リフレーションに関連する海外記事および論文集
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リフレーションに関連する海外記事および論文集ja2010-06-19T20:52:27+09:001276948347バーナンキ議長講演 中央銀行の独立性、透明性、そして説明責任
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/34.html
[[原文はこちら>http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm]]。翻訳は[[optical_frog>http://d.hatena.ne.jp/optical_frog/20100526/p1]], [[hicksian>http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20100526]], [[Wasshoi>http://d.hatena.ne.jp/WASSHOI/20100526]], [[night_in_tunisia>http://mathdays.blog67.fc2.com/blog-entry-1041.html]]
の4名。
**中央銀行の独立性、透明性、そして説明責任
ベン・バーナンキFRB議長
3年近く前にはじまった金融危機により,世界の多くの地域で人々は辛酸を味わい,各国中央銀行にとっては大恐慌以来もっとも深刻な課題が現れました.かつてない金融面での逼塞状況と経済活動の急速な落ち込みに直面して,連銀も含め多くの中央銀行は例外的な手段によってこれに対応しました.合衆国では,我々は景気の悪化を緩和すべくフェデラル・ファンドの金利目標を 0 から 0.25 パーセントの範囲にまで下げましたし,金融機関の必要とする流動性を提供すべく貸し付けの規模・範囲・満期を拡大しました.また,ドル建ての資金調達が全世界で利用できるよう,他国の中央銀行(日本銀行含む)との通貨スワップ・ラインを共同で立ち上げました.さらに,金融市場の機能化以前と経済回復の支援をはかるべく,長期証券を大量に購入しました ((The currency swap lines were reinstated with several foreign central banks recently in response to financial disruptions associated with stresses in Europe. See Board of Governors of the Federal Reserve System (2010), "Federal Reserve, European Central Bank, Bank of Ca 2010-06-19T20:52:27+09:001276948347Jung、寺西、渡辺「名目金利のゼロ下限における最適金融政策」Journal of Money, Credit, and Banking 2004
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/33.html
**"Zero Bound on Nominal Interest Rate and Optimal Monetary Policy"
Taehun Jung, Yuki Teranishi, Tsutomu Watanabe
***Abstract
短期名目金利をゼロにまで引き下げてもなお総需要が弱いときに中央銀行に何ができるであろうか?この問いに取り組むために我々は名目金利の非負制約を明示的に取り扱う状況での中央銀行の通時的損失最小化問題を解く。総需要への負のショックを所与として、中央銀行が短期名目金利の将来の経路に対するコミットメントが可能であるという仮定の下での最適な名目金利の経路を計算する。景気が回復した後でもゼロ金利を継続するべきである、という意味で最適経路は歴史依存であることを明らかにする。そのようなコミットメントを行うことで、金利の自然率が定常状態での水準よりも大幅に下落した場合でも中央銀行はより高いインフレ予想を促し、長期名目金利を引き下げ、自国通貨を減価させることができる。
***1. Introduction
短期名目金利がゼロに非常に近いとき、短期証券もしくは金融政策手段となる債券と貨幣の代替性は非常に高くなり、それ以上の金融緩和を行うことが極度に難しくなる。名目金利のゼロ下限、もしくは流動性の罠と呼ばれるこの現象はKeynes (1936) をはじめ多くの研究者によって研究されてきた。しかしながら、流動性の罠はごく最近まで現実世界で観察されることがなかったために、純粋に理論的な教科書の中の問題としてとらえられる傾向があった。
This situation changed on February 12, 1999, when the Bank of Japan (BOJ) made anannouncement of lowering overnight interest rates to be "as low as possible" to stimulate theJapanese economy, which was then believed to be at the edge of a deflationary spiral. Followingthis announcement, the BOJ pro 2010-05-24T22:26:07+09:001274707567Svensson 「流動性の罠とデフレーションからの脱出:The Foolproof Way他」2003 (後半)
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/32.html
[[Svensson 「流動性の罠とデフレーションからの脱出:The Foolproof Way他」2003]]のつづき
**Svensson「流動性の罠とデフレーションからの脱出;The Foolproof Way他」2003(後半)
***Currency Depreciation
Even if the nominal interest rate is zero, a depreciation of the currency provides a powerful way to stimulate the economy out of the liquidity trap (for instance, Bernanke (2000); McCallum (2000); Meltzer (2001); Orphanides and Wieland (2000)). A currency depreciation will stimulate an economy directly by giving a boost to export and import-competing sectors. More importantly, as noted in Svensson (2001), a currency depreciation and a peg of the currency rate at a depreciated rate serves as a conspicuous commitment to a higher price level in the future, in line with the optimal way to escape from a liquidity trap discussed above. An exchange-rate peg can induce private-sector expectations of a higher future price level and create the desirable long-term inflation expectations that are a crucial element of the optimal way to escape 2010-04-05T20:45:03+09:001270467903Svensson 「流動性の罠とデフレーションからの脱出:The Foolproof Way他」2003
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/31.html
**流動性の罠とデフレーションからの脱出:The Foolproof Way 他
by Lars E. O. Svensson
***Abstract
Existing proposals to escape from a liquidity trap and deflation, including my “Foolproof Way,” are discussed in the light of the optimal way to escape. The optimal way involves three elements: (1) an explicit central-bank commitment to a higher future price level; (2) a concrete action that demonstrates the central bank’s commitment, induces expectations of a higher future price level and jump-starts the economy; and (3) an exit strategy that specifies when and how to get back to normal. A currency depreciation is a direct consequence of expectations of a higher future price level and hence an excellent indicator of those expectations. Furthermore, an intentional currency depreciation and a crawling peg, as in the Foolproof Way, can implement the optimal way and, in particular, induce the desired expectations of a higher future price level. I conclude that the Foolproof Way is likely to work well fo 2010-04-05T20:43:53+09:001270467833クルーグマン「次世代の通貨危機」2001
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/30.html
以下は2001年3月25日から26日にかけて開かれたTel Aviv大学でのRazin会議のために用意されたクルーグマンの論文[["Crises: The Next Generation?">http://www.princeton.edu/~pkrugman/next%20generation.pdf]]の紹介である。クルーグマンが1977年以来続けている通貨危機の研究と近年彼がハマっている日本が陥った流動性の罠研究とを関連づける内容で、なぜ2008年に発生した金融危機において彼が何故金融政策ではなく、大規模な財政政策の必要性を主張したのか、その理由が垣間見える。翻訳および要約は[[night_in_tunisia>http://mathdays.blog67.fc2.com/blog-entry-1009.html]]。
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Krugmanは1977年に通貨危機についての研究を始めた。が、それはブレトンウッズ体制、スミソニアン体制の崩壊といった歴史的イベントの理解が主たる目的であって、もはや世界は通貨危機とは無縁であると思われていた。しかし、1980年代にラテンアメリカで危機が起こり、1992年ー93年にはヨーロッパでEMS危機、1997年?98年にはアジア危機が発生した。
この過程で通貨危機を説明する3つの世代のモデルが発展してきた。アジア危機は第3世代のモデルの発達を促したが、KrugmanはBernanke and Gertler(1989)で出されたモデルをベースに、通貨危機と、Krugmanを虜にしているもう一つの対象、日本が陥った流動性の罠とを結びつける第4世代モデルを提出した。
***通貨危機モデル発展の簡単な歴史
第1世代モデルは固定相場制維持と財政赤字の拡大という相反する政策の追求という「不整合なマクロ経済運営」によって通貨危機を説明する(Krugman 1979、Flood and Garber 1984)。第1世代モデルで説明される危機(ラテンアメリカの危機)の特徴は
+政府の不整合な政策が原因であること
+危機は突然だが、その発生は必然であること
+実体経済には大した害がないこと
の3点である。第2世代モデルは1992年ー93年のEMS危機がきっかけとなって発展した(Obstfeld 1994a, b)。こ 2010-03-11T20:42:34+09:001268307754Jeanne and Svensson「流動性の罠からの脱却のための信認ある確約」AER 2007
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/29.html
このページの翻訳は[[hicksian>http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20100310]]による。
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**Credible Commitment to Optimal Escape from a Liquidity Trap: The Role of the Balance Sheet of an Independent Central Bank
By OLIVIER JEANNE AND LARS E. O. SVENSSON
***Abstract
本論文は、以下の2つの事実―現実の中央銀行の行動や関心についての観察に基づく実証的な事実―に立脚したうえで、流動性の罠から脱却するための金融政策のあり方を考察する。&bold(){第1の事実};中央銀行は消費者物価指数(CPI)で測ったインフレ率を目標として金融政策を運営しているということ。&bold(){第2の事実};独立した中央銀行は自らのバランスシートの状態ならびに自己資本の水準に関心を持っているということ。これら2つの事実に関しては本文の中でその証拠を提示するであろう。第1の事実は、流動性の罠から抜け出すための最適な方法にまとわりつくよく知られた信認(credibility)の問題を生み出す原因になる一方で、第2の事実は、この信認の問題を解決し、流動性の罠から抜け出すための最適な方法を実効あるものとするメカニズムの可能性を提供することになる。
***Introduction
流動性の罠下においては、名目利子率はゼロ%の水準にある一方で、実質利子率は―民間経済主体が低インフレ期待あるいは時にデフレ期待を有しているがために―最適な水準よりも高止まりする状況におかれることになる。このような流動性の罠から抜け出すための最適な方法は、将来の物価水準に関してより高めの物価期待を生み出すこと、つまりは通常よりも高めのインフレ期待を生み出すことである、という点は Paul Krugman (1998) 以来よく知られたことである。特に、インフレ目標(inflation target)を採用している中央銀行のケースでは、流動性の罠から抜け出すために、中央銀行は、目標として掲げているインフレ率を上回る(オーバーシュートする)水準のインフレ期待を生み出すように 2010-03-11T10:43:51+09:001268271831Auerbach and Obstfeld「流動性の罠での公開市場買い付け」AER 2005
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/28.html
**The Case for Open-Market Purchases in a Liquidity Trap
By ALAN J. AUERBACH AND MAURICE OBSTFELD
***Abstract
Prevalent thinking about liquidity traps suggests that the perfect substitutability of money and bonds at a zero short-term nominal interest rate renders open-market operations ineffective for achieving macroeconomic stabilization goals. We show that even were this the case, there remains a powerful argument for large-scale open market operations as a fiscal policy tool. As we also demonstrate, however, this same reasoning implies that open-market operations will be beneficial for stabilization as well, even when the economy is expected to remain mired in a liquidity trap for some time. Thus, the microeconomic fiscal benefits of open-market operations in a liquidity trap go hand in hand with standard macroeconomic objectives. Motivated by Japan's recent economic experience, we use a dynamic general-equilibrium model to assess the welfare impact of open-market operations 2010-03-09T15:15:52+09:001268115352エガートソン&ウッドフォード「名目金利のゼロ下限と最適金融政策」Brooking Paper 2003
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/27.html
The Zero Bound on Interest Rates and Optimal Monetary Policy
GAUTI B. EGGERTSSON
MICHAEL WOODFORD
オーバーナイト名目金利のゼロ下限が存在する場合における適切な金融政策はどのようなものであるかについては最近注目のトピックになっている。日本ではコールレート(アメリカにおけるフェデラルファンドレートと同等のオーバナイトキャッシュレートのこと)は1995年10月から50ベーシスポイント以下となっている。そして、ここ4年間ではほとんどの間ほぼゼロになっている(図1参照)。よって日本銀行はその期間中ずっと名目金利を引き下げる余地を持っていなかった。この間、日本の成長率は低迷したままで、物価は下落し続けた。これは金融緩和の必要性を意味する。しかし通常の救済方法---短期名目金利を低める---は明らかに利用不可能であった。マネタリーベースの積極的な拡大はこれらの状況下では需要を刺激する効果はほとんどなかったように見える。図1が示すように、マネタリーベースは1990年代始めからGDP比で2倍にもなった。
#ref(eggertsson woodford 2003.gif)
アメリカでは同時期にフェデラルファンドレートはわずか1%にまで引き下げられたが、回復の兆しは極めて弱い。このため多くの人々がアメリカも金利政策がマクロ経済の安定化ツールとして無効になってしまう状況に陥るのではないかと危惧している。他の多くの国も同じような問題に直面している。ジョン・メイナード・ケインズは金利がこれ以上の金融緩和のできない水準にまで下がってしまうという流動性の罠に陥った時にどのような政策が経済の安定化のために用いることができるか、また金融政策がこのような状況でわずかでも有効であるかを問うた最初の経済学者である。長い間、より理論的な好奇心の対象として扱われてきたテーマではあるが、ケインズのこの問いは現在緊急の実際的な重要性を帯びてきたが、それは理論家達にとって既になじみのないものになってしまっていた。
ゼロ下限に達した時、もしくはゼロ下限に達することが不可避の状況での政策のあり方への問いは金融政策への根源的な問題を持ち上げる。ゼロ下限を打つ可能性を認識することが、下限に 2010-04-28T17:53:52+09:001272444832ベンハビブ他「流動性の罠の回避」JPE 2002
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/26.html
翻訳は[[night_in_tunisia]]。
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**Avoiding Liquidity Traps
Jess Benhabib
Stephanie Schmitt-Grohé
Martín Uribe
名目金利のゼロ下限を考慮に入れるとテイラータイプの金利フィードバックルールは意図せぬ自己充足的に減速的なインフレ経路をもたらし、予想のいかなるの見直しによってもマクロ変動をもたらす。これらの望まれぬ均衡は流動性の罠の本質的な特徴を表している。なぜなら、金融政策は産出と物価の安定に関する政府の目標の実現に置いて機能しないからである。この論文ではテイラールールの望ましい特徴---インフレ目標近傍での均衡の局所一意性など---を保存し、流動性の罠へと誘う収縮的な予想形成を排除するようないくつかの財政及び金融政策を提示する。
***I. Introduction
近年、金利フィードバックルールの形態をとる金融政策のマクロ経済的帰結を研究する実証及び理論的研究が復活している。この再注目の原動力の一つは過去20年間に渡ってアメリカがそのようなルールに従っていると上手く説明できるという実証研究に見いだすことができる。具体的には、大きな影響を与えた Talyer (1993) が、インフレ率と産出ギャップにそれぞれ1.5と0.5の係数をかけて足し合わせた一次式として政策金利を設定するシンプルなルールに従うものとして連邦準備を特徴づけた。テイラールールはおおまかにいってインフレ率の上昇に対して中央銀行が金利を上げることを意味する、1より大きいインフレ率への係数の役割を安定化の重要な役割として強調した。彼のこの独創的な論文以降、この特徴を持つ金利フィードバックルールはテイラールールとして知られるようになった。テイラールールは他の先進国の金融政策の適切な説明になっていることも示されている(例えば、Clarida, Galí, and Gertler 1998 を見よ)。
同時に、理論的研究の蓄積によってテイラールールはマクロ経済の安定に貢献したことが明らかになってきた。研究者達は異なる道を辿ってこの結論に達した。例えば、Levin, Wieland, and Williams (1999) は非最適化の合理期待モデルを用いてテイラ 2010-04-08T16:27:51+09:001270711671バーナンキ他「エージェンシーコスト、純資産、景気循環」AER 1989
https://w.atwiki.jp/nightintunisia/pages/25.html
翻訳は[[night_in_tunisia>http://mathdays.blog67.fc2.com/blog-entry-1032.html]]。
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**Agency Costs, Net Worth, and Business Fluctuations
By BEN BERNANKE AND MARK GERTLER
***Abstract
この論文では債務者のバランスシートの状態が産出の変動の原因となるようなシンプルな新古典派の景気循環モデルを構築する。債務者のもつ純資産の価値が高いほど設備投資資金調達のためのエージェンシーコストが軽減されるというのがメカニズムである。好景気は純資産の価値を高め、エージェンシーコストを減少させ、投資を増加させ、このためさらなる好景気を生むのである。また不況においては同様に不況を加速するのだ。(デットデフレーションで見られるような)純資産へのショックは変動のきっかけになりうるであろう。
***Introduction
多くの景気循環論研究者が、企業や家計のバランスシートの状態(=債務者の支払能力や信用力)がマクロ経済活動の大事な決定要素であると主張してきた。例えばFrederic Mishkin (1978) と Ben Bernanke (1983) は債務者の毀損したバランスシートは大恐慌を悪化させる原因となったと論じている。また、Otto Eckstein and Allen Sinai (1986) は企業のバランスシートの科目を景気循環分析の中心に据えている。バランスシートの状態と家計や企業の支出の意思決定が関係していることを多くの研究が示している。
この論文で、我々は景気循環におけるバランスシートの役割を厳密に分析する。用いる枠組みはリアルビジネスサイクルモデルをベースにしたものであり、投資を企画し管理する企業家と彼らへの融資を行う投資家との間の情報の非対称性を特徴とするようなものである。具体的には、Robert Townsend (1979, 1988) にあるような「有償状態監査(costly state verification)」問題を考える。この情報の非対称性はモジリアーニ・ミラー定理の適用を不可能にし、実物と「会計」(つまりバランスシート)要因との間の興味深い関係 2010-04-05T22:46:23+09:001270475183