- スレッド_レス番号 01_748
- 作者
- 備考 短編,甘々トーク1
「よく考えたらズルくない?」
唐突な美里の発言に、恭介は、ん? と首を傾げて話の先を促した。
休日の夕方、恭介の部屋で二人まったり過ごしていたときのことである。
奔放なタチの美里が脈絡なく思考を口にするのはいつものことだ。
美里曰く、『ポニーみたいにおっとりしている』恭介としては、その美里の
おしゃべりに一言二言相槌を挟みながら過ごす時間は大概微笑ましく、
幸福なものだった。
が。
今回はちょっと、勝手が違った。
「正常位ってあるじゃない」
「ん? うん」
「で、後背位ってのもあるでしょ」
「……うん」
なんですか夜の不満ですか。
恭介は心の中でちょっぴり焦った。
最近手抜きしたっけ、と思わず記憶を探ってしまう。
そんな恭介に、美里は大真面目に訴えた。
「つまり、恭介は前からもバックからもできるのに、あたしは後ろから
できないわけでしょ。ズルい」
「…………あー、そう?」
一瞬、返答に困った恭介である。
しかし、美里は大きく頷いた。
「そうよ。……もちろん、男女における体の構造上難しいってのはわかるんだけど。
とゆーわけで恭介、なんとか公平を期せないか、今から実験してみない?」
「……何故そんなところで公平にする必要が?」
「えー。だって背中とられっぱなしって悔しいじゃない、なんとなく」
ぷうぷうと文句を言う美里は、これで理系研究所に籍を置く才女だ。
普段ほとんど隙のない彼女が、恭介の前ではこんな姿を見せること自体は
『かわいいなぁ』とほのぼのする恭介なのだが。
恭介は試しにバックからされる自分を想像してみた。
……さすがにそれはちょっと、勘弁してほしかった。
恭介はしばらく考えて、首をひねる。
「美里は、バック嫌い?」
「んん? 別に嫌いじゃないんだけど」
「なら、美里が後ろから僕を抱けないように、僕も後ろから美里に抱いて
もらえないんだから、不公平度はさしひきゼロだと思う」
「……ん?」
美里は首を傾げた。
「えーと、あれ? そ、そうかな?」
「うん」
「……そっか。じゃあいいや。実際動きにくそうだし」
「うん」
頭いいはずなのにあっさり詭弁に騙される美里は、やっぱりかわいい、と恭介は思う。
二人は、今日も幸せである。
終わり
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最終更新:2008年02月14日 00:43