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題名なんておこがましいと思わんかね」を以下のとおり復元します。
「……しかし、やっぱり思ったより深いわね」
アイツの投げた王者の剣が遺していった肩の傷が、私の自由を少しだけ奪う。
どうやら本格的な治療が必要らしい、幸いここは町のようだから薬のある場所がどこかにあるかもしれない。
町を軽く散策してみれば、予想通り薬屋のような建物があった。
「使える薬がありますように……」
僅かな希望を呟き、私はその建物に入った。

「……見たことも無い薬ばっかりね、本当に効くのかしら?」
薬屋には居るや否や、私は怪我を治せるような物の捜索を始めた。
消毒液があればいいのだが……最悪栄養の取れるでもいいかもしれない。
戸棚の中、屋根裏、テーブルの下など様々な場所を当たってみた。
……しかし、見つかったのは全世界で有名らしい飲用の液体が数本のみ。
「ハッシー」 というそれは胡散臭さを存分にアピールしすぎている。
栄養は十分にある……この表記が間違っていなければの話だが。
味は大丈夫かを確認する為、蓋を開けて中の液体の臭いを嗅いでみる。
鼻を突き刺す臭いを覚悟していたが、そんなに不快な臭いはない。
「薬屋にあるんだから、効くような物のハズよね」
意を決して容器の中にある液体を一気飲みすることにした。

傷が一気に治る特効薬、と言う訳ではないらしい。
肩の動かしにくさはそのまま残っているし、傷も恐らく塞がってはいない。
だが体力が少し戻ってきた感覚はある、傷を治すために体力を取り戻すのがいいだろう。
味もそんなに悪く無い、なかなか優れた栄養補給手段だ。
そしてもう一つ、もう一つと。 一気に三つ。金属のもぬけの殻が出来上がった。 



ハッシーを飲み終えたところで、私は今後の動向について考える。
まず、ニートとの合流はほぼありえないものとしておいておく。
仮にこれが出来たとしても、ここから抜け出す算段がまったく無い。
ここから抜け出す算段もそろう、ニートも生き残る、元の世界にも帰れる。
道を歩いていたら金銀財宝が振ってくるぐらいの確率に賭けるつもりはない。
道が険しくても、少し高い確率に賭ける。

そこで、重要なのは「生き残ること」
コレを忘れてしまっては私のやることの全てが意味を持たなくなってしまう。
積極的に参加者を減らすことも重要だが、死んでしまっては元も子もない。
私も死んだ上にニートも死んでしまってはそれこそ真の手詰まりである。

では、どうするか?
どこかで息を潜めながら、出会ったものを殺す。これしかないだろう。
動き回らずにある一点でじっとしていれば人と接触する機会はないだろう。
その間にも私以外にこの遊戯に乗った者が殺戮を繰り広げる。
人数が程よく減ってくれば有利になるだろう。

……それまで、ここに息を潜めるのも手かもしれない。
入り口は一つ、相手はそこから入ってくるに違いない。
先手を取れる確率は十分にある、自分が有利なのは変わりない。

「肩も上手く動かないし、ここにいるのがやっぱり最善ね……」
入り口近くの椅子に座り込み、王者の剣を手に取れる位置に立てかけ一息付く。
殺戮の世界に飛び込む前の小休止を、できるだけ長く取るために。
叶うなら、人を殺める事がもうありませんように……。

「あ、そうだ」
ふと思い出したように、自分のデイパックを漁る。
遊戯が始まってから直ぐに先ほどの出来事があったため、支給品の確認を忘れていたのだ。
食料や水を一通り確認した後に出て来たのは……一冊の本だった。 




「ゆ……めにっ……き……?」
黒く古ぼけたカバーに、消えかかった白い文字で書かれていた。
厚さとしてはたいした物ではない、まさに日記のような感じだった。
使えないと思いデイパックに仕舞おうとするが、妙な好奇心が沸いて来た。
どうせここに居座る事を決めたのだ、少しぐらい時間つぶしにこれを読んでみても構わないだろう。
何よりも、読んでみたいと心のどこかでそう思うのだ。
私はそんな軽い気持ちで、表紙に手をかけたのだ。



一日目と書かれた最初のページ。
異常な光景の中を彷徨う少女の絵が何枚も描かれている。
途中に森を歩く絵もあったが、それは少しだけで殆どが訳のわからない空間を歩いている。
刺激色の赤を引き立てるかの様に置かれた青や。
もはや何を意味するのか分からない色で表現するのも難しいオブジェクトが散乱している。
頭が痛い。

二日目。無限とも思える広い広い空間の絵。
吸い込まれそうな錯覚が襲い掛かってくる。
少女は自転車で駆け巡っている、しかし何処までもその道が続くようで。
今度は白と黒の二色の世界に飛び込む。
殺風景なサボテンのような物がそびえたつ中、少女だけが色を持っている。
白、黒、白、黒。

「どうなってんのよこの日記は……」
このゆめにっきが、只の日記ならどんなに良かったか。
彼女がこの本を開かなければどんなに良かったか。

三日目は、雨だった。
雨の中、傘を差して森を彷徨う少女。
道路のようなところに沿って歩いていくうちに、森ではなくなってくる。
背景にはカラフルで気持ち悪いバケモノが何匹も直立している。
まるで子宮を連想させるそれは、生命の誕生を意味するのか?
そもそも意味を持つ物がこの日記にはあるのだろうか?
何を伝えたくてこの日記が残ったのか、この少女は誰なのか?

三日目の最後のページには森林の中に潰された死体があった。
それをじっと見つめていた、何故だかずっと見つめていたのだ。

動いた。
確実に。
ビクビクと。

落ち着いてもう一度見直すが、動いていない。
しかし、先ほど見たときは動いていた。まるで生きた人間が痙攣しているかのように。
頭痛が酷くなってきた、吐き気すらしてくる。 

ついに四日目、もう何が起こっても受け入れられる覚悟が出来てきた。
それも建前かもしれないが、少女が紅い目玉のようなものをバサバサと刺し倒しているのはなんともなかった。
今までの不可解な絵からは考えられる行動だ。
……考えられる? 意味のある行動だということなのだろうか?
一日目に出てきた鳥人間のような物に捕まったとき、赤と黒の世界に飛ばされたのだという。k
血液の循環みたいだ、頭痛の痛さがどんどん酷くなってくる。

イツカメ。古代エジプトの壁画のような空間を駆けている。
赤と青のその壁画に似たようなのが最初の会場でいたような……機械?
下水道のような場所へと進む、空間から絵が飛び出してくる。
いろいろと感覚がおかしくなって来た、そこに飛び込んできた有名な画家の絵のようなものはもうなんとも思わなくなってきた。
いや、思えなくなってきたのほうが正しいのだろう。

六日目。
キラキラと輝くカラフルな空間、赤と黒の血管のような場所、いつか見た森に電車。
そして吊り橋で見た奇妙な生命体、怪談に出てきそうな女性。
意味なんかない、そこにあるのは存在だけ。夢という、存在だけ。
そう考えることにしよう、そうでないと今にも自分の頭が破裂しそうなぐらい痛いからだ。
……でも、本を読むのを止める気はしない。 一種のドラッグのようなものだろうか。
始まると止まれない、終点まで。超速特急に片道切符で乗り込んでしまったのかもしれない。
八意永琳は理解することを、やめた。

七日目、丁度半分のようだ。
初っ端からテレビに映る奇妙な映像、妙に明るいのが腹立たしい。
血を流している目玉、生える手、バックには印度の神話に出てきそうな何かがいる。
無数の足跡、モアイに口と牙をつけ一つ目にしたような生き物と二つの弾のような生き物。
いや、これは生き物なのだろうか? 理解する事は既に止めた。
生き物でなかったら、なんでもいい。
チェスのような場所から赤黒の血管世界に飛び移って、七日目が終わった。 

八日目、マズい。開いちゃいけない。
この先だけは絶対に開いちゃいけない、どうしてもそう思える。
いけない、いけない、何故かは分からないが本当にダメだ。
そうだと分かっているのに腕は日記を開く。
モノクロのノイズを生み出す場所、二次元のゲームのような世界。
わかってる、ここはまだ安心できるって。
ここじゃない、もっと奥のほうにあるって事は分かってる。
分かってるのに、わかってるのに。
むらさきのじゅうたんのようなところをかけぬけ、てすりをなでるあかいおおきななにかをみて。
つぎのとびらへ、すすんだのです。

黒。

白、赤、青、黄、橙、緑、紅、蒼、藍。
いろんないろのものがぶちまけられて。
ひとつの絵になって、絵ではないもっと禍々しいもっと何かを掻き立てる。
痛い、いたい、イタイ、頭が張り裂けそうだ。
脳漿と血液を撒き散らしてこの場に朽ち果てそうなぐらい痛い痛い。
閉じろ、日記を閉じろ、本を閉じろ、それを閉じるんだ。





本を閉じた。正確には閉じられたのかもしれないがどうでもいい、本は閉じられたのだ。
最後に見た映像。本当に気持ち悪い、本当に理解できない。
「うぶ、ぐえっ。うええっ、ごぼっ」
店の隅に縮こまり、胃液もろとも胃の内容物を吐ききる。
純粋な胃液が喉を焼いていき、更に不快感を掻き立てる。
日記を読むごとに増してきた頭痛もそうだ。
訳がわからない、どういったらこんな物が出来上がるのか。 

吐き出したのは自分の胃液と内容物。
だから見えるわけがない、見えるわけがないのに。
吐き出した物は自分の体内にあったのに、あるわけないのに。

「ひ、あ、うわああ……ああ、あ!!」
最後に見た、あの何かにそっくりだった。
声にもならない声を絞り出し、それを焼き尽くすように手から弾を出す。
一発だけでなく、何発も何発も。自分が吐いたはずの嘔吐物に向かって。

それが跡形もなく消え去り、煙が立った頃に永琳は弾を打ち出すのを止める。
不思議と痛かったはずの肩が痛くない。傷は塞がっていないのに痛くない。
それが又気持ち悪くて、吐きそうになるのをぐっと堪える。
アレは、見たくないから。

ゆっくりと最初に座っていた場所に戻り、閉じた日記を遠めに投げる。
休息を取って疲れを取るはずが、逆に疲れている。
その上頭痛と吐き気まで貰ってしまった、最悪の支給品を引き当てたのかもしれない。
「落ち着け……永琳、今のお前の目的は休息をとることだ……」
頭が痛い、極小の穴を連続してゆっくりと開けられているように頭が痛い。

「……助けてくれ、誰か」
正体の分からないものに怯える彼女の耳に、悪魔の声が届く。

悪魔の声が、殺し合いが行われているという今の現実に引き戻してくれるようで。
今の彼女にとっては救いだった。 


ほんの少しだけ、彼女の中でほんの少しだけ。
まだ続きが読みたいという気持ちがあった。
日記は彼女から遠くに離れた、しかし手の届く距離である。

ゆめは、おわらない。
げんじつは、ここにある。
なにかが、むしばんでいく。
なにが?





【E-3 町/早朝(放送直前)】 
【八意永琳@東方シリーズ&新世紀 東方三国志~ひぐらしの憂鬱~】 
[状態]:肩に怪我、頭が痛い、吐き気、精神的疲労大、時々物が変に見える?
[装備]:王者の剣@DQ3 
[道具]:支給品一式、ゆめにっき@ゆめにっき
[思考・状況] 
1.気持ち悪い
2.怪我の治療 (?)
3.ニートを探す 
4.ゲームに優勝し、悪魔と取引をして皆が元通りになれることを願う。 

※永琳は自分の力が封じられていることを認識しました 
※ゆめにっきを置いていくかどうか悩んでいます。
※ゆめにっきを半分読みました

【ゆめにっき@ゆめにっき】
ゆめにっき、ゲーム自体の物と考えていただいてオッケーです。
日付表記はプレイ動画準拠です。

【ハッシー@イルブリード】
これを飲んで君も元気百倍! 

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