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(01)633 『愛佳 ─ Aika ─』

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papayaga0226

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わたしは物心がついたときから不思議な力を持っていた
幼いわたしはそれが他の人と違うことに気付いていなかった

幼稚園のころ、父が会社から帰ってくるのが判ると玄関まで迎えに出ていた
母は「愛佳は勘がいいのね」って褒めてくれた
わたしは褒められるのが嬉しくて、毎日父を迎えに出ていた

ある日の夜、父の運転している車が事故を起こすイメージが頭に浮かぶ
わたしは母に褒められたくて「パパの車がぶつかちゃった」と教えてあげた
母は慌てて玄関を飛び出す。しかしガレージに車の影はない
「愛佳、ウソをついちゃダメでしょ」
母がわたしを叱る
「ちがうもん、ウソじゃないもん」
褒めてもらえると思ったわたしは必死で弁解した

リリリリリ~ン

家の電話が鳴り、一瞬の静寂があった
「はい、光井です」電話を取った母の顔がみるみるこわばっていく
母は電話を切るとパタパタとリビングを走り回っていた
「ママは病院行ってくるから、お姉ちゃんとおとなしく留守番してるのよ」
慌ただしく出かけていく母は、玄関で見送るわたしの目を一度も見ようとはしなかった


幸い父の怪我は大したことなく、すぐに退院することができた
しかしあの日以来、わたしと母との間に他の人には見えない壁が生まれた
わたしが母に話しかけると、母は一瞬怯えた顔をする
夜中トイレに起きたとき、リビングから「愛佳が怖い」と父に訴える母の声が聞こえてきた
わたしはこの時、自分が他の人と違うことを知った

小学生に上がる頃には、わたしはかなり内向的な少女になっていた
判っていても動かない、知っていても教えない
驚きもない、喜びもない
未来(さき)を知るこの能力(ちから)は、わたしの感情も奪っていた

教室でいつも一人で座ってる、そんなわたしにも一人の友達ができた
彼女は常に明るく、誰に対しても分け隔てなく話しかけるクラスの人気者だった
その頃のわたしは彼女の話を聞くのが唯一の楽しみだった

高学年になったある日のこと、彼女が嬉しそうにわたしの元へ駆け寄ってきた
「ねぇ!愛佳、聞いて聞いて! あたし今度の連休、海外旅行へ行くの!」
次の瞬間、恐ろしいイメージがわたしの脳裏に焼き付いた
「愛佳にもおみやげ買ってきてあ・・・」
「行っちゃダメ!!」
わたしは思わず立ち上がって叫んだ
椅子が倒れ教室に大きな音を立て、クラス中のみんながわたしたちに注目してるのが判る
でもわたしは止められなかった
「旅行に行っちゃダメ、飛行機に乗らないで!」
「なに言ってんのよ、愛佳。飛行機に乗らなきゃ海外に行けないじゃない。それとも悔しいの?」
「違うの、そうじゃなくて・・・」
不意に母の怯えた顔が浮かび声が出なくなる
「ちゃんと愛佳にもおみやげ買ってきてあげるから、そんなに拗ねないでよ。じゃね」
わたしはスキップしながら去っていく彼女の後ろ姿を見送ることしかできなかった


告別式は雨が降っていた
母は働きに出るようになってから学校行事にはほとんど参加していないけど
さすがにこれに出ない訳にはいかなかったようだ
近くでクラスメイトの「愛佳ちゃんが・・・」というささやき声が聞こえ
母の身体がピクッと動くのが判った
この頃のわたしは母と会話らしい会話をしていない

連休明けの朝礼で校長先生から報告があった
彼女の乗った飛行機が墜落したのだ
乗客・乗員のすべてが死亡する大惨事であり、世界中のニュースにもなっていた
クラス中のみんなが泣いている中で、わたしだけが涙を流していなかった
あの日の夜、わたしはすでに泣き尽くしていたから

教室に戻るなりクラスの男子に突き飛ばされた
「光井! おまえの仕業か!?」
わたしは床に転がったまま、きょとんとした
こんな感覚は久しぶりだった
「おまえが飛行機を落としたのか! 自分が海外旅行に行けないから悔しくて!」
「ち、違う。わたしじゃない」
わたしは首を振って否定した
「でも愛佳ちゃん、あのとき変なこと言ってた」
クラスの女子の一人が口を挟む
気がつくとわたしを取り囲むように人の輪が出来ていた
「あんなに仲良しだったのに全然泣いてない」
わたしを非難する言葉を浴びせながらその輪がだんだん小さくなる
「そ、それは・・・ あぶない!」
わたしは思わず叫ぶ
その直後、後ろの方にいた一人の生徒が足を滑らせ将棋倒しのように全員が倒れた
教室に悲鳴が響き渡ったあと奇妙な沈黙が訪れる
なにが起こったのか理解したクラスメイトは、わたしから逃げるようにその輪を広げた



      - 光井と話しをすると事故が起こる -

そんな噂が流れ、他のクラスにも広がるのはあっという間だった
学校の生徒はわたしを避けるようになり、わたしはまたひとりぼっちになった


気がつくと告別式が終わっていた
母は周囲の目から逃げるようにこの場を去っていく
わたしは母の後ろ姿を追いかけるようについて行った
「愛佳」
母に名前を呼ばれたのは何年ぶりだろう。わたしは小さく返事をする
「これ以上わたしに迷惑をかけないでちょうだい」
冷たく言い放つと母は歩みを早めた
母の背中がどんどん小さくなっていくのに、わたしの足は動かなくなる
学校だけではなく世界の中でわたしはひとりぼっちになってしまった
いくつもの雫が頬を伝い落ち地面を濡らす
枯れたと思っていた涙が止めどもなく溢れてくる
なんでこんな悲しいことが予知できなかったのだろう?

ひとりぼっちになった原因、それでいて自由に使うこともできない
他人にはない能力に激しい怒りがこみ上げてくる


中学生になってからもそれは続いた
いやむしろ酷くなっていったと言った方が正しい
噂は小学校を飛び出し尾ひれをつけて広がっていく
小学生の頃は徹底的な無視だったものが、
中学に入ってからは暴力的なイジメに変わっていた
今では、わたしが他人に事故を起こさせているらしい
それならわたしを恐れて近寄らなくなってもよさそうなもんだけど
その辺はまだ子供なのか、それとも反撃してこないのをいいことに
安心しているのかもしれない
もちろんわたしにはそんな能力はない

わたしの予知能力は日増しに強くなっていった
時々それが予知したものなのか、過去に起きた出来事だったのかわからなくなることもある
そんなわたしの言動が彼らのイジメに拍車をかける

両親は仕事でほとんど家に帰らず、姉も大学進学と同時に家を出た
わたしは家でもずっとひとりぼっちだった
高校に進学しても同じ中学出身の生徒が何人もいた
他の中学校だった生徒もわたしの噂を耳にしているだろう
これからも一人で希望もなく生きていくのだろうかと考えていたとき
あの人が声をかけてきた

「飛び込むんなら、次の電車にしてよね。あたし、帰れなくなっちゃうから」


「アラ、まあ!あなたの頭の中は、明日、学校でいじめられる事でいっぱいね」
わたしはびっくりして声のする方を見た
こんな大人にまでわたしの噂が届いているのか
しかし彼女の答えはわたしの想像を遙かに上回るものだった
「そうよ、私はあなたの心の中が読めるの」
その突然のカミングアウトにわたしの心が動揺する
冗談を言ってるようには見えない
「それだけじゃ無いわ。あなたの頭の中を占領してる、自分がイジメられているイメージを取り除いてあげる事もできるのよ」
この人は何を言っているのだろう
未来を変えることは出来ない。それはいままでの人生で経験してきたこと
だからこそわたしは迫害されてきたのだ
だからこそわたしは耐えてきた

唐突に名刺を渡される
いや名刺じゃない。これは喫茶店の案内状?
「私がやってる喫茶店。よかったら明日、来ない?学校をサボって」
学校を?
わたしはこう見えても学校を休んだことは一度もない
逃げることは負けだと思っている
わたしが反論しようと口を開きかけたとき、電車がホームに滑り込んでそのタイミングを失う

顔に不満の色を浮かべていると、その人は電車に乗り扉の向こうから語り始めた
「あなたの頭の中を占領してるイメージはねぇ、未来のビジョンなの。あなたには予知能力があるのよ。」
「予知?」
この人はわたしの能力のことを知っている?
本当に人の心が読めるのだろうか、それとも・・・
「明日を知る能力。いいこと、明日は変えられるのよ」
「あなたが、変えてくれるんですか?」
わたしはとっさに聞き返した
未来を変える。そんなことが可能ならこの先のわたしの人生にも希望が生まれるかもしれない
「まさか!明日を知ってるのはあなただけ。自分で変えるんだよ・・・・・明日のあなたは、まだイジメられている?
 美味しいガレットの作り方、教えてあげる。料理・・・得意なんでしょ?」
ガレット? はじめて聞く言葉にとまどいを覚える
この人の話は要点が掴めない。会話の内容がころころと変わる
発車のベルが鳴り扉が閉まる。電車が動き出すのをじっと眺めていた
この人を信用していいものかどうか悩んでいると、いつもの感覚が襲ってきた
わたしが笑いながらあの人とクッキーを焼いてる
こんな笑顔、幼稚園の頃以来したことがない
わたしは思わず走り出した
この思いを届けたい
「あした・・・あした、必ず行きます」
わたしは小さくなる電車に向かって叫んだ

誰もいないホームにわたしは一人たたずむ
そしてさらに先の未来が見えてくる
迫り来る敵
共に戦う仲間
わたしは一人じゃない
わたしは誰にともなく訊ねてみる


こんな私でも誰かを救えますか?





こんなわたしでも誰かを救えますか?

その答えはまだ出ていない
わたしはオーブンの中を眺めながら昔のことを思い出していた
もう少しで焼き上がるだろう
先にティーポットにお湯を注ぎ紅茶を淹れておこう
ティーカップを温めてテーブルに並べた
オーブンのアラームが鳴り、出来上がりを知らせる
わたしはそれを取り出すと人数分に切り小皿に取り分ける
それをティーカップの隣に並べ終えたとき扉が開いた

「ただいまぁ! ん~いい匂い」
「いやぁ、そこでばったり会っちゃってさー」
「ほらほら、亀ちゃん食べる前は手を洗って」
「オー!オイシソウデスー」
いままで食器の音しかなかった部屋が一瞬にして喧噪に包まれる
わたしはみんなのティーカップに紅茶を注いでいく
「みっつぃ~の作るガレットってすっごく美味しいの」
道重さんの言葉を受け、わたしはリーダーの顔を見た
リーダーは「ありがと」っていいながら紅茶を一口すすった
今のわたしの心は伝わっているのだろうか

この人たちがわたしの仲間
ここがわたしの場所
わたしは今、とても幸せ




















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