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第5章「幻想の中で」 - (2007/04/25 (水) 20:38:05) の編集履歴(バックアップ)


 小波は黙ってぶきみな塔を見つめた。想像していたよりもとても高い。その間に猛者波が通ってきた草の上はどんどん枯れはててゆく。燃え移り行く火の粉のように周りの草も茶色くなってゆく。
 ゴソゴソッと塔のてっぺんで音がした。見上げてみるときらきらと輝く地面に着くほどの金色の長い髪が垂れ下がっているのを見つけた。小波はふいにランプッチェルの名場面を思い出した。
 とりあえず、声をかけてみるか。いつまでもこんなドロドロした所にいたくは無い。
「あのーすいませーん・・・」
「うぅ?」
その金髪の持ち主はひょこっと小さい頭を肘に乗せながらこっちを見つめた。かなりの美貌の持ち主だ。しかし少しミステリアスな感じがする。それもそうだろう。こんな偏屈な所にいるだけで十分変だと思う。
 その美女は小波を見て一瞬驚きの表情を浮かべてからニヤリ、と笑った。かなり邪悪な笑みだ。
「悪魔の子か・・・」
 美女の口から漏れたその言葉を聞いて小波は眉をひそめた。その言葉はどこかで聞いたような気がする。
 美女の浮かべた恍惚の表情は一瞬のうちに消え、人のよさそうな笑みに変わった。どこか企んでいるような笑みだ。
「こんにちは。生長小波さん。」
「こここんにちは!!」
 佐波は美女の豹変ぶりに驚きながらもなぜ名前を知っているのか疑問に思った。
「私は・・・っと、ここで話すのもなんだわねぇ。まあ上ってきなさいよ。」
「上るって・・・」
 登るってどこを登るんだ!?髪の毛を登れってことなのか?
そりゃぁ確かにグリム童話ではそういうあらすじだけどここはグリム童話の世界ではあるまいし・・・