(12)882 『蒼の共鳴番外編-温かな孤独-Ver.リンリン-』

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&br() 愛佳を送りにと、ジュンジュンがリゾナントを出ていって。 リンリンは時計を見て、鞄にバナナをしまい込む。 明日からまた喫茶リゾナントは営業を始める、愛やれいなの睡眠時間を考えたらそろそろ帰った方がいいだろう。 鞄を斜めがけして、リンリンは愛とれいなに声をかける。 「高橋サン、田中サン。 リンリンもソろそろ帰りマす。 まタ明日でス」 「うん、また明日ね、リンリン」 「リンリンも気をつけて帰るっちゃ。 何があるか分からんけんね」 「アりがトうござイまス。 そレではマた、おやスみなサーい」 名残惜しいけれど、明日になったらまた会える。 手を振りながら、リンリンはいつものように微笑んだ。 それに手を振り返す愛とれいなも、優しい微笑みを浮かべる。 たったそれだけのことなのに、心の中に穏やかな温もりが生まれ。 リゾナントのドアを開け、リンリンはのんびりと家に向かって歩き出す。 もう、ジュンジュンは愛佳と合流出来ただろうか。 気になるけれど、ジュンジュンなら大丈夫だろうとも思う。 普段は静かで、ちょっと話しかけにくいような雰囲気を持っているジュンジュン。 だけど、ジュンジュンはとても温かい心の持ち主だとリンリンは知っているから。 その温かい心で、きっと疲れた愛佳を癒してくれるだろう。 そう思うだけで、リンリンの頬には自然と笑みが浮かぶ。 大切な仲間である、リゾナンターの皆。 彼女達を想うだけで、こんなにも温かい気持ちになれる。 街灯の下を独りで歩いているのに、すぐ隣に皆がいるような気がして。 つい声を出して笑いそうになってしまうのを堪えるリンリンの姿は、幸い誰にも見られていなかった。 リンリンの家は、喫茶リゾナントからは徒歩30分くらいのところにある。 今では共に戦うことはなくなった、中国の能力者組織が手配してくれたマンション。 お金がないわけではないから、引っ越そうと思えば引っ越すことは出来るけど。 それこそ、リゾナントから徒歩10分くらいの所に住んだって構わないけれど。 引っ越そうとするには、少しばかりあのマンションには想い出が多すぎた。 それまで組織の中でしか暮らしたことのなかったリンリンにとって、初めての1人暮らしの場所。 好きな物を好きな時に食べれる自由さよりも、自分で料理を作らなければいけない面倒さ。 誰かとコミュニケーションを取るにも、日本語がしゃべれずにどうしようもなくなったこと。 何をするにしても、煩わしさや辛さが伴って。 未だ見ぬ仲間達にきっと出会える、その思いだけでホームシックになりそうな自分を支えていた。 いつか必ず出会える、それを信じながら1つ1つ出来なかったことを出来るようにと努力して。 今じゃ料理も余裕で作れるようになったし、何か困ったことがあっても人に聞いて解決できるだけの 日本語だって身に付けることが出来た。 いいことばかりの毎日じゃないけれど、それでも日本に来てよかったと今なら言える。 その聞こえてくる声に、日本に行きたいといった時の仲間達の反応。 止めておけ、違う文化の国に行ったところで馴染めずに辛いだけだぞと。 それでも行きたいと、半ば無理矢理に出てきた国を思い返して涙することはもうなくなった。 ―――独りで暮らしていても、もう独りではないのだから。 途中、コンビニへと寄り。 リンリンはとりあえず店内を物色する。 基本的に食事は毎日自分で作るリンリン。 お菓子などを見て回ったものの、めぼしいものがないことに落胆しつつ。 2リットルのミネラルウォーターを手に取り会計を済ませると、リンリンはコンビニを出た。 街灯の明かりと、月明かりと。 二つの異なる柔らかい光の下、リンリンは鼻歌を歌いながらマンションへと帰る。 そう言えば、今日は24時からお笑い芸人が出る深夜番組があった。 慌てて携帯で時間を確認すると、24時まで後15分くらいしかない。 (ちょっトのんビり歩きすギちゃっタよ…急がナいと間に合ワないネ) 少し早足で、リンリンはマンションを目指す。 肩で風を切るように、時々前を歩いている人を追い越しながら。 24時8分前、ようやくリンリンは住み慣れたマンションへと帰り着いた。 ドアを開け、電気をつけて、テレビのリモコンを操作してテレビをつけると。 買ってきたミネラルウォーターを冷蔵庫にしまって、リンリンはテレビの前へと座る。 その手に、ジュンジュンがくれたバナナをおやつ代わりに持って。 * * * 近所迷惑にならない程度に大声で、腹がよじれるほど笑ったリンリン。 お目当ての番組が終わった後もダラダラとテレビを見続けたら。 気がつけばもう、2時近くになっていた。 この時間に風呂に浸かるともなると、さすがに近所迷惑かもしれないなとリンリンは入浴を諦めて。 とりあえず、お風呂は明日の朝にしよう。 炊飯器のタイマーと目覚ましをセットして、テキパキと寝る準備を進めるリンリンの心に。 遠くの方で温かな心の音色が2つ、響き合って1つの音楽のように届いてきた。 2つともよく知っている、優しい音。 「よかっタ、2人とモ仲良し。 …バッチリデース」 絶えることなく聴こえてくる2つの温かな心の音色に、自然と微笑みが浮かぶリンリン。 多分きっと、遠くで寄り添う2人も今この瞬間微笑んでいることだろう。 そして、それぞれの場所でそれぞれの夜を過ごすリゾナンターの皆も、きっと。 離れていても独りではない。 離れていても、こうして聴こえてくる心の音に耳を澄ませば。 ―――早く皆に会いたいなという心の声に、皆が一斉に応えてくれた気がした。 ---- ---- ----

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