「黒より暗い人物」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

黒より暗い人物 - (2008/02/23 (土) 11:26:01) の編集履歴(バックアップ)


黒より暗い人物 ◆CMd1jz6iP2


sm165←時列順に見たい人はコチラ→sm167
sm165←投下順に見たい人はコチラ→sm167
キャラ順に見たい人はコチラ↓
sm149←TASさん→sm166
sm149←クラモンB→sm166
←エアーマン→
←天海春香→




「くそっ、ロムスカは一体どこへ行ったんだ?」
エアーマンは、ロックマンの残骸、支給品を回収した後にムスカとの合流を急いだ。
だが、どこにもその姿はない。とうとう山を降りきってしまった。
「まさか、殺されたのか。だとしても死体があるはずだが……ん?」
何か、叫び声のようなものが聞こえ、その方向に急ぐ。
川辺に、人影を見つける。ロムスカか、と思い近づくが当てが外れた。
「なんだ、この小娘は」
その声に気づいたのか、ずぶ濡れの少女はバッと立ち上がる。

「ぶ、武装錬金!」
「なに!?」
その掛け声に驚くエアーマン。少女……春香の姿がシルバースキンに覆われる。
「ほう、面白い。貴様もその力を持っているのか……」
今度驚くのは春香の方だった。貴様もその力を。それが意味することは一つ。
「まさか、エアーマン!?」
「何故俺のことを……そうか、ロムスカめ。あの小僧を始末し損ねたな。生きているにしろ死んでいるにしろ、案外使えん男だ」
「ロックマン君を、どうしたの……」
「ああ、ロックマンか」
ディパックに手を突っ込むエアーマン。

「ひ……きゃああああ!?」
取り出されたのは、潰れたロックマンの頭部。
「どうして……! スパイダーマさんも、ロックマン君も……みんなの為に頑張ったのに、なんでこんな目に!」
「……何を勘違いしているのかは知らないが」
エアーマンが、構える。
「後悔したまま死ね! エアーシューター!」
飛んでくる竜巻に、春香は迷わず突っ込んだ。

(シルバースキンなら、この竜巻でも……!)
だが、その予想は覆る。
まるで粘土細工のように、絶対の守りは砕け散った。

「ひ、ぎ、ぁ、ぁ……どうじ、て……?」
無いはずの心臓が、痛い。半分砕けたシルバースキンは春香の命そのもの。
シルバースキンの激しい損傷は、春香の命そのものを蝕む。
「武装錬金……どうやら満身創痍の体では扱えない代物らしいな」
これまでの疲労が、弱りきった精神が、武装錬金の本来の能力を発揮させなかった。
発動できても、その守りは鉄壁とは程遠い強度……春香の命の灯火は消える寸前だった。

「やだ、ごんなの嫌……私は英雄になるっで、みんなを、守ッで……一緒に、元の生活に……!」
ガクガクと震える体で、立ち上がった春香の姿は、あまりにも惨めなものだった。
ゆっくりと再生するシルバースキンから覗く顔からは、恐怖の感情しか伺い知れない。
「……武装錬金」
二体に増えたエアーマンは、再び同じ構えを取る。

「最期に教えてやろう、小娘」
二人の放った竜巻が合体し、巨大な竜巻へと変わる。
「死にだぐない……守っでよ……だえか、私を助け……ひ――ゃ――」
言葉も言い切ることができず、春香は竜巻に巻き込まれる。

「古来より、英雄の結末とは悲劇以外にありえない。幸せな日常に戻るつもりで、英雄になろうとした愚かさを呪え」

竜巻から、何か細かいチップ上の破片や、引き裂かれた服……赤黒い肉片までもが飛び散る。
竜巻が収まり……ザブンッ、と何かが川に落ちる。
白目を剥き、事切れた春香の死体が川を赤く染めながら流れていった。

「しまった……支給品が!」
春香の支給品の入ったディパックを回収しなければと、追いかける。
だが、死体は反対側の岸。いくら走っても届かない。

「ええい、傷ついた体では防水も完璧ではない……む?」
後ろから何者かの気配が迫る。敵かと振り返るエアーマン。

「貴様は……あの時の?」
TASを襲っていた生物だった。だが、何か様子が……いや、まるで別の生き物のように思える。
「まあいい、ちょうどいいところに来たな」
エアーマンは、頭に疑問符を浮かべるクリサリモンの触手を掴み、強引に川に投げた。
「~~~!?」
そのまま、エアーマンを分裂したエアーマンが投げる。

「アイ! キャン! フラァァァァァイ!!」

エアーマンはクリサリモンの上まで放り投げられ、その頭の上を降りる。
そのまま踏み台にして、エアーマンは無事に川を渡ったのだった。
クリサリモンは流されていくがエアーマンには関係が無い話だ。

「よし、追いつかね、ば……!?」
走り、追跡を再開しようとしたエアーマンの体が、突然地に伏す。
対岸の分裂したエアーマンも消滅している。
「ぐっ……各部が異常な熱を……サテライト30の使用は無理があったか」
ロックマンとの激戦を終えたエアーマンもまた、ダメージを蓄積していた。
その状態での武装錬金の使用は、ロボットのエアーマンにとっても無理のあるものだったのだ。

「ちっ、流れてしまったか」
勿体無いことをしたと後悔するが、もはや諦める他ない。
「それより、渡ってしまった以上どうするか」
北には沼地……入りたくない。南下することにした。


【天海春香@THE IDOLM@STER 死亡……】

その頃、橋の下で休んでいるTASは唸っていた。

「性欲をもてあます……!」

ハイポーション。ゲロラの化身でこそあるが、その成分は色々元気になるものだ。
体調を崩すほど濃厚な効果が、落ち着いてきたことで発揮してきてしまったのだ。
「くそっ、体が熱い。この悶々とした気持ち、何かで発散せねばこれからの行動にも支障が……」
そこでTASは、自分に向けられた視線に気が付く。
見ると、見張っているはずのケラモンが一匹こっちを見つめてではないか。

「なんだ、何か見つかったのか?」
返事が無い。なにか、様子がおかしい……異常に息が荒いような……
(待て……こいつ、たしか何か浴びなかったか?)
記憶を脳内で再生する。あれがなんだったか。ビンだ。それに書かれていた文字は……

マ カ ビ ン ビ ン

「オレのそばに近寄るなあああ―――ッ!!!」

TASは走った。いくらもてあましているからとはいえケラモンとは勘弁したい。
だが、信じがたいことにケラモンはTASの進行方向に回り込む。
「馬鹿な!」
この俺より速い!? と驚く間もなく襲いかかるケラモン。
なんとかかわすが、後ろは川。完全に追い詰められた。
ケラモンの目は血走っている。「バグ」持ちのケラモンのように赤い瞳は、まさにケダモノといった感じだ。

「フッ、この緊迫感……悪くない。この程度の危機を乗り越えられずして、何がTASだ!」
そして、一瞬の間へ経て……二人は同時に動いた。


注:ここからの攻防はイメージです。

カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ
カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ
カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ

ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん
ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん
ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん

ホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハン
ホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハン
ホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハンホイホイ☆チャーハン

           キ ワ ミ !
フッタエフタエノキッワミ! あぁん♪あぁん♪あぁん♪あぁん♪
フッタエフタエノキッワミ! あぁん♪あぁん♪あぁん♪あぁん♪
            アーッ!

※しばらくお待ちください。


激しい死闘だった。
電池に封じ込めねば、俺の命も危うかったかもしれない。

というか、なぜか容量が30%も溜まった。非科学的だが、赤いからだろう。
汗をかいたからだろう、もてあましていた性欲も収まってきた。
頭も冷えたところで、ようやくTASは異変に気がついた。

「あれは……あのサナギ?」
バグを持ったサナギではない。正常なサナギ、おそらく別れたケラモンが進化したものが川から流れてくる。
拾い上げると、気を失っているだけだった。

「おい、しっかりしろ。見張りは何を――」
周囲を確認に走る。
「あいつら、どこへ!」
橋の見張りをしていたはずのケラモン2匹の姿が無い。
ケダモノになった奴はともかく、他のは正常のはずだというのに……TASは頭を抱える。

「ふっ……その様子では、苦労しているようだな」
聞き覚えのある声に、TASは顔を上げる。
「お前は、エアーマン?」
南下してきたエアーマン。山の次は川で。再び、二人は出会った。

#####################################

何もない、漆黒の空間。そこで、春香は目を覚ました。
「……ここ、は?」
「やっと起きたのね、春香」
「やっと起きたんですね、春香さん」
この感覚には覚えがある。また死に掛けてるのだと理解できた。

だから、また千早たちが立っているのだと思い、目を開けて―――
「――嘘」
鏡を見るたびに出会う、「自分自身」が二人も目の前に立っている光景が信じられなかった。

「どういう、ことなの?」
「わかってるでしょ、春香。私は死んだの。あのエアーマンに殺されてね」
「ここは言わば死の淵。現実では死体同然の私が川に浮かんでます」
「それはわかってる。そうじゃなくて……あなたたち、いったい誰なの!」
クスクスと、黒い服との白い服を着た春香が笑う。

「「私たちは、天海春香自身。天海春香の側面そのものよ」」
「側、面?」

「そう。私は黒春香と名乗りましょうか。天海春香の心の邪悪な部分」
「私は白春香。天海春香の心の清らかな部分」
わかりやすいなと思いつつ、春香は状況が飲み込めない。

「それで、私と私が私に……ややこしいな、何の様?」
「選択の余地を与えにきたのよ。私がどっちの道を歩むのか」
「道って……まだ、道があるの?」
黒春香は、いやらしい笑顔を見せる。

「ヴィクター化。その道があるわ。」
「ゔぃくたー?」
「そうね、簡単にいえば……人間以上の存在になるのよ。人間なんて脆弱なエサに過ぎない。そんな素敵な力が手に入るのよ」
エサ? 人間が、エサ?

「なに、それ……私は、私は英雄に」
「そんなの、無理に決まってるでしょ。天海春香、なによりも自分が大好きな私が、他人のために戦うなんて。
トップアイドルになる夢と、英雄になりたいなんて願いを両方叶えようなんて無理。
この世界に来たときの事を思い出しなさい。天海春香は、トップアイドルになるために何でもやろうとしたじゃない」
「あれは……現実だって理解してなかったから! 白石さんを、本気で殺す気なんて!」
はるちゃんは人殺しじゃない。その言葉が再び重くのしかかる。

「私、天海春香は「持たざる者」なのよ。歌も、踊りも、容姿も何一つ秀でたものが無い……わかっているくせに」
「だから……だから、私は努力して……」
「努力すれば、トップアイドルになれる? なれないわ。英雄になれなかったように、ね?」
春香自身、わかっていた。なにせ、今目の前にいる黒春香は自分自身の本音なのだから。

「心臓の代用品である核鉄……あれの本当の力は超人への変貌。全ての生命を喰らう存在への進化。
参加者の塵(ミナゴロシ)なんて簡単。トップアイドルへの道は、優勝しかないの!」
「殺……す。つかさちゃんみたいに……自分の意志で、みんなを?」
「それがつかさちゃんのためでもあるの。 これ以上罪を重ねる前に殺して……生き返らせればいいの」
あのまま放置すれば、人をたくさん殺す。山にいる仲間達だって、危ない。
「そう、か。殺してしまえば……お姉さんと一緒に生き返らせてあげれば、全て解決する?」

優勝のご褒美で、トップアイドルになる。皆を生き返らせる。
最高の、ハッピーエンドではないだろうか。

「それは、間違っているわ」
その声は、白春香……もう一人の自分のもの。
「人を殺すのが良いわけがない。優勝して、あいつらが約束を守る保証なんて無いじゃない」
「そ、そうだよね。わ、私はスパイダーマさんみたいな」

「だから、もうこのまま眠ろう?」
「え……眠る、って……」
白春香は、春香に優しく微笑む。
「もう、死ぬしかないの。生き返れば、バケモノになる。迷惑をかけず、このまま死ぬのが一番よ」
黒春香のようなバケモノになる道しかないのなら、残りは死ぬだけ。

「天海春香は十分に頑張った。後は、千早ちゃんたちと一緒に皆を見守りましょう?」
疲れ果てていた。自分の努力の、想いの何もかもが意味をなさなかった。
トップアイドルになりたいから死にたくない。頑張るのが辛いから死にたい。どちらも本音だった。

「さあ、選んで。殺戮の道を歩みましょう」
「さあ、選んで。永遠に休みましょう」

罪深い自分には、アカルイミライなんて存在しないと思い知らされた。
死をもって償うか、つかさちゃんのように罪を重ねていくしか道はないのだ。
染まっていく。元々黒い自分に、つかさちゃんが白を混ぜてくれたのに。
今度はつかさちゃんに濃厚な黒を混ぜられ、私は……

「なんだ、元に戻っただけじゃない」
始めから、自分は真っ黒だった。始めから、英雄になどなれるはずが無かった。

春香の瞳が、光は無くし、細く虚ろなものへと変わっていた。

「ようやく、わかってくれたのね」
黒春香が、手を差し出す。
「ええ、良くわかったわ」
春香は、勢い良く手を伸ばす。

そして、そのまま黒春香の顔面を思い切り殴り飛ばした。

白春香がニコニコ笑いながら近づく。
「そう、それが正しいの。さぁ、私とぶぅふー!?」
無用心に近づいてきた白春香の顔面も殴り飛ばす。
「なっ、いきなり何を――」

「黙りなさい、この面汚し共」
冷たく言い放つ春香に、白黒春香は身を縮ませる。
「そこに並んで、正座する。早くしなさい」
顔を赤く腫らした二人の春香は、黙って春香の前に正座する。

「自分の本音を聞いて、本当に良くわかったわ。天海春香という人間が、それほど矮小なのかを。
ゲームに乗るか、死ぬか? そんな二択しか用意できない馬鹿さに、もううんざりよ」
「そ、そんな……だって、それ以外に」
「白春香、アンタは論外よ。そんな萎びた白さ、雪歩の掘った穴にでも埋めてしまいなさい」
ぷしゅう、と蒸発するかのように白春香が消えてしまう。
「うわあああ、白春香――!? 視線だけで消滅しないでよーー!!」
その視線が、今度は自分に向けられていることに黒春香は狼狽する。

「わ、私は間違ってない! 二つの願いを叶えようなんて、優勝するくらいしか方法は……」
「そうね、私は間違っていた。二つの目的を同時に叶えることなんて出来ない。

――だから、目的を一つに纏めてしまえばいいのよ」

その声の質があまりにも恐ろしく、黒春香は戦慄を隠せない。

「私は頂点に立つ。この世界の頂点に。そうすれば愚かな争いも無くなり、私もトップに立てるもの」
「えっ、えっ? ア、アイドルの頂点じゃなくて!?」
「少しハードルは高くなったかもしれないわね。でも、世界の頂点とは全ての頂点。それってアイドルの頂点ともいえない?」
「いえないよ! 詭弁! それ詭弁!」
虚ろな瞳のまま、クスクスと笑う春香。
ありえない。黒春香はガクガク震える。私たちは春香の心そのものなのに、と。
黒さの化身である私より黒いなんて……この一瞬で自分自身を凌駕するなんて――

「そうね、詭弁ね。でも、やっぱり世の中を落ち着かせないと、大好きな歌も歌えないもの。
福山さんやいさじさんみたいな人が、熱く歌を響かせられる世界を作る。そのために、世界を制する。
ルールを作るのは私……あなた程度の黒さは、高木社長の黒さに紛れて消えてしまえばいいわ」
ぷしゅうと、黒春香も消滅する。

誰もいなくなった闇の中、何もない空間を見つめる春香。
「それで……こんな茶番を用意した人に登場願いたいのだけど?」

――ふふふ、気づいていたとは。さすがは我が主だ――

春香より高い位置に、その男は立っていた。
妙なグラサンをかけた、長いあごひげの男性が微笑んでいる。
『良くぞ試練に打ち勝った。「ふたりはハルキュア」を退けるとは、さすがは我が主だ』
「二回言わないで。アンタ、誰よ」
『我が名は、洞爺湖。お前の持つ木刀の具象化した存在だ。お前の心を具象化してやったのもこの私だ』
「木刀が偉そうに飛んでると折るわよ。あと、『』とかじゃなくて普通に喋りなさい」
風が吹く。洞爺湖と名乗るおっさんが同じ目線まで降りてくる。

「ふ、ふふ。見込んだとおり、我が主に相応しい。これからの困難に挑む主に、新たな力を授けよう!」
「必要ないわ。ヴィクターとやらで十分よ」
「……い、いや待て。ヴィクター化は確かに強力だが、全てを喰らう諸刃の刃。私の力もだな」
「わかった。教えなさい。さっさと、5秒で」

やる気の無いその言葉に、いらだつ洞爺湖。

「5秒だぁ!? 必殺技がそんな簡単に覚えられるか! 俺の必殺技、ももパーンッ! はだなあぁ……」

「ももパーンッ!」
「うごぶぇえええ!! お、お許しを閣下ーー!」
「あら、意外と使えるわね……閣下?」
「はっ! あなたこそ私が仕えるべき真の主。敬愛を込めて閣下と呼ばせていただきます!」
「いいわね。アイドル、天海春香を捨てるにはちょうどいい呼び名よ」
閣下、閣下かぁ、と虚ろな瞳のまま頬を赤く染める。
何だか恐ろしいものを目覚めさせてしまったのではと引く洞爺湖。

「ところでヴィクター、だったかしら。ちょっと詳しく聞きたいのだけど」
「いや、俺も単行本読んだだけなんで詳しくは……」
「なにそれ。どれよ、単行本。ああ、もうエロ本ばっかりじゃない」
「何勝手に漁って……勘弁してくださいよ、閣下ーー!」
洞爺湖に用意させた単行本「武装錬金」を流し読む。
主人公、武藤カズキ……なぜか、会ったこともない福山さんとイメージが重なる。
私の力、シルバースキン。正義のために自分を犠牲にする、私なんか及ばない実にブラボーな人。
そして、ヴィクター化……世界の命を食らい尽くす、異形の存在。

「白い核鉄、なんてものはないだろうし。困ったわね」
「そのままってことはないでしょ。制限もあるだろうし、シルバースキンで封じられるし」
「そうね。シルバースキン・リバースでエネルギードレインも抑えられるのは助かるけど……変よねこれ」
流し読んだ知識ではあるが、この漫画と自分は明らかな矛盾がある。

「どうして、シルバースキンが黒い核鉄なのかしら。そんなこと、どこにも描いてないわ」
漫画によると、ヴィクター化が起こる特殊な核鉄は主人公の持つ物ともう一つだけしかない。
このシルバースキンは、通常の核鉄で……そもそも心臓の代用にもなりえない。
「……ありえない存在ということならば、俺もまたそうだ」
「どういうこと?」
ちょっと口調を戻した洞爺湖は、意を決したように話す。

「俺……夢オチなんです」

「……なにそれ」
「俺は本当に存在していたわけではない。前の持ち主とその仲間の夢に出てきた存在にすぎん」
「……これって私の夢?」
なんとなく、そんな気はしてた。じゃあ、今漫画を読んで得た、自分の知らない知識もデタラメなのか。

「そうじゃない。俺も詳しくは分からないのだが……何かの力が働いて「在り得ないもの」が当然のように存在してるようなのだ」
「ちょっと判りづらいわね。たとえ話で説明できない?」

「そうだな……ある優しくも厳しくもある教官が、すっげー怒って恐ろしい怖さを見せたとする。
それだけが前面に押し出されたような人間が、現実に存在してしまい破壊の権化となってしまう。
もしくは、ある食べ物の中に異物が混入してると信じきってるとする。それだけで、本当は何もないはずなのに、本当に異物が混ざっていたり……」

「ずばり言うと……誰かの「夢や妄想」が、現実に存在してしまう時があるってこと?」
洞爺湖がうなづく。
「ずばり、それが俺という存在や、閣下のシルバースキンにも影響したのではないか、と」
「……わからないわ。何か証拠か……主催者を問い詰めるしかないわね」
そうとなれば、こんな夢の中に用はない。早く生き返らないと本当に死ぬかもしれない。

「ところで、復帰されてからの方針は何かあるので?」
「……武装錬金を読んで思ったの。英雄は、全てを守るために戦うけど……彼らを守ってくれる人はいない」
全ての英雄が抱えているであろう苦悩。エアーマンが言うとおり日常を守るため、彼らは一人で戦い死んでいく。
「彼らの力を大いに借りる代わりに、この力で彼らの背中を守り抜く。全部が終わった後、彼らも笑える世界のために」
「ふふふ、王というより騎士だぞ、それでは。世界を制するのではなかったのか?」
「ひとまずは、みんなを纏められるブラボーな司令塔になれればいいと思ってるわ。優秀な人材同士の争いを収められるくらいのね」
どういう人材が必要かと考える。

「まずはこのゲームを破壊できる頭脳の持ち主と、鬼神の如き力を持つ配下が欲しいところね」
「ずいぶん高望みというか、無理では?」

「本物の鬼でも欲しいくらい。私だけじゃ世界を治めるなんて出来ないもの。
ゲームの根底を壊す……ピエロを倒す……やることは変わらないけど、私はそれを目指す人たちを一つに纏めたいの」
そのためにも、まず自分が信頼を勝ち得なければいけない。
人殺し、生命力を吸う化物、見るからに怪しいとマイナス点が大きく占める自分には難しい話だ。
「だったら、閣下には何があるんです?』
「そうね。このバケモノの体と、魂「だけ」は込められた歌声と……」
考えれば考えるほど、本当に持たざる者といわざるを得ない。

「そういえば……」
アイドルとして鳴かず飛ばずの状態になっても、意外と生活には困らなかった。
どんな仕事でもと全国を転々として、なのにどこにでも絶対にいるファンが何人かいた。
ストーカーかとも思ったが、こんな自分を追い回すなんて愚かな……じゃない、嬉しいなと思ったものだ。
おかげで地味ながらも完全なアイドル終了とまではならずに生き残れたのだ。
普通のファンとも違う、盲信的な信者を獲得していた。それが自分の持つ何かだというのなら。
「あるかもわからないけれど……カリスマかしら?」
「なんだ、わかっているじゃないか」
ニヤッと笑う洞爺湖の姿が消え……春香は再び地獄に舞い戻った。

川を南下する、二体……否、たった今三体に増えた生物。
橋を見張っていたはずのクラモンであった。
死体が流れていくのを目撃した二体は、TASへの報告をしようと思った。
だが、TASはビンビンのケラモンと死闘中であったため、追う事を優先したのだった。
流れる死体を食すことで手に入るデータ。支給品が入っているであろうディパック。
どちらも魅力的であり、追いついたケラモンたちは迷わず死体に飛びかかる。

彼らは異変に気づくことさえ出来たのかどうか。
二体は串団子のように「手刀」で突き刺され、そのデータを奪われ消滅した。

ざばん、と川から上がる人影。
一糸もまとわぬその姿は、痛々しい傷が残ったまま。
だが、大きく変わったところもある。
人を見下したような、少し色香を誘う半目。
その肌は、赤銅色に、髪は蛍火のような発光を放つものへ。
そして何より、彼女……天海春香の失われたはずの腕が手首寸前まで再生していた。
ケラモンを吸収したエネルギーの多くを、その腕の再生に回したのだ。

「再生力にも制限がかかってるみたいね。洞爺湖、これって……洞爺湖?」
木刀に話しかけるが、返事が無い。ふざけているのかとも思ったが、そうではないらしい。
「なるほど。夢の中でしか話せないわけ。それとも、もう会えないのかしら」
木刀にぶつぶつ話しかける様子を見られたら怪しまれる。……裸の時点でアウトっぽい。
しかし春香には羞恥心などを後回しにしてでも、確かめなければならないことがあった。

残った一体のケラモンが、春香に捕まれもがいていた。
その体を、木刀で地面に突き刺し固定する。
いまだ息があるケラモンから、その生命力を自動的に奪っていく。
「やっぱり止められないのね。それなら……」
春香が、一歩、二歩とケラモンから離れる。
2メートルほど離れただろうか。春香に流れ込んでくるエネルギーが止まった。
いや、足元の雑草からまで吸い上げているが、ケラモンからの供給は止まっている。
「範囲は2メートルまで制限、か。吸収力も落ちているのかしら」
自分の胸に手を当て、何度か唱えた言葉を口にする。

「武装錬金!」
シルバースキンを「裏返しにして」身を包んだ春香は、ケラモンに近づく。エネルギードレインは発生しない。
「やっぱり、シルバースキン・リバースで内側にエネルギードレインを封じ込める」
だが、これではまともに動けない。シルバースキンを解除する。
「ヴィクターから戻れなくなった時……他人に害を与えそうな時の緊急時にしか使えないわね」
漫画に載っていたように、もう一着用意できれば一人くらいならなんとかなるのだが。
あのエアーマンがサテライト30を持っている限りそれも叶わない。
ケラモンから木刀を抜くが、もはや動く体力も残っていないらしい。
「悪いわね。どうにも抑えられなくて……高ぶる闘争心ってやつが」

ケラモンを握りつぶし、その残りカスを吸収する。
エネルギーを腕の再生に回し、左腕は指の先まで完全な再生を果たす。
(完全に……人間をやめちゃったみたいね)
体を闘争心が支配する。何かを壊したくてしょうがない。
再生した拳を地面に振り下ろす。
ドォン! と地面を叩く音と共に土埃が舞う。
収まった場所には、小さなクレーターが生じていた。
「……この程度の感情、どうってことないわ。とっくに真っ黒なんだから、これ以上染まるわけ無いじゃない」
むしろ「闘争心」なんて感情では黒が薄れるというものだと笑う。

「身体能力は……信じられないほど高いけど、漫画の彼らには及ばない。
訓練もしてないから当然だけど、これも制限がかかっていると見ていいのかしら」
ジャンプしてみるが空も飛べない。漫画のブラボーは人間なのに、もっと飛んでいた。
それでも、人間が跳躍できる限界など超越しているのだが。

そして確信する。これは何もかも滅ぼしかねない力だと。
世界を支配するどころか、滅ぼすだけにしか使えない力。
「まあ、こんな危ない力でも使わないことには……」
春香の全身にヒビが入り……赤銅の肌が砕け、元の柔肌が露になる。

「私に世界の掌握なんて出来ないのだけれど……って寒ッ!」
ヴィクター化から戻り、高揚していた気分も強化された体も戻ったことで、濡れた体が冷え始めた。
「わわわ、何か、何か着る物~!」
閣下モードも戻りかけ、葉っぱでも何でも身に纏えるものが無いかと見回す。
「ん、あれって……船?」
橋の近くにある船……そこに服があることを期待して、春香は急いだ。

【天海春香@THE IDOLM@STER 生還、及びヴィクター化確認】

その頃、TASはエアーマンと情報交換でもしようかと話しかけたところだった。
「それより、こっちに死体が流れてこなかったか?」
「死体……このサナギではなく、か?」
TASは考え……舌打ちした。
(性欲をもてあましている時の攻防の最中、か?)
それ以外に考えられない。
「ケラモンが追っていったはずだ。そのうち戻ってくるだろう」
「そうか。……どうだ、そっちの首尾は。山にも、殺し合いに乗らない奴らが多いようだった」

「そうか。城にもゲームに乗らない連中が集まっている……危険だな」
どれだけゲームに乗っていない人間がいるのか。まさか自分達だけではないと思うが、心配の種ではある。
「ゲームに乗らない人間同士が潰しあってくれるのが理想的なのだがな」
TASの言葉に、エアーマンはディパックに手を突っ込み、テニスボールを取り出した。
「なんだ、それは?」
「まあ聞け、面白いことになるかもしれんぞ」
エアーマンは、このテニスボールを仲間の印としてゲームに乗らない参加者を集めていたロックマンのことを話す。
「これの意味を、全参加者が知っているわけがない。……城の奴らはどうだろうな」
「そういうことか」
ニヤリとTASが笑う。

「俺は城の奴らを仲間に誘う。このボールを持って、これが仲間の印だと言ってな。
もちろん断られるだろうから、適当に暴れてやる。それで、このボールを持った連中の信用はガタ落ちだ」
「もし、そのボールの意味を知っているなら皆殺しにしてしまえ。城の連中のディパックに、ケラモンを侵入させている。
もしもの時は協力して……だが、少し損傷が激しいようだな」
ボロボロの全身が目立つ。エアーマンも、大規模な戦闘に耐え切れるか自信が無い。
「ふん、どうする。殺すなら今がチャンスだぞ?」
「そうしたいところだがな。状況が悪い今、一人でも戦力は必要だ。一時的に協力するしかあるまい」
エアーマンはロックマンの残骸を取り出す。
「道具もないのでな。消耗したり壊れた部品の交換程度しかできないが、多少はマシになるだろう」
クリサリモンに見張りを任せ、二人は橋の下へと移動しエアーマンの修理が始まった。
同時に、クリサリモンが二匹に増える。
それが意味するところ。クラモンBの全滅をTASはまだ知らない。

【D-2 橋の下/一日目・真夜中】
【TASさん@TAS動画シリーズ】
[状態]:右手親指以外欠損、左拳骨にヒビ
[装備]:五寸釘1本@現実(ポケットの中に入っています)
[道具]:ウルトラスーパー電池(残り30%)@ドラえもん
[思考・状況]
1:橋を渡る参加者を排除する
2:エアーマンと一時協力。修理をする。
3:生きて、ケラモンとの連携で最速を目指す。ケラモンは生き残るための駒
4:町の状況の把握
5:ゲームに乗っていない単独の人間は殺し、武器を貰う。
6:ゲームに乗っている人間とはなるべく戦いたくない。
7:武器の調達。出来れば食料も
8:殺戮ゲームの最速クリア。
9:ケラモンが死体と支給品を持ち帰るのを待つ。
※KASのことを、自分の二番煎じ、偽者だと思っています。
※ケラモンの名前、増殖限界、進化することを知りました。 クリサリモンの名前を知りません。
※増殖限界については、最大数が二倍になるのか一体増えるだけのなのかで迷っています。

【クラモン(クリサリモン)C】
[状態]:ちょっとフラフラ、現在2体
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:TAS、オレサナギじゃないです。クリサリモンです。
2:とにかく数で勝負……進化しちゃった。
3:TASを利用してうまく遊びたい
4:イタズラしたい
5:エアーマンむかつく。
※クラモンBの全滅により、クラモンCとDに増殖限界が集中します。

【エアーマン@ロックマンシリーズ】
[状態]:疲労困憊、全身ボロボロ
[装備]:サテライト30@真赤な誓い
[道具]:支給品一式*2(水一本消費)、ねこ鍋@ねこ鍋 、テニスボール、XBOX360、ピーピーマックス、ロックマンの残骸
[思考・状況]
1.TASと共に、ボディの修理を試みる
2.テニスボールを利用して城組を混乱させる。失敗したらケラモンと協力して皆殺しにする
3.他の獲物を捜しながら、元の世界にはなかったデータを集める
4.ロール。そして俺の邪魔をした者たちは必ず倒す
5.しばらくはTASと同盟を組み、協力する。ムスカは生きていれば協力してもいい。
6.優勝して元の世界に帰り、ワイリー様の世界制服計画を再開する
7.春香の支給品。特に核鉄が欲しい。
【備考】:首輪の代わりに動力源に爆弾が埋め込まれていることに気付きました

ジャンプして妙な船の中に進入した春香は、中を見て更に妙な船だと認識が強くなる。
どうやら、ヴィクター化しなくてもそれなりに身体能力は上昇しているらしい。
「お札とか貼ってあるけど……何かの魔よけかしら?」
口調も、新しく決めたものに戻す。これは新たに生まれ変わったケジメ。はっきりさせないといけない。
邪悪ともいえる力を持つ自分に反応しないようじゃあね、と自傷気味に笑う。

監視カメラらしきものが壊されたり、誰かいた形跡はあるのだが人の気配は無かった。
(監視カメラ、壊されてて助かった……)
部屋を一部屋一部屋調べる。鍵がかかっている部屋が気になるが、今は服を探すのが先決だった。
客室らしき部屋に入り、クローゼットを開くと目当てのものが見つかった。

「どうしてチャイナ服……?」
せめてセーラー服とか期待していたのだが、贅沢は言っていられない。
赤いチャイナ服に着替えた春香は、船の探索を開始する。
「殴って鍵を壊してもいいのだけど……変な防犯装置とかが作動しても怖いわね」
特に何も見つけられないまま、後方甲板まで出てきてしまう。
「これって……」
暗闇の中、何かが並んでいるのだけがわかった。

「これって車?……でも、車なんて運転できないし……」
車を眺めていると、端に小さなものがある。
「自転車?」
マウンテンバイクが車の隅に隠れていた。鍵はついたままで、問題なく運転できる。
どうやってこれを持っていこうか、と考えていると、破壊された鉄柵が目に入った。
車が突っ込んだらしい。下を覗くが、大破した車などは無い。無事に渡ったようだ。

「……やってみようかしら」
テレビの仕事で、自転車でジャンプするスーパーテクニックなどを見たことがある。
失敗したらヴィクター化やシルバースキンでどうにかなると、春香はそこから飛び出すことにした。
出来る限り、助走をつけてペダルを漕ぐ。
ぐんぐんとスピードは上がり、飛び出す位置が近づいてくる。

(ちょっと怖いけど……これくらいの度胸試しができないようなら、エアーマンみたいな相手に怯えるに決まってる!)
ペダルを全力で漕ぎ、ジャンプする。
「いっけええ、ええ、え? ええええええ!?」
なんだかものすごく飛んだ。
城の高さと同じくらいに飛び上がる。気分はさながらE.T.だ。
重力に逆らう跳躍力を見せた自転車は、船と陸地の間の川なんてとっくに飛び越えたが、問題は着地だ。
「ぶ、武装錬金!」
シルバースキンを装着し、自転車から飛び降りる。

「流星! ブラボー脚ゥゥゥ!!」
閣下の頭のネジが数本飛んでしまわれたようです。
ズドォ!
そのまま大地に蹴りをいれ、クレーターを作る。

一人で大騒ぎを起こすところは閣下になっても変わらない。
「漫画を読んだときからやってみたかったけど……いいわね、ブラボー技」
英雄になるのを諦めた代わりに、何かおかしな方向へ進んでいっているように思える。

「自転車は……無事みたいね」
城の天辺くらいの高さから落ちたのに無傷に近い。
さっきの跳躍はなんだったのかと自転車を良く見る。
すると、変速ギアが「cheat」とだけ書かれた箇所に合っていた。

「……なるほど。これも、ありえない存在というわけね」
ギアチェンジして再びジャンプしようとしても、何も起こらなかった。
武装錬金を解除する。できるだけ、体の疲労や傷の治療に回さなければいけない。

「……?」
足元に、何かドロだらけの物が落ちている。
拾ってみると、かろうじておはぎだと確認できた。
「なにこれ。針?」
餡に紛れ、尖った物が突き出している。裁縫針だった。
「なにが、たとえば、よ。本当に異物が混入してるじゃないの。洞爺湖」
ありえない存在……夢の会話から、これもそうなのではないかと見当をつける。
「確証はないけど……妙なものがあるのは確かみたいね」

これからの行動方針を決めようと春香は悩む。
この世界の頂点に立つ、などといっても自分ひとりでは何もできないのはわかっている。
「愚民……じゃない、部下か協力者か……まぁ部下なんて作れる状況じゃないけど」
こんな怪しい自分に協力する、という時点である意味「愚民」には違いない。
だが、自分を信じてくれる人間など僅かしかいない。バケモノになった今、魅音たちも信じてくれるかどうか。

「……少し汚いけど、誰かに恩でも売らないと、信用もされないでしょうね」
エアーマンのような完全な敵から、春香同様に罪を抱え、信用されない人……色々な人がいるだろう。
倒すべき障害か、手を取り合える味方か。他人の評価より、自分の目で見定めなければ信用しない。
あの、本当に優しかったつかさが、ああも変貌してしまったように。その逆だってあってもいいはずだ。
ならば、どこに向かうべきか。

つかさは今頃、別の場所に移動しているだろう。
かつての行動方針のままなら、町を目指すはずだ。

(つかさちゃんを、殺さずに済む方法があるとしたら……)
つかさは、この世界のルールに負けた。優しかったから、白かったからこそ、純粋に黒く染まった。
ならば、ゲームを破壊すれば。信じるものを奪えば……良くも悪くも変化はあるだろう。

つかさから逃げたカービィはともかく、魅音のことが心配だ。自分をまだ待っているかもしれない。
そしてロックマンを殺したエアーマンがどこにいくのか。城に向かう可能性だってある。
「城に向かって……それから魅音ちゃんを迎えに行こう」
たとえ、自分の変貌を知って恐怖の眼差しで見られようと。拒絶されようと。
自分が彼女を仲間だと信じる思いに変わりはしないのだから。
だが、少し休むことにしようと春香は思い直す。
多分、まだ放送は終わってない。
それを聞くまでは、橋の下で休もうと考えた。


春香は自転車のペダルに力を込める。
正義とは言えないその黒さは、しかしつかさの闇とは違う。
黒く染まるつかさ。黒く輝く春香。同じ負のオーラを背負っていて、まったくの対照的な二人。
閣下として走り出した彼女はもう、転ぶことはなかった。
放送は近い。あまりに濃い一日が終わる。
始まった頃と変わらない人は少ないが……春香は、人であることもやめていた。

テニスボールの誓いを守る者と壊す者。二人が城へと向かうときは近かった。


【E-1 橋近く /一日目・真夜中】
【天海春香@THE IDOLM@STER】
[状態]:チャイナヴィクターブラボー春閣下、全身に切り傷(核鉄で回復中)、中度の疲労(核鉄で回復中)
[装備]:シルバースキン@真赤な誓い、洞爺湖の木刀@銀魂、マウンテンバイク@GTASA
[道具]:陰陽玉*2@東方project 、支給品一式*3(食料・水一食分消費)、DIGIZO HYPER PSR(残り二十分程度)@現実、上海人形、花粉防止用マスク
テニスボール*2、雛見沢症候群治療セット1.5日分(C-120、注射器、注射針)@ひぐらしのなく頃に、首輪探知機(残り電池80%)@バトルロワイヤル
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗らない人たちを自分の下で一つに纏めたい。
1.とりあえず英雄達の背中を守れるブラボーな司令塔になりたい。
2.ヴィクター化を躊躇わないが、エネルギードレインに仲間を巻き込みたくない。
3.誰かに恩を売って信用を得る。
4.放送まで橋の下で休む。
5.城に向かって誰かいるのか確認した後、魅音を迎えに行く。
6.つかさを殺したくはない。ゲームを破壊した後でも凶行をやめないようなら……
7.同じ事務所のアイドル(やよい、真、亜美)を探したい。
8.怪しい人でも、確実な証拠が無い限り、ゲームに乗っているかどうか自分で確かめたい。
9.敵を殺すことは躊躇わない。誤解が無いか、説得できないかは確かめたい。
※ヴィクター化しました。
第一形態であるため、自由に戻れます。制限により、エネルギードレインの範囲は周囲2メートル。
吸収効率、再生力、身体能力にも制限がかかっています。
シルバースキン・リバースでエネルギードレインを抑えることが出来ますが、まともに動けません。
※閣下になりました。
覚醒し「閣下で三国統一を目指してみる」の春香に近い口調と性格になりました。
目が半目で怖くもあり、何か人を(特に男性)魅了します。
ドジっ子属性は消滅しましたが、キャプテン・ブラボーに憧れている節があり少し変です。
激しく動揺したりすると、たまに素に戻る場合があります。
※武装錬金の内容を漠然と把握しました。
※アイスソードを呪われた魔剣だと認識しています。
※夢や空想でしかないはずのものが、現実に存在していることを知りました。
針入りのおはぎを見て確信しましたが、他人を信用させられる証拠だとは思っていません。

※マウンテンバイク@GTASA
最高時速140キロの丈夫な自転車。車に跳ね飛ばされても壊れない。
ギアを「cheat」に合わせることでスーパーバニーポップが発動し大ジャンプができるようになる。
※洞爺湖の木刀の中におっさんが住んでいます。夢の中で会話ができますが、再び現れるかは不明です。