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「ご苦労……なんだ、まだあるのか?」
ピエモンの部屋に、一体のデジモンが立っている。
「はあ、その……なぁんといいますくぁ」
そのデジモン、アイスデビモンは、ピエモンに対してかなり言いにくそうに口を開く。
アイスデビモンは、ピエモンの片腕であり、完全体以下の全デジモンを仕切っている。
実力は完全体に劣るが、それ以上に優れた頭脳を持つため、この地位にいるのだ。
……少し、声と口調が独特なのが気にはなるが。

「監視役のデジモンどもからぁ、不満の声が」
「不満、だと?」
ピエモンは疑問の声をあげたが、すぐに理解する。
「あれかね、喰われたくないと?」
「ぶるぁ、その通りですってヴぁ」
自分に逆らわないデジモンを集めたのだか、性格に難がありすぎるなと、改めてピエモンは思った。

「どれ程の規模だ?」
「城、山を中心に、巻き込まれの多い町も含め、かなりの数ですってヴぁ」
ピエモンは考える。
世界の性質上、秘密道具の効果が制限により落ちているのは理解していた。
見つかり、死亡する者も少なくはないだろうと。
しかし、喰われるのは考えていなかった。

デジモンがデジモンを喰らうのは、まだわかる。
だが、デジモンを喰らう人間、人を喰らう人まで現れた。
別に構いはしないのだが、いつ喰われるとも知れない部下どもにとっては大問題のようだ。
「クラモンがおかしくなったのも、それが原因だったな」
デジモンが、デジモン以外の存在を取り込めば、どうなるかは理解はしていた。
アルケニモン、マミーモンというヒトゲノムを合わせ産み出されたデジモンの前例はあったためだ。
しかし、完全体程度の力に過ぎないだろうと、脅威は感じていなかった。
あれも、手遅れになる前に対応しておく必要があるだろう。

「残忍に、何匹か殺せ。喰われるより恐ろしい死を教えてやれば、馬鹿な真似も……」
そこまで言って、ピエモンは思い留まる。無駄に手駒を減らすこともない。

「別に、殺すだけが恐怖を与える方法でもない、か。よし、これ以上文句を言うならば、阿部さんを治療して同じ部屋に放り込むと伝えろ」
そのときアイスデビモンに電流走る―――!
「ぬ、ぬぁんと恐ろしいことを。やはり、貴方様の残虐性には敵いませんな」

それはそうだろう。ピエモン自身が恐怖するようなことなのだから。
阿部の野望を耳にして、ピエモンとマルク両名に冷や汗が走った。ゴマモンの悲劇に、憎い敵ながら少し泣けてきた。
もちろん、介入などするつもりなどはない。だが、この最強クラスの脅し文句に逆らえる奴などいるはずもない。
「わかりました。それともう一つ……減った人員を補充しますとぉ、ゆめにっきや謎の空間を調査させる余裕は、ありませんってヴぁ」

この世界には、妙な空間が存在している。
参加者を配置する前に、部下に厳密なチェックはさせていたはずだった。
それでも、ありえないことは多々起きている。
殺し合いが順調に進んでいる以上、気にすることなどないと、マルクは言っていたが、ピエモンはそうは思わず、勝手に調査していたのだが……

「だが、仕方がないか……既に参加者は半分を割った。調査など終わる前に、優勝者が決まる方が早いだろう」
半分は嘘。ピエモンは、マルクにこのことが知られる前に収めたいのだ。
お互いに、人をからかうのは大好きなのだが、からかわれるのは大嫌い。
そんな要因を、知られる前に片付けてしまいたかった。

「マルクにはこの事は?」
「いえ、既に放送準備に入っていたので」
「けして知らせるな。内密に事を済ませるのだ」
「ははあ!オールハイルピィエタァァァニア! ぶるぁあ! 不満なぞぉ! 漏らしてるじゃねぇえ! ってヴぁ!」

勢いよく飛び出して行くアイスデビモン。
どの辺りが「アイス」なのだと、ピエモンはまた頭を抱える。
ピエタニアってなんだ。

ピエモンは、このゲームの下準備を行っていた。
だからこそ、マルクに任せた舞台に不備が多いことが不満でならない。
(とはいえ、世界に歪みは必要なのだがな)
ピエモンは、かつては大した力も無いデジモンだった。
それが、デジタルワールドに現れた歪みの影響で、究極体となり大きな力を得たのだ。
だが、それは結局世界を滅ぼそうとしていたアポカリモンに知らず知らずに利用されていたに過ぎなかった。
過ぎた歪みは、不必要なのだ。

「どんな問題が起ころうと、この殺し合いを成功させなければ、我々に未来はない」
このゲームは、単なる催しではない。
このゲームの完遂の先にあることこそが、真の目的なのだ。

「ピエモン~聞こえているのサ~?」
部屋の通信回線が開き、マルクの声が聞こえてくる。
「ああ、何かね?」
「もうすぐ放送を始めるのサ! その後、君が口うるさいクラモンをどうするかも話し合うから、こっちにくるのサ!」
ようやく、少しは真面目に考える気になったらしい。
「あれについては、首輪をつけて参加者と同じ扱いにするのが、一番だと思うのだがな」
「そうは言っても、どうやってつけるのサ! 着脱可の構造じゃないから難しいのサ」
「そうだな……わかった、放送後に具体案を検討しようじゃないか」
ピエモンは通信を切り、机の上にある物を手に取る。

先ほど、アイスデビモンが来たのは、本来は報告が目的ではない。
舞台から、この支給品……千年リングを拾ってくることだった。
閉じ込められた闇の思念を、放っておくのはかつての自分と重なって心苦しかった。
波長の合うサトシが死んだ今、他人に憑依させることはできないだろうが、何かには使えると考えたのだ。

「まぁ、随分乱暴に掘り出したのか、どうも死体が土からはみ出していたようだが……愚かなポケモンの末路に、花を添えてやったのだ、むしろ感謝されるべきだろう」

残念ながら、問題なく順調に……とは行かない要素が多い。
だが、ささいな問題などで、もはや止められはしない。
既に運命は決まっている。それに抗った男達は、この6時間でほとんどが死んだ。
「素晴らしい、実に素晴らしいではないか。幕が上がった舞台を、もはや止める術などない!」
異変に気付いた誰かが、外から何をしても無駄でしかない。
このゲームは、内なる者たちにしか終わらせられないのだから。

そう、既にこのゲームを終わらせることが出来るのは、内なる者のみ。
たとえ、外の人間がどれだけ足掻こうと、彼らが前に進まなければ何も変わらない。
定められた終わりか、運命を覆した先の終わりかは、全て彼ら次第なのだから。



※ピエモンとマルクの間に微妙な考えの相違があります。
不安要素は取り除くべきと考えるピエモンに対して、マルクはイレギュラーもゲームのうちだと考えています。
※ピエモンは、クラモンAに首輪をつけることで参加者として扱おうと考えています。
ですが、首輪の構造上難しく、今のところ方法がありません。

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