---- *第4章 「戸惑いの中で」 小波は気が付くと、何も無い真っ白な空間に立っていた。 そこには壁も地面も天井も窓も扉もない。 まるで雲の上を歩いているような気分だ。 ここは、天国なのだろうか。しかし天国にしてはあまりにも殺風景 すぎる。 小波は恐る恐る一歩、足を踏み出した。 まわりにはなにも動くものは無い。 小波以外には。 そして永遠に続きそうな静寂が漂っていた。 小波はその静寂を破った。 「誰か・・・いませんか···?」 すると、きぃぃぃぃっっとなにかが開く音がした。 そして、一筋の光が見えた。 佐波は不思議な感触がする地面を蹴ってその光を追いかけた。 その先にあったものは---- 大きな、扉があった。 とてつもなく大きな純白の扉で、扉のまわりにはぐるっとそびえたつ高い塀があった。 小波はその巨大な扉に圧倒されて、しばらくそこに突っ立っていた。 その小波の体を一筋の光がてらす。 その一筋の光は、ほんの少しの扉の隙間からこぼれ出ていた。しかしその光はとても眩しかった。 (母さんたちはこの中にいるの···?) 小波は目をつぶって扉の中に入った。 (天国ってどんな所なのだろう…) 小波は歩きながら考えた。 (夢のようなファンタジックな感じじゃなくて案外殺風景かも…) 小波は目を開けた。 そこに広がっていたのは果てしない草原だった。 「綺麗…まるでグリム童話の世界だ…」 遠くの方にぼやっと一つのとんがった塔がみえた。 足に感じる草の感触が気持ちがいい。 小波は不意に駆け出した。