趣味の雑誌会#7

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趣味の雑誌会#7 - (2006/05/27 (土) 05:44:08) の編集履歴(バックアップ)


趣味の雑誌会#7


「職務発明」の対価問題について-弁理士の“クレーム力”を評価せよ,牛木理一,NBL、No.823(2005.12.15),pp.38-43

弁理士がよいクレームを作成したからこそ、特許権が成立したり権利行使できたりするのだから、職務発明に関する従業員の対価請求権と同様に、弁理士の請求権が実現されるべきだ、という論説。特許ニュースにも出てきました。この対価は裁判所によって決せられるべきもの、とも論じられていますが、まあ出願人と弁理士との契約で、成功報酬的に取り決めておけば済む話で、特許にならなかった場合や権利行使で負けた場合のペナルティが設定(出願費用などは低廉になるでしょう)されると思います。筆者は、特許訴訟の補佐代理人としても、とても活躍されている方ですので、弁理士に請求権をという考えは職務発明問題についてのレトリックだろうと、特許ニュースで接した際には思ったのですが、企業知財である私自身そう思わなくもない節があるので、果たしてどうでしょう。
(2006.02.01)

アスキーアートに関する法的諸問題、鎌田真理雄、特許ニュース、No.11684(平成18年1月6日)

アスキーアートという、これまであまりお目にかけなかった話題に関する論説です。2chでよく使われるアスキーアートに関して、ギコ猫商標(タカラ)、のま猫(エイベックス)の事例も踏まえながら、著作権や商標について議論されています。このようなアスキーアートが企業がキャラクタなどとして使う場合の注意点もあげられており、非常に有用な論文だと感じました。
(2006.01.25)

“自明性”(obviousness)とは何か?~CAFCの自明性テストへの挑戦【第一回】自明性要件の成立の歴史的背景、ジェームズ E. アームストロング3世、ジーイン・アン、柿本礼奈(訳)、IPR、Vol.19、No.11、pp622-628

自明性の判断について争点となっているTeleflex, Icn v. KSR Int'l Co.に関連し、米国での自明性判断の歴史について解説されています。第1回目は、自明性の要件が生まれた背景がテーマになっており、2回目以降も楽しみです。
(2005.12.16)

パリ条約による複合・部分優先に関する考察(1)-解釈の転換/統一は存在したか-、柴田和雄、AIPPI、Vol.50、No.11、pp634-646

最近審査基準が公表された(らしい)優先権についての論考です。特に扱われているのは表題の通り部分優先に関するもので、Aを開示する先の出願に優先権主張して出願されたA+Bに優先権が聞くのかどうか、パリ条約締結当時から現在まで非常に細かく分析されています。優先権について特許解説本を読むと、部分優先のところって結構よくわからないというか、類型的にいろいろなパターンを想定でき、特に途中で第三者が出願したA+Bとの関係は、など考え出すと面白いのですが、とりあえずパート1ということで続編に期待大です。なお、論考では、どういうケースを想定して論述しているのか一瞬わからない部分もありましたが、Aを開示する先の出願に優先権を主張し更にBの要素をプラスした第二出願において、“A及びB”のクレームと“A又はB”のクレームとで議論が異なる点に気をつけていただければと思います。
(2005.12.13)

商標権の品質保証機能と並行輸入-アメリカ商標法を素材とする比較法的考察-,玉井克哉,パテント,Vol58,No.11,pp17-50

先日取り上げたようにCIPICジャーナルに同テーマで掲載されていましたが、商標権の本質を品質保証機能と考えるべきとする筆者による並行輸入を中心とした論文です。表題の通り、特にアメリカの判例をつぶさに検討しており、資料的な価値も高い論文で、引用文件数も170あまりと膨大です。私は商標を専門としていませんが、この論文に接したおかげで、それなりの口が利けるようになった気がしました。
(2005.12.06)

オープンソースソフトウェアの特許に関する諸問題,ソフトウェア委員会知財管理,Vo.55,No.12,pp1757-1767

オープンソースソフトウェアのライセンスにおける特許の取り扱いについて、種々のライセンスを分析して、注意点などをまとめられており、参考になりました。
(2005.12.01)

講演録「商標権と並行輸入」 編集■講演録「商標権と並行輸入」,玉井克哉,CIPICジャーナル,Vol/164,2005/9,pp.1-29

2005/3/22に行われた日本関税協会主催の講演録です。
並行輸入を商標権で阻止できるのか(海外における譲渡により商標権が消尽するのか)について、ヨーロッパの状況、アメリカの状況を解説しつつ、日本でのあるべき姿を論じられています。
ヨーロッパ(EU)では、1989の共同体商標規則によりEU域外での譲渡によっては商標権は消尽しないことになりSilhouette事件以降定着しており、一方、米国では、内外の商標権者の同一性、および内外での商品の同一性を厳密に見るため、ほとんどの場合で商標権は消尽しない、とのことです。言い換えますと、EUおよび米国における商標権者は、並行輸入品をその商標権に基づき差し止めることが可能です。
一方、日本では、フレッド・ペリー事件最判により若干例外が認められるようになったものの、基本的に消尽するという考え方が支配的なため、並行輸入を押さえることができない、とのことです。
このような日本の制度では、中国などで発売した製品の自国への還流を押さえることができず、EUや米国の企業に比べハンデとなる、という経済論的な観点での主張もなされており、面白かったです。
(2005.11.11)

「米国子会社の発明を特許化する場合の実務的留意点」、龍神嘉彦、知財管理、Vol.55、No.5、pp549-558

米国子会社で発生した発明を適格に出願~権利化していくというのはとっても難しいことだと思いますが、これに関して米国法人に駐在されていた経験に基づく本論説は、仮出願制度やForeign Filing Licenseなど多岐にわたるポイントを解説されており、非常に参考になりました。
(2005.04.28)

Winnyに関する法的諸問題、鎌田真理雄、特許ニュース、No.11502(平成17年4月5日)

Winnyに代表されるP2Pツールの作成者、使用者の民事上、刑事上の問題点について論じられています。参考文献も数多く挙げられており、また議論も比較的公平な立場に感じられ、読んでいて面白かったです。
中継ノードの責任については、京都地裁でのWinny正犯事件(アップしたユーザが逮捕された事件)を引用しつつ、中継ノードの使用者は自分のPCに蓄積されるキャッシュファイルが何なのか認識していないので民事上、刑事上の責任はないだろうとされています(違法性のあるファイルのキャッシュであるとの認識が具体的にあれば別ですが)。かねてから言われていた、アップするには一度キャッシュにしておいた方が安全というのは、結構正鵠を射ていたのかなと思いました。
(2005.04.07)

特許法における幾つかの問題点について、佐藤文男、特許ニュース、No.11490-11491(平成17年3月17日、18日)

そもそも特許とは何なのか(発明公開代償説で説明されるものなのか)というと頃から、均等論など現代の様々な特許上の問題点を考察されています。日本の29条の2の規定(拡大された先願の地位)も、出願時未刊行の出願前提出論文なども、代償説の考えからすると対象とすべき(いずれは公開されるので、その後に出願された他の特許出願に権利付与する必要がない)といった議論です。正直、本論説はとても面白いというか、著者の知識の豊富さにはとても感心したのですが、文章構成力といいましょうか、章の構成が間違っているのではないかと思うくらい、議論が飛んでおり、その点がちょっと心配(弁理士がこんな文章を書いていいのか)でした。
(2005.04.05)

具体的な進歩性判断を!-米国特許法の「二次的考慮」を参考に-、山口朔生、知財管理、Vol.58、No.2、pp71-81

発明できなかったような「アンタにいわれたくないヨ!」というな相手(主に、特許侵害被疑者)からの特許無効の主張に関する論説です。読者の興味を惹こうと、半ば突拍子もないような話が展開されますが、米国における非自明性の判断における二次的考慮を、「商業的な成功」「商品化のあきらめ」「ライバル企業の失敗」「業界、消費者の長い期待」「予期せぬ結果」「特許製品のコピー」「専門家の評価」「ライセンスの実績」「開発のための多額の投資」「開発の方向の誤り」「開発者の引き抜き」に分類して分析されています。
一瞬、なんだこの論説は!と思わせておきながら、ちゃんとして論説だった、というところが最大のポイントでしょうか。
(2005.03.04)

弁理士の眼3 再び弁理士の「クレーム力」の評価を問う-中村修二対日亜化学工業の東京高裁和解に思う-、特許ニュース平成17年2月24日、No.11475、pp.1-4

発明者が対価請求権を持つのであれば、実際に特許の価値を生み出すクレームを作成した弁理士にも対価請求権を認めるべき、というちょっと乱暴な論説です。特許は、発明者が如何にすべらしい発明をするかという「発明力」よりも、如何に価値を生むクレームを作るかという「クレーム力」の方が重要であって、そういったすばらしいクレームを作ったんだから対価請求権を認めても当然だろう、という気概を持って弁理士は臨むべきだ、という意図だと思うのですが、「クレーム力」の例として先日の松下vsジャストシステムのアイコンの定義の問題を挙げられており、妙に説得力がないというか、弁理士にも対価請求権を認めるべき、というところだけが際立って見えちゃいます。
企業の実務者の立場から言えば、確かに価値を生む特許に貢献された弁理士に大きな成功報酬を、という理論はわかるのですが、当然逆の場合はお支払いできませんよ、となるわけで、弁理士会の標準金額もなくなったことですし、そういう議論は大歓迎です。
(2005/2/24)

米国裁判事情、阿部隆徳、知財管理、2005、Vol.55、No.2、pp143-156

米国のロースクールに留学された著者の体験談です。留学されるまで日本で実務をこなされていた著者が、日本の制度とも比較しつつ米国の制度について気づいた点を述べられているのですが、結構面白いです。
ロースクールでの様子も紹介されており、ソクラテスメソッドをやっているらしい、というのは数々の解説記事で読んだことがあるのですが、授業を受けられた経験として、この教授はこうだとか(具体的には、CAFCのレーダー判事はこうだったとか)、基本的に豆知識的なトピックがほとんどですが、純粋に読んで楽しいです。
(2005/2/23)

判例と実務シリーズ:No.314 権利濫用の抗弁と訂正審決の確定-権利濫用の抗弁に対する再抗弁について-、福井宏司,木村達矢、知財管理、2005、Vol.55、No.2、pp221-231

東京高裁平成16年4月27日平成14年(ネ)第4448号事件(地裁では特許に明らかな無効理由があるとして権利濫用により棄却されたのに対して、その後に訂正審決が確定し、高裁では無効理由はないとして特許侵害が認められた事件)の解説記事ですが、その中で、権利濫用の抗弁に対する再抗弁について提案されているところが気になりました。
これは、ボールスプライン最判にて、訂正審判など特段の事由がない限り、とされたことに起因するものらしいのですが、現クレームが無効だと抗弁されても、(訂正審判を経ずにその訴訟中に)限定事項を加えてこの範囲なら無効理由はなく且つイ号がクレームに入るので侵害だという再抗弁です。言い換えれば、無効理由が存しないように仮想クレームを作ってそこにイ号が入るかどうか判断する、というものだと思います。
無効理由が内包されている場合については、実施例限定説とか色々あったものの、現在は権利濫用で片付けられるのが主流で、その後の訂正審判で無効理由を治癒しても再審の機会は得づらいですので、衡平を期すためにこの再抗弁を、という主旨のようです。
個人的には、無効理由を正してから訴訟しろよ、と思うのですが、権利濫用で片付けることに違和感を覚えるのも事実ですから、この分野の議論が深まればいいと思います。
(2005/2/23)

カナダにおける小企業の地位の宣言に潜む危険性、角修二、AIPPI、Vol.50、No.1、pp.6-17

カナダ特許制度における料金についてのスモールエンティティ制度についての解説です。ダッチインダストリーズの事件を踏まえて解説されています。出願時にスモールエンティティの資格があれば、出願後に資格がなくなってもスモールエンティティのままでよく、スモールエンティティでないのに資格申請して低額の料金の支払いだけした場合、料金不足により権利失効後に追納復活させることができない、というところがポイントのようです。
(2005/2/4)

米国デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の適用限界に初の連邦控訴裁判所判断ー再製品の利用は果たして許されるのか?純正品 対 再製品ー、中嶋知子、知財管理、Vol.55、No.1、pp.13-25

プリンタカートリッジに関するLexmarkの事件と、ガレージ用扉のリモコンに関するChamberlainの事件を取り上げ、再製品に関するDMCAの適用限界について述べられています。この分野は、著作権に限らず特許や商標などをフル活用して、純正品メーカが再製品メーカを叩こうとしている熱い分野で、これら事件は非常にインパクトのある事件ですので、その解説記事である本稿はとても興味深いものですが、気になった点が一つ。プリンタ業界のように、プリンタを安く販売しておきカートリッジで収益を上げるというビジネスモデルを著者は気に入らないようで、このビジネスモデルを堅持するため(再製品メーカを叩くため)DMCAを利用することは、公正な市場原理(安くプリンターカートリッジを提供しようという再製品メーカが登場するのは当然の市場原理)を歪める法律の濫用であると論じられています。たしかに、Lexmarkの事件では、独禁法的な争点もありましたが、ことDMCAに関しては市場原理云々は関係のない話で、純正カートリッジを廉価に提供していたらDMCAの適用を受けることができる、とかいうこともないわけでして。また、安全性確保のため粗悪バッテリをはじくための同様の仕組みが組み込まれたりしたりしますので、DMCAの適用の問題に“再製品”であることがあまり結びつかないと思うのですが。
(2005/1/27)

CAFCのKnorr-Bremse判決のインパクトと米国特許訴訟における弁護士鑑定-弁護士鑑定について日本企業が持つ最も重要な疑問についての答え-、Michael E. McCabe, Jr.,伊東忠重(訳)、知財管理、Vol.54、No.13、pp.1895-1904

今年の重要CAFC判決の一つであるKnorr事件の判決解説です。米国特許侵害訴訟において米国弁護士の鑑定を開示しなかった場合、その鑑定内容を被告不利に推測することが妥当かどうかが争われた事件で、妥当ではないとなったのですが、ともあれ、本判決を受け米国特許実務をどのように修正すべきかの一つの資料になると思います。
(2004/12/27)

近時の米国CAFCの裁判官の間におけるクレーム解釈手法の対立-Wagner論文及びPhilips対AWH事件の紹介-、岩瀬吉和、知財管理、Vol.54、No.13、pp.1943-1955

CAFCにおけるクレーム解釈について、辞書の意味の分析など手続き的な解釈(Procedural解釈)と全体的な解釈(Holistic解釈)の2通りの解釈法が判事によってなされているとして、判事ごとの傾向などを分析したWagner論文と、辞書を参照したクレーム解釈方法が争点となったPhilips対AWH事件についての解説記事です。テクニカルに過ぎる話のようにも思えますが、CAFCの判決を読む際は、起草判事が誰なのか確認する必要があるなと思いました。
(2004/12/27)

特許侵害訴訟における損害額の算定-アメリカ合衆国における判例法及び経済学的アプローチからの示唆ー、高崎仁、AIPPI、Vol.49、No.11、pp.758-781

日本の特許法102条1項の損害賠償額の算定方法について、米国のそれと比較して論じられています。米国では、損害額をより厳密な経済モデルに従い算定しようとする傾向にあるようで、論説では需要曲線なども登場してきます。文章はむずかしめ。
(2004/12/20)

ヨーロッパにおける特許侵害の損害賠償、Andrew Cobden, Bert Oosting, 事務局訳、AIPPI、Vol.49、No.11、pp.782-791

ヨーロッパ主要国における、損害賠償の考え方、算定方法、利息、弁護士費用など、概観について。
(2004/12/20)

新規事項に関する改定審査基準の紹介及び問題点の検討、特許第1委員会第5章委員会、知財管理、Vol.54、No.12、pp1763-1777

以前よりはゆるくなった、新規事項の改定審査基準について。事例集をまだ読んでいないのですが、その検討記事です。
(2004/12/20)

禁反言の効力とその適用限界、河野英仁、知財管理、Vol.54、No.12、pp1737-1750

親出願の禁反言、子出願の禁反言、対応外国出願の禁反言など、まとめて論じられており、米国の特許訴訟における禁反言について理解を整理するのに役立ちました。
(2004/12/20)

韓国における特許に対する訂正、呉圭煥、知財管理、Vol.54、No.11、pp1623-1637

 韓国における訂正の要件について。特許請求の範囲の実質的な拡張又は変更にあたらないこと、という要件があるのですが、特に変更にあたらないというのは難しい問題があるようです。とりあえずは、将来限定要素となりうる技術事項はできるだけ従属項に挙げておくべき、です。
(2004/11/15)

欧州での発明の単一性について、Wolfgang Gassner、AIPPI、Vol.49、No.10、pp694-699

 EPCにおける発明の単一性についての論説。日本の単一性の基準は、三極に中では甘いほうでしたが、EPCにあわせる方向で改正されるとのことですので、それを踏まえても、本論説は参考になるかと。でも、やっぱややこしいですね。同じカテゴリの複数の独立クレームが認められる場合って、結局どういう場合というのは個人的にはよくわかりません。
(2004/11/15)

雑誌記事、特許発明の強制実施許諾に関する知的財産局の公告(台湾)、IPR、Vol.18、No.9、pp494-496

 台湾において、CD-Rに関するPhilipsの特許に対する強制実施許諾が認められたというニュース記事です。強制実施許諾ですのでロイヤリティは必要になります。
 記事によると、Philips側は、CD-R1枚いくらの固定ロイヤリティを要求したのに対して、台湾メーカは生産価格に対する料率でのロイヤリティ支払いを求めていたのですが、折り合いがつかず、「請求人が合理的な商業上の条件を提示したにもかかわらず、相当の期間内に実施許諾について合意を達成することができなかった場合に、強制実施の許諾を申請することができる」という台湾の規定に基づき、台湾メーカが申請して認められたものです。
 CD-Rについては、太陽誘電も特許を持っており、Philips同様、1枚いくらの固定ロイヤリティを採用しているそうです。固定ロイヤリティは、製品単価が下落すると製品価格に対するロイヤリティの比率が上昇してしまうという性質があります。
(2004/9/29)

インターネットを通じた特許権侵害における特許権の域外適用に関する考察、特許第2委員会特許第3小委員会、知財管理、Vol.54、No.10、pp1441-1451

 サーバとクライアントからなるシステムに関する発明について、どのようにクレームを作れば満足のいく保護が受けられるか検討した結果、日本でも米国及び欧州同様に域外適用を導入すべし、という論説です。
 審査基準で例として挙げられているポイントサービス方法(商品購入ポイントを他のユーザに贈与するというケース)を想定例に挙げて、クライアント側をクレームした場合、サーバ側をクレームした場合、システム全体をクレームした場合で、日米欧でどのように権利行使の範囲が変わるか検討されているのですが、詰めが甘いと申しましょうか、特にクレームドラフティングをしているわけではなく想定例を挙げた意味もなく、また欧州といいつつ英国制度のみを検討するのみですし。
 さらに、日米欧の検討結果、日本でも欧米並みに域外適用を導入すべきというのは、いえ、そういう提言をされるというのは全然OKなのですが、欧米並みの域外適用って何?という点が甘いです(まあ、米国における裁判管轄に関する論説なんて腐るくらいありますが)。
 私の感じるところ、日米欧各国で適切な保護を受けるためのクレームドラフティング、という論説ではありませんし、欧米での特許権の域外適用について検討した、という論説でもありませんし、とりあえず域外適用を日本に導入するためには他の法律との関係も勘案してこうするべし、という論説でもありませんし、じゃあ何?というところで疑問を感じた論説でした。
(2004/9/22)

一部継続出願制度の我が国への導入に関する提言、特許第1委員会特許第1小委員会、知財管理、Vol.54、No.10、pp1427-1439

 一部継続出願(以下、CIP)の日本への導入をなぜ提言しようと考えられたのか(それをテーマに選んだのか)、ちょっと理解に苦しみましたが、まあ措いておきましょう。
 日本と米国とで、比較法論的にCIP周辺(日本では分割出願や国内優先出願)について検討されており、その辺はまあ参考になるのですが、繰り返し述べられている親の公開に基づく新規性・進歩性の拒絶の回避(親の公報は先行技術にしない)というのは同なんだろうと思います。これが引っかかってくるのは、親の発明に比べて特許性の乏しい新規事項部分ですが、吉藤もそういうのは自由に実施できる領域であるといってるわけなので(吉藤信奉者ではありませんが)、公開公報を見て設計回避した第三者には、中用権は発生するのでしょうか。
 知財立国を目指す日本にはCIP導入の議論をすべしと最後にまとめられていますが、法安定性の観点から、私個人としては賛成しづらい提言です。ということで、私も議論してみました。
(2004/9/22)

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