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(22)789 『禍刻SP―Rescue imprisoned Risa!―』
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papayaga0226
8人は「海上の監獄」と呼ばれる島に立っていた。
招かれざる客として手荒い歓迎を受けながら。
「――15秒後、右32°の方向から大小約20ほどの飛礫、やや遅れて左65°の方向から氷柱約50本が飛来します」
光井愛佳が両手でその方向を指差しながらゆっくりと“予知”した未来を告げる。
「右ハ私だナ」「左は任せテください」
李純と銭琳はそう言うと、愛佳の指す方向にそれぞれ鋭い視線を向ける。
次の瞬間、僅かに前傾の姿勢をとった純の体中の筋肉が膨張を始めた。
同時に、白銀と漆黒の体毛が全身を覆い、鋭い爪や牙が生え揃ってゆく。
「来ます」
愛佳が再びゆっくりとした口調でそう言った次の瞬間、高速で飛来する石礫が全員の目に映った。
大熊猫へと“獣化”した純の巨大な体躯がゆらりと動く。
巨体にそぐわない俊敏さの、それでいて美しく流れるような動きが停止したとき、その足元には飛来した石礫が残らず転がっていた。
「すごーい!」
「ジュンジュン超かっこいい!」
亀井絵里と道重さゆみがそう言いながらパチパチと手を叩いた。
「《田中ノ“共鳴増幅能力”のオカゲダ》やて」
高橋愛が“精神感応”により純の言葉を伝える。
「心ん中では呼び捨てにしとるっちゃね・・・」
田中れいなが小さく呟いた。
「次来ます」
その愛佳の言葉とほぼ同時に、“発火能力”者である琳の手元から激しい勢いで真っ赤な炎が噴き出した。
放たれた炎はおびただしい数に枝分かれし、蛇の大群のような様相を呈して前方から飛来する鋭い氷柱群を捕捉する。
数瞬の間に、視界を覆わんばかりだった氷柱群は白い水蒸気にその姿を変えた。
「すごーい!火がブワーってなってたよブワーって」
「リンリンも超かっこいい!」
再び絵里とさゆみが手を叩く。
「イエ、私でなくテ田中サンの“共鳴増幅能力”がホントにすごいんデス!」
目を丸くしながら謙虚にそう言う琳に、れいなは照れ笑いを返した。
「【念動力】による投石と、【氷使い】の氷の矢・・・結構遠くから撃ってきてるね」
そう言いながら、久住小春が“念写”によってその能力者たちの拡大映像を景色の上に貼り付けた。
遊び心からか、コンピュータグラフィックが付加され、距離や照準等がデジタル表示されている。
「《久住、ツイデだカラアイツに lock on シロ》・・・やて」
「了解」
愛の《通訳》を受け、小春は照準を表わす映像を【念動能力者】のいる場所に重ねた。
ピピッという音とともに、「lock on」の文字が浮かび上がる。
その瞬間、獣化したままの純はその照準めがけて先ほど叩き落した石礫の一つを振りかぶって投擲した。
「お見事」
そう愛佳が呟いた一瞬後、【念動能力者】の頭は柘榴のように弾け飛んだ
「私の方ハ、ちょっと射程範囲外デス。すみマセン」
リンリンが申し訳なさそうに頭を下げる。
「あ、じゃあ絵里がやるよ。さゆ、ちょっと『傷』貸して。切り傷系がいいな」
「わかった」
優しげな笑顔で肯くと、さゆみは“傷の融解”を発動して絵里に『傷』を“還”した。
それと同時に、絵里は“傷の共有”を発動してその傷をその場の全員に共有させる。
そしてその傷が痛みを脳に伝えるよりも短い刹那の瞬間に、【氷使い】へとその『傷』をまとめて転移した。
――DEAD――
ブザー音とともに真っ赤な文字が浮かび上がり、そのバックで真っ二つにされた“標的(TARGET)”が倒れ伏す光景が映し出される。
「何か感じ出るー。これおもしろいね小春」
「絵里、遊びやないっちゃよ」
「・・・だったね。ごめん」
うな垂れた絵里に、れいなが慌ててフォローの言葉をかけようとしたとき、愛佳が口を開いた。
「――10秒後、・・・うわーロケット弾が飛んできますわ」
「《ソレはチョット無理ダ》・・・ってそんなん言われんでも分かるやよジュンジュン。あーしがやるからみんな先行ってて」
そう告げると、愛は“瞬間移動”を発動した。
光の粒子となった愛を除く7人は遠く離れた場所に瞬時に移動する。
直後に飛来したロケット弾もまた、愛の眼前で光の粒子となり一瞬で掻き消えた。
・・・と思った瞬間、遠くで轟音が響き、その音が聞こえた一帯が火の海になるのが見えた。
冷たい表情を浮かべながらそれを確認した愛は、他のメンバーが待つ場所へと“移動”する。
愛が合流した瞬間、不自然に周りの空気が歪み、同時に強烈なエネルギーが8人を襲った。
全員の全身が切り刻まれた―――かに思われた瞬間、少し離れた場所で【不可視化能力者】と【真空刃使い】が朱に染まって崩れ落ちる。
「すんません。姿隠しても愛佳には“視”えてたんで」
「そして残念ながらさゆみの“空間”の中でしたー」
愛佳とさゆみがニヤリと笑い合う。
「小春、あと何人おると?」
れいなが後ろを振り返り、小春に訊ねる。
「約300m先に1人、その少し先に1人、反対側に2人・・・ともう1人・・・で、とりあえずこの辺の敵は終わりかな」
そう言いながら、小春は先ほどと同様に拡大映像を現実の風景にそのまま貼り付ける。
れいなにたしなめられて反省したのか、それとも単に飽きたのか、今回はコンピュータグラフィックのオマケはない。
「れいなも行く?」
「当たり前やん!」
愛とれいなの姿が消える。
「うわ・・・すご・・・」
「あはは、2人とも派手にやるねー」
「高橋さんって・・・怒らせたらほんまに怖いんですね・・・」
「田中サンもデス・・・」
「超強イナ、マジデ」
「あいつで最後だね」
ものの数秒のうちに凄惨な映像で景色が埋まる。
小春はそれらの映像を無造作に消し去り、れいなに喉元をつかまれた最後の1人の映像だけを残した。
「ぐ・・・バカな・・・こんな・・・」
この場の指揮官らしきその女は、信じられないといった驚愕の表情を浮かべている。
それに対し、愛は怖いくらいの無表情で静かに問う。
「里沙ちゃんは・・・新垣里沙はどこや?」
「こ、これくらいで勝ったと思わないことね。まだ強力な能力者がたくさん・・・ぎぃゃあぁぁぁっっっ―――!!」
言葉の途中で指が数本“消”え、女は絶叫した。
「次は腕ごといくで?・・・里沙ちゃんはどこや」
冷たい目で見下ろし、愛は再び問うた。
「ひ・・・言う・・・言うから命だけは・・・・・・」
「もう言わんでもええよ。あの建物の地下やね。・・・どうも」
「え?・・・がっ・・・ぐべっ・・・・・・!」
ぐしゃり――とれいなに頸部を握りつぶされ、女の頭は辛うじて皮一枚で繋がってぶら下がった。
「里沙ちゃん攫っといて生きてられるとでも思っとったん?」
無表情にその様を一瞥してそう言うと、愛は里沙が囚われているらしい建物に視線を移した。
里沙奪還作戦という名の殺戮(ジェノサイド)はここから本番を迎える―――