- スレッド_レス番号 01_375
- 作者
- 備考 短編,亡き恋人の妹
「…また、来たのか」
「当たり前ですよ、一応そんなのでも私の叔父にあたるわけですし」
少女は買ってきた食材を広げながら、男の方を見る。
「ヒゲ剃ったらどうですか、いい加減伸びっぱなしじゃ天国の姉さんに嫌われちゃいますよ?」
「…ほっといてくれ」
そういうと少女は、今夜はカレーですからと言い、キッチンに向かう。
少女が料理を作る間、会話はなかった。
男は思い立った様に立ち上がり鏡を見る。
さすがに自分でも気になったのか何日振りかも分からない髭剃りをした。
剃り終わると力なく仏壇の前に座りこみ呟く。
「美雪…」
その名前は男の心に重く響いた。
少女は作ったカレーを机に置き、放心したような男を見て複雑な表情をした。
「カレーできました、だから一緒に食べましょう」
必死に出したその言葉は、男には届かなかった。
少女は近付き、男の腕を掴み引っ張ろうとする。
が、掴んだ腕は払われ少女は尻餅をつく。
「なぁ、どうやったら美雪帰ってくるかな?」
男はさっきの行動を気にも止めない様子で少女に聞く。
「姉さんは…帰ってきません。……姉さんは死にました。」
「…美雪は死んでない」
「…死にました」
「死んでない」
「死にました、アナタといっしょに姉さんの最後をみま――」
少女が言葉を言い切る前に男は、少女を押し倒した。「きゃ!?」
「なんでだよ、何で死んじまったんだ…!?」
倒され、支離滅裂な言葉を投げ掛けられても少女は男を見離さず、ただ男の質問に答える。
「よく、わかりません。なんとかなんとか病って長い名前の病気で死にました」
周りが気付いた時には末期だった、男の必死な看病も効かず、今となってはその看病も男を苦しめる要因にしかならない。
少女の言う真実の言葉に男は、ごめんと言い残しまた力なく座りこんだ。
「私じゃ…ダメですか…?」
しばらくの沈黙の後、思い切ったように少女は口を開く。
「私じゃ…姉さんの代わりは無理ですか?
私じゃ!…アナタの心の傷を癒すことはできませんか?」
早口で、かつ鮮明に少女は男に想いをぶつける。
「同情なら、いらない」
しかし、男は悲観にしかその言葉を捕らえることができなかった。
「同情じゃありません、好きなんです。アナタのことが…ずっと、ずっと前から!」
「……」
「なんとか言ってくださいよ…」
「……ガキじゃ無理だ」
しばし間を起き、少女の平手が男の頬に当たる。
「アンタ…!バカじゃないんですか!?っ断るにしても、もっとマシないいかた出来ないんですか!?」
「はは、バカだから」
「もう、帰ります」
少女は立ち上がり、玄関に迎う。
「…おい」
「……なんですか?」
「少し、楽になった」
「……」
「ありがとな」
「感謝なんてされたくありません」
そう言い放ち、少女は玄関を開け
「あしたも、来ます」
そう言い放ち消えた。
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最終更新:2008年02月14日 00:31