(02)199 『The Omen of War ―激戦の予兆―』

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&br() 午後十時。郊外の駅には時刻表の合間という事もあり、人影は殆ど見えなかった。 光井はそんな中、携帯電話を弄くりながら立っている。 「あかんなあ。図書館寄ったらエライ遅くなってしもた。」 光井は誰に言うとも無く一人呟く。 「高橋さん、心配しとるやろなあ・・・一応メールだけは入れといたけど。」 二度目の呟きをもらした後、光井は何とはなしにホームを見渡す。 ホームには電車を待っているサラリーマンらしき男が一人、OL風の女が一人いるだけだ。 次の電車が来るまでは20分近くある。 光井は立ち上がると、自動販売機に向かう。 きっかり150円入れてお茶のボタンを押す。 ガコン。機械的な音と共にペットボトルが落下してくる。 光井はそれを拾おうとしゃがんだ瞬間、 ――――――!!!!―――――― 脳内にイメージが浮かぶ。 落下する蛍光灯 血まみれのサラリーマン 駆けつける駅員 光井の能力(予知)ではこういう事故も時々ではあるが感知する。 (このままやったら大惨事や・・・そしたら・・・) 光井はサラリーマンのほうを向くと、買ったばかりのお茶を転がす。 「スイマセ~ン。取ってもらえます?」 サラリーマンに声を掛け、意識を自分側に向けさせた。 足元に何かぶつかる感触を覚えたその男は、光井の方を向き、ペットボトルを掲げる。 「ゴメンなさい。うっかりして・・・」 光井は男にそう声を掛けると、男に手を振った。 男は光井の方に走り、ペットボトルを渡す。 (これでこの人は助かるはずや・・・無精者と思われるやろけど、まあええか。) それは光井が能力のせいで迫害されつつも「助けたい」と思う心から生まれた処世術でもあった。 5分後。 ホームにはあいかわらず3人しか居ない。 その場の空気も、何もかもが5分前と変わらなかった。 (おかしいなあ・・・蛍光灯落ちてくるはずなんやけど・・・) 光井は自分のイメージが実現しない事に違和感を抱いていた。 今まで、自分が見たイメージは全て実現していた。 光井の行動によって結果的に惨事を免れた事もあるが、事態そのものが起きないというのは初めてだ。 (まあ、あそこにおったら安全やし大丈夫やろ。) 光井は不安を取り払いつつ、前向きに考えるようにした。 「すごいねー!」 突如掛けられた声に光井はそれが自分に掛けられたものだと理解するのに数秒を要した。 気がつくとホームに居たOLが自分の目の前に立っていた。 「いやー!すごいよ!」 「何がですか?」 「だってさ、あの男死ぬの分かったんでしょ!?」 「!」 「お、その顔は図星って顔だね。」 「・・・」 「組織の報告はやっぱ信用できるね!」 光井の顔が青ざめる。 敵だ!あのサラリーマンを殺そうとしたのはこの女だったんだ! 光井の体は、頭が事態を把握すると同時に立ち上がっていた。 見れば女の方はそう大きくない。いや、寧ろ小さい方か。 「リゾナントパープルってのがどれ位のものか、オイラさあ、チョット興味あったんだけどね~!」 相手の女は喋り続けた。場に似つかわしくない陽気さで。 「まあ、いいや。能力は確認できたし。」 次の瞬間、光井が座っていたベンチは爆発音と共に消え去った。 「殺しちゃおうか。」 「あれ?リーダー?みっつぃーは?」 喫茶「リゾナント」閉店後。店内には腹ごしらえをしようと他のメンバーが集まっていた。 「図書館寄ってくるから遅くなるってさ。試験が近いんだって。」 「やっぱり愛佳は偉いっちゃね~。誰かさんと同学年とは思えんけん。」 「誰かさんて誰ですか!」 久住が口の中にグラタンを頬張りながら田中を睨む。 「その顔は分かってるんじゃないの~?」 「ムキー!小春だって勉強します!」 「小春、ご飯食べながら口空けない。汚いよ。」 新垣の注意と同時に道重が時計に目をやる。 「それにしては遅いと思うの。」 「そういえばさ、ウチらって誰かがピンチになった時って、いつも愛佳に教えてもらうやん。」 田中がふと不安そうな声を上げる。 メンバーがそれぞれ単独行動時に何かハプニングがあったとしても、 光井の予知能力によって窮地に陥る前に救援に駆けつける事ができた。 「愛佳自身が単独で襲われたらヤバイんやなかと?」 「・・・」 全員の沈黙。 それが数秒続いた後、高橋が急いで立ち上がる。 「誰か一緒に来て!」 「すご~い!こんだけ攻撃して無傷ってすごいよ!」 この女が「すごい」を言うのはもう何度目だろうか。 OL風の女・・・いや、ダークネスの手先は手放しでほめる。但しその言い方にはどこか優越感が感じられる。 まるで、自分は絶対不利な状況にならない、とも言わんばかりに。 「んじゃ、もういっちょ。」 女からエネルギー弾が放たれる。その弾は真っ直ぐ光井に向かってくる。 ――――――右!―――――― とっさに光井は体を右に逸らす。 気弾は光井の左頬をかすめ、後ろの自動販売機に直撃する。 時刻に相応しくない爆音が背後で聞こえる。 「すごいねえ!オイラがどんなに攻撃しても全部読まれちゃうんだもん!」 「愛佳の能力を甘く見んといてや!」 田中やジュンジュン、リンリンの様な戦闘能力の無い光井はその能力を生かして、戦闘では回避に回ることが多い。 相手の次の攻撃イメージが見えるのだ。 それが分かれば回避も難しくは無い。 ただ、回避だけでは限界がある。 事実、光井の右頬や左足首には回避しきれず着弾の後が残っている。 「でもさ~。オイラ達もある程度能力はあるんだよね~。」 女は再度エネルギー弾を掲げると光井に放り投げるように放った。 (この弾は・・・) (・・・!!!) (イメージが湧かない!?) (予知が・・・出来ない!) 事態の理解よりも前に、光井はあばらに衝撃を感じた。 「・・・ッツ~~~~!!」 「そろそろ効いてきたかな。光井さん、予知できないでしょ?」 女は半笑いを浮かべて光井の方を向く。 (何でや・・・一切のイメージが浮かばんかった・・・ありえへん・・・) 「イメージが浮かばないのは当然。」 女は心を見透かしたように話す。 「今はアナタの能力が一切使えないからね~」 「使えない・・・」 「そ。オイラの能力がこれ。『他人の能力の阻害』」 (能力を・・・封じられた・・・) 光井は愕然とした。唯一の武器である予知能力。それを封じられたら、ただの人間と変わりなくなってしまう。 ダークネスと対峙している今の状況では絶望的だ。 勝つ事はおろか、逃げる事もできない。 「じゃあ、フィナーレと参りましょう!」 光井はすでにボロボロの状況だった。 赤いネクタイは既に結び目を残すのみとなり、セーターもあちこちが破けている。 「キャハハハ!もうダメだよね~!あきらめなよ!」 ダークネスの女は嬉しそうに光井を見下す。 光井は足を引きずりながら、少しずつ距離を開けていく。 相手には背を向けているだけに向こうとしては格好の的だ。 「あれ?逃げるの?リゾナントパープルともあろう人が。いやいやいや、有り得ないから!」 女の優越感たっぷりの声を背に、光井は少しずつ距離を離す。 「みっともないよ~!潔く死んじゃえって!」 声と同時に女がエネルギー弾を放つ。 それは正確に光井の背中に命中する。 「~~~ッツ~~~!!!」 肉の焦げる嫌な臭いが光井の鼻をつく。 声にならない声を上げながら光井はそれでも後ずさる。 (もう少しや・・・あと少しだけ頑張るんや・・・) いくばくかの距離を動いた後、光井は振り返った。 「アタシはもうコレまでや・・・どうせなら一思いに殺せ!」 ダークネスの女は多少ながら驚愕の表情を浮かべたが、それはすぐに勝ち誇った表情に変わった。 「ついに諦めた?まあその方が良いよね。いや~、オイラもココまで粘ると思わなかったんだけどね~。ホントすごいよ。」 何十回目かの「すごい」を聞きながら、光井は片膝を付いた。 「オイラもリゾンナンターの一員を殺したとなれば昇格だな~。ダークネスオリメンとして認めてもらえるかも!」 (なんやねん・・・オリメンとか・・・) ダークネスの女は既に巨大なエネルギー弾を掲げている。 これまでに見た事の無いような巨大な弾だ。 食らえば光井も一たまりもないだろう。 「じゃあね!」 女が気弾を投げる瞬間 ガシャーン! 誰もが予想している結果と異なる音と共に蛍光灯がダークネスの上から降ってきた。 その蛍光灯は寸分違わず、女の胸を貫いていた。 「・・・なん・・・で・・・」 女は口から血を吐きながら今までに無い苦悶の表情を見せる。光井は息を切らしながら答える。 「アタシの・・・勝ちやな・・・」 「たまたま・・・蛍光灯・・・が・・・落ち・・・たか・・ら」 「偶然とは違う・・・あのサラリーマンの蛍光灯が落ちるイメージは消えへんかったからな。」 「予・・・知能・・・力・・・消えてた・・・はず・・・何で・・・覚えて・・・いら・・・れる」 「愛佳の記憶力を甘く見んといてや!」 光井は唇に笑みを浮かべながら言い放った。 そこで光井の記憶は途切れる。 目が覚めるとベットの上だった。 場所は見慣れた喫茶「リゾナント」の部屋。 目を開けると、いつものメンバーが自分の顔を覗き込んでいる。 「目、覚めた!」 「良かった~。」 「なかなか目ぇ覚まさんけん、心配したっちゃよ。」 光井は上半身を持ち上げる。まだ体に痛みが残る。 それが昨晩の戦闘の激しさを語っていた。 「駅着いたらさ~みっつぃーが一人で倒れてるんだもん。」 「心配したの。」 光井は高橋の淹れてくれたコーヒーを飲みながら一息ついて口をあけた。 「倒れてたのはアタシだけですか?」 相手は死んだと思ってた。いや、生きていられるはずが無い。 「うん・・・みっつぃーだけ・・・」 高橋はばつの悪そうに答える。 「そうですか・・・」 光井は俯いたままだ。それは他のメンバーにも相手が逃げきった事を知らせる十分な情報源だった。 部屋の中に嫌な緊張感が走る。 次は自分が狙われるかもしれない・・・ どんなヤツが来るんだろう・・・ ――――戦士たちに休息は無い―――― ---- ---- ----
&br() 午後十時。郊外の駅には時刻表の合間という事もあり、人影は殆ど見えなかった。 光井はそんな中、携帯電話を弄くりながら立っている。 「あかんなあ。図書館寄ったらエライ遅くなってしもた。」 光井は誰に言うとも無く一人呟く。 「高橋さん、心配しとるやろなあ・・・一応メールだけは入れといたけど。」 二度目の呟きをもらした後、光井は何とはなしにホームを見渡す。 ホームには電車を待っているサラリーマンらしき男が一人、OL風の女が一人いるだけだ。 次の電車が来るまでは20分近くある。 光井は立ち上がると、自動販売機に向かう。 きっかり150円入れてお茶のボタンを押す。 ガコン。機械的な音と共にペットボトルが落下してくる。 光井はそれを拾おうとしゃがんだ瞬間、 ――――――!!!!―――――― 脳内にイメージが浮かぶ。 落下する蛍光灯 血まみれのサラリーマン 駆けつける駅員 光井の能力(予知)ではこういう事故も時々ではあるが感知する。 (このままやったら大惨事や・・・そしたら・・・) 光井はサラリーマンのほうを向くと、買ったばかりのお茶を転がす。 「スイマセ~ン。取ってもらえます?」 サラリーマンに声を掛け、意識を自分側に向けさせた。 足元に何かぶつかる感触を覚えたその男は、光井の方を向き、ペットボトルを掲げる。 「ゴメンなさい。うっかりして・・・」 光井は男にそう声を掛けると、男に手を振った。 男は光井の方に走り、ペットボトルを渡す。 (これでこの人は助かるはずや・・・無精者と思われるやろけど、まあええか。) それは光井が能力のせいで迫害されつつも「助けたい」と思う心から生まれた処世術でもあった。 5分後。 ホームにはあいかわらず3人しか居ない。 その場の空気も、何もかもが5分前と変わらなかった。 (おかしいなあ・・・蛍光灯落ちてくるはずなんやけど・・・) 光井は自分のイメージが実現しない事に違和感を抱いていた。 今まで、自分が見たイメージは全て実現していた。 光井の行動によって結果的に惨事を免れた事もあるが、事態そのものが起きないというのは初めてだ。 (まあ、あそこにおったら安全やし大丈夫やろ。) 光井は不安を取り払いつつ、前向きに考えるようにした。 「すごいねー!」 突如掛けられた声に光井はそれが自分に掛けられたものだと理解するのに数秒を要した。 気がつくとホームに居たOLが自分の目の前に立っていた。 「いやー!すごいよ!」 「何がですか?」 「だってさ、あの男死ぬの分かったんでしょ!?」 「!」 「お、その顔は図星って顔だね。」 「・・・」 「組織の報告はやっぱ信用できるね!」 光井の顔が青ざめる。 敵だ!あのサラリーマンを殺そうとしたのはこの女だったんだ! 光井の体は、頭が事態を把握すると同時に立ち上がっていた。 見れば女の方はそう大きくない。いや、寧ろ小さい方か。 「リゾナントパープルってのがどれ位のものか、オイラさあ、チョット興味あったんだけどね~!」 相手の女は喋り続けた。場に似つかわしくない陽気さで。 「まあ、いいや。能力は確認できたし。」 次の瞬間、光井が座っていたベンチは爆発音と共に消え去った。 「殺しちゃおうか。」 「あれ?リーダー?みっつぃーは?」 喫茶「リゾナント」閉店後。店内には腹ごしらえをしようと他のメンバーが集まっていた。 「図書館寄ってくるから遅くなるってさ。試験が近いんだって。」 「やっぱり愛佳は偉いっちゃね~。誰かさんと同学年とは思えんけん。」 「誰かさんて誰ですか!」 久住が口の中にグラタンを頬張りながら田中を睨む。 「その顔は分かってるんじゃないの~?」 「ムキー!小春だって勉強します!」 「小春、ご飯食べながら口空けない。汚いよ。」 新垣の注意と同時に道重が時計に目をやる。 「それにしては遅いと思うの。」 「そういえばさ、ウチらって誰かがピンチになった時って、いつも愛佳に教えてもらうやん。」 田中がふと不安そうな声を上げる。 メンバーがそれぞれ単独行動時に何かハプニングがあったとしても、 光井の予知能力によって窮地に陥る前に救援に駆けつける事ができた。 「愛佳自身が単独で襲われたらヤバイんやなかと?」 「・・・」 全員の沈黙。 それが数秒続いた後、高橋が急いで立ち上がる。 「誰か一緒に来て!」 「すご~い!こんだけ攻撃して無傷ってすごいよ!」 この女が「すごい」を言うのはもう何度目だろうか。 OL風の女・・・いや、ダークネスの手先は手放しでほめる。但しその言い方にはどこか優越感が感じられる。 まるで、自分は絶対不利な状況にならない、とも言わんばかりに。 「んじゃ、もういっちょ。」 女からエネルギー弾が放たれる。その弾は真っ直ぐ光井に向かってくる。 ――――――右!―――――― とっさに光井は体を右に逸らす。 気弾は光井の左頬をかすめ、後ろの自動販売機に直撃する。 時刻に相応しくない爆音が背後で聞こえる。 「すごいねえ!オイラがどんなに攻撃しても全部読まれちゃうんだもん!」 「愛佳の能力を甘く見んといてや!」 田中やジュンジュン、リンリンの様な戦闘能力の無い光井はその能力を生かして、戦闘では回避に回ることが多い。 相手の次の攻撃イメージが見えるのだ。 それが分かれば回避も難しくは無い。 ただ、回避だけでは限界がある。 事実、光井の右頬や左足首には回避しきれず着弾の後が残っている。 「でもさ~。オイラ達もある程度能力はあるんだよね~。」 女は再度エネルギー弾を掲げると光井に放り投げるように放った。 (この弾は・・・) (・・・!!!) (イメージが湧かない!?) (予知が・・・出来ない!) 事態の理解よりも前に、光井はあばらに衝撃を感じた。 「・・・ッツ~~~~!!」 「そろそろ効いてきたかな。光井さん、予知できないでしょ?」 女は半笑いを浮かべて光井の方を向く。 (何でや・・・一切のイメージが浮かばんかった・・・ありえへん・・・) 「イメージが浮かばないのは当然。」 女は心を見透かしたように話す。 「今はアナタの能力が一切使えないからね~」 「使えない・・・」 「そ。オイラの能力がこれ。『他人の能力の阻害』」 (能力を・・・封じられた・・・) 光井は愕然とした。唯一の武器である予知能力。それを封じられたら、ただの人間と変わりなくなってしまう。 ダークネスと対峙している今の状況では絶望的だ。 勝つ事はおろか、逃げる事もできない。 「じゃあ、フィナーレと参りましょう!」 光井はすでにボロボロの状況だった。 赤いネクタイは既に結び目を残すのみとなり、セーターもあちこちが破けている。 「キャハハハ!もうダメだよね~!あきらめなよ!」 ダークネスの女は嬉しそうに光井を見下す。 光井は足を引きずりながら、少しずつ距離を開けていく。 相手には背を向けているだけに向こうとしては格好の的だ。 「あれ?逃げるの?リゾナントパープルともあろう人が。いやいやいや、有り得ないから!」 女の優越感たっぷりの声を背に、光井は少しずつ距離を離す。 「みっともないよ~!潔く死んじゃえって!」 声と同時に女がエネルギー弾を放つ。 それは正確に光井の背中に命中する。 「~~~ッツ~~~!!!」 肉の焦げる嫌な臭いが光井の鼻をつく。 声にならない声を上げながら光井はそれでも後ずさる。 (もう少しや・・・あと少しだけ頑張るんや・・・) いくばくかの距離を動いた後、光井は振り返った。 「アタシはもうコレまでや・・・どうせなら一思いに殺せ!」 ダークネスの女は多少ながら驚愕の表情を浮かべたが、それはすぐに勝ち誇った表情に変わった。 「ついに諦めた?まあその方が良いよね。いや~、オイラもココまで粘ると思わなかったんだけどね~。ホントすごいよ。」 何十回目かの「すごい」を聞きながら、光井は片膝を付いた。 「オイラもリゾンナンターの一員を殺したとなれば昇格だな~。ダークネスオリメンとして認めてもらえるかも!」 (なんやねん・・・オリメンとか・・・) ダークネスの女は既に巨大なエネルギー弾を掲げている。 これまでに見た事の無いような巨大な弾だ。 食らえば光井も一たまりもないだろう。 「じゃあね!」 女が気弾を投げる瞬間 ガシャーン! 誰もが予想している結果と異なる音と共に蛍光灯がダークネスの上から降ってきた。 その蛍光灯は寸分違わず、女の胸を貫いていた。 「・・・なん・・・で・・・」 女は口から血を吐きながら今までに無い苦悶の表情を見せる。光井は息を切らしながら答える。 「アタシの・・・勝ちやな・・・」 「たまたま・・・蛍光灯・・・が・・・落ち・・・たか・・ら」 「偶然とは違う・・・あのサラリーマンの蛍光灯が落ちるイメージは消えへんかったからな。」 「予・・・知能・・・力・・・消えてた・・・はず・・・何で・・・覚えて・・・いら・・・れる」 「愛佳の記憶力を甘く見んといてや!」 光井は唇に笑みを浮かべながら言い放った。 そこで光井の記憶は途切れる。 目が覚めるとベットの上だった。 場所は見慣れた喫茶「リゾナント」の部屋。 目を開けると、いつものメンバーが自分の顔を覗き込んでいる。 「目、覚めた!」 「良かった~。」 「なかなか目ぇ覚まさんけん、心配したっちゃよ。」 光井は上半身を持ち上げる。まだ体に痛みが残る。 それが昨晩の戦闘の激しさを語っていた。 「駅着いたらさ~みっつぃーが一人で倒れてるんだもん。」 「心配したの。」 光井は高橋の淹れてくれたコーヒーを飲みながら一息ついて口をあけた。 「倒れてたのはアタシだけですか?」 相手は死んだと思ってた。いや、生きていられるはずが無い。 「うん・・・みっつぃーだけ・・・」 高橋はばつの悪そうに答える。 「そうですか・・・」 光井は俯いたままだ。それは他のメンバーにも相手が逃げきった事を知らせる十分な情報源だった。 部屋の中に嫌な緊張感が走る。 次は自分が狙われるかもしれない・・・ どんなヤツが来るんだろう・・・ ――――戦士たちに休息は無い―――― ---- ---- ----

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