• スレッド_レス番号 01_139
  • 作者
  • 備考 短編,姫


「私を抱かないのか?」
「強がるなよ。こんなに震えているくせに」
「くっ……! ふ、触れるな」
「やれやれ。誘ってきたり、それでいて触れるなと言ったり、我が侭な姫様だ」
「私はもう姫などではない。この城も、城の人間も全てお前の物となった。
お前が占領したのだ。好きにしろ」
「そうは言われてもねえ。確かにお前は美しいが、俺は俺を愛してもいない女を抱くほど飢えとらん」
「………」
「俺はお前の親の仇だ。俺が憎くはないか?」
「……憎くないと言えば嘘になる」
「だろう? そんな女とわざわざ一夜を共にする変態倒錯な趣味も、勇気もねえよ。
寝台の中で短剣をつきつけられるのもかなわん。別にお前でなくても、俺に惚れてる女はいくらでもいる。」
「……そうか。なら、私はどうすればいい?」
「この城で今まで通り暮らせ。俺は構わん」
「わかった。えっと……その……ありがとう」
「礼など不要だ。では、俺は雑用を片付けに行く。さらばだ、姫。服はきちんと着ておけよ」
「あ、ああ……。それではな」
(手を出さないでいてくれたり、命を助けてくれたから礼を言ったのではないのだが……
「美しい」と言われて私がこんなに嬉しく思ったことなど……あいつは気付かないのだろうな……)




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最終更新:2008年02月14日 00:18