おはようセックス@小説まとめ
ざいくぱいぷ
最終更新:
ohayousex
-
view
「もういいよ。もういいよ。」
彼はそう言ってから死んだ。あくまでも平静に、遠くを見て呟いた。それから引鉄を引いて、ぱぁんと音を撒きながら、地に伏せって動かなくなった。
尤もその破裂音がなんだったのかは、私には(少なくとも)分からなかった。
頭が割れた音なのか、頭蓋が拉げた音なのか、首が千切れた音なのか、それとも浪漫ちっくに生命の途絶えた音とか、模範解答はきっと撃鉄の落ちる音だろう。
彼はそう言ってから死んだ。あくまでも平静に、遠くを見て呟いた。それから引鉄を引いて、ぱぁんと音を撒きながら、地に伏せって動かなくなった。
尤もその破裂音がなんだったのかは、私には(少なくとも)分からなかった。
頭が割れた音なのか、頭蓋が拉げた音なのか、首が千切れた音なのか、それとも浪漫ちっくに生命の途絶えた音とか、模範解答はきっと撃鉄の落ちる音だろう。
※※※※※ ばーん。
いずれにせよ私には、それ(にとって)はただの一つの死だった。首が歩いてペナンガランになる可能性も否定はしないが、この人間、彼はとりあえずは死亡して、人間から死体になりました。
彼は何度も言っていた。死ぬ前に何度も言っていた。
私が確認した限りでも一億はくだらない(尤も、言霊とやらの存在を信じたとしても、その呟きはそこいらの芸能人の一挙手一投足の前に脆くも崩れ去ってばらばらになって灰のような粉になって霧消する程度のものではあった)。
私が確認していないところで発したその彼の「もういいよ。」という言葉が、一体何をしようとしていたのかは分からない。
仮に彼が私の確認していないところで(ありえないだろうけど)一兆、一京、その言葉を発していたとしても、世界は何の滞りもなく、非可逆的に回転を続けて彼を時空の果てまで置き去りにしていくのだから。
私に見えるのは彼と、枯れ果てた彼の言葉と、そこいらに散らばっている彼の破片だけである。
よっこらせっとざっくばらんに、彼のそれらを抱えてみる。
こんな彼だが結構重たく、人間という生き物の抱えるものの多さをひしひしと感じてちょびっと憂鬱だ。
彼も、たとえば(別に人間でないならなんでもいいけど)さるとか、ひつじとか、そこらのありさんとかに生まれてこれば、もう少し尊厳を持ちながら死体になれたと思うんだ、私は。
死体を運ぶ趣味は無い。アスファルト?コンクリート?なんでもいいけれど、セメントを流し込んで人間が作ったドウロとか呼ばれるものに載った(まあ広義ではそれは地球とか地面とか大地とかガイアetcetcでもあっただろうが)彼を、別に私はどうこうするつもりは一切なかった。
ただ思ったより私は冷徹だったらしく、せっかく抱えた彼の体を、“ちょっと重かったから”という理由でぼとりと言の葉ごと落とした。
ぐしゃりとかべしゃりだとかいう、言葉にしてみれば愉快そうな音がした。兎角人間というのはひどいものだ。
何故かって、こうやって、こうなってしまうからだ。
生首愛好家の諸兄らなら私の気持ちを把握できるに違いない。言葉にするのはとても難しい。でもそれは己の所為だ。全ては言の葉で表現できるはずだ。人間の作り出した文明が、人間の私に使いこなせなくてどうする。そんなのはただの退化だ。
だから、私が今彼をどうにか形容する言葉を捜して、それでも見つからずにノートの上をうつらうつら奔流する様を、私の国語力の不足と呼ぼう。
彼は何度も言っていた。死ぬ前に何度も言っていた。
私が確認した限りでも一億はくだらない(尤も、言霊とやらの存在を信じたとしても、その呟きはそこいらの芸能人の一挙手一投足の前に脆くも崩れ去ってばらばらになって灰のような粉になって霧消する程度のものではあった)。
私が確認していないところで発したその彼の「もういいよ。」という言葉が、一体何をしようとしていたのかは分からない。
仮に彼が私の確認していないところで(ありえないだろうけど)一兆、一京、その言葉を発していたとしても、世界は何の滞りもなく、非可逆的に回転を続けて彼を時空の果てまで置き去りにしていくのだから。
私に見えるのは彼と、枯れ果てた彼の言葉と、そこいらに散らばっている彼の破片だけである。
よっこらせっとざっくばらんに、彼のそれらを抱えてみる。
こんな彼だが結構重たく、人間という生き物の抱えるものの多さをひしひしと感じてちょびっと憂鬱だ。
彼も、たとえば(別に人間でないならなんでもいいけど)さるとか、ひつじとか、そこらのありさんとかに生まれてこれば、もう少し尊厳を持ちながら死体になれたと思うんだ、私は。
死体を運ぶ趣味は無い。アスファルト?コンクリート?なんでもいいけれど、セメントを流し込んで人間が作ったドウロとか呼ばれるものに載った(まあ広義ではそれは地球とか地面とか大地とかガイアetcetcでもあっただろうが)彼を、別に私はどうこうするつもりは一切なかった。
ただ思ったより私は冷徹だったらしく、せっかく抱えた彼の体を、“ちょっと重かったから”という理由でぼとりと言の葉ごと落とした。
ぐしゃりとかべしゃりだとかいう、言葉にしてみれば愉快そうな音がした。兎角人間というのはひどいものだ。
何故かって、こうやって、こうなってしまうからだ。
生首愛好家の諸兄らなら私の気持ちを把握できるに違いない。言葉にするのはとても難しい。でもそれは己の所為だ。全ては言の葉で表現できるはずだ。人間の作り出した文明が、人間の私に使いこなせなくてどうする。そんなのはただの退化だ。
だから、私が今彼をどうにか形容する言葉を捜して、それでも見つからずにノートの上をうつらうつら奔流する様を、私の国語力の不足と呼ぼう。
さて、彼は死んだ。
繰り返す形になる。彼はぱぁんと音を立てて死んだ。
繰り返す形になる。彼はぱぁんと音を立てて死んだ。
「もういいよ。もういいよ。」
そうやって繰り返す様は何かに似ているような気がした。
さっきは気のせいだと信じ込んだが、盲信していたが、人間に対する不思議なわだかまりから一瞬だけ解き放たれた私は、その瞬間の走馬灯にそのデジャヴュの正体を握った(まあ贋物だと言えばそれまでだが、それはこの世界にある全てがそうであるのだから論理的に考えて頂きたい)。
さっきは気のせいだと信じ込んだが、盲信していたが、人間に対する不思議なわだかまりから一瞬だけ解き放たれた私は、その瞬間の走馬灯にそのデジャヴュの正体を握った(まあ贋物だと言えばそれまでだが、それはこの世界にある全てがそうであるのだから論理的に考えて頂きたい)。
そうだよ、これこれ。
ムカシよくやったよ。
子供の頃さ、ガキの頃さ、パイプオルガンぶっ壊して、折檻されんのイヤでイヤで。
逃げ出したったら逃げ出した、でもあのオバさんはどこまでも俺を追いかけて殺すってんだ。
貴重な文化遺産がどうたら、とても同じ人間とは思えない、思いたくない言の葉を紡ぎながら俺を世界中追い回す姿はある種世界縦断の感動的なマラソンランナーの目指す頂のそれよりもある意味勇敢で、執拗だった。
で、その執念深いオバんから逃げるのがイヤんなっちゃって、俺はどうにかラクになりたくって、もう仕方ないからかくれんぼおしまいっつって、なんちゃってなんちゃって。
それでさ、どっかで聴いたラブソングのチープで半端にえろい歌詞とか思い出したりなんかして、そこから得たこれまた半端な知識振り回して、ズルして近道しようとしちゃって。
ムカシよくやったよ。
子供の頃さ、ガキの頃さ、パイプオルガンぶっ壊して、折檻されんのイヤでイヤで。
逃げ出したったら逃げ出した、でもあのオバさんはどこまでも俺を追いかけて殺すってんだ。
貴重な文化遺産がどうたら、とても同じ人間とは思えない、思いたくない言の葉を紡ぎながら俺を世界中追い回す姿はある種世界縦断の感動的なマラソンランナーの目指す頂のそれよりもある意味勇敢で、執拗だった。
で、その執念深いオバんから逃げるのがイヤんなっちゃって、俺はどうにかラクになりたくって、もう仕方ないからかくれんぼおしまいっつって、なんちゃってなんちゃって。
それでさ、どっかで聴いたラブソングのチープで半端にえろい歌詞とか思い出したりなんかして、そこから得たこれまた半端な知識振り回して、ズルして近道しようとしちゃって。
※※※※※ ばーん。
『もういいよ』
私は彼の砕けた頭の、多分顔面だったであろうと思われる場所の、その中のさらに唇が存在していたであろうと思われる場所に唇を宛がってやった。
どうだ、これで呼吸はできないだろう。苦しいだろう。つらいだろう。
どうだ、これで呼吸はできないだろう。苦しいだろう。つらいだろう。
大ばかやろう。
多分、おそらくきっといつか。
最後の耳の音は、頭が割れた音なのか、頭蓋が拉げた音なのか、首が千切れた音なのか、それとも浪漫ちっくに生命の途絶えた音とか、模範解答はきっと────
ばーん。