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    <title>DRAFT_BEST_CHARACTER</title>
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    <title>文献一覧</title>
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    <description>
      ***文献リスト

＜長編＞
|&amp;bold(){シリーズ}|&amp;bold(){タイトル}|&amp;bold(){備考}|
|WHITE CLOTHING|[[序章　女王と王女と六人の魔法使い&gt;WHITE CLOTHING　序章]]||
||第一章　セレスティンの草原　[[１&gt;WHITE CLOTHING　1-1]] / [[２&gt;&gt;WHITE CLOTHING　1-2]] / [[３&gt;&gt;WHITE CLOTHING　1-3]] / [[４&gt;WHITE CLOTHING　1-4]]||
|BEST DAYS|[[人物紹介]]||
||[[BEST ENCOUNTER]]|完了|
||[[BEST FUTURE]]|完了|
||[[BEST TIME]]|完了|
||[[BEST DISTANCE]]|完了|
||[[BEST LOVER]]|完了|
||[[BEST CHARACTER]]|完了|
||[[パステルカラー（番外編）&gt;パステルカラー]]|完了|　
|ティーメイカー|[[episode.1 ダージリン]]||
||[[episode.2 アッサム]]||
||episode.3 ハーブティー　[[前編&gt;episode.3　ハーブティー]]||

＜短編＞
|&amp;bold(){タイトル}|&amp;bold(){初出}|
|[[サンダーボーイ]]|03.12.14|
|[[そんな二人のクリスマス]]|03.12.22|
|[[Midnight Glass]]|04.02.03|
|彼の言い訳、彼女の言い分　[[Part.1&gt;彼の言い訳、彼女の言い分　Part.1]] / [[Part.2&gt;彼の言い訳、彼女の言い分　Part.2]]|04.03.14|
|[[ウォーターガール]]|04.08.06|
|[[コンビニ]]|04.09.12|
|[[食わず嫌い]]|04.12.11|
|[[赤い実白い手緑の葉]]|04.12.24|
|[[好きということ]]|05.02.14|
|[[アフターハッピーエンド]]|05.03.14|
|[[for ninety minutes]]|05.05.30|
|[[夏祭りは君と２人で]]|05.08.24|
|[[Lily]]|05.09.13|


----    </description>
    <dc:date>2010-04-30T10:25:34+09:00</dc:date>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/2.html">
    <title>メニュー</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/2.html</link>
    <description>
      **メニュー
-[[トップページ]]
-[[メニュー]]
-[[文献一覧]]
-[[参考]]
----

**リンク
-[[風―kaza―&gt;&gt;http://domo.ciao.jp/index.html]]
-[[Petit Souhait&gt;&gt;http://ps.nuitblanche.info/]]
-[[3T企画&gt;&gt;http://stories.nobody.jp]]

// リンクを張るには &quot;[&quot; 2つで文字列を括ります。
// &quot;&gt;&quot; の左側に文字、右側にURLを記述するとリンクになります


**更新履歴
#recent(20)

//&amp;link_editmenu(text=ここを編集)    </description>
    <dc:date>2010-04-30T10:22:06+09:00</dc:date>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/1.html">
    <title>トップページ</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/1.html</link>
    <description>
      Microcosmos＠Wikiへようこそ。
ぼちぼち更新していきます。

更新履歴は左下にあります。

現在の移行状況は以下です。

＜長編＞
|&amp;bold(){シリーズ}|&amp;bold(){タイトル}|&amp;bold(){備考}|
|WHITE CLOTHING|[[序章　女王と王女と六人の魔法使い&gt;WHITE CLOTHING　序章]]||
||第一章　セレスティンの草原　[[１&gt;WHITE CLOTHING　1-1]] / [[２&gt;&gt;WHITE CLOTHING　1-2]] / [[３&gt;&gt;WHITE CLOTHING　1-3]] / [[４&gt;WHITE CLOTHING　1-4]]||
|BEST DAYS|[[人物紹介]]||
||[[BEST ENCOUNTER]]|完了|
||[[BEST FUTURE]]|完了|
||[[BEST TIME]]|完了|
||[[BEST DISTANCE]]|完了|
||[[BEST LOVER]]|完了|
||[[BEST CHARACTER]]|完了|
||[[パステルカラー（番外編）&gt;パステルカラー]]|完了|　
|ティーメイカー|[[episode.1 ダージリン]]||
||[[episode.2 アッサム]]||
||episode.3 ハーブティー　[[前編&gt;episode.3　ハーブティー]]||

＜短編＞
|&amp;bold(){タイトル}|&amp;bold(){初出}|
|[[サンダーボーイ]]|03.12.14|
|[[そんな二人のクリスマス]]|03.12.22|
|[[Midnight Glass]]|04.02.03|
|彼の言い訳、彼女の言い分　[[Part.1&gt;彼の言い訳、彼女の言い分　Part.1]] / [[Part.2&gt;彼の言い訳、彼女の言い分　Part.2]]|04.03.14|
|[[ウォーターガール]]|04.08.06|
|[[コンビニ]]|04.09.12|
|[[食わず嫌い]]|04.12.11|
|[[赤い実白い手緑の葉]]|04.12.24|
|[[好きということ]]|05.02.14|
|[[アフターハッピーエンド]]|05.03.14|
|[[for ninety minutes]]|05.05.30|
|[[夏祭りは君と２人で]]|05.08.24|
|[[Lily]]|05.09.13|


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    <dc:date>2010-04-22T00:51:33+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/42.html">
    <title>for ninety minutes</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/42.html</link>
    <description>
      　風丘ひなの、19歳。
　趣味は人間観察です。





　変人だとよく言われます（AB型だし）。





　ま、それはそれでアリかな、なんて思っている今日この頃です。






&amp;bold(){　　　　for ninety minutes}






　大学の講義なんて聞くも聞かないも本人次第。
　だけど。
「風丘、次読んで」
　なんて唐突に言われることもあるので、努力しないで単位が欲しければ聞いておくに越したことはないのでしょう。
　私はどちらかというと真面目に聞いている方。
　……なのに、“どうも焦点が合ってない”だの、“いつも眠そう”だのとの言われるこの茫洋とした顔つきのせいで聞いてないと思われることもしばしば。
　まあ顔つきばっかりは親の遺伝子の産物だからどうにもなりませんけども。
　一回あてられて、“しっかり聞いてます”アピールさえしておけば、あとの時間は私のもの。
　このときのために、わざわざ早くから一番後ろの席を取っておくといっても過言ではありません。
　こっそり、一番後ろの席から周りを観察。
　これが普通の19歳の女の子なら、気になる男の子がいるとかって理由なんでしょうけど、生憎私はそんな可愛らしいカテゴリーに入る部類でもなく。
　ただひたすら、内職やメール、睡眠に意欲を燃やす人々を観察している次第なのです。


　何が楽しいのかと言われても、別にこれと言った理由もなく。
　「趣味です」私は事もなげにそう答えてみたり。
　それでたまに（ほんとにたまに）、偶然人の弱みを握ってしまったりするから、悪趣味だなんて言われるときもありますけど。
　別に弱み知ったからってどうこうしようってわけじゃないので。
　個人情報の流出には厳しいご時世ですしね。


　授業が終わると、第二外国語（ちなみに私はロシア語。マイナーですな）が一緒の本条結が飛んできました。
「ひなの、……もう授業終わったんだけど」
「えっ？」
「君の観察好きはよーくわかったから、休み時間ぐらいはリアルワールドで生活していただけると助かるんですけど」
「了解であります」
　敬礼の真似をしながら、人でごった返す食堂へ向かって。
　私が言うのもなんだけど、結だって相当“普通の”女の子カテゴリーには当てはまらない（と思われます）。だから仲がいいのかもしれません。
　……コレが俗に言う類友ってやつなんでしょう。
「何食べる？」
「食べる以前に座れないって。学食諦める方が無難ぽい」
「かなあ。ま、天気いいし外でごはんもいいかもね」
　実はさっきの時間からかなりカレーの気分だったのだけど、あまりの人の多さにすっぱり諦めることにしました。
　人生諦めが肝心。（ちょっと違うかも）
「まったくー、君がいつまで経ってもリアルワールドに切り替えてくれないからいつも学食行きそびってるじゃないか」
「それ私のせいじゃない。ロシア語が二限の日が多いせい」
「確かに朝からロシアはきついけど……って違う！」
　結がツッコミを入れてくる。
　相変わらず的確ですこと。
　一応言い訳してみましょう。
「ロシア語の人たち観察すんのが一番面白いからさ、しょーがないのさ」
「ひなのはそれで確か前、伊藤君が彼女と別れたばっかりでがっつりへこんでんの偶然知っちゃって、口止め料とか言ってジュース奢ってもらっていたよね？」
「それはオプション。私の目標はあくまで観察オンリー」
「気がついてないかもしんないけど、けっこうあのことあってからその観察癖、恐れられてるよ？　風丘ひなのに弱みを握られるな！　ってみんなが意気込んでる感じ」
「いやーそこまで期待してもらってるなんて照れるなあ」
「照れるとこじゃないからそこ。全然」
　またつっこまれました。
　結はふわふわっとしたしゃべり方だけど頭の回転が速くて、話し上手。
　私のことを一番よくわかってくれてて、しばしばマイワールドに行ってしまいがちな私を引き戻す役目でもあります。
　それでも二人で話してるとどんどん話題が変わって、本筋から逸れていって、最後には「で、何を話しててこうなんったんだっけ？」みたいな感じになってしまったりもします。
　昼ごはんを食べ終わって、またあれこれ話しながら次の教室へ向かいます（１年生はだいたい科目が似かよっていて、ひとりひとりの時間割もあまり違わないのです）。
「だからね、その考え方で行くとやっぱりポメラニアンでしょ」
「んー私はダックスフントでも行けると思う」
「……お前ら何の話してんの？」
　教室に入ろうとしたら、後ろから声をかけられました。
　振り向くと、体育が一緒の浅田でした。
「浅田。ちょっと聞いてよ！　サーカスで犬に玉乗りさせるならどの種類の犬がいいかって聞いたのに、ひなのがダックスフントって譲らないわけ。あの短足でどうするのよ？」
「ポメラニアンだって足長くはないって」
「そもそもなんでそんな話になってんだよ。俺としては一生に一回するかしないかのレア話題ばかりが詰め込まれた君らの頭の中がとても気になる」
「「なんでそんな話になったか忘れたから引っ込みつかなくなってるの」」
　二人で同時にいうと、浅田はため息をついて、「いつものとこに席とってあるから」と呟きました。
　浅田はどこからどう見ても、普通の人。
　私たちと話しててなんか、大変そうだけど何かと構ってくる。
　結より的確なツッコミはありがたいし、三人でしゃべるのも楽しいし。
　誰になんて言われようと、私はこの生活を変える気はないのです。


　授業が始まって、先生が入ってくる。
　教室が静かになる。
　みんながノートを取り始めて、私もそれに倣う。


　さあ、どんな90分を過ごしましょうかね？


　授業独特の静寂と僅かな緊張感にわくわくしながら。
　手始めに、もううたた寝を始めた浅田に消しゴムでも投げてみましょうか。

#right(){fin.}

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    <dc:date>2010-04-22T00:49:55+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/41.html">
    <title>アフターハッピーエンド</title>
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    <description>
      　映画でもドラマでも小説でも。
　ヒーローとヒロインは、くっついて終わり。
　誰もその後なんか教えちゃくれない。
　それはその方が都合がいいから。綺麗に終われるから。
　……だと思ってました。
　オレは今回、ハッピーエンドのその後を体験するにあたってそれは間違いだったってことを知る。
　ハッピーエンドにその後がないのは。
　本当は――





&amp;bold(){　　　アフターハッピーエンド}





　ここでいうヒーローとヒロイン、月岡航と椎名美琴は美琴の努力の甲斐あって、バレンタインに（やっと）両想いになった。
　晴れて恋人同士。
　でも、友達の期間が長いとなかなかその雰囲気から抜け出せなかったりもする。

「ちょっと聞いてくれよ佑真」
「いやだ」
「冷たいなあ……」
「椎名のこと以外ならいくらでも聞いてやる」
　航ははっきりと困った顔をして、そんなあとか薄情だなとか何とか言って黙った。
　いい加減、自分でもわかっている。
　だけど、どうしたらいいかわからないのだ。
　航の親友でありバンド仲間であり相談役の若月佑真は、その様子をクールに見ていた。
　内心面白いと思いながら。
「だからさ実際問題、オレたちってつきあってるんだよな？」
「俺に聞くな」
「じゃあ質問変える。……つきあってるように見える？」
　航はすがるような目で、彼女になったばかりの美琴のことを訊いてくる。
　沈黙数秒。
「見えない」
「うあーやっぱそーだよなー。でもどっちかっていうと悪いのはオレじゃなくて美琴、っていうかあいつはそんなことで悩みもしないんだろうし音楽バカだし顔はかわいいけど性格あれだし、あっでもでも」
　以下、航の美琴分析は続く。
　佑真はっていうか、のあたりから聞くのをやめた。
　最近航はいつもこんな調子だ。
　何が気に入らないって、多分美琴の態度なんだろう。
　やはり同じバンド仲間である美琴が、乙女チックな性格でないことは周知の事実だ。バレンタインにくっついた二人だが、それはひとえに佑真の隠れた助言のおかげである。美琴が佑真に、告白するかどうか相談していなかったら多分言っていなかった。実際、そんな性格の彼女が、航に何と告白したかは佑真も大変興味のあるところだったが、どちらも絶対に口を割ろうとはしなかった。
「ごめんーおまたせ」
　そこへ、件の美琴が現れた。
　航たちは次のライブの相談をしようという名目で集まっていた。よくたむろっていた部室はストーブが壊れて本格的に凍死しそうな勢いなので最近は誰も寄り付かない。というわけで今日はファミレスだ。
　やや沈んでいる航と呆れ顔の佑真に、美琴は変な顔になる。
「な、んの話してたの？」
「椎名の話」
「あたし!?　あーすいませんミルクティーひとつ」
　側を通りかかったウエイトレスにちゃっかり自分の注文を済ませ、美琴は航の隣に座る。
「航の顔から考えてあんましいい話じゃなさそうだけど？」
「別に悪い話でもないけどな。航、椎名来たんだからやるべきことやらないか」
「そうだな……」
　言いながら三人はてきぱきとライブの打ち合わせをする。もう何度もやっているので慣れたものだ。
　もともと事前準備はあまりない。一緒にやってくれるバンドに日時と場所を伝えればそれでほぼ終わりだ。一番忙しいのはむしろこれから本番までの練習と練習場所の確保だろう。
「ま、一緒にやるとこも今まで何度かやったところだし、こんなもんでいいんじゃない？」
「だな。じゃあ俺バイトだから行くな」
「おー、じゃあな」
　佑真がいなくなると、航は美琴を見る。
「なに？」
「いや、おまえ変わらないよなーって」
「それっていつと比べて？」
　核心を突かれて、航は黙る。
「変わってほしいの？」
「そうは言ってないだろ」
「言ってるよ。航の態度見てればわかるもん。つきあってたら変わらないといけないの？　あたしは、航にはすごく感謝してるし、でもそれとは別にちゃんと好きって、先月言ったよね」
　次から次へと刺さる言葉を言われて、航にもう反論の余地はない。
　（だけど違う）
　自分が言いたいのは、そんなことじゃなくて――
「……ごめん」
　思わず謝っていた。自分でもなぜだかよくわからないけれど。
「？　何のごめん？」
「わかんないけど。オレって欲張りかなーと」
「うん、少しね」
　きっぱり言われてまた少し傷つく。
　ああ、どうしてこう、この娘さんは全くもう……。
「でも航はいつも、努力して欲しいものは手に入れてきたじゃない。『彼女らしいあたし』が欲しいなら、あたしがそうなるように努力して？」
　他人が聞いたら、なんて傲慢な言い草だろうと思うだろう。
　でも一理ある。
　“ひとを想い続けること”には案外パワーがいるし、“つきあい続けること”には絶え間ない努力が必要だ。
「……うん、する。絶対今より好きにさせるから覚悟してな？」
「じゃああたしはその倍ぐらいがんばっちゃうよ？」
　顔を見合わせて、互いに不敵に微笑む。
　現状に不満なら努力。
　昔の偉人が言いそうな言葉を心に刻み込む。
　航はふいに思い出して、カバンを漁る。
「そうだ美琴、……これ」
　そう言ってブルーの包みを取り出して美琴に渡す。
「あ、ありがとー。そういえばホワイトデーだったっけ」
　美琴は言いながらリボンをほどこうとする。
「あーストップ！　後でっていうかオレがいないとこで開けて」
「なんで？」
「なんか恥ずかしいじゃん、目の前で開けられんのって」
　航がしきりに照れている。
　人に贈り物をするのは、いつまで経っても慣れない。もう20歳なんだし、もう少し上手く渡したいとは思うのだが。
　美琴はなぜか目をきらきらさせている。
「かーーわいいーーーーっ！　ねっねっ、今の顔もう一回して？」
「は？」
「だって航のそんな顔初めて見た！　滅多に照れることないじゃん？」
　いきなりテンションが上がった美琴を航はぽかんと見ている。
　心底楽しいらしい。
「なんだよ急に！　人の顔見てそんな楽しそうに……趣味悪いって！」
「いいじゃない、かわいいものはかわいいんだから！」
　かわいいかわいいと連発する美琴。
　航はあっけに取られながらも、そんな美琴をかわいいと思っていた。
「……心配しすぎてたかもなあ」
「え、なに？」
「なんでもない。それより美琴、実は可愛いもの好きとか？」
「ううーバレちゃった。っていうわけでこれから雑貨見に行きたいんだけどいい？」
「まあこの際つきあいましょう」
　言って立ち上がる。
　手を繋いで目的の店を目指す。
　きっとお互い知らないことはまだ、たくさんあるんだろうなと思いながら。



　ハッピーエンドにその後がないのはきっと。
　それを持続させるのには努力が必要で。
　その努力ってやつは結構、かっこ悪くて見苦しくて情けないからなんだろう。
　オレが主人公ならまず、そんな姿は見られたくないし。
　さっぱりした性格（でも可愛いもの好き）な彼女に、これ以上呆れられないように。
　努力してみようか。
　そうしたら、案外未来は明るいかもしれない。


　……オレ以上にがんばる、って言ってしまった美琴がどう出るか、非常に楽しみです。

#right(){fin.}

----    </description>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/40.html">
    <title>好きということ</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/40.html</link>
    <description>
      **好きということ

　もう一度、思い出してみよう。
　その日は、チョコを渡す日だった？



「で、俺にどうしろと？」

　テーブルを挟んだ向かいで、若月佑真が眉を顰めた。
　外はうっすら雪が積もっていたけれど、掘っ立て小屋と呼ぶに相応しいプレハブの部室は、古さの割に足元に置いたストーブのせいかいい感じにあったかくて、椎名美琴は佑真と対照的にゆるみきった顔をしていた。
「うん、だからね、さぞかし恋愛経験の豊富であろう若月に助言を」
「その前にそれ、冷蔵庫に入れた方がいいぞ」
　佑真は美琴がテーブルの上に置いた包みを指した。
　もちろん中身はチョコレート、だ。残念ながら佑真宛てではない。
　言われなくたって知っている。
　そのチョコレートはここにはいない彼、月岡航へのものだと。
「そんなすぐ溶ける？」
「高けりゃ高いほどあっという間だぞ」
「じゃー大丈夫かも」
　美琴が苦笑する。
　直前まで渡すか渡さないかも迷っていた（しかもそのときから佑真も巻き込まれていた）くらいだから、前々から準備していたわけではない。
　その慌ただしさ相応の値段、というわけだ。
　最も仮に美琴と航がつきあっていたとしても、美琴が驚くほど高いチョコレートを用意するような性格でないことは十分承知しているけれど。
　件の航は授業に出ていていない。
　４限目の授業が終わって彼が戻ってくるまでの間が、美琴にとっては勝負だ。
　美琴が一応チョコレートを冷蔵庫に入れて座り直す。
「んで本題だけど、俺は何について助言すればいいわけ？」
「何て言ったらいいかなあ、って」
　そんなの自分で考えろよ、と言いそうになって慌てて口をつぐんだ。
　美琴は助言が欲しいというよりも、多分落ち着かなくて話を聞いて欲しいだけなのだ。適当に本音を引き出してやればいい。
「なんかこう……これだけは言っときたい、みたいのない？」
「だからそれ、自分の中でまとまってたらこんな苦労しない」
「歌えば？」
「チョコ渡す前にちょっと待って、とか言っていきなり歌うの？　やだそんなミュージカルみたいなの」
「だったら直球勝負しかねえじゃん」
「そうなんだけど……。うーん……」
　美琴は唸りながらテーブルに突っ伏す。
　何がどうまとまらないのかよくわからないので、佑真はそれ以上何も言えず黙っていた。
　自分と美琴は出会って半年くらいの、バンド仲間だ。
　と言っても、大学に入ってバンドサークルに入って最初にバンドを組んだのは今授業中の航に誘われて、だった。
　航は人当たりのいいフレンドリーな性格で、ギターも上手かった。佑真も高校のときからしていたベースをそのまま続け、もうひとりドラムのメンバーも含めてそれなりにやっていた。
　ただ、ボーカルだけはライブの度に変わっていた。どうしても馴染まなかったのだ。
　そんなとき、どこでどう知り合ったのか、高校の頃天才ボーカルとしてちょっと有名だった美琴を、航が連れてきた。
　美琴はデビューを目前にして声が出なくなり、デビュー構想から外された。
　航のことだ、上手いこと説き伏せて断れない状況も作って、引きずり込んだに違いない。
　普段見せている面とは裏腹に、殊に音楽に関してはものすごい熱意を見せる。歌うことがトラウマだった美琴を再び歌わせるあたり、只者ではないなと佑真は踏んでいる。
　そして、これは今の美琴には絶対言わないが、航は多分美琴が好きだ。
　その美琴は目の前で、もうすぐ航にチョコレートを渡そうとしている。
　両方の気持ちを知っている佑真としては大変楽しめる状況だった。
「やっぱり、渡すだけにしよっかなぁ……」
　ぽつりと美琴が呟く。
「何にも言わないで？」
「うん。いろいろ考えたけど、ダメ。一回しゃべりだしたら多分、わけわかんないこと延々しゃべってそう」
「その方が伝わるってもんじゃねえの？」
「かもしれない。でも、せっかくだから……落ち着いて普通に渡したいっていうか。それに、渡したらわかってくれそうじゃない？」
　確かに、航なら拒みはしないだろうし、もしかして自分のこと、くらいまでは思うかもしれない。
　でもそれだけじゃ。

「……椎名が、どういうつもりで渡したかは、いくらあいつでも絶対わかんねーと思う」

　知らない間に、言葉が転がり出ていた。
　美琴が驚いて目を見開く。
「どういうつもりって？」
「要は義理か、本命かってこと」
「やっぱ、そこまで伝わるって思うのは虫が良すぎ？」
「良すぎ」
「はー。やっぱしちゃんと言った方がいっかー……」
　佑真は頷く。
「ねえ！　航はあたしのことどう思ってると思う!?」
「なんだよまたいきなり……」
「だってそれわかってたらちょっとは伝えやすくなるかもしんないし。若月のことだから何か知ってんでしょ？　ねー教えてーー！」
「だからそれ確かめんのに渡すんじゃなかったのか？」
　う、と美琴が言葉に詰まる。
　本末転倒とはこのことだ。
「もういっぺん、シンプルに考えてみろって。椎名は世間一般の『好き』に囚われすぎ。自分に正直になってみ？」
「シンプルに、ね……」
　言われた通り、航のことを考える。



　どこが好きとか。
　なんで好きとか。
　正直、そんなのよくわからない。
　知り合って長いわけでもないから、そんなに航のことを知っているわけでもないし。
　だけど。
　でも。
　例えば、帰り道で夕焼けが綺麗だったとか、
　星がよく見えるとか、
　気に入ったCDを見つけて、聴かせたいと思うとか、
　逆に、単位落としたとか、
　ライブのチケット取れなかったとか、
　バイトで怒られたとか、
　自分が好きなことやへこんだことを一番に聞いてほしいと思うのは、決まって航だ。
　それだけで、充分『好き』ってことに、なると思う。
　『好き』の形はさまざま。
　百人いたら百通りの形があって当り前。
　佑真の言うとおり、よく言われる『好き』に、足元をすくわれていたかもしれない。

　正直に、いま思ったことを言おう。
　わかってもらえたら、チョコレートを受け取ってもらおう。



「なんかつかめた？」
「うん、そんな気がする。若月、ありがと」
「俺は何も」
「ううん、あたし勘違いしてたから。バレンタインは、チョコを渡す日じゃないよね。本当は、気持ちを伝える日なんだってこと、忘れてた」
「それだけわかれば上等」
　佑真は含みのある笑顔で頷いて、時計を見た。
「考えてる間にちょうどいい時間になったな」
　美琴も時計を見る。
　４限終了、５分前。
　美琴は冷蔵庫に入れたチョコレートを取り出す。
　部室を出ようとして、振り返った。
「結果がどんなんでも、聞いてくれる？」
「もちろん」
「ありがと。じゃあ行ってくるね！」
　ぱっと笑顔になったと思ったら、次の瞬間いなくなっていた。
　美琴がさっき何をつかんだかは佑真にはわからない。
　けれど、一生懸命伝えようとするだろう。
　それを聞いたときの航の顔を想像して、佑真はひとり肩をすくめた。



　甘いものが好きではなかったはずの航が、その日、さっきまで美琴の持っていたチョコレートをそれはそれは大事そうにまた部室の冷蔵庫に入れていたのを佑真は見た。

　美琴の『好き』は、ちゃんと航に伝わったようだ。

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    <dc:date>2010-04-22T00:35:20+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/39.html">
    <title>赤い実白い手緑の葉</title>
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    <description>
      　　赤いリンゴ。
　　リボン。
　　色とりどりのオーナメント。
　　個性的な飾りをまとめるのは、モミの木の葉。
　　本来なら落ち着いた、深い深い緑の葉は、この時期だけはカラフル。
　　街もそれに合わせたように、ここぞとばかりに輝いてる。
　　でもあたしは、この時期は外に出たくない。
　　この、ぎらぎらした感じが、たまらなく嫌い。



&amp;bold(){　　　　　　　　　　&amp;color(red){赤}い実白い手&amp;color(green){緑}の葉}





　イルミネーションでまばゆい中を、少し不機嫌そうに歩く。
　鮎奈は、典型的なアンチクリスマス派だった。
　どうしてもこの浮かれた感じが好きになれない。
　（日本って仏教国じゃなかったっけ？　こんな派手に祝う必要がどこにあんのよ）
　それでも彼女は、クリスマスイブという今日、外を歩いていた。
「鮎、いい加減そんな顔すんなって」
　笑いながらも少し困った顔をして、二歩先を歩いていた裕泰が振り返って言った。
「あたし言ったじゃん、クリスマス嫌いって。映画だってヒロが奢ってくれなきゃ来なかった」
　決して出かけるのが嫌いなわけじゃない。
　その証拠に、コートだってブーツだっておろしたてだ。でもそれは別に裕泰と出かけるからとかではなく、単にお洒落が趣味だからだ。
「まあまあ。で、どっち観る？」
「あたしが誘われたんだからあたしに合わせてくれてもいいと思う」
「オレが奢るんだからオレに合わせてくれてもいいと思う」
　鮎奈のセリフを、裕泰はそっくりそのまま返した。
　どっちもどっち、正論ではあった。
　そう、鮎奈がクリスマス嫌いと知っていながら誘ったのは裕泰だった。
　鮎奈には今つきあっている人もいないし、（悲しいくらい）何とも思われていないので映画くらいならつきあう、と誘いに乗ってくれた。
　実際、普段一緒にいる友達はほとんど恋人がいて、お互い遊んでくれる人がいなかった、ということもある。
　ところが、裕泰が観たかった映画は鮎奈が既に観たものだったので、どちらの意見を採用するかでかなりの時間が経っていた。
「じゃ、コインで決める？」
　裕泰はそう言って100円玉を取り出した。
　軽く放って、パシッと手の甲に落ちた瞬間を隠す。
　鮎奈は少し考えて、
「表」
　と一言言った。
　手をどかすと、コインは裏だった。
「残念、裏でした。じゃあ今日はオレの観たいのに決定ー」
「もー。ホントにおごってね？」
「それはもちろん」
　言いながら二人は雑踏を抜け、映画館に入っていった。


　二回目だった映画は意外と面白くて、その後夕飯を食べに入ったレストランでもその話題で盛り上がった。
　裕泰が失敗したのは、あまり強くないのにどんどんワインを飲む鮎奈を止めなかったことだ。
　気が付けば鮎奈はイカみたいになって、ろれつもまわらなくなりかけていた。


「ほら、鮎。ちゃんと歩けって」
「うるさいなぁヒロはー。ふつーに歩いたってぶつかるんだからどうだっていいじゃん」
「そういう問題じゃないだろ」
　裕泰は酔っ払いの腕を掴んで、一生懸命歩いた。
　（なんでオレばっかりこんな目に……）
　そう思うと腹も立ってくる。周りを見渡せば幸せそうな人で溢れているのに。
「「ホントムカつくぐらいカップルばっか」」
　同時に毒づいていた。
「ヒロもそー思った？」
「こんな酔ったお前の世話させられてたら思うって」
「はははーごめーんねー」
　全然そう思ってなさそうに謝った。
　やっとのことで駅前の広場に辿り着いた。
　ここはひときわイルミネーションが華やかだ。中心には大きなクリスマスツリーがあり、ここから続く通りの街路樹にも電飾が施されていて、この時期は絶好のデートスポットになっている。
　運良く空いているベンチを見つけて二人が腰を下ろすと、ちょうど10時を知らせる鐘が鳴った。
　やはり駅の名物として設置された、レトロな時計から聞こえてくる。
「10時か……」
「この後どうする？」
「んー、どうせどこ行っても今日は混んでるしね。あたしの家で飲み直さない？」
「うわ、まだ飲む気？」
「いいじゃん、せっかくひとりでいなくて済んだんだし」
「やっぱこういう日って、ひとりでいるの嫌なもん？」
「嫌っていうかね。後になって友達に自慢されたりするのがなんか、寂しいし。でも張り合うみたいにこの時期だけ誰かとつきあっても余計虚しいし」
「そりゃそうだよな」
　駅前通りに流れていく人を見ながら、裕泰は返した。
　鮎奈は周りに流されない。強い。
　そういうところがいいと思っている。ちょっと自分では太刀打ちできないかも、とも思う。
　でも今日、言おうと決めた。
「帰るか」
「うん」
　それから電車に乗って、鮎奈のアパートまで戻る。
　途中公園に寄って、またベンチに座ってぼんやり夜空を見た。
「今年は雪、降らなかったねー」
「でも星がすげーなぁ」
「ホワイトクリスマスなら少しはマシだったのに」
「マシって？」
「なんか赤と緑ってきつい組み合わせな気がしない？　雪で白くなればちょっとは和らぐでしょ」
「なるほどなー」
　それきり、会話はなくなった。
　二人でバカみたいに、星空を眺めた。
　（静かなところで、ひっそり祝うならクリスマスも悪くないんだけど）
　鮎奈は何となくそう思っていた。
　クリスマスが嫌いだから、と言えば映画を観に出かけるってことでって言ってくれる。
　雪が降らない、と言えばかわりに星がきれいだ、と言ってくれる。
　裕泰はいつも、鮎奈の気持ちをやわらかくしてくれる。
　つきあっているわけではないし、鮎奈は友達以上に見たことはない。でも、一緒にいてとても気楽で。
　（ヒロは、あたしのことどう思ってるんだろ？）
　星を見たまま、ぼんやりと考えた。
　そんな鮎奈の心を読んだかのように、ふいに裕泰が言った。
「鮎」
「なに」
「キスしても、いい？」
「だめ」
「…………なんで」
「言わないで、態度だけで示そうってのは、ずるくない？」
「言ったら考えてくれる、ってこと？」
「そーいうこと。うちでゆっくり聞かせてもらおっかなー」
　鮎奈は明るく言って立ち上がって歩き出した。
　裕泰も、ため息をついてから後を追う。
「手繋ぐくらいは？」
「ま、そのくらいはね。いいよ」
　はい、と鮎奈が差し出した手を裕泰が取る。
　こんな寒い夜に公園にいたせいで、二人の手は真っ白になっていた。
　少しずつ熱を分け合って、家に帰る。



　　雪がなくても。
　　この白くなった手があれば、クリスマスの景色も和らぐかもしれない。
　　それもまあ、悪くないかもね。

　　――いつか、クリスマス好きになれる日が多分来る。ヒロと一緒なら。

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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/38.html">
    <title>食わず嫌い</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/novels_ukyo/pages/38.html</link>
    <description>
      **食わず嫌い


「ねえ、『歴史学U』出てる人？」
　学食でいつも通り昼食を摂っていた彼は、顔を上げた。
　午後１時。午後の授業が始まって間もないこの時間の学食は、空いていて気に入っていた。
「そう、だけど……」
　食べながらは失礼だと思いつつ、彼は箸を止めずに答えた。
「やっぱり！　割と早い時間から来てるのに寝てるよね」
　にこにこと、彼女は言う。
　誰だっけ、と食べることに一生懸命な脳に動いてもらって記憶を総動員する。
　肩くらいまでの茶髪にピアス、適度なメイク。標準よりは美人な方と言える。そんな知り合いがいただろうか。
　……わからない。
　それは決してこの日替わりランチの炊き込みご飯がおいしいから、じゃない。
「…………ごめん、誰だっけ」
「あはは、そんな一生懸命思い出してくれてたんだー？　でも思い出せないでしょ？　全然気にしなくていいよ、だってあたしと話すの初めてだもん」
　それはつまり、彼女も話すのは初めてということだ。
　初対面なのにタメ口でしかもこの軽い感じ、はとりあえず置いといて、次に訊きたいのは。
「で、何用ですか」
「あたし、同じ歴史学取ってる矢代霞。経済２年。ものは相談なんだけど、ノート貸してもらえないかな？」
「……俺、寝てるって知ってるっしょ？　無謀だって気が付かないもん？」
「だってほとんど１年生だから声かけづらくて」
　学年は学籍番号でわかる。２年には全員無条件で進級しているから、自分の学籍番号から２年だとわかったのだろう。
「むしろ俺が貸して欲しいくらいなんだけど」
「歴史得意なんじゃないの？」
「専攻してて、学部の授業でも取ってるから寝てられんの」
「あ、なるほどー。…………って、じゃああたしのノートは！？」
「俺に言われても」
「ですよねー。ああどうしよ……」
　がっくりとうなだれる霞を見ていたら、何となく貸しを作ってやろうという気になった。
「今までもらったプリント持ってる？」
「うん。一応順番にとってあるけど」
「貸してくれたら、来週のあの時間までに、ノート作ってくるけど」
「ええっ！？」
　あまりにも霞がすっとんきょうな声をあげるから、学食にいた少ない人も思わず振り返った。
　霞は慌てて口をふさぐ。
「そんな大声出さんでも……」
「ご、ごめん……。だってもう10回は授業あったよ？　今から全部作る気？」
「復習になってちょうどいいし。俺今期授業少ないから、昼間は割とヒマだし」
「ホントにいいの？」
「ああ」
「じゃ、じゃあ……お願いします」
　よほど歴史学を落とせないらしく、霞は頭を下げた。
　かと思うと、次の瞬間勢いよく顔を上げて言った。
「その代わりなんかお礼させて！　何でもするよ」
「なんでも？」
「うん！」
「正門の前にある洋食屋、行ったことある？」
「ううん」
「そこのオムライスおごってもらえたらそれでいい」
「そんなおいしいの？」
「俺はあそこのよりうまいヤツ食ったことない」
「そんなにー？　嘘だー」
「嘘だと思うなら来週見てろ。ノートと共に」
　ちょうどそんなふうに軽く宣戦布告すると、ランチを食べ終えた。
「そーだった。よろしくお願いします、菅野耕太くん」
「あれ、名前……」
「だから授業同じなんだってば」
「ああ、そっか」
　耕太は霞が差し出したプリントの束を受け取って、立ち上がった。
「来週、休まないで来いよな」
「はいはい」
　食器を戻して、耕太は学食から出て行く。
　残された霞は、彼の背中に呟いた。
「なーんで、あたしがたまに休んでたこと知ってるわけ？」
　もちろん、答えはわからない。
　（ま、人嫌いってわけじゃなさそうだし、よかったかな――）



　一週間なんて、やることがあったら案外早く過ぎる。
　耕太はどうにか作ったノートを持って、歴史学の教室に行った。
　見渡してみたが、霞はまだ来ていない。
　いつも座っているあたりに座って、今日は寝ないで待つ。
　授業が始まって10分後、誰かが近づいてきた、と思ったら白いラビットファーのついたコートが視界に入った。
「ごめん、遅くなって」
　小声で言って、霞は耕太の前に座った。
「全くだ」
「だからごめんって。……もう出席表まわしちゃった？」
「いや、まだ」
「よかったー。もし間に合わなかったら書いといてもらおうと思ったんだけど、よく考えたらあたし耕太くんの連絡先知らないのよね」
「そういやそうだな」
「ま、それは後で。それより……」
「はいこれ」
　霞の言葉を遮って、ノートを出す。
「わーすごーい。ホントにできてる」
　ぱらぱらとノートをめくりながら、霞が感心する。
「大変だったでしょ？」
「暇だからいーんだって。それよりオムライス忘れんなよ」
「オッケー。今日授業は？」
「これで終わり」
「ナイス。あたしも」
「決まりだな」
　霞は頷いて、前に向き直った。
　話したせいか、眠くなくなってしまったので10回ぶりに真面目に講義を聞いた。



　授業が終わって、二人で店に入った。
「初めて来たけど、家庭的でいい感じ」
「だろ？」
　夫婦らしい二人で切り盛りしている店で、席数はあまり多くない。
　つい長居してしまうのは、霞の言うように家庭的な雰囲気だからだろうか。
　オムライスとサラダを２つずつ注文すると、霞が訊いた。
「よく来るの？」
「バイト代に余裕あるときは割と」
「ふーん。何のバイトしてるの？」
「いろいろ。今んとこ続いてんのは居酒屋とスーパーのレジだけど、他にも単発でやってるから」
「じゃすごい稼いでるんじゃないの？」
「それがそうでもないんだな」
「どーして？」
「俺ちょっと、卒業したらやりたいことあって。そのために金貯めてんだ」
「やりたいこと？　仕事じゃなくて？」
「うん、仕事とは別」
　そこまで答えると、サラダとオムライスができて二人の前に並べられた。
「おいしそーう。いただきまーす」
　霞は急に目を輝かせ、スプーンを握る。
　耕太も食べ始めた。
「おいしいッ！」
「だろー？」
「ホントに耕太くんの言ってたことそのまんまだね！　あたしこんなおいしいオムライス食べたことない！」
　感激して、霞はあっという間に食べてしまった。
　ところが、サラダにはなかなか手をつけようとしない。
「食わないのか？」
　サラダを指して訊くと、霞はちょっと気まずそうな顔をした。
「……笑わない？」
「は？」
「あたし、トマトが食べられないの」
　なるほど、サラダには彩りのためかトマトが一番上に飾りつけてある。
「じゃ、無理にとは言わないけど」
「でもサラダ食べたいし……そうだっ、耕太くん食べて？」
「俺が？」
「うん。トマト嫌い？」
「別に」
「じゃあ食べて！」
　はい、と差し出される。
　耕太はまた強引な、とため息をついて言った。
「食ったことある？」
「ない」
「食ってみたら意外とうまいかもしんないじゃん」
「そのセリフ、そっくりそのまま耕太くんに返す」
「え？」
「いっつも、ひとりでいるじゃない？　授業のときもご飯食べるときも駅で電車待ってるときも。人付き合い苦手なのかなって思ったけど、話してみたら全然そんなことないし。どうしてひとりでいるの？」
「なんでそんな知ってんだよ」
「そんなことどうだっていいでしょ。授業で見かけてから何となく目に付くようになっちゃったんだもん。ねえ、どうして？」
　耕太は思い切って答えた。
「面倒なんだよ、いつも誰かといるのって」
「それだけ？」
「そうだよ。友達多くなったらその分トラブったりするだろ？　そういうのに巻き込まれんの嫌だし、ひとりの方が楽だろ」
「じゃあ、本気で他人と向き合ったことあるの？」
「ない」
「そんなのあたしの食わず嫌いと一緒じゃない。本気でつきあってみたら、そんなに嫌なことばっかりじゃないかもしれないでしょ？」
「それ試すほどの気力、悪いけどない。俺は卒業したら世界中の遺跡飽きるまで見て生活したいんだよ、だから大学来てんだよ」
　霞はそれを聞いて、少し諦めたようにため息をついた。
　食後のコーヒーが運ばれてきて、二人は言葉を交わさないでそれを飲んだ。
　店を出ると、北風が吹きつける。
　しばらく黙ったまま歩いていると、霞がふいに口を開いた。
「ねえ」
「ん？」
「もう一個、交換条件出さない？」
「は？」
「お互い、食わず嫌い直すの。あたしはトマト食べれるようになるから、耕太くんは本気で他人と向き合って」
「スケール違いすぎるだろそれ」
「そうかなあ」
「だいたい、そんな相手だってすぐ見つけられるもんじゃないし」
「あたしがいるじゃない」
　（こいつ、意味わかって言ってんのか？）
　耕太は眉をひそめた。
　なんとなく、そう言うだろうなとも思っていたけれど。
「だって初対面のあたしにノート作ってくれたり、いろいろ話してくれたじゃない。本当は、他人と関わりたいんじゃないの？」
　肯定しかけた自分を、どうにか留めた。
　違う。
　霞にそんなことをしたのは。
「ただの気まぐれだって」
「なにそれー」
　霞が不満そうに頬を膨らます。
　そんな霞を更にからかいながら、冬の道を歩く。


　気まぐれだと、自分に言い訳している自分に気づきながら。

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