- スレッド_レス番号 02_111
- 作者 319 ◆lHiWUhvoBo
- 備考 短編,小隊長シリーズその2 課長編
「課長、余り根を詰めると毒ですよ」
煩(うるさ)い。昭和30年代風の厳(いか)つい良い漢(おとこ)め。昨日は二次会に誘ったら『ああ、僕は全く飲まない
主義なんです』って逃げたくせに。一杯のんで真っ赤って、それ何処のネィティヴアメリケンなのキミ? 元自衛官って
イケる口なんじゃなかったの? もう! そんな真剣な目で見詰めないでったらぁん……深みのあるバリトンの声と
そのオトコ臭さの相乗効果でもう……やだ……濡れてる……。どうして来てくれなかったかなぁ、二人きりになれたのに。
「課長、ココアでもいかがです? 」
……どーして役職でしか呼んでくれないかなこの堅物はっ! って元軍人だもんね。昔風に言えば。でもブログなんて
読むと自の人ってちゃらんぽらんだって言って……周囲の人ときっと合わなかったんだろうな、うん。彼、融通効くけど
自分の決めた道だけは邪魔させないっ! って人だから。……キミの御蔭で残業してるんだよ? ワタシは? ねえ?
キックバックとかリベート無しだと、価格で勝負するしかないんだよ? それも単価で? …質は落とせないんだから。
「…今度の事は僕の我儘で済みません」
「本当に悪いと思ってる? 先様の前でしょーじきに『ウチのこの品質のモノを買い叩いて、あそこは定価で? 』って
言っちゃって。ねえ……? キミも知ってる筈でしょう? 先様の担当者が、あそこの社長の息子なのは? 」
「ええ、課長よりお聞きして居ました。あの発言は担当の上司に聞こえるようにとの自分の独断です」
「で、その人に価格表のシート持って来てくれって言われて? 最新のモノ頼むって言われて? で、キミの分は? 」
「僕の分はとっくに出来ました。ですから何か手伝える事は無いか、と」
「見せて」
スッと彼が視界から消えたと思うと、音も無く私の背後に移動していた。そして私の右手のマウスに自分の大きな手を
重ね、デスクトップのフォルダをクリックする。……中学生の時の様に私の胸の高鳴りが止まない。彼の手は冷たかった。
きっと心の中は物凄く熱いのだろう。こんなにも綺麗な柔らかい手で、テッポウなんてものを撃っていたのかな、キミは?
「僕は1730に課長に内容のチェックをお願いした心算なのですが、お耳に入らなかったようですね」
「ヒトナナサンマルはまあイイとして、その『僕』ってのは、もう少し何とかならないかな? キミ? 」
「はあ…いけませんか? 」
「正直に言うと気持ち悪いの。もう私の前では『俺』でいいから」
この困った顔! あ~! もう、そそる! なよっちいのが困るのは絵にならないけど、大のオトコが困る様がイイの!
ん~と、今は……2330。残ってるのはワタシとキミだけなんだよ、ね……。さってっとっ、こんなOAグラスは外してっ、
机に置いて、その帰りにマウスを持つワタシの手に置いたキミの手に重ねてっと。ぐフフぅ……さあ、ほら見なさいな!
25~30までの食べ頃の、仕事のデキル女が放つ、余す所無き魅力をっ! 振り向いて、楚々と弱々しげにがコツ!
「…課長? 」
「今度こそ、逃げないよね? キミ? 」
「敵には後を見せませんが、俺は味方を襲わない主義です。……仕事を早く終わらせましょう、香澄さん」
もう……。この……鋼鉄(くろがね)の城ぉ……。そんな事を言うんだったらワタシ…・・・敵に…なっちゃうんだからね…?
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最終更新:2008年02月16日 09:44