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ミュウ その14 - (2007/07/01 (日) 01:16:12) の編集履歴(バックアップ)



「出木杉、宿題見せてくれよ」
「…良いよ、剛田君。はい、ノート」
「サンキュぅ!さすが俺の心の友だぜぇ!」

そう言って、ジャイアンは自分の席に戻っていった。
出木杉は、顔が緩み、本当の表情が出そうになるのを必死で隠す。
『何が心の友だ……毎日宿題を見せてやってるだけじゃないか…』
心でジャイアンを罵倒する出木杉。
だが、決してその本性を周りに見せる事は無い。
何故なら、周りの人にとって出木杉は、人を馬鹿にする様な人物ではないからだ。
  10才
まだ……大人にはなるには早すぎる年齢だ。
では、何故出木杉の性格はこの様に歪んでしまったのだろうか?

その答えは……小学生低学年時代のアルバムの中にあった。



アルバムには約50もの写真が残っており、
その一枚に一枚に幸せそうに笑う出木杉家が写っていた。
だが、その写真にはある異質な点がある。
それは……父親の顔があるはずの部分が、無惨にも切り裂かれている点だ。
そして、さらに目を凝らすと、もう1つ気付くことがあった。
それは、出木杉英才の顔に小さなアザがあること。
そのアザは、アルバムの時が進む毎に大きくなっていた。

そう、出木杉英才は父親の虐待を受けていたのだ。
毎日続く、暴力と罵倒……
いつでも愛想良く笑い、泣かず、反抗をしない。

そんな苦しい生活が続き……出木杉英才の心は死んでしまったのだ。

彼に、作られた笑顔と性格を持つ、新たな人格を残して……



だが、彼には支えがあった。
それは、母である出木杉照代。
彼女は英才を苦しい生活の中から解放し、心に明るい灯りを灯した。
彼女は、たった1人の家族である出木杉の事を心から愛し、
出木杉もその思いに答えるため、いつまでも彼女の事を守ることを決意したのだ。

決意したその日から、
英才の心の中には2つの感情が混ざり合うようになった。
――1つは、母を守るために強くなろうとする感情。
そして、もう1つは……父親に植え付けられた、世界の全てに絶望する闇の感情。
心の大部分を占めていたのは、闇の感情の方。
だが、出木杉の心を支配していたのはもう1つの方だった。
どんなに心が闇に侵されそうになっても……絶対に支配されはしない。
それは、出木杉の母への思いが強かったからだ。

出木杉にとって彼女は……唯一の希望…だったのだ。



事件発生の8ヶ月前……
その日は、空を泥雲が包み、静かな雨が降り続いていた。

英才は、いつもの様に家で本を読み、横目で窓の外を眺めていた。
……すると、遠くにある物が見えた。
それは、真っ赤な色の傘。
照代がいつも使っている、英才が去年あげた誕生日プレゼントの傘だった。
ニッコリと笑う英才。
彼は急いで立ち上がると、走って照代を迎えに行った。
――手を振る英才――微笑む母――
照代は、少し早歩きで十字路に足を踏み入れた。
だが、その時……    「母さ…」

照代の横から、巨大なダンプカーが走り抜けてきた。
雨で音が聴こえず、傘で横が見えなかったの原因だろう。
鈍い音を発て、照代の体は遥か高くへ飛び上がった。

「う…うわぁぁぁぁ!」

走って照代へ近づく英才。
照代の血が地面の水溜まりへ流れ、辺りは一面赤色に染まっていく。
近くの病院までは15分は掛かる。
まだ小学生、携帯電話も持っていない。
ただ…泣いて母にすがることしか出来ない……
「英才…」  照代が震える声で呟く。

「幸せ…に……生き……て…」

雨が降り続く中、英才の叫びが木霊した。雨の勢いは強まり、出木杉の腕を、体を、心を濡らしていく。
だが……出木杉の心には激しい炎が燃え上がった。
憎しみという名の……炎が……



「なるほど……アイツにはこんな過去が…」

アゴ髭を生やした短い髪の男は、目の前の画面を見ながらそう吐いた。
「Bさん、何やってるんですか?」
「おっ、ノラミャー子か。これ見てみろ」
Bが椅子の横のボタンを押すと、画面は横へスライドし、ノラミャー子の前へ移動す
その画面には「200X年∥小学生仮想立体事件」という文字が映っていた。
「成る程、情報収集ですね。
 でも、あまり良い情報は見つからないと思いますよ。
 その事件、余りに被害者が多すぎて、最終手段「デリート」を行ってますから」
「そのくらい知ってる。
 10年前、俺もこの事件に関わってるからな」
「10年前って……Bさんは、つい数日前にこの事件に関わったばかりじゃないですか。
 私にはBさんの言ってることの意味が分かりません」
「まぁ、少し待て」
Bはタバコに火をつけ、一服すると言葉を続けた。
「ノラミャー子、お前だって知ってるだろ?
 タイムパトロールには交代制度って物がある。
 それぞれの時代のタイムパトロールは、一度出動する毎にある程度の休息が貰えるんだ。
 まぁ簡単に言うと……この事件を解決に導くパトロール部隊は、10年前の俺が居た部隊になったって訳だ」



「そのこと……クッド君は知ってるんですか?」
「知っているだろうが、細かくは覚えてないはずだ。
 でも、パトロール内のほとんどの隊員に知られていないが、
 実は、クッドはあの事件に深く関係する重要な人物なんだよ」
「何ですって!?でもクッドさんはまだ2…」
「この事は秘密にしろ。
 クッドは、攻撃の開始までまだ時間があると思ってるからな」
「でも、それじゃあのび太君達は…」
「平気だよ。あいつらは俺たちが思ってる以上に強い。
 それに、事件が解決していなかったら俺は今ここに居ないしな」


未来では、のび太達の知らない内に最終攻撃の準備が進められていた。
それも、クッド達が居る時代とは違う時代のパトロールによるものである。
それは、のび太達に残された時間が……残り僅かである事を示していた。



再び時は戻る…
これは、タイムパトロールも知らない出木杉変貌の真実だ。

「うっ…ううっ……」
出木杉英才は、母が死んだその日から、失意のどん底に落とされていた。
心が闇に包まれていく。
怒りの感情が外に漏れそうになった。
でも、それを母の最後の言葉が押し止める。
《幸せに生きて》 「や、止めてくれ…」
《幸せに生き…》 「止めろぉ!!!」
出木杉は手を壁に叩き付けた。
手から血が流れ、出木杉の腕を伝っていく。
その血の赤色が、あの日の記憶を鮮明に思い出させた。
頭を抱え座り込む出木杉。
そんな出木杉の後ろから、年老いた老人が現れた。
「ホッホッホ」「誰だ!?」
フードを深く被り、闇に溶け込む様な不気味さを持つ老人。
その老人は、出木杉に近づき、ある提案を持ち掛けた。
「母親を……蘇らしたくはないかな?」
「な…んだと?お前は一体…」
「ホッホ、わしは只の老人じゃ。少ーしだけ訳ありのな。
 取り引きは簡単。わしが君に、知識と力と冷酷さを与える。
 その代わりに、わしをこの時代に住まわして欲しい。勿論周りには内緒でな」

……長い沈黙……
出木杉は、老人に頭を下げて言った。

「何でも…言う事を聞く」




「ハァ…ハァ…助け、ぐばぁッ!」
「おら、愚痴を溢すなぁ!」

【ドーム地下:労働力監禁所】
此所では、バトルに負けた者が働いている。
休憩は1日2時間だけ。
少しでもサボッていると、監視役のイマク〇?にムチで叩かれてしまうので、
皆顔を歪めながらも必死で働いている。
「オラオラオラオラァ!
 ちゃんと働かないとイマ〇ニウィップをお見舞いしてやるぜぇ。
 俺が可愛いと思った女の子以外は、容赦致しないからなぁ!」
イ〇クニ?は嬉しかった。
〇マクニ?は、ポケモンカード初期の頃以外に仕事が無く、
最近はマックで働いていた程だ。
何より、ここに居る女の子達(小学生)をイジメるのは、この上無い喜び。
イマ〇ニ?は、今日もこの仕事をくれた出木杉に感謝しつつ、労働者を監視するのだった。
「な、何だあれは…」
ふと横を見たイマクニ〇。
そこには、岩が剥き出した地面とは釣り合わな過ぎる高級ベッドが置いてあった。
そこで寝ていたのは……やっぱり、さっき戦いに敗れたゴク。
ゴクは、限度を超える程、堂々と仕事をサボっていた。
もちろん、ドSのイ〇クニ?は黙っていない。
〇マクニは、ゴクに向かって大声で怒鳴った。
「お前何やってんだ!?」
「見て分かんない?暫しの休息だよ」

「おま、休息って…お前労働者だからね!働かないとダメだからね!」
「僕、労働者じゃないもん。神だもん。
 僕が働く何て、人間がプランクトンのために餌を用意してやる様なものだよ」
『コイツ…狂ってる……』 全身黒タイツのイ〇クニ?は、そう思った。



「もう良い!お前みたいな奴にはお仕置きをしないといかん!」
イマク〇?は、ムチを振り上げ叫んだ。

    バチィッ!
快音が、洞窟内に響き渡っる。
『痛……くない?』
「お、お前は…」
イマ〇ニ?のムチは、間に入ってきた男に止められた。
「大丈夫か、紅い髪のガキ」
男は、〇マクニ?からムチを奪い取る。
そして、イ〇クニ?の黒いボディに素早い一撃を決めた。
「あひぃッ!」
強烈な快感を覚えるイマ〇ニ?。
その快感の中、イマク〇?は地面に伏した。
「あんた、名前は…」
男は、麦わら帽子を頭から取り、口を開く。
「俺様を知らんとは……良く頭に刻み込んどけ。
 俺様は、神に選ばれた人間であり、この街の真の支配者、
 虫採り中年ゴヘエ様だ!ハーッハッハッハ!」

『この男……まさか僕と同じ…』

ゴヘエの笑い声が響く中、ゴクはこの男に興味を持ち始めていた。



『僕は、アイツに勝てるだろうか?』
少し早めの夕食を摂りつつ、スネ夫はそんな事を考えていた。
今の手持ちは、ジバコイル、ナッシー、クロバットの三体。
明らかに、他の二人より戦闘力が低い。
次の相手は、あのクリスだ。
今の手持ちじゃ……100%勝ち目は無いだろう。
「クソッ、僕はどうすれば…」
バンッ! 「さぁ、メシだ、メシィ!」
大きな音を発て、ジャイアンとのび太が控え室に入ってきた。
どうやら、もうゴクとの戦いでの傷は大丈夫の様だ。
「ん?スネ夫…何かお前暗くないか?」
「…いや、ちょっと」
「もしかして……お前ビビってんのか?」
『ドキッ!?』「そ、そんな訳無いじゃないか!」
明らかに嘘と分かる慌てよう。
スネ夫は、自分の事ながらも恥ずかしくなった。
「スネ夫、何恥ずかしがってんだよ。
 ビビったって、別に良いじゃねぇか」
『えっ…?』予想外のジャイアンの言葉。
「ど、どうして?」
スネ夫は、思わずジャイアンにそう聞いてしまった。
ジャイアンと言えば、「ビビるな」とか「負けるな」と言う男。
そんな男が、今「ビビったって良い」と言っている。
スネ夫には、ジャイアンがそんなことを言うのが信じられなかった。



「スネ夫、正直に言うぞ。
 俺はゴクとの試合の前、完全にビビってた。
 ゴクの怪しい行動に、気付きもしないくらいな」
「ジャ、ジャイアンは良いよ!
 ジャイアンは勇気があるし…試合だって勝て…」
そう言いかけた瞬間、ジャイアンの拳がスネ夫にヒットした。
スネ夫の体が、控え室の机に当たり、床に倒れる。
ジャイアンは、怒りの表情で叫んだ。
「俺が試合に勝てるだと?ふざけんな!
 俺が使えたポケモンは2体……普通に考えたら勝てる訳無いだろ!」
「でも…ジャイアンは勝ったじゃないか!」
「それは、俺が諦め無かったからだ!
 俺だって……戦うのはめちゃくちゃ怖かったよ。
 でも、俺は絶対に諦め無かった!だから勝てたんだ!
 ビビったって良い!
 お前の全力を……アイツに見せつけてやれ!」

「ジャイアン…」

…… 
……………
スネ夫は目を開け、過去から現実に戻った。
このゲートを潜れば、ついにクリスとの戦いが始まる。
スネ夫は、しずかに貰った腕輪を見つめた。
「僕は……諦めない」
スネ夫は、強い決意を胸にゲートを潜り抜けた。