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  • 備考 短編,金持ちの少女


だから、叫んだ。

 「何よ!、何でなの?理由を、理由を!言いなさい!!」

大きくはだけた、胸元からは白く歳のわりに豊かな乳房が零れ落ちんばかりに溢れていた。
そして、溢れているのは胸元だけはなかった。

 精一杯の強がり。
 涙は泥を溶かしたはずだった、今纏う高貴の香りは見せかけだと知り、それは知られている
はずだった。
 でも、それでも尚、求めてくれない。

 答えるようにはぐらかすように、男は片口を歪めて、へらへらと笑ってみせた。
 その表情を見て、新たに血を上せて少女は、女に踏み出した少女は声は張り上げた。

 「当然のことではなくって?何故?何故?わたくしを手にしたくはないの?
そうすれば金も名誉も思いのままなのよ!」

 男は一瞬、驚いたような表情を浮かべ、笑い出した。限りなく乾いた笑いだった。

 「嬢ちゃん、よーーーく聞けよ。」

 蒼い月の照らす庭園を貫く道、その向こうで背を向けたままで男は、嘲りと哀れみと哀しみと
それ以外の何かを含んだ声で続けた。
その顔は、擦り切れて疲れた表情だった。

 「意味なんか端ッからねぇんだよ。」

 「………」

 「世界が理不尽でも不条理じゃない、なーんて誰が約束したんだ?
  なぁ、意味なんぞ無いのさ。
  名誉にも金にも俺にもおまえさんにも、な。」

男は背を向けると、門へと向った。

そうして乾いた風の中、蒼い月光の中遠ざかる影を見送った後、少女は泣いた。




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最終更新:2008年02月14日 00:39