「炎赤葉緑 その3」(2007/01/20 (土) 17:09:25) の最新版変更点
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ニビシティ。
三人は昼過ぎにそこに到着した。
「ふう、疲れたね」
のび太が言った。
出木杉もしずかもさほど疲れてはいなかったが、のび太に合わせて首肯した。
「それじゃ、ここには最初のジムがあるはずだから、
バッジを手に入れたらまたポケモンセンターに集合だ。
それまでは自由行動にしよう」
出木杉は今後の予定を説明する。
「それじゃ僕は行くよ。あとでまた会おうね」
説明が終わると出木杉はどこかへ行った。
「私も行くわ。じゃあね、のび太さん」
しずかも行ってしまい、一人残されたのび太。
「それじゃ僕たちもLV上げをしようか」
のび太はニビシティ入口付近の2番道路へ向かった。
しずかはニビジムの前に若い男と二人でいた。
「ここがニビジムだよ。ジムリーダーのタケシは岩ポケモン使いなんだ」
「ご丁寧にありがとうございます」
しずかは男に恭しく礼をする。
「いやあ、そんなに感謝されたのは久しぶりだなあ。じゃあね、健闘を祈るよ」
男は去って行った。
「……まだ戦わないんだけれど……」
しずかのポケモンはタケシとは相性のよくないイーブイ一匹のみ。
「あの人には悪いけど、トキワの森に戻りましょう」
しずかはそう呟くと、トキワの森へ向かって行った。
----
そのころ、出木杉は3番道路のポケモンセンターにいた。
「ふう…あの人がいなくてよかった」
あの人とはしずかにニビジムを案内していた若い男のことである。
出木杉もまたLVを上げるためにここに来たのだが、目的はそれだけではない。
「……あのう、おじさん」
出木杉はポケモンセンターにいるうさん臭い男に話しかけた。
「そのポケモンを下さい。買います」
「おう、五百円だよ」
出木杉は代金を男に支払う。
「……まったく、近ごろのガキは簡単に引っかかってくれるぜ」
出木杉は男がボソリと呟いたのを、聞こえないふりをして
ポケモンセンターを出て行った。
22番道路。
スネ夫はフシギダネのLV上げをしていた。
(情報によると最初のジムリーダーは岩タイプ使いらしいからね……。
まだコイツ一匹で十分だろう)
そう思いながら戦っていると、フシギダネのLVが上がり、つるの鞭を覚えた。
「念のためだ、もうすこしLVを上げよう。
……いざというときのことも考えて対策は万全にしておかないと」
スネ夫はあの一件以来、用心深くなったようだ。
----
2番道路。
「うそお!」
のび太はポケモン図鑑を見ながら大声を上げた。
「コイツ、かたくなるしか覚えてない!」
コイツとはもちろん、トキワの森で(ピカチュウが)捕まえたトランセルのことだ。
「……そうだ。出木杉が言っていた。こういうポケモンは最初に戦闘に出して、
すぐに引っ込めて別のポケモンで倒せば経験値が入ると……。
ありがとう出木杉!」
出木杉の優しさに感謝するのび太。
すると突然、草むらからコラッタが飛び出して来た。
「よおし!行け、トランセル!」
お月見山。
「まだだれも来てねえなあ」
ジャイアンが嬉しそうに呟いた。
「それに…新しいポケモンも捕まえたしな」
新たな仲間、パラスが入ったボールを見つめ、ニヤニヤするジャイアン。
「よし、このまま独走してやるぜ!」
ジャイアンは意気揚々と叫んだが、この数分後に道に迷うことになるのであった。
トキワの森。
しずかはイーブイのLV上げをしていた。
かなりLVが上がってはいるものの、相性を考えるとタケシに勝つのはキツい。
しずかはそう判断していた。
「ジムリーダーって言うくらいだもの、ものすごく強いに決まってるわ」
ポケモン未プレイのしずかは勝手な憶測を繰り広げていた。
「ところで、のび太さんは大丈夫かしら……」
しずかはイーブイに鳴き声の指示を出しながらふと思った。
2番道路でのび太を見かけたものの、話しかけられる雰囲気ではなかったのだ。
「……って、人の心配をしている場合じゃないわ。私もがんばらないと!」
体当たりで野生のコクーンを倒したイーブイが、
独り言ばかり言っている主人を心配そうに見つめていた。
----
3番道路。
「ヒトカゲ、メタルクロー!」
出木杉は手持ち、特にヒトカゲを重点的にLVを上げていた。
「鋼タイプの技は岩タイプとは相性がいいけれど、
岩タイプの技が来たら怖いからなあ……」
だれに言うでもなく呟いた。
そのとき、ヒトカゲの体が光り始めた。
「これは…ついに来たか……」
おめでとう!ヒトカゲはリザードにしんかした!
「……よし、これなら恐らく勝てるだろう」
出木杉は3番道路をあとにした。
再び2番道路。
「ああ…やっとトランセルのLVが二つ上がった……」
のび太は声を漏らした。
「それにしても…技を全然覚えないよ……はああ……」
今度は溜め息をつく。
「もう、ジムに挑戦しちゃおう。ピカチュウのLVもだいぶ上がったし…
うん、きっと勝てるさ!」
タケシが岩使いであることも知らず、のび太はジムへ向かうのだった。
----
/
現在の状態
のび太 2番道路(ニビシティ付近)
ピカチュウ♂ LV13
トランセル♀ LV9
ジャイアン お月見山
ゼニガメ♂ LV15
マンキー♂ LV14
パラス♂ LV7
スネ夫 22番道路
フシギダネ♂ LV12
出木杉 3番道路
リザード♂ LV16
ポッポ♂ LV13
コイキング♂ LV8
しずか トキワの森
イーブイ♀ LV17
----
ニビシティポケモンジム。
「俺の…負けだ……」
ジムリーダーのタケシは挑戦者、出木杉にそう告げた。
「君は…強いな。俺が見て来たトレーナーの中でも五本の指に入るすごさだよ」
「どうもありがとうございます」
出木杉はペコリと頭を下げ、ジムから出ると、
ドンッ。
いきなりだれかとぶつかった。
「あたたたた…って出木杉!」
「野比くん…君もジムリーダーに挑戦しに来たのかい?」
「うん、そうだよ。じゃあね、出木杉!」
のび太はジムの中に入って行った。
「野比くん…まさかピカチュウでタケシに挑むつもりじゃ……」
出木杉は呟いた。そのまさかである。
トキワの森。
「よし、モンスターボール!」
スネ夫はポケモンの捕獲をしていた。
やったー!ビードルをつかまえたぞ!
「よしよし、順調順調」
スネ夫はにんまりと笑う。
「……それにしてもここ、トレーナーがいな……」
そこまで呟いたとき、
「おい、そこのお前、ポケモン勝負しろ!」
草むらから虫捕り少年が現れた。
ジャイアンに見つからないように隠れていたが、
弱そうなスネ夫を見つけて勝負を挑むことにしたのだ。
「ふうん、いいよ」
(ビードルの経験値にしてやろうっと)
----
スネ夫が虫捕り少年と戦っているとき、しずかはトキワの森出口付近にいた。
「大丈夫よね、イーブイ…じゃないわ、エーフィのLVもだいぶ上がったものね」
そう、しずかのイーブイはエーフィに進化していた。
しずかは五人のうちで唯一の初心者であるために不安なのか、
エーフィのLVは相当高くなっていた。
「よし、ジムに行きましょう」
しずかはそう言うとトキワの森をあとにした。
「お前は俺を馬鹿にしているのか?」
タケシが新たな挑戦者、のび太に言った。
「え、そんなことないけど……」
のび太は平然と答え、タケシが明らかに苛立ちながら答える。
「ならば教えてやる。俺の使うポケモンには電気タイプの技は効かないんだよ!」
「な、なんだってー!」
のび太は予想外の事実に驚く。
「分かったらさっさと帰れ」
タケシが言い放つ。しかし、
「だが断る」
「なにぃ!?」
「僕はここで戦わなければ帰れない!なぜなら男だから!」
(今更帰ったら恥かいちゃうからね……)
やはりのび太、建前と本音にギャップがあった。
「……よかろう、そこまで舐めた真似をするなら……」
タケシがボールを投げ、イシツブテを繰り出した。
「俺が叩きのめしてやる!さあ、お前もポケモンを出せ!」
「よおし、行け、ピカチュウ!」
のび太はトランセルをくりだした!
「……は?」
「ああ、間違えた間違えた!ごめんなさい、今のなし!戻れ、トランセル!」
のび太が今度こそピカチュウを繰り出した。
----
「すこしは楽しませてくれよ!イシツブテ、岩落としだ!」
「ピカチュウ、岩を避けろ!」
落下する岩をピカチュウは縫うように避けた。
「やはり当たらないか……。だが別に構わん。
……岩落としの目的はダメージを与えることじゃないからな」
「……そうか、しまった!」
気付いたときにはピカチュウは岩に囲まれ、行動範囲が限定されていた。
「イシツブテ、体当たりだ!」
もともと防御力の高くないピカチュウは体力が半分ほど削られてしまう。
「くそ……。せめて麻痺にさえ出来れば……」
当然、イシツブテには電磁波も効かない。
(……くっ、もう諦めるしか…ん?待てよ!?)
のび太は先ほどポケモン図鑑を見たときに知った、あることを思い出した。
お月見山。
ジャイアンは迷っていた。
「あっちの階段はあそこに繋がってて、そっちの階段はさっき通って、
こっちの階段は……あああぁぁ!分かるかあ!」
ジャイアンの機嫌は一気に悪くなった。
「なんで俺さまがこんなこと……」
言いかけて、止めた。
急に目の前に眼鏡をかけた女が現れたからだ。
「……うるさい子供ね」
「ああ、なんだと!?」
もともと短気なジャイアンは機嫌が悪いことも相俟って、ついにキレた。
「うるさいって言ったのよ。洞窟には声が響くんだから」
「うるせえな!俺は今むしゃくしゃしてんだよ!」
ジャイアンがボールを構えた。
「ストレス解消に俺と勝負しやがれ!」
ジャイアンの挑戦に女は笑いながら答える。
「別に構わないわよ。アイツが仕事を終えるまでの暇潰しにね」
----
「もう終わりだ!イシツブテ、体当たり!」
「ピカチュウ、耐えろ!」
のび太が思い付いた作戦は、かなり不安定で不確実な方法だ。
しかも、ピカチュウがこの攻撃を耐えなければ絶対に成功しない。
(頼む…耐えてくれ……)
のび太の祈りが通じたのか、ピカチュウはギリギリで耐えた。
「よし、よくやったピカチュウ!」
「……ふん、もう一度体当たりだイシツブテ!」
しかし、イシツブテは動かない。
「どうしたイシツブテ!?……これは麻痺か!?一体なぜ……」
「大成功だ!」
のび太が大声を上げた。
「ピカチュウ、電光石火!」
僅かずつだがイシツブテにダメージを与える。
「くそっ、イシツブテ…動け!」
「無駄だよ!イシツブテは麻痺で素早さも下がってる。
行動範囲が狭くなってたって、ピカチュウには当たらないよ!」
何度も電光石火を繰り返すピカチュウ。
ついにイシツブテは倒れた。
「……どういうことだ?」
タケシが尋ねる。
「なに、簡単なことさ」
のび太は得意気に答える。
「ピカチュウの特性が、直接攻撃してきた相手を三割の確率で麻痺にする
静電気だったからだよ。
静電気は例え相手が地面タイプだろうと効果を発揮するからね。
かなり危ない賭けだったけど」
(まあ、地面タイプにも発動するかどうかが一番の賭けだったけどね)
タケシは悔しそうに呟く。
「なるほど…俺の知識不足だったというわけか……」
今度はイワークを繰り出した。
「舐めていたのは俺のほうだったようだ……。だから、今から全力で君と戦おう!
ジムリーダーとして!イワーク、岩石封じだ!」
イワークがピカチュウに岩石封じを仕掛け、ピカチュウは戦闘不能となった。
----
「なっ……」
「早かったか?」
タケシが唖然とするのび太に尋ねた。
「単なる経験の差だ」
タケシの言葉も耳に入らないほど、のび太は絶望した。
(もう無理だ…トランセルで勝てるわけない……)
「さあ、次のポケモンを出すんだ」
タケシに催促され、仕方なくトランセルを出した。
「さっきのトランセルか?」
「そうだ!トランセル、かたくなる!」
半ば自棄になりながら叫ぶ。
トランセルはかたくなるしか覚えていない。
防御力を上げることでイワークの攻撃は耐えられるものの、
このままでは負けてしまう。
「くっそお!がんばれトランセル!」
のび太が叫んだそのとき、
おや?トランセルのようすが……
「……え、なに?」
トランセルの体から光が溢れ出し、そして……
おめでとう!トランセルはバタフリーにしんかした!
「なにっ!?なぜ……」
タケシは思い出した。
のび太が最初にピカチュウと間違えてトランセルを繰り出していたことを。
(あれで経験値が入ってLVが上がったのか……)
一方、のび太は初めての進化に感動していた。
「うわあ、すごい。トランセルが蝶になった!」
しかし、喜びも束の間、
「イワーク、岩落としだ!」
バタフリーに落ちてきた岩がヒットした。
「トランセル!」
----
「まだ戦いは終わっていないぞ!
それにバタフリーには新たに飛行タイプがつく!
岩タイプの技は大ダメージになるはず……」
しかし、バタフリーは思ったほどダメージを受けていない。
「くそっ、かたくなるで防御を上げていたのはこのためか!」
いや、単なる偶然である。
「あっ、そうだ…えっと……ポケモン図鑑を……」
のび太が慌てて図鑑を取り出す。
「遅い、岩石封じだ!」
のび太は図鑑を開き、叫んだ。
「バタフリー、岩を念力で飛ばせ!」
岩石がバタフリーに当たる直前、岩石は跳ね返り、イワークの急所に当たった。
「……戻れ、イワーク」
タケシはイワークをボールに戻した。
つまり、挑戦者に負けを認めたということだ。
「見事だったよ。君の作戦勝ちだ」
「そ…そうですか?えへへ……」
ほとんどが偶然だと言う訳にもいかないのび太。
「さあ、このグレーバッジを受け取ってくれ!」
のび太はグレーバッジをてにいれた!
「君ならきっとポケモンリーグにだって挑戦出来る。俺は応援してるぞ!」
タケシから激励の言葉をもらい、のび太がジムをあとにすると、
ドンッ。
まただれかとぶつかった。
「あら、のび太さん」
「しずかちゃん!君も挑戦しに?」
「ええ、またあとで会いましょう」
しずかはジムに入って行った。
しずかがグレーバッジを持ってニビジムから出て来たのは、それから数分後のことだった。
----
/
現在の状態
のび太 ニビシティ
ピカチュウ♂ LV15
バタフリー♀ LV12
ジャイアン お月見山
ゼニガメ♂ LV15
マンキー♂ LV14
パラス♂ LV8
スネ夫 トキワの森
フシギダネ♂ LV14
出木杉 ニビシティ
リザード♂ LV17
ポッポ♂ LV14
コイキング♂ LV9
しずか ニビシティ
エーフィ♀ LV20
----
[[前へ>炎赤葉緑 その2]]
ニビシティ。
三人は昼過ぎにそこに到着した。
「ふう、疲れたね」
のび太が言った。
出木杉もしずかもさほど疲れてはいなかったが、のび太に合わせて首肯した。
「それじゃ、ここには最初のジムがあるはずだから、
バッジを手に入れたらまたポケモンセンターに集合だ。
それまでは自由行動にしよう」
出木杉は今後の予定を説明する。
「それじゃ僕は行くよ。あとでまた会おうね」
説明が終わると出木杉はどこかへ行った。
「私も行くわ。じゃあね、のび太さん」
しずかも行ってしまい、一人残されたのび太。
「それじゃ僕たちもLV上げをしようか」
のび太はニビシティ入口付近の2番道路へ向かった。
しずかはニビジムの前に若い男と二人でいた。
「ここがニビジムだよ。ジムリーダーのタケシは岩ポケモン使いなんだ」
「ご丁寧にありがとうございます」
しずかは男に恭しく礼をする。
「いやあ、そんなに感謝されたのは久しぶりだなあ。じゃあね、健闘を祈るよ」
男は去って行った。
「……まだ戦わないんだけれど……」
しずかのポケモンはタケシとは相性のよくないイーブイ一匹のみ。
「あの人には悪いけど、トキワの森に戻りましょう」
しずかはそう呟くと、トキワの森へ向かって行った。
----
そのころ、出木杉は3番道路のポケモンセンターにいた。
「ふう…あの人がいなくてよかった」
あの人とはしずかにニビジムを案内していた若い男のことである。
出木杉もまたLVを上げるためにここに来たのだが、目的はそれだけではない。
「……あのう、おじさん」
出木杉はポケモンセンターにいるうさん臭い男に話しかけた。
「そのポケモンを下さい。買います」
「おう、五百円だよ」
出木杉は代金を男に支払う。
「……まったく、近ごろのガキは簡単に引っかかってくれるぜ」
出木杉は男がボソリと呟いたのを、聞こえないふりをして
ポケモンセンターを出て行った。
22番道路。
スネ夫はフシギダネのLV上げをしていた。
(情報によると最初のジムリーダーは岩タイプ使いらしいからね……。
まだコイツ一匹で十分だろう)
そう思いながら戦っていると、フシギダネのLVが上がり、つるの鞭を覚えた。
「念のためだ、もうすこしLVを上げよう。
……いざというときのことも考えて対策は万全にしておかないと」
スネ夫はあの一件以来、用心深くなったようだ。
----
2番道路。
「うそお!」
のび太はポケモン図鑑を見ながら大声を上げた。
「コイツ、かたくなるしか覚えてない!」
コイツとはもちろん、トキワの森で(ピカチュウが)捕まえたトランセルのことだ。
「……そうだ。出木杉が言っていた。こういうポケモンは最初に戦闘に出して、
すぐに引っ込めて別のポケモンで倒せば経験値が入ると……。
ありがとう出木杉!」
出木杉の優しさに感謝するのび太。
すると突然、草むらからコラッタが飛び出して来た。
「よおし!行け、トランセル!」
お月見山。
「まだだれも来てねえなあ」
ジャイアンが嬉しそうに呟いた。
「それに…新しいポケモンも捕まえたしな」
新たな仲間、パラスが入ったボールを見つめ、ニヤニヤするジャイアン。
「よし、このまま独走してやるぜ!」
ジャイアンは意気揚々と叫んだが、この数分後に道に迷うことになるのであった。
トキワの森。
しずかはイーブイのLV上げをしていた。
かなりLVが上がってはいるものの、相性を考えるとタケシに勝つのはキツい。
しずかはそう判断していた。
「ジムリーダーって言うくらいだもの、ものすごく強いに決まってるわ」
ポケモン未プレイのしずかは勝手な憶測を繰り広げていた。
「ところで、のび太さんは大丈夫かしら……」
しずかはイーブイに鳴き声の指示を出しながらふと思った。
2番道路でのび太を見かけたものの、話しかけられる雰囲気ではなかったのだ。
「……って、人の心配をしている場合じゃないわ。私もがんばらないと!」
体当たりで野生のコクーンを倒したイーブイが、
独り言ばかり言っている主人を心配そうに見つめていた。
----
3番道路。
「ヒトカゲ、メタルクロー!」
出木杉は手持ち、特にヒトカゲを重点的にLVを上げていた。
「鋼タイプの技は岩タイプとは相性がいいけれど、
岩タイプの技が来たら怖いからなあ……」
だれに言うでもなく呟いた。
そのとき、ヒトカゲの体が光り始めた。
「これは…ついに来たか……」
おめでとう!ヒトカゲはリザードにしんかした!
「……よし、これなら恐らく勝てるだろう」
出木杉は3番道路をあとにした。
再び2番道路。
「ああ…やっとトランセルのLVが二つ上がった……」
のび太は声を漏らした。
「それにしても…技を全然覚えないよ……はああ……」
今度は溜め息をつく。
「もう、ジムに挑戦しちゃおう。ピカチュウのLVもだいぶ上がったし…
うん、きっと勝てるさ!」
タケシが岩使いであることも知らず、のび太はジムへ向かうのだった。
----
/
現在の状態
のび太 2番道路(ニビシティ付近)
ピカチュウ♂ LV13
トランセル♀ LV9
ジャイアン お月見山
ゼニガメ♂ LV15
マンキー♂ LV14
パラス♂ LV7
スネ夫 22番道路
フシギダネ♂ LV12
出木杉 3番道路
リザード♂ LV16
ポッポ♂ LV13
コイキング♂ LV8
しずか トキワの森
イーブイ♀ LV17
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ニビシティポケモンジム。
「俺の…負けだ……」
ジムリーダーのタケシは挑戦者、出木杉にそう告げた。
「君は…強いな。俺が見て来たトレーナーの中でも五本の指に入るすごさだよ」
「どうもありがとうございます」
出木杉はペコリと頭を下げ、ジムから出ると、
ドンッ。
いきなりだれかとぶつかった。
「あたたたた…って出木杉!」
「野比くん…君もジムリーダーに挑戦しに来たのかい?」
「うん、そうだよ。じゃあね、出木杉!」
のび太はジムの中に入って行った。
「野比くん…まさかピカチュウでタケシに挑むつもりじゃ……」
出木杉は呟いた。そのまさかである。
トキワの森。
「よし、モンスターボール!」
スネ夫はポケモンの捕獲をしていた。
やったー!ビードルをつかまえたぞ!
「よしよし、順調順調」
スネ夫はにんまりと笑う。
「……それにしてもここ、トレーナーがいな……」
そこまで呟いたとき、
「おい、そこのお前、ポケモン勝負しろ!」
草むらから虫捕り少年が現れた。
ジャイアンに見つからないように隠れていたが、
弱そうなスネ夫を見つけて勝負を挑むことにしたのだ。
「ふうん、いいよ」
(ビードルの経験値にしてやろうっと)
----
スネ夫が虫捕り少年と戦っているとき、しずかはトキワの森出口付近にいた。
「大丈夫よね、イーブイ…じゃないわ、エーフィのLVもだいぶ上がったものね」
そう、しずかのイーブイはエーフィに進化していた。
しずかは五人のうちで唯一の初心者であるために不安なのか、
エーフィのLVは相当高くなっていた。
「よし、ジムに行きましょう」
しずかはそう言うとトキワの森をあとにした。
「お前は俺を馬鹿にしているのか?」
タケシが新たな挑戦者、のび太に言った。
「え、そんなことないけど……」
のび太は平然と答え、タケシが明らかに苛立ちながら答える。
「ならば教えてやる。俺の使うポケモンには電気タイプの技は効かないんだよ!」
「な、なんだってー!」
のび太は予想外の事実に驚く。
「分かったらさっさと帰れ」
タケシが言い放つ。しかし、
「だが断る」
「なにぃ!?」
「僕はここで戦わなければ帰れない!なぜなら男だから!」
(今更帰ったら恥かいちゃうからね……)
やはりのび太、建前と本音にギャップがあった。
「……よかろう、そこまで舐めた真似をするなら……」
タケシがボールを投げ、イシツブテを繰り出した。
「俺が叩きのめしてやる!さあ、お前もポケモンを出せ!」
「よおし、行け、ピカチュウ!」
のび太はトランセルをくりだした!
「……は?」
「ああ、間違えた間違えた!ごめんなさい、今のなし!戻れ、トランセル!」
のび太が今度こそピカチュウを繰り出した。
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「すこしは楽しませてくれよ!イシツブテ、岩落としだ!」
「ピカチュウ、岩を避けろ!」
落下する岩をピカチュウは縫うように避けた。
「やはり当たらないか……。だが別に構わん。
……岩落としの目的はダメージを与えることじゃないからな」
「……そうか、しまった!」
気付いたときにはピカチュウは岩に囲まれ、行動範囲が限定されていた。
「イシツブテ、体当たりだ!」
もともと防御力の高くないピカチュウは体力が半分ほど削られてしまう。
「くそ……。せめて麻痺にさえ出来れば……」
当然、イシツブテには電磁波も効かない。
(……くっ、もう諦めるしか…ん?待てよ!?)
のび太は先ほどポケモン図鑑を見たときに知った、あることを思い出した。
お月見山。
ジャイアンは迷っていた。
「あっちの階段はあそこに繋がってて、そっちの階段はさっき通って、
こっちの階段は……あああぁぁ!分かるかあ!」
ジャイアンの機嫌は一気に悪くなった。
「なんで俺さまがこんなこと……」
言いかけて、止めた。
急に目の前に眼鏡をかけた女が現れたからだ。
「……うるさい子供ね」
「ああ、なんだと!?」
もともと短気なジャイアンは機嫌が悪いことも相俟って、ついにキレた。
「うるさいって言ったのよ。洞窟には声が響くんだから」
「うるせえな!俺は今むしゃくしゃしてんだよ!」
ジャイアンがボールを構えた。
「ストレス解消に俺と勝負しやがれ!」
ジャイアンの挑戦に女は笑いながら答える。
「別に構わないわよ。アイツが仕事を終えるまでの暇潰しにね」
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「もう終わりだ!イシツブテ、体当たり!」
「ピカチュウ、耐えろ!」
のび太が思い付いた作戦は、かなり不安定で不確実な方法だ。
しかも、ピカチュウがこの攻撃を耐えなければ絶対に成功しない。
(頼む…耐えてくれ……)
のび太の祈りが通じたのか、ピカチュウはギリギリで耐えた。
「よし、よくやったピカチュウ!」
「……ふん、もう一度体当たりだイシツブテ!」
しかし、イシツブテは動かない。
「どうしたイシツブテ!?……これは麻痺か!?一体なぜ……」
「大成功だ!」
のび太が大声を上げた。
「ピカチュウ、電光石火!」
僅かずつだがイシツブテにダメージを与える。
「くそっ、イシツブテ…動け!」
「無駄だよ!イシツブテは麻痺で素早さも下がってる。
行動範囲が狭くなってたって、ピカチュウには当たらないよ!」
何度も電光石火を繰り返すピカチュウ。
ついにイシツブテは倒れた。
「……どういうことだ?」
タケシが尋ねる。
「なに、簡単なことさ」
のび太は得意気に答える。
「ピカチュウの特性が、直接攻撃してきた相手を三割の確率で麻痺にする
静電気だったからだよ。
静電気は例え相手が地面タイプだろうと効果を発揮するからね。
かなり危ない賭けだったけど」
(まあ、地面タイプにも発動するかどうかが一番の賭けだったけどね)
タケシは悔しそうに呟く。
「なるほど…俺の知識不足だったというわけか……」
今度はイワークを繰り出した。
「舐めていたのは俺のほうだったようだ……。だから、今から全力で君と戦おう!
ジムリーダーとして!イワーク、岩石封じだ!」
イワークがピカチュウに岩石封じを仕掛け、ピカチュウは戦闘不能となった。
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「なっ……」
「早かったか?」
タケシが唖然とするのび太に尋ねた。
「単なる経験の差だ」
タケシの言葉も耳に入らないほど、のび太は絶望した。
(もう無理だ…トランセルで勝てるわけない……)
「さあ、次のポケモンを出すんだ」
タケシに催促され、仕方なくトランセルを出した。
「さっきのトランセルか?」
「そうだ!トランセル、かたくなる!」
半ば自棄になりながら叫ぶ。
トランセルはかたくなるしか覚えていない。
防御力を上げることでイワークの攻撃は耐えられるものの、
このままでは負けてしまう。
「くっそお!がんばれトランセル!」
のび太が叫んだそのとき、
おや?トランセルのようすが……
「……え、なに?」
トランセルの体から光が溢れ出し、そして……
おめでとう!トランセルはバタフリーにしんかした!
「なにっ!?なぜ……」
タケシは思い出した。
のび太が最初にピカチュウと間違えてトランセルを繰り出していたことを。
(あれで経験値が入ってLVが上がったのか……)
一方、のび太は初めての進化に感動していた。
「うわあ、すごい。トランセルが蝶になった!」
しかし、喜びも束の間、
「イワーク、岩落としだ!」
バタフリーに落ちてきた岩がヒットした。
「トランセル!」
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「まだ戦いは終わっていないぞ!
それにバタフリーには新たに飛行タイプがつく!
岩タイプの技は大ダメージになるはず……」
しかし、バタフリーは思ったほどダメージを受けていない。
「くそっ、かたくなるで防御を上げていたのはこのためか!」
いや、単なる偶然である。
「あっ、そうだ…えっと……ポケモン図鑑を……」
のび太が慌てて図鑑を取り出す。
「遅い、岩石封じだ!」
のび太は図鑑を開き、叫んだ。
「バタフリー、岩を念力で飛ばせ!」
岩石がバタフリーに当たる直前、岩石は跳ね返り、イワークの急所に当たった。
「……戻れ、イワーク」
タケシはイワークをボールに戻した。
つまり、挑戦者に負けを認めたということだ。
「見事だったよ。君の作戦勝ちだ」
「そ…そうですか?えへへ……」
ほとんどが偶然だと言う訳にもいかないのび太。
「さあ、このグレーバッジを受け取ってくれ!」
のび太はグレーバッジをてにいれた!
「君ならきっとポケモンリーグにだって挑戦出来る。俺は応援してるぞ!」
タケシから激励の言葉をもらい、のび太がジムをあとにすると、
ドンッ。
まただれかとぶつかった。
「あら、のび太さん」
「しずかちゃん!君も挑戦しに?」
「ええ、またあとで会いましょう」
しずかはジムに入って行った。
しずかがグレーバッジを持ってニビジムから出て来たのは、それから数分後のことだった。
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現在の状態
のび太 ニビシティ
ピカチュウ♂ LV15
バタフリー♀ LV12
ジャイアン お月見山
ゼニガメ♂ LV15
マンキー♂ LV14
パラス♂ LV8
スネ夫 トキワの森
フシギダネ♂ LV14
出木杉 ニビシティ
リザード♂ LV17
ポッポ♂ LV14
コイキング♂ LV9
しずか ニビシティ
エーフィ♀ LV20
[[次へ>炎赤葉緑 その4]]
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