!?

そう、それは芸術の巨人「タローマン」である!

NHK製作の特撮ドラマ『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』*1に登場する赤と銀色の巨人
タロではなくタロである。故に堕落天使の人造人間でもない
シュールレアリズム星からやって来た「芸術の巨人」(肩書は他にも山ほどある)。
OPテーマの貴重なフルコーラス音源

1970年代の日本に奇獣・森の掟が突如現れ人々を大混乱に陥れた際、空から落ちてくるように人々の前に出現。
以降、奇獣が暴れる度に呼応して登場すようになる。ただし明らかに奇獣が関係ない場面でも割と出てくる。
黄金の太陽のようなその顔は岡本太郎氏の作品「若い太陽の塔」*2、ボディは同じく岡本氏による「太陽の塔」を模している。

岡本太郎の精神・ことばを礎にして行動しており、
そのため岡本太郎的精神にそぐわないお約束の展開安易な自己模倣を決して許さない。
宿敵である奇獣を前にしてもヒーローらしく素直に正面から立ち向かったり取っ組み合うことは稀で、
何の意味があるのかまったく不明のでたらめな行動を繰り返し、予測不能のタイミングでべらぼうな必殺技を放つ、エキセントリックな戦闘スタイルを取る。
普通はヒーローにとっては力になる人々からの声援や、敵に勝利することそのものが型にはまった行動に該当し、
逆に力を削ぐ原因になってしまうことがあるというめんどくさい特性がある。
…お約束まみれの特撮ヒーローと相性悪くないか、この巨人。
劇中では一度は墜落から救ったパトロール機を「人助けの巨人」と称するナレーション通りの展開を嫌ったのか放り捨てたり、
ビルの破壊に躊躇するどころかバランスを取って遊び始めたり、本来は戦うべきであろう奇獣と鬼ごっこで遊んだりすることも厭わなかったり、
タローマンの窮地に手を差し伸べた自分そっくりの「タローマン2号」を拒絶し、奇獣共々爆殺したこともあるなど、
岡本太郎的精神にそぐわない行動に対しては人間にも奇獣にも、ましてや自身に対してすら関係なく制裁を下す。
公式のアナウンスでも「正義の味方ではない」と明言されてしまっている始末。

そのギラギラした外見に加えて、常に暗黒舞踏を思わせる奇怪な動きを続けており、何もせずそこにいるだけで画面がうるさく感じてしまう。
そのエキセントリックさは概ね「巨大化したドアラ」と考えれば、意味不明さと傍迷惑さ含めて大体合っている

ことばを「体現」する存在であるためなのか、技名以外では掛け声すらなく、自分の考えについて一切喋ることは無い。
そのためその行動原理はあくまでもナレーションや登場人物達による推測にすぎない。
代わりに奇妙な動きを交えつつ、割と分かりやすいボディランゲージも取ってくれるが。

必殺技も岡本氏の作品をモチーフとしており、放つ度に岡本太郎氏の肉声で叫ぶ。
劇中のとどめの一撃として放つ「芸術は爆発だ!」は、放てば奇獣も地球関係なく極彩色の絵具状に分解して爆散させる文字通りの必殺技。
その瞬間瞬間の全存在をかけていのちを燃焼する行為」のため乱発はできないらしいが、片手間に撃ってる描写もあり真偽は不明。
この他にも矢尻状の光線「コントルポアン」を始め、「千手」「雷人」「明日の神話」といった岡本作品をモチーフとした数々の技を持つが*3
いずれも中々まともに奇獣相手に使ってくれない。

前述の通り安易な模倣(パクリ)には大変厳しいと理解されているため、ネット上でタローマンをネタにした動画は、
最後に突如エントリーしたタローマンに芸爆オチされるのがほぼお約束となっている。…SCPか何かか?
元ネタ(4:42~)
そんなに人間が嫌いになったのか、タローマン

ただタローマンが嫌っているのは安易な模倣であり、真剣に真摯に取り組むのであればその限りではない。
実際作中でもタローマンの絵画を描いた画家、タローマンの人形を作ったファンの少年などは特に被害に遭っていない。
むしろ「安易な模倣を安易に爆発四散せしめるのがタローマンなのだ」というステロタイプをこそ彼は嫌っている。
……のではないかと思われるが、タローマンの内心について分かったような事を言えるものでもないのが難しい所。
だが、タローマンが何者なのかなどという事は、無理に分からなくても良いのかもしれない。
人生の目的は悟ることではありません。生きるんです。人間は動物ですから」……そう、岡本太郎も言っていた。
どこまでも自由で、でたらめで、べらぼうな存在……そう、それは芸術の巨人、タローマンである!

ちなみにタローマンはあくまで「岡本太郎の精神」を先鋭化させた存在であり、岡本氏本人をモチーフにしているわけではない。
現実の岡本氏ご本人は生真面目で弱気な性格だったが、自身を追い込むために敢えて空気を読まなかったり、大言壮語を放つような人物だったそう。
岡本氏の活動を皮切りに破天荒な芸術家キャラが創作界隈で表立つようになり、
氏を代表することばの「芸術は爆発だ!」のリスペクトは漫画ゲーム特撮など枚挙に暇がない。
実際は芸術的な爆発(物理)してるキャラばかりなのは内緒だ!

本作は後に「第49回放送文化基金賞」エンターテイメント部門の優秀賞を授与され、藤井監督共に贈呈式に登壇したのだが…。
そう、パントマイムに定評のある巨人、タローマンである!


MUGENにおけるタローマン

タローマン本編の奇獣を一人で網羅したべらぼうな製作者であるカーベィ氏が、期待を裏切ることなくタローマンも完成させた。
怪獣以外はそこまで興味の無い氏は本来作る予定は無かったとのことだが、
「タローマンも奇獣なのでは?」という意見によって製作を決断したとのこと
(実際、公開後に放映された『タローマン大統領』でも、タローマンも奇獣として扱われているようなナレーションがあった)。
スプライトはふうりん氏と共作した歓喜超必殺技で使用されたものをベースに、SpriteStudioで仕上げたもの。
番組の画像を用いたカットインもふんだんに取り入れられており、イントロでは第1話の初登場シーンをアニメーションで再現しているという力の入れよう。
作り込み故か115MBというキャラ単体としてはべらぼうな容量なので導入には注意。

原作でのでたらめな言動に合わせ、変なアクションが多数取り入れられており、
中でも様々な動作がランダムにコロコロ入れ替わるニュートラルポーズは必見。
技に関しても、飛び道具「コントルポアン」や森の掟と対峙した際の妙なダンス、
駄々っ子との戦いで自滅するために使った光のリングで拘束する技など、原作の動作がしっかり落とし込まれている。
超必殺技として、太陽の塔との戦いでその場の思い付きのように繰り出した3種類の技も使うことができ、
「雷人」は一定時間攻撃力を1.5倍に上昇させる強化技、「千手」は相手を追尾する飛び道具を無数に発射する技、
「明日の神話」は実質ガード不能の全画面攻撃となっている。
代名詞でもある「芸術は爆発だ!」は一撃必殺技として実装されており、
ガード不能の全画面攻撃で、いくらでも無条件に使えるというべらぼうな性能になっている。
同梱テキストでも「いつでも使えるので戦闘に飽きたら使いましょう(原文ママ)」と紹介されている。
ちなみにカーベィ氏曰く、技ではなく挑発らしい…。
7P~11Pは特殊カラーとなっており、上記「雷人」の効果が常時適応される。

AIはデフォルトで搭載済み。
流石にでたらめな戦い方をするということはなく、的確な立ち回りで堅実な強さを見せる。
…が、プレイヤー操作では記述の関係上不可能なコンボを狙ってくるなど、でたらめさが顔を出すことも割とある。
12Pを選ぶと行動パターンが変化し、「芸術は爆発だ!」だけを連発してくるようになる。

また、前述のタローマン2号も同時に公開されている。
性能面ではタローマンに準ずるが、キャラクター性の違いに合わせて半数近いアクションが専用のものに差し替えられているなど、
こちらも力の入った造りである。もちろん芸爆の性能も相変わらずである。

出場大会

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出演ストーリー



*1
2022年から開催の『展覧会 岡本太郎』の宣伝のはずが、何をどう間違えたのか特撮番組と化してしまった本作。
「1970年代に放送された巨大ヒーローもの特撮作品」の現存している映像の再放送という体裁を取っており、
少年隊員テンガロンハットの謎の風来坊、唐突に現れる2号など当時の作風再現に始まり、特撮の監修には円谷プロが協力。
当時の再現性の追求とOPから終劇まで岡本太郎の思想・ことばを全力で伝えるという姿勢に対して一切の妥協をしない番組となっている。
PR動画。マイナスに飛び込め!タローマン!


配信版ではカットされているが、番組の後半は過去の再放送でファンになったというサカナクションの山口一郎氏が、
存在するはずのない当時のグッズを思い出と共に披露し、いるはずのない当時の出演者と語り合う狂気の振り返りコーナーが付いていた。
…一過性のネタかと思われていた本作だが、そのべらぼうな影響力から早々に再放送が決まり繰り返し放送され、
展示企画では会場が変わる度に参考展示の知らない前番組のヒーロースーツが増えていく怪現象が発生。
放映されたNHK特集『歴史秘話 タローマンヒストリア』では、
歴史を振り返る割に番組内容の9割が完全新規映像(の癖に映像の劣化再現が本格的)だったり、
今度は平成ガメラや『シン・ゴジラ』で活躍した樋口真嗣監督にインタビューし当時の思い出を振り返らせるなど、
NHKによる歴史改変がじわじわと進行している。
オフィシャルファンブック『TAROMAN CHRONICLE』でも実際の70年代の時代背景の解説を申し訳程度に交えつつ、
大半が架空の設定で埋め尽くされているという徹底ぶり。
終盤で内容を区切って実際の制作内容にも触れられているのは最後の良心か。

存在しないはずのものを映像にするという点では、巨大ヒーローとしてと番組そのものとしての二重の意味で「特撮番組」と言えるのかもしれない。

なお、本作では各話毎の怪獣や宇宙人に岡本太郎氏の作品をほぼそのままの造形で登場させており、
テロップなどではこれらの怪獣を「奇獣」と銘打っているが、地球人からは専ら怪獣呼ばわりされており、奇獣とは呼ばれていない
当初は「『奇獣』という名前は侵略者側の呼び名で、そもそも地球側の勢力は知らないのではないか」といった推測もあったが、
後の新撮映像では地球人からも「奇獣」と呼ばれており、本編で「奇獣」という語が使われなかったのは制作上の齟齬だった可能性が高い。

*2
太陽の塔の胴部「現在」に似た顔と11本の炎で太陽を表現した金色のオブジェ。
高さ26mの愛知県犬山市の日本モンキーパークに建つ太陽の塔のプロトタイプともされる。
当時既に太陽の塔の製作が決まっていた岡本氏より懇意にしていた名古屋鉄道重役に贈られ、
大阪万博の前年のプレイベント「世界万国博とお国めぐり」にて名古屋鉄道も経営に携わっていた当時の犬山遊園に、
犬山市民によって岡本氏のタイルモザイク画「太陽の神話」をモチーフに建立された展望台の頂点に飾られた。
犬山遊園が名鉄犬山ホテルに改築されるに伴い日本モンキーセンターへ移築されるが、ヒヒが不眠症を患うとして日本モンキーパークの小高い丘へ再移築。
日本モンキーパークのシンボルタワーながら遊園地のある中心部からは外れて長年放置され、
老朽化による倒壊の危険と丘のジャングル化により2003年から立ち入り禁止となっていたが、
2010年の岡本太郎生誕100年記念に限定公開され、修繕・整備を経て2011年から再公開されている。
修復前
修復後

ちなみに同作がタローマンのモチーフに選ばれたのは監督が上記したヒヒの逸話を面白いと感じたのが理由との事。
そう、ヒヒの眠りを妨げる巨人、タローマンである

*3
なお、奇獣のモチーフも岡本太郎作品だが、設定によるとタローマンの技の内いくつかは、
制作発掘再放送されていないエピソードに登場する同名の奇獣から吸収したり受け継いだものとされている。
実際に奇獣を吸収してしまうエピソードもあるため、これもタローマンの能力の一つということだろうか。

ちなみに「芸術は爆発だ!」以外の技名コールは、岡本氏ではなくたまたま氏に声が似ていた映像編集担当の奥本宏幸氏が代役で演じている。


最終更新:2023年12月14日 13:15