- スレッド_レス番号 01_038
- 作者
- 備考 短編,アッサムティー
「涼子さん、あなたが好きなアッサムティーです。
初めてのデートのとき入ったお店で買ってきました。
・・・そんな顔しないで下さい。まだ、ちゃんと覚えていますよ。」
「・・・おいしい・・」
「・・・そう、よかった。生まれて初めてポットで紅茶を入れてみました。」
彼女は俯いて肩を震わせた。涙の滴がテーブルに落ちる。
「・・・晶文さん・・私・・」
彼女は立ち上がるとベッドに座った僕に覆いかぶさってきた。
「だめですよ。涼子さん。」
僕は優しく彼女を押しのける。
「どうして・・・」
「僕は、もうすぐいなくなりますから。」
「・・・そんなこと、わかってる。」
「いや、わかってませんよ。僕は明日から病院です。
次第に記憶を失い、そして死ぬ。」
彼女は耳を塞ぎ首を振る。
「いやっ、そんなの」
「いなくなった僕が、あなたの心の中に生き続ける・・・
それが辛いんです。わかって下さい。」
彼女は泣きながら僕の部屋を飛び出していった。
僕は彼女のカップに残ったアッサムティーを飲み干した。
今日のことを、この味をあとどれだけ覚えていられるだろうか。
バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は?
お手数ですが、メールでお問い合わせください。
最終更新:2008年02月14日 00:15