(15)064 『蒼の共鳴-望まぬ旅立ち』

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  • (15)064 『蒼の共鳴-望まぬ旅立ち』
    静かに、息を殺しながら。 少しずつ、少しずつ目的の部屋へと近づいていく一人の女性。 普段の人の良さそうな雰囲気は消え、目に輝くのは鋭い光。 部屋への唯一の出入り口は、武装した下級兵二名が塞いでいる。 そして、常に作動している監視カメラと侵入者検知のためのセンサー。 正面から突破することは不可能ではないが、そうするわけにはいかなかった。 誰にもバレないように、部屋に侵入し。 その上で必要な情報を手に入れなければならない。 女性は一旦、監視カメラの死角になっている場所まで引き返してチャンスを窺うことにした。 (…誰かあの部屋に入る子いないかな、そうしたらテキトーに理由をつけて一緒に入るのに) 通気口からの侵入という手は、通気口がとても人が通れる大きさではないことから断念せざるを得なかった。 攻撃系能力を使えれば、無理矢理にでも自分が通れるくらい...
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    ...45.22 0) (15)064 『蒼の共鳴-望まぬ旅立ち』 2008/09/06(土) 21 00 08.81 0 (15)091 『蒼の共鳴-動き出した運命』 2008/09/07(日) 03 00 32.40 0 (15)099 『共鳴者~Darker than Darkness~ -12-』 2008/09/07(日) 04 39 54.65 0 (15)176 『蒼の共鳴-Project-Resonantor』 2008/09/08(月) 21 00 18.24 0 (15)211 『未来の青空の下で』 2008/09/09(火) 11 09 58.08 0 (15)267 『共鳴者~Darker than Darkness~ -13-』 2008/09/10(水) 11 49 14.54 0 (15)321 『共鳴者~Darker than Darkness...
  • シリーズ分類
    モーニング戦隊シリーズ 共鳴トライアングル モーニング戦隊シリーズ リゾナンターの出会いや戦いの日々を時系列に沿って描いた骨太の作品。ジュンジュンやリンリン、愛佳は登場していない。 (02)539 『モーニング戦隊リゾナンター 希望の少女』 2008/04/23(水) 11 43 39.71 0 (03)679 『モーニング戦隊リゾナンター 悲しみの少女』 2008/05/03(土) 00 13 56.13 0 (06)354 『モーニング戦隊リゾナンター 決意の少女』 2008/05/27(火) 13 58 18.62 0 (09)595 名無し募集中。。。(モーニング戦隊) 2008/06/29(日) 22 35 56.12 0 共鳴トライアングル さゆ絵里やれいなたちの出会いに特化した連作。モーニング戦隊シリーズとは別の作者の作品であるが設...
  • (15)091 『蒼の共鳴-動き出した運命』
    学校に行くのが億劫でつい休んでしまった愛佳の携帯が、今の気分にそぐわない軽快なメロディを奏でる。 この着信メロディを設定した相手の顔が浮かんで、愛佳は微妙な気分のまま携帯を手に取った。 「もしもし、高橋さんどないしはったんですか?」 「今すぐリゾナントに来て、大事な話があるの」 真剣な声に、愛佳は分かりましたと言って通話を終了する。 ベッドから身を起こし、素早く着替えて。 こんな時、リゾナントから遠く離れた場所に住んでいる自分が悔しかった。 すぐにでも飛んでいきたいのに、電車に揺られるしかない。 タクシーを使うことも考えたが、リゾナントに着くまでにどれだけの金額になるか予測が付かない。 もどかしい気持ちのまま、愛佳は部屋を飛び出し駅へと駆け出す。 同じ学校の誰かに見られたら、なんていうことは頭の片隅から一瞬で消えた。 早く、少しでも早く。 ...
  • (09)068 『蒼の共鳴-その声は届かない-』
    糸のような雨が降る夜、ジュンジュンは1人自分のマンションへと歩いていた。 皆と別れて帰る道は、雨のせいで余計に寂しく感じられる。 雨音以外は、たまにジュンジュンの側を追い越していく車の走り去る音しかしない。 静かすぎるくらい、静かな夜だった。 ここのところ、リンリンの様子がおかしい。 皆と一緒に笑っている時に、ふとリンリンの方を見ると。 仲間に向けるような視線とは言い難い、冷たささえ感じられる視線を皆に向けていることがある。 リンリンが実は誰よりも沈着冷静な人間であることは知っているが、それを差し引いても あんな冷たい視線を皆に向けているのは不可解だった。 リンリンと共にダークネスの一員を撃退したあの日、リンリンはひどく悲しんでいた。 きつくきつくジュンジュンに縋り付いて、涙を溢れさせていたリンリン。 リンリンは何も語ろうとはしなかった、涙が止まった後でも...
  • (12)282 『蒼の共鳴-裁きの時-』
    「リゾナントはいいの、愛ちゃん?」 「あぁ、臨時休業にしたし。それよか、里沙ちゃん。 何があったん?」 「何が、って?」 「ここのところ、調子よくなさそうにしとったけど。 眠れない理由でもあった?」 静かな個室に、里沙と愛の声はよく響いた。 音楽を奏でるような機器はなく、テレビはコンセント自体が抜かれている。 白いシーツが目に眩しいくらい、外から差し込む夕日。 少し眠ったおかげか、里沙の顔色は若干よくなっている。 上半身を起こし、穏やかな眼差しを浮かべている里沙に愛はため息をついた。 眠れない理由を聞いて素直に答えるような可愛い人なら、何の苦労もないのだ。 余りキツいことを皆に言えない愛の代わりに、しっかりと皆に喝を入れたり。 口下手で上手いこと皆を励ましてあげれない愛の代わりに、いつも里沙がフォローを入れていた。 見た目は...
  • (13)337 『蒼の共鳴-別れの刻限-』
    いつだって日は昇り、朝が来る。 そして、もう、どれだけ戻りたいと思ったとしても昨日には戻れない。 朝が来なければいいと、どれだけ願ったことか。 自分の視た未来が当たらなければいいと、どれだけ祈ったことか。 祈りは届かず、願いは叶わず。 朝になったことを告げる燦々とした日差しが差し込む喫茶リゾナント。 一睡することすら出来なかった。 胸を締め付ける悲しみが、ずっと心の中に木霊する。 誰も口を開かない。 否、開けるわけがなかった。 いつか、予知夢で視た未来。 当たって欲しくないとどれだけ思っても、ついにこの時を迎えてしまった。 もう、時計の針は進むことがあっても元に戻ることはない。 ため息すらつけない空気と、胸を締め付ける悲しみが辛くて。 愛佳の頬をまた、新たな涙が伝う。 そして、それは他の皆も同じだった。 この沈黙を打ち破るように最初に...
  • (06)758 『蒼の共鳴-失いたくないモノ』
    「じゃ、2、3日くらい連絡つかないと思うけど心配しないでね。 いってきます」 「分かったやよ、でも携帯繋がらんくらい田舎とか…仕事の為とは言え、大変やねー」 「まぁ、こう見えてもそれなりのポジション任されてるからね。 んじゃ、またね」 愛と会話を交わした里沙は、一人リゾナントを後にした。 今日から数日里沙は出張―――正確には、ダークネスへと一時帰還するのだ。 愛達には、仕事で田舎の方まで出張と言うことにしておいた。 携帯が繋がらなくても仕方のないような奥地、という設定にしておけば煩わしさを感じることはない。 そういう設定にしておくのには理由があった。 ダークネスへと帰還している数日間は、携帯を取り上げられる。 その上、ダークネスの建物全体を覆うのは物的攻撃や電波等を完全に遮断する妨害結界が張られている。 幾ら連絡を取ろうとしても無駄なのだ。...
  • (11)244 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 前編2-』
    次は朝日病院前というバスのアナウンスに、絵里は弾かれるように停車ボタンを押す。 ゆっくりと減速して、バスは朝日病院前と書かれたバス停の前に停まった。 この病院に来るのは今日で4回目。 バスを降りた絵里は、小さくため息をついた。 今では風邪でも引かない限り、病院に行く用事がない絵里。 病院を見ると反射的にため息をついてしまうのは、心臓病に悩まされていた日々を思い出すから。 そして何より―――今はここに仲間が入院しているという事実が、絵里の心を曇らせる。 今日で入院してから4日目、今日こそジュンジュンとリンリンは意識を取り戻すだろうか。 あの、血にまみれたジュンジュンとリンリンを発見した日。 れいなの共鳴増幅能力によって増幅されたさゆみの治癒能力によって、2人の傷は塞がったものの。 意識を取り戻す気配がない2人を、皆で慌てて病院へと運び込んだ。 絵里には...
  • (11)406 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 後編1-』
    里沙は睡眠不足による過労と診断され、2日程入院することになった。 医師が言うには、睡眠不足の原因は心労によるところが大きいらしい。 いかにも仲間想いな里沙らしいなと、笑い飛ばしたかったが。 れいなの心に広がる、里沙への疑念。 考えすぎと言われたらそれまでなのかもしれない。 だが、れいなの勘は告げている。 ―――里沙には何かがある、と。 里沙には両親はおろか、親戚もいない。 そのため、愛がリゾナントを臨時休業にして里沙の付き添いに当たることになった。 愛の里沙を心配する気持ちは痛いほど分かるので、れいなは愛がリゾナントを臨時休業にすると言った時、 素直にいいよ、愛ちゃんの好きにしたらよかとと言うことが出来た。 ジュンジュンやリンリンは回復したばかりだし、小春と愛佳は学生しかも片や芸能人。 絵里やさゆみは付き添いに当たることが出来ないわけじゃな...
  • (11)563 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 後編2-』
    「ちゃんと来るのかねぇ、あいつ」 そう言って、黒いレザースーツに身を包んだ金髪の女性は絵里の目の前まで歩いてくる。 目の前に立った女性は、絵里のバッグへと携帯を入れて踵を返した。 人形のように整った顔には、何の感情も浮かんでいない。 むき出しの鉄骨の柱に寄りかかり、女性は目を閉じる。 おそらく、れいなが来るまでは動く気はないのだろう。 隙だらけと言ってもいい女性だが、絵里はその場から動くことが出来ない。 催眠により、絵里とさゆみはその場から動くことが出来ないようにされているのだ。 捕らわれた時から、絵里は何度もこの力に抗っているのだが。 指先すら動かせる気がしない、圧倒的な力で縛られていた。 横のさゆみの方に視線を向ける。 さゆみはどうやら、意識を奪われているらしい。 肉声でも心の声でも何度も呼びかけたのだが、さゆみは全く目覚める気配がなか...
  • (11)324 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 前編3-』
    早く、1秒でも早く。 絵里から連絡を受けたさゆみは、大学からタクシーで病院へと直行する。 病院に着く頃には、タクシーの料金計に表示された金額は4000円を超えていた。 タクシーに乗ることは滅多にないが、まさか自分がドラマのようにお釣りはいいですと言うことになるなんて。 お世辞にも速そうには見えないフォームで、さゆみは走り出す。 正面玄関を駆け抜け、エレベーター前に行くも。 なかなか来る気配がないことに苛立ったさゆみは、勢いよく階段を駆け上がっていく。 ジュンジュンとリンリンが入院している階と同じ階の突き当たりの個室に居る、と。 絵里からのメールには書かれていた。 心臓がバクバク音を立てているのが内耳に聞こえて、うるさい。 あぁ、何で自分の足はもっと思うように動いてくれないのだろう。 悔しくて、情けなくて。 それでも必死に駆け上がり、里沙の居る個室を目指し...
  • (11)595 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 後編3-』
    「絵里!さゆ!」 「頭悪そうだから心配したけど、ちゃんと来たな。 しかし、もうちょいのんびりでもよかったのに」 「うるさか!待ち合わせの時間に遅れるのは性に合わんと」 「見た目に反して、きっちりしてるんだなお前。 結構気に入ったぜ」 「お前なんかに気に入られても嬉しくも何ともないと。 絵里とさゆは返してもらう」 約束の時間よりも40分も早く着くくらい飛ばしてきたはずなのに、れいなの呼吸は乱れていない。 そのことに『彼女』は小さく笑う。 さゆみの目を通してれいなのことは見てきたし、それなりに知ってはいるつもりだが。 リゾナントからここまでは随分距離がある、その間全力疾走してきて息が乱れないと言うことは。 れいなはその派手な外見に反して、とても努力家なのだろう。 普段から走り込んで己を鍛えていなければ、約束の時間に間に合うように着...
  • (12)474 『蒼の共鳴-叶わぬ願い-後編』
    気まずそうにテレビのチャンネルをザッピングする愛の背中を見つめながら。 長いこと一緒に過ごしてきたけれど、そういえば愛はどんなテレビ番組を見るのだろうと想う里沙。 そういう話をしたことはなかったなと、小さく苦笑いする。 話す必要がなければ話さない自分の性格も問題だし、 第一、組織にあてがわれたマンションに居る時は音楽を流しながらひたすら、パソコンに報告書を打ち込んでいる。 報告するようなことがなければ精神干渉を応用した戦闘術の訓練をしているし、 訓練が終わればシャワーを浴びて眠りに着くだけ。 普通の人間のように、テレビを見たり趣味に打ち込んだりすることはない。 と、言うより。 今更普通の人間のような時間の過ごし方なんて出来ないくらい、能力者、そしてスパイとしての生き方が染みついている。 それはすごく寂しいことのように思えなくもなかったが、全ては今更で考...
  • (15)176 『蒼の共鳴-Project-Resonantor』
    バスを降りて、事前に麻琴に指示されていた場所へと向かう小春と愛佳。 他の皆も、そこを目指して歩いているはずだった。 初めてきた場所だけに、どうしても堂々とした感じでは歩けない二人。 しかも、今から向かう場所は…観光地でありながら、同時に―――自殺の名所として有名な場所。 深く何処か鬱蒼とした森が見えてきた。 そして、先に集まっていた他の皆も。 全員揃ったのを確認して、麻琴が努めて明るく声を出した。 「ちょーっと不気味だけど皆頑張って歩こうね、噂にあるように方位磁石が使えないってことはないし、 基本的には遊歩道とか案内看板もあるから。 ただ、一般人の目になるべく付かないように道から外れた奥の方を目指さないといけないから、一応気をつけて 後は…何かあっても極力能力は使わないでね、ダークネスに居場所を感知されるから」 麻琴の言葉に、皆頷いて。 ...
  • (11)118 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 前編1-』
    ジュンジュンとリンリンが意識不明の重傷を負わされた事件から3日経った。 さゆみの治癒能力のおかげで、傷自体は塞がったものの。 ジュンジュンとリンリンの意識は戻らない。 手が空いた人間が交代して様子を見に行くから、2人はいつもの通りリゾナントを通常営業してて。 そう言った里沙の瞳の鋭さに、愛もれいなも何も言えなかった。 里沙が怒ったところを見たことがないわけではない。 だが、今の里沙の怒りようは今までにない感じであった。 愛とれいなはいつも通り、リゾナントの営業を続ける。 合間合間に他の皆が来ては様子を知らせてくれるのだが、未だに意識の戻らない2人を思うと 普通に仕事をしながらでも胸がキリキリと痛んだ。 ―――それでも、時間は流れていく。 閉店間際のリゾナントに、里沙が現れた。 里沙の顔色が優れないところを見て、今日も2人の意識は戻らなかっ...
  • 保全作品群
    (13)169 保全 SIDE Darkness 2008/08/04(月) 13 41 26.14 0 (13)240 保全 SIDE Darkness 2008/08/05(火) 15 54 39.89 0 (13)279 保全 SIDE Darkness 2008/08/06(水) 09 42 11.15 0 (13)325 保全 SIDE Darkness 2008/08/07(木) 12 02 22.18 0 (13)375 保全 SIDE Darkness 2008/08/08(金) 11 46 28.67 0 (14)112 保全 SIDE Darkness 2008/08/21(木) 11 35 41.25 0 (14)121 保全 SIDE ??? 2008/08/21(木) 16 29 30.60 0 (14)127 保全 SIDE Darkness?? ...
  • (12)399 『蒼の共鳴-叶わぬ願い-前編』
    「ここは…」 「ここは…じゃないよ、里沙ちゃん。 何やってんの本当」 目を開けた先には、怒りを露わにした愛と。 そして、里沙を取り囲むように立つ7人のリゾナンター。 ジュンジュンとリンリンの病室から出て、医師を呼びに行こうとしたその後の記憶がない。 おそらく自分は倒れてしまったのだろうと、他人事のように想う。 夕方から翌日の朝まで一睡もしないで付き添うなんてことを数日も続けて、それで倒れない方がおかしいのかもしれない。 朝になって病院を後にしても、その後殆ど一睡も出来ない状態で夕方を迎えていたのだから。 脳裏を過ぎる、ダークネス幹部の一人である吉澤ひとみの言葉。 『やり過ぎってお前は言うけど、お前、自分が何者か分かって言ってるのか? お前は、ダークネスのスパイなんだよ。』 『次の調査はあたし一人で行うから、まぁ、この間のように...
  • (13)475 『蒼の共鳴-突きつけられた絶望-』
    「見つけた…小春、場所を念写して!」 愛の鋭い声に、小春は必死に力を絞り出して愛が見つけた不自然な部分を念写していく。 10時間近く愛の隣で何十万もの人の感情の渦に心を晒していた小春。 今の小春はもう、静電気すら起こせない程に疲弊していた。 顔が真っ青になっている小春に、同じように顔を真っ青にしている他の皆も自分の残りの力全てを注ぎ込む。 皆、今までにないくらいのギリギリのラインに立っていた。 今ダークネスに襲撃されたら、傷一つ負わせること叶わずに全員殺されてしまうに違いない。 それでも、この念写だけは成功させねばならなかった。 念写が出来なかったらこの10時間近くが全て水泡と化す、声がする場所が何処かまでは愛では特定出来ないから。 絶対に念写仕切ってやる、その想いだけで小春は必死に歯を食いしばってその場所を写していった。 念写した画像だけでこれから...
  • (15)589 『蒼の共鳴特別編第1夜-盲目の正義-』
    この日最後の客が店を出て行った。 客が出ていったのを確認して“少女”はCLOSEDと書かれた札を手に持って表へと出る。 札をドアにかけて、表の通りに出してあった“喫茶リゾナント”と書かれた看板を持って少女は再び店の中へと戻った。 午後10時、喫茶リゾナントは本日も恙なく営業を終えた。 だが、営業を終えても少女の仕事は終わらない。 テーブル席とカウンター席を見て回り、切れている物があったら補充する。 それが終われば、台拭きでテーブルとカウンターを丁寧に拭いていった。 その間、最後の客が座っていた席に置かれているコーヒーカップとソーサーをカウンター内に下げるのは忘れない。 テーブルとカウンターを綺麗にした後、少女はモップを取り出して床磨きを始めながら物思いに耽っていた。  * * * 少女が生まれたのは、大金持ちとまでは言わなくともそれなり...
  • (14)221 『蒼の共鳴-闇すなわち原初の力-』
    号泣する里沙の声が聞こえてくる。 部屋へ通じるドアに背を預ける形で立っている1人の女性の耳も揺らす、悲しすぎる泣き声。 その声の悲痛さに、おそらく今傍にいるであろうなつみも涙を流しているに違いない。 弟子のような存在である里沙の泣き声を聞いても、涙は出てこない。 昔の自分であればひょっとしたら泣いたのかもしれないと、女性はため息をつきながらその声に耳を傾け続ける。 気分はお世辞にもいいとは言えなかった。 里沙が組織支給の携帯電話をぐしゃぐしゃに潰して行方をくらますことがなければ。 今頃里沙はここまでの泣き声をあげることなく、自分もこんな気持ちになることはなかったのにと、女性は苦虫を噛み潰したような表情になる。 脳裏に蘇る、今朝の出来事。 女性の部屋へと駆け込んで来た下級兵が告げたのは、GPSによる位置把握が出来なくなったという報告。 その言葉に...
  • (14)838 『蒼の共鳴-翼をもがれた銀翼の天使-』
    ダークネスの居住棟の一角、お世辞にも広いとは言えない“主”のいない部屋。 明かりが点いていても何故か暗く感じる部屋に置かれた、粗末なパイプベッド。 ベッドの縁に腰掛ける女性は、この部屋の“主”が帰還する瞬間を複雑な想いで待っていた。 年齢よりも幼く見えるとかつての仲間達や、“主”に言われたその顔は、深い翳りを帯びて女性を年相応に見せていた。 時計から奏でられる秒針の音が煩いと感じる程、静かな部屋。 “主”の顔は見たかったが、別の意味では見たくない。 今迄何度か、この部屋の“主”はここに帰ってきていた。 だが、今までの一時帰還と今回の帰還は違うものだということを女性は知っていた。 間違いなく“主”は涙を流して帰還する。 その涙を受け止めることこそ、女性に出来る唯一のことだった。 部屋の中心に集まる、闇の気配。 女性は立ち上がり、その闇の傍へと立っ...
  • (13)404 『蒼の共鳴-人が奏でる終わらぬ旋律-』
    病院へと向かう愛達に、一本の電話が入る。 その番号は見慣れないものであったものの、何故か取らなければならない気がして。 立ち止まって、愛は携帯の通話ボタンを押す。 「もしもし」 「高橋さんですか、私朝日病院の看護師をしております○○です」 「え、あ、はい、お世話になっております」 この看護師さんには申し訳ないことをしたなと、昨夜の出来事を思い返しながら愛は苦笑いする。 愛の言葉を信用して夕食のことを任せただろうに、愛は夕食のことを忘れて仮眠というには少々長い時間寝ていたから。 しかも、その後愛は無断で病室を抜け出して帰ってこなかったのだ。 少々の小言を言われるのを覚悟した愛の耳に、思いもかけない言葉が届く。 「高橋さん、新垣さんが何処に行ったかご存じないですか?」 「へ、里沙ちゃんがどうかしたんですか?」 暢気な返事...
  • (08)156 『蒼の共鳴-スカート穿いた王子様-』
    時刻は夜の十時半。 仕事に明け暮れ、満員電車に揺られて疲弊しきった社会人の波をかき分けるように愛佳は改札を出た。 改札を抜ければ、後はひたすら自宅への道のりを早足で歩くだけだった。 今はもう顔を思い出すのも困難なほどの長期間、両親には会っていない。 その両親が用意してくれた、十五歳の少女が一人で住むのには広すぎるマンション。 最初は、一人で寝起きすることが辛かった。 視線すら合わせてくれない、合おうものなら蛙が潰れたような驚愕の声を上げられていた生活。 それすら恋しいと思うほどに、一人で生活する孤独は十五歳の愛佳には重くのしかかっていた。 愛佳が一人暮らしを始めて三年半が経過し―――ようやく愛佳は一人暮らしの気楽さを味わえるようになってきたのであった。 超能力組織リゾナンター、その一員となったその日から少しずつ愛佳は孤独から救われつつあった。 (高校...
  • (11)828 『蒼の共鳴番外編-比翼連理すなわち共鳴-』
    いつの間にか、眠っていたようである。 微睡みからゆっくりと覚醒していく意識、開いた目に飛び込んでくるオレンジ色の夕日。 「あ、目ぇ覚めたん?」 柔らかい関西弁が耳に届いて、リンリンは視線を声がした方に向ける。 リンリンが座っているテーブルの反対側のテーブルで、愛佳が小さく笑っていた。 そのテーブルに広げられている、教科書とノート。 「光井サン、こんにチわ。 あレ、高橋サンと田中サンはどこでスか?」 「高橋さんと田中さんは、2人で買い出しに出かけてん。 で、愛佳はその間だけ店番。 そういえば、リンリン、疲れてたん? めっちゃよう寝とったで」 「アー、最近、夜眠れないんでス。 そノ代わりに、お昼寝すルようになりましタ」 リンリンは苦笑いしながら、愛佳を見つめる。 刻々と変わっていく未来を読み取り、リゾナンターを不測の事態...
  • (21)061 『蒼の共鳴番外編-イミテーション・スノー』
    オレンジ色の空が、徐々に濃紺へと変わっていく頃。 季節は移ろい、街を包むのは身を切るように冷たく、澄んだ空気。 息を吐けば白くなり、冷たい風に顔は自然と赤らむ。 両手をコートのポケットに突っ込んだ少女は、一時の暖を求めて本屋へと足を向ける。 その本屋は、少女が住む街では一番の品揃えを誇っていた。 暖を求めて入店した少女は、ゆったりとした足取りで各コーナーを覗いて回る。 ふと、覗いた児童書籍のコーナー。 そこで少女は、思いもかけない光景を見て思わず声を上げそうになった。 「いつも応援ありがとう、これからもきらりのこと、応援してね」 「うん、きらりちゃんのこと、応援するよぉ」 そこにいたのは―――トップアイドルへの階段を着実に上っているアイドル“月島きらり”と、3歳くらいの少女だった。 だが、少女が驚いたのはけしてアイドルを見たからではな...
  • (13)670 『蒼の共鳴番外編-希望の歌-』
    トレーニングルームという部屋が喫茶リゾナントの建物の地下一階にはある。 その名の通り、能力を使った戦闘や肉弾戦の訓練をするようにと作られた部屋だが。 大抵は外界に影響を与えないような能力の行使と、肉弾戦の訓練にしか使われてはいない部屋。 喫茶リゾナントの営業が終わり、れいなはいつものようにトレーニングルームへと向かう。 早朝は数㎞のランニングをしてからリゾナントの手伝いをして、リゾナントの営業が終わればこうして自らの技を磨くれいな。 いずれ、愛もそのトレーニングに付き合うために部屋に降りてくるだろう。 それまでにウォーミングアップを済ませようとトレーニングルームのドアを開けようとして、れいなはその手を止めた。 僅かな隙間から漏れてくる、伸びやかで力強い歌声。 聞き慣れない歌声に、一体誰が歌っているのだろうという興味が沸いてきた。 だけど、今部屋に足を踏み入れた...
  • リゾ短歌、詠みにけり
    2008年の秋頃流行りだしたムーブメント。 五七五七七の三十一文字という制限の中で様々な共鳴が生まれた、。 リゾナンター編(12)749 名無し募集中。。。 2008/07/28(月) 17 53 56.96 0 (15)814 名無し募集中。。。 2008/09/21(日) 00 57 13.95 O (16)730 名無し募集中。。。 2008/10/10(金) 11 20 22.63 O (16)735 名無し募集中。。。 2008/10/10(金) 13 40 56.54 0 (16)736 名無し募集中。。。 2008/10/10(金) 14 37 27.06 0 (16)808 名無し募集中。。。 2008/10/11(土) 17 56 29.80 0 (16)863 名無し募集中。。。 2008/10/12(日) 15 59 10.20 0 (16)881 名無し募集...
  • (16)335 『蒼の共鳴特別編第2夜-蒼の戦乙女-』
    色とりどりのネオンが煌めく、若者達が集う街。 煩いくらいに若者達の放つ声が一つの音楽のように、街全体に溢れている。 時刻は夜の十一時、まともな学生なら既に帰宅している時間であった。 この時刻であっても尚、若者達の作り出す喧噪は街に溢れていた。 その喧噪に耳を塞ぐように“少女”はヘッドフォンから流れてくる音楽の音量を上げ、人混みをすり抜けるように街を歩く。 目深に被ったキャップ、軽くウェーブのかかった茶髪。 原色を貴重とした派手な服装に、きつめのメイク。 街を歩く少女に、あらゆる異性が声をかけてきた。 一人なら遊びに行こうよと声をかけてくる、見た目だけで判断するなら間違いなく頭の悪い男。 一回幾ら?と、財布から万札を覗かせるスーツ姿の男性。 強引に少女の手を引こうとする者もいたが、少女が一睨みするとすごすごと去っていく。 少女はふらふらと、まるで野良猫...
  • (16)504 『蒼の共鳴番外編-不器用オレンジ-』
    喫茶リゾナントは今日も仲間達の温かい声が響いていた。 日は少し傾き、少しずつ黄昏が近づいてきている。 愛佳は広げていた勉強道具を片付けて、さっと席を立った。 「あれ、みっつぃーもう帰るの?」 「…もうすぐ中間テストなんです。 ここ最近課題以外に勉強する余裕あらへんかったし、試験勉強しようかと思って」 愛佳のその言葉に、みっつぃーは偉いなぁと言いながら絵里はニコニコと微笑んだ。 いつもならその笑顔に偉いでしょーと返すだけの余裕があるのだが。 愛佳はその言葉には応えずに、またテスト期間が明けたら来ますねーと言って足早にリゾナントを出ていった。 「ガキさん、何かみっつぃーおかしくなかったですか?」 「あー、店に来た時に小テストの成績があんまりよくなかったから、勉強せんとなぁって言ってたよ。 もっとも、あの子のよくないってのは…うちら...
  • (17)193 『蒼の共鳴特別編第4夜-桜花繚乱-』
    活気溢れる声が響く、学生達の集う街。 数多の大学が存在し、勉学に青春にと励む若者達が毎日のように公共機関に揺られてやってくる。 少女もその幾多の大学生の一人である。 高卒よりは大卒の方が将来有利だろう、その程度の感覚で何となく進学しただけであったが。 幼い頃からああなりたい、というビジョンがあったわけではない。 このまま何となく卒業して、何となく就職してそのうち結婚するのだろう。 大きな幸せではないかもしれない。 だが、大きな幸せを得る可能性がある代わりに深い悲しみも訪れる可能性もある人生よりは、 今のぬるま湯のような人生でもいい、常々少女はそう思っていた。 ―――もう、あんな想いはしたくない。 少女の脳裏を過ぎる悲しみの記憶、それが心を締め付けるよりも早く、少女は思考を切り替えることになる。 家に帰宅しようとする少女の目の前に立つ...
  • (12)812 『蒼の共鳴番外編-温かな孤独-後編-』
    やがて、愛佳の住むマンションが見えてきた。 自分の住むマンションと比べると随分立派なことにジュンジュンはびっくりする。 1人暮らしだと小春が言っていたが、1人で住むには広過ぎるだろうとジュンジュンは思った。 ここで1人で暮らす愛佳の孤独を思うと、悲しい気持ちになる。 その気持ちが伝わったのか、愛佳はそっとジュンジュンの手を握る。 触れた手から伝わるのは、けして孤独ではないのだという愛佳の気持ち。 伝わってきた気持ちに、ジュンジュンは安堵した。 鍵を開け、部屋に入る。 いつもと変わらない部屋だけど、今日はいつもと違う。 ジュンジュンに鍵をかけてから入ってきてなと言って、愛佳は部屋の照明をつけて回る。 「お茶菓子の1つくらい出せたらええんやけど、人呼ぶことがないから何もあらへん。 ごめんなぁ、ジュンジュン」 「大丈夫、ジュンジュン、いつもバナナ...
  • (19)195 『蒼の共鳴特別編第6夜-紫雲の予知夢-』
    夕暮れ間近の駅のホームは、帰宅の途に着く学生達の姿が目立った。 髪を染め、シャツのボタンを第2ボタンまで開け、短い丈のスカート姿の学生達のグループもいれば、 校則をしっかり守った服装をし、参考書片手に電車を待つ学生もいる。 少女もまた、この駅を利用している学生の一人だった。 耳が隠れる程度の黒髪、膝が隠れる程度の丈のスカート。 猫背気味に立つその姿は活発な雰囲気からは程遠かった。 むしろ、教科書を片手に電車を待つ姿は優等生そのものである。 やがて、電車がホームへと滑り込んできた。 降りる人間が降りたのを見計らいながら、少女は電車の中に入って一番端の手すりがある席に座る。 少女が座ってから程なく、電車は動き出した。 隣に座った人間に迷惑にならないようにしながら、少女はホームで電車を待っていた時と同様に 教科書を片手に勉強を開始した。 揺れる電車の中で...
  • (18)427 『蒼の共鳴番外編-けして重ならぬ想い-』
    喫茶リゾナントから徒歩10分程度のところにあるビルの屋上。 トン、という音を立ててそこに一人の女性が“降り立った”。 肩に付かない程度の茶色の髪に、ライトグレーのジャージを着た女性は目を伏せる。 ゆらゆらと、女性の体から立ち上る淡い黄色の“オーラ”。 オーラの放出が収まるのと同時に、ビルを中心とした半径五百メートル圏内は外界から隔離された空間となった。 「…邪魔もんがこんうちに、とっとと“調律”すまさんとね」 女性はそう呟いて、再び体からオーラを解き放った―――その瞬間だった。 外界から隔離されたこの空間に侵入しようと、女性の張った“結界”に何者かが手を触れる。 その気配が、よく知った人間のものであると感じた女性は、触れられた箇所の結界をわざと綻ばせた。 「愛ちゃん、相変わらず結界大きく張りすぎだよね」 よく通る声が女性の鼓膜を震わ...
  • (12)799 『蒼の共鳴番外編-温かな孤独-前編-』
    喫茶リゾナントは本日定休日である。 定休日ではあるが、店内には数人の人影があった。 「えーとな、ジュンジュン。この字は書ける?」 「うー、チョと、難しイけど、書いてミる」 幼稚園生が使う、平仮名の書き取り練習帳。 もっとも、それを使う人間は20歳だったりする。 ジュンジュンは一生懸命、示された文字をその通りに再現しようとしていた。 その隣では、リンリンが黙々とノートを広げて文字を綴っている。 平仮名と簡単な漢字を交えて、文章を書いているようだ。 ジュンジュンと比べると進みが早いのは、リンリンは家でも勉強をしっかりしているから。 ジュンジュンも家で勉強しないわけではないのだが、1時間もすると飽きてしまう。 そんな調子だからか、会話の方はそれなりに出来るようになってきたものの文字の読み書きはなかなか上達しない。 日本に住む以上、会話だけ...
  • (13)792 『蒼の共鳴番外編-いつか名前を呼んで-』
    「お疲れ様でしたー。」 時刻は午後11時過ぎ、ようやく撮影の仕事を終えた小春は帰途につく。 労働基準法?何それ食べれるのと言いたくなるくらい、朝からみっちりと撮影づくしだった小春。 今日はまだ楽な方だったとは言え、高校生活に加えて不定期にダークネスとの戦闘もある状態。 疲労が溜まってきているのは自覚してるものの、そう簡単に休みが貰えるなら苦労はなかった。 幸い、今日で撮影の方は一段落ついた。 明日からは一週間、普通の女子高校生としての生活。 少しは睡眠時間が増やせそうだなと、スケジュール帳を片手に小春は苦笑いする。 リゾナントへ数日ぶりに顔を出すこともこれなら可能だ。 小春の脳裏に過ぎる、皆の笑顔。 前だったら、こうして疲れた時に誰かの笑顔を思い出すなんてことはなかった。 睡眠時間が増えることだけが嬉しくて、誰かのことを考える余裕なんてなかった日々...
  • (16)633 『蒼の共鳴番外編-金木犀香る夜明け前-』
    「最悪…」 もう何度目になるか分からない寝返りをうちながら、少女は吐き捨てるように呟いた。 体は疲れて睡眠を欲しているというのに、目は冴えていく一方だった。 大きな溜息をついて、少女は布団の上に身を起こした。 途端に、少しひんやりとした空気が華奢な少女の体を包み込む。 腕をそっとさすりながら、ロフトの明かりを付けるべく少女は暗がりの中をおそるおそる歩いた。 パチン。 音と共に瞬時に部屋に溢れる蛍光灯の明かりに、少女は眩しそうに顔を顰める。 原色のジャージ姿の少女は物音を立てないようにそっと、家を抜け出す準備をした。 上着の右ポケットには紫のエナメル地の財布、左ポケットには細かな傷が幾つか付いている銀のMDプレイヤー。 最後に、穿いているジャージのポケットにラインストーンでデコレーションされた携帯を仕舞い、少女は再びロフトの明かりを消した。 ...
  • (13)637 『蒼の共鳴番外編-懐かしく愛おしい記憶-』
    その日、里沙は訓練を終えて自分の部屋へと向かっていた。 まだまだ、教えてもらった通りに動けているとは思えないけど、 努力すればした分だけ、思った自分に近づけている気がして。 また夜にでも訓練をしようと思いながらタオル片手に歩く里沙の耳に届く、優しい歌声。 (誰だろう、すごく綺麗で優しい声だなぁ) その歌声はそっと、里沙の心を包み込むような温かさを持って辺りに響いている。 まるで歌手のような、聴く者の胸を打つ歌声に引き寄せられるように、里沙は声のする方へと歩みを進めた。 一歩一歩歩みを進めるごとに大きくなる歌声。 その歌声に酔いしれながら、里沙は基地の中にある中庭へと足を踏み入れた。 里沙の目に飛び込んできたのは、よく見慣れた後ろ姿。 短い栗色の髪の毛が風に揺れていた。 そして、風に乗って辺りに響く優しい歌声。 その歌を邪魔することは憚られ...
  • (19)620 『蒼の共鳴特別編第7夜-その空深き紺碧の-』
    “60分7,000円”などと書かれた看板を持って立つ客引きの姿、道行くサラリーマンに猫なで声を出す水商売の女性が目に付く街。 数多くの居酒屋が建ち並ぶ街の喧噪から少しばかり離れたところに、一軒の中華料理屋があった。 六階建てのさほど大きくはないビルの一階にある、中華料理屋“謝謝-シェイシェイ-”。 連日連夜、安価でありながら確かな味、気のいい主人の話術に惹かれて通い詰める客は後を絶たない。 「お待たせシましタ、水餃子にナりまスー」 たどたどしい口調とは裏腹に、訪れた客のテーブルへときびきびと料理を運ぶ一人の少女。 どこか愛嬌のある顔立ちと、その真面目な働きぶりは訪れる客の心を少し温かくしていた。 お昼時と夜の六時~九時頃は、主人と奥さんが二人がかりで料理を作っている。 そのため、少女は一人でフロアに立って料理出しから会計、客が帰った後のテーブルの片...
  • (16)889 『蒼の共鳴特別編第3夜-傷跡と決意の橙光-』
    白やクリーム色を基調とした部屋に、本のページを捲る音だけが微かに鳴っていた。 パラリ。 白いシーツが目に眩しいパイプベッドに上半身だけを起こして、少女は本を読んでいた。 淡々とページを一定のリズムで捲っている少女の表情からは、何の感情も読み取れない。 淡いピンクのパジャマに、肩にかけられた薄いグレーのカーディガン。 浅黒い肌の色こそ健康さを感じさせるが、その姿はまさに病人そのものであった。 不意に、少女は本に栞を挟んで壁に掛けられた時計へと目をやった。 時刻は午後八時四十五分、もうすぐ“消灯”の時刻である。 少女は本を枕元に置いて、ベッドへと仰向けに倒れ込む。 ボスッという音と共に、少女の頭が枕に半分ほど埋まった。 天井を見上げる少女の目は何処か虚ろで、生気を感じさせない。  * * * 少女は小さな頃は健康そのも...
  • (12)882 『蒼の共鳴番外編-温かな孤独-Ver.リンリン-』
    愛佳を送りにと、ジュンジュンがリゾナントを出ていって。 リンリンは時計を見て、鞄にバナナをしまい込む。 明日からまた喫茶リゾナントは営業を始める、愛やれいなの睡眠時間を考えたらそろそろ帰った方がいいだろう。 鞄を斜めがけして、リンリンは愛とれいなに声をかける。 「高橋サン、田中サン。 リンリンもソろそろ帰りマす。 まタ明日でス」 「うん、また明日ね、リンリン」 「リンリンも気をつけて帰るっちゃ。 何があるか分からんけんね」 「アりがトうござイまス。 そレではマた、おやスみなサーい」 名残惜しいけれど、明日になったらまた会える。 手を振りながら、リンリンはいつものように微笑んだ。 それに手を振り返す愛とれいなも、優しい微笑みを浮かべる。 たったそれだけのことなのに、心の中に穏やかな温もりが生まれ。 リゾナントのドアを開け...
  • (17)542 『蒼の共鳴特別編第5夜-その想い、緋色の如く-』
    「では、ファンの皆さんに最後に一言お願いします」 「そうですね、これからも色んな一面を見せていけたらと思いますので、 応援よろしくお願いします……こんな感じで」 「はーい、きらりちゃんは本当優等生アイドルだよねー。 たまには何か変わったこと言ってみたら?」 目の前でボイスレコーダーを操作しながら、女性記者は率直な感想を口にする。 その言葉に、少女は鮮やかに微笑みながら考えておきますとさらりと答えた。 もう何度も女性記者と少女―――アイドル“月島きらり”は取材という形で顔を合わせている。 月島きらり、14歳。 かつて日本中を虜にしたトップアイドル“AYA”の後継者、とマスコミには持ち上げられ、 その類い希な容姿と天性の演技力はとてもアイドルとは思えない等と評される、今売り出し中のアイドルだった。 最初の頃と比べると幾分か馴れ馴...
  • (19)929 『蒼の共鳴特別編第8夜-緑炎使いは仲間を欲す-』
    柔らかな日差しが降り注ぐ、昼下がりの商店街。 エコバッグやスーパーの買い物袋を片手に提げた主婦の姿が目立つ、小さくも活気ある商店街を一人の少女が歩いていた。 主婦達に混じり立ち並ぶ商店を覗くその姿は、とても十代の少女とは思えないくらいしっかりとした空気を纏っている。 「そレ、一つ、くださイ」 「あいよ、180円ね」 八百屋の店主に、ちょっト待ってテ下さイと言いながら少女はポケットから財布を取り出して小銭を一つ一つ数える。 そのたどたどしさは店主を苦笑いさせるには十分過ぎるくらいだった。 数え終わった少女は、店主にお金を手渡すと白い無地のビニール袋に入れられた野菜を受け取って微笑む。 「…お嬢ちゃん、ひょっとして外人さんかい?」 「そウでス、すいマせン、にホんご、まダ、ヘタ」 「いいっていいって、お嬢ちゃん若いからこれからすぐに日...
  • (15)099 『共鳴者~Darker than Darkness~ -12-』
    その来訪は唐突に、あっけなく、あまりに気安く訪れた。 喫茶リゾナント。 相変わらず休業中の店内に、その声は響いた。 「まだ休業しとるんね。今月は赤字確定やない?」 店内には"黎明"の、その所属を既に自覚したメンバーが全員揃っていた。 突然の来訪者は呆然とする彼女達には目も向けず、 古巣を懐かしむように店内のあちこちを点検している。 「うん。掃除はちゃんとしてるようやね。これならいつでも開店できる」 あまりにも気安げな動作。 あまりにも安穏とした発言。 否、本来なら彼女はここにいても何ら不思議のない人間だったのだから、 むしろこの中心にいた人間なのだから、それも当然のものなのかもしれない。 だが、違う。 今の彼女と、ほんの少し前の彼女とでは、立つべき位置があまりにも違いすぎた。 「愛、ちゃん……?」 ...
  • (15)835 『共鳴修学旅行~プロローグ~』
    今日も平和な喫茶リゾナント マターリ時間は過ぎて行きます 「なかなか止まんのぉ…この雨…」 真っ白なコーヒーカップを磨きながら窓の外に目を向ける愛がため息まじりに呟いた 「台風が来てるんだって」 愛の言葉に顔を上げた里沙は今朝のテレビのワイドショーから仕入れた情報を披露した 「ほぉー…ほしたらしばらくはこんな天気が続くんやろか?」 「明後日には晴れるらしいよ?」 「ホンマですか!?良かったぁ」 里沙の隣で学校の宿題に取り組んでいた愛佳が安堵の笑みを浮かべる 「明後日、なんかあるの?」 「はい!愛佳、明後日から修学旅行なんです!」 「おぉっ!修学旅行か!ええのぉ!どこ行くんや?」 愛佳が弾んだ声で予定を告げると愛のテンションは一気に上昇 「京都と大阪と神戸に行くんですわ」 「京都か!本能寺や!織田さんや!」 ...
  • (13)568 『60億の共鳴』
    「喰らってくたばれ、ファイナルリゾナントバスター」 「ヘルミーなの」 「グワファ、見事な攻撃だリゾナンター諸君  だが私も闇の眷属の長として ただでは死なんのだよ、ナイト・オブ・ダークネス発動」 消滅の間際ダークネスがそう叫ぶと、不帰の島を揺るがす大轟音が鳴り響く ミサイルが発射された 「くっ、最後の最後まで」 「どうする愛ちゃん」 「どうもこうもない、 みっつぃー、ミサイルの軌道を予知して、  私は瞬間移動で何とかする」 「愛ちゃん、まさかミサイルごと人のいない場所へ移動するつもりっと  危なすぎるったい」 「でも何とかしないと、このままじゃ」 「高橋さん、私も行きます」 「小春、なぜあんたが」 「接近して私の力でミサイルに電撃を加えれば、あるいは」 「でも二人であんな高いところまで瞬間移動するのは危険なの」 「わかってます、でも」 ...
  • (24)616 「ワガママ」 ~(25)335 「電車の二人」
    (24)616 「ワガママ」 2009/03/16(月) 18 57 12.56 0 (24)657 「ランチタイム ~レバニラ炒め~」 2009/03/17(火) 19 03 46.16 0 (24)695 「好きな先輩」 2009/03/18(水) 18 45 23.37 0 (24)743 「男友達」 2009/03/19(木) 19 41 05.77 0 (24)796 「プラチナ 9 DISCO」 2009/03/20(金) 21 38 58.33 0 (24)960 「原宿6:00集合」 2009/03/23(月) 21 00 01.15 0 (25)037 「愛車 ローンで」 2009/03/24(火) 19 00 14.70 0 (25)078 「好きで×5」 2009/03/25(水) 18 45 30.67 0 (25)103 「、、、好きだよ」 2009/03/26(...
  • (23)027 (五言絶句) 『想いは蒼空に共鳴す』
    娘 ○  朝 ●  純 ○  李 ●  想 ●  知 ○  明 ○  氏 ●  共 ●  陽 ○  変 ●  為 ○  鳴 ○  即 ●  駮 ●  人 ○  空 ◎  闇 ●  熊 ◎  虎 ● <詩題> 想共鳴蒼空 <韻目> 「東」韻 <中国語読み> li(3) shi(4) wei(4) ren(2) hu(3) chun(2) ming(4) bian(4) bo(4) xiong(2) zhao(1) zhi(1) lang(2) ji(2) an(4) niang(4) xing(1) gong(4) ming(2) kong(1)   ※( )内数字は現代中国語の四声であるので 平仄とは必ずしも一致していません 解説
  • (15)342 『共鳴者~Darker than Darkness~ -15-』
    銃弾は高橋の眼前に出現した歪みを通じて彼方へと飛ばされた。 だが、螺旋を描いた弾道は紛れもなく高橋の眉間と銃口とを結んでいた。 その事実に生じた幾らかの混乱を抑えつけ、高橋は射手へと向き直る。 「あーしを殺す? れいなが? 状況が見えてないんかな。  いや状況以前に、そもそもアンタ如きがあーしに勝てるとでも?」 「無理でしょうね。けど、ハンデがあれば結果はわかりません」 呟くように言って、田中れいなは自身の異能を全身から放出した。 共鳴増幅。 共鳴者の能力を増幅させ、その補助となる、ただそれだけの異能。 ちっぽけな、しかし高橋達にとって重要なファクターとなっているそれを、 この局面で放出する意図はなんだ。 全身に漲る己の能力の鼓動を感じ取った時、高橋は今日初めての動揺を自覚した。 「高橋さん、貴女の能力は確かに強力です。  それこそれなや他のみん...
  • (15)353 『共鳴者~Darker than Darkness~ -16-』
    まったく人間の脳というのは恐ろしい。 1000テラフロップスの処理演算機能を隠し持つそれ。 たとえ三人分の脳を用いた高橋の演算能力を以ってしても、 完全にそこから起こりうる発想を予測することは不可能だったというわけだ。 田中れいなの拳が頬骨を砕きにくる。 頭を振ってかわし、懐に潜り込んで掌底をその顎めがけて突き上げた。 空振り。 上体をそらすことでこちらの攻撃から逃れた田中の爪先が跳ね上がる。 右上段廻し蹴りを左腕で受け、そのまま掴みかかりテコの原理で足首の骨を折りにいく。 が、より早く身をよじった田中は不安定な姿勢のまま跳び上がり、中空で左後ろ廻し蹴りを披露してみせた。 顔面めがけて飛んでくる踵を後退して避ける。案の定掴んでいた右足は手放す結果になってしまった。 腰元から特殊警棒を取り出す。 同調するように田中も警棒を振って伸縮式のそれを伸ばしていた。 互...
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