&br() 「絵里ー、遊びに来たよー」 そう言うなりランドセルを放り投げて私が寝ているベッドの横の椅子に座る 「今日ね、学校で先生がね」 そしていつもの様に今日一日学校であった事を話してくれる こらっ、さゆみちゃん!ランドセル投げちゃダメでしょ!と看護婦さんに怒られるのもいつものこと 「どうしてさゆみの力で絵里の心臓も治せないんだろうね」 そう言って申し訳なさそうな顔をして、私の心臓のある辺りに手を翳す 彼女の治癒能力を以ってしても、私が生まれ持った心臓病を治す事はできないのだ 「ねぇ絵里、じゃあ絵里の力でその心臓病さゆみにもちょうだい」 「私の力でもそれは無理だよ、それにそんな事したらさゆも入院しちゃうよ」 「いいの、だってそしたらずっと絵里と一緒にいられるじゃん」 そう言った彼女の瞳は黒く、吸い込まれそうに純粋で、私は泣き出してしまった 病室のベッドの上で、私はなぜかそんな昔の事を思い出していた きっとあの時と同じように、窓から見える桜が乱れ散る季節だからだろう そんな風に追憶に耽っていると病室のドアが勢いよく開いた 「絵里ー、遊びに来たよー」 そう言うなりバッグを放り投げて私が寝ているベッドの横の椅子に座る あの頃とちっとも変わらない 変わったのは身長とランドセルがブランドバッグになった事くらいだ なんだかおかしくて、込み上げてくる笑いを噛み殺しながら 私は親友と、今日もこうして生きていた ---- ---- ----