(08)323 『the revenger 前編』

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&br() その光景を見て、藤本美貴はほくそ笑んだ。 やはり彼女たちは、この“海上の監獄”に乗り込んできた。 それも、「新垣里沙を奪還する」などという馬鹿げた目的で。 あれは裏切り者だ。薄汚いマインドコントローラーだ。 にもかかわらず、彼女たちは里沙を救出すべく、その生命を賭して戦っていた。 これを馬鹿げていると言わずして、なんと言えよう。 たしかに、モニターに映る彼女たちは、快進撃をつづけているように見える。 組織の手の者を相手に、それぞれの能力を遺憾なく発揮し、縦横無尽に暴れまわっている。 しかし、その勢いが最後までつづかないことを、藤本は確信していた。 もっとも、彼女たちを迎え撃つのは藤本の役目ではない。 それはあの女の役目だ。 藤本の役目は、あの女の迎撃作戦を監視することだった。 しかし、あの女の作戦には穴がある。 それは、彼女たちを「個」として捉えていることだ。 たしかに、一人ひとりの能力に対する対策は万全だが、彼女たちが結束して 能力を発揮したときのことにまで考えが及んでいない。 また、里沙がどう動くかもわからない。 拘束下にあるとはいえ、相手が能力者である以上、不測の事態は充分に起こりうる。 不確定要素は常にあるのだ。 あの女の慢心が、虚栄心が、それを見ようともしない。 殺されてしまえばいいのだ。 彼女たちがあの女を殺し、自分が彼女たちを始末する。 それこそが、藤本が思い描く最良のシナリオだった。 突然、モニターの中で大きな爆発が起こった。 彼女たちの中の自然発火能力者が、仲間と協力してなにかしたのだろう。 あの女の慌てふためく姿を想像して、藤本はにやりと笑った。 「ハデにやってるなぁ、あいつら」 不意に、後ろから声をかけられた。 聞き覚えのある声。 その声の主は、ここにいるはずのない人物だった。 不確定要素が、ここにも舞い込んできた。 皮肉に歪む笑みを抑え、藤本は振り返った。 吉澤ひとみ。 かつて藤本がその手で葬り去り、組織の手によって蘇生された女。 「なにしに来たの?」 その長身を見上げながら、藤本は見下したように冷たく言い放った。 藤本の態度も意に介さず、吉澤が問い返す。 「お前のほうこそ、なに企んでるんだ?」 「企む?命令どおり監視してるだけじゃん」 「おおかた、石川とやり合って疲弊したあいつらを、まとめて潰そうってハラだろ?」 「“当たらずとも遠からず”ってやつ?」 「残念だけど、そりゃ無理だ。お前はもうすぐ死ぬ」 藤本は、吉澤の死の宣告が、とくに意外なこととは思わなかった。 一応は組織に身を置きながら、吉澤の中で彼女たちへの想いが消え難く残っているのは 明白だったからだ。 「ふ~ん、やっぱりあいつらに付くんだ」 「さあね。これは私の個人的な行動だ。あいつらと示し合わせたわけじゃない」 「個人的な恨みを晴らそうってわけ?」 「わかってるなら、話は早い」 吉澤の言葉に、藤本は冷笑を浮かべた。 組織において重きをなす自分への復讐。 それは、組織に対する反逆にほかならない。 「そんなことして許されると思ってんの?」 「“上”の許可はもう取ってある」 藤本の顔にはじめて動揺が走った。 「なに言ってんの?そんなこと、ありえるわけないじゃん」 「ありえちゃったんだな、これが」 おどけるように言う吉澤だったが、その眼が鋭さを帯びてくる。 「異端の魔女は、磔に処されるのが歴史の定めだろ?」 吉澤の両手に光の粒子があふれだし、なにかの輪郭をすばやく形作っていく。 アポーツ――物質転移。 光がほどけると、その両手に二挺のサブマシンガンが出現した。 「魔女狩りの時間だ」 ---- ---- ----

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