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ビッグバン宇宙論 (big-bang cosmology)   ビッグバン宇宙論は最も歴史があり最も多くの科学者に支持されています。 しかし初期バージョンから65年も経過し、その内容は素粒子論や量子論を 多く組み込んだ量子論的宇宙論になってしまいました。 そこであらためてビッグバン宇宙論の最新改訂版によって過去を振り返り 近未来の量子重力宇宙論に対応できるよう心の準備をいたします。 1946年、ロシア生まれの米国の物理学者ジョージ・ガモフ(Gamoe,George) が、「初期の宇宙は超高温・超高密度で急速に膨張していた」とする論文を 発表。続けて1948年には「アルファ・ベータ・ガンマ理論」を発表しました。 これらがビッグバン宇宙論の始まりとされています。さらにガモフは現在の 宇宙は初期宇宙の高温高密度平衡状態のなごりである絶対温度5Kの 黒体放射がドップラー効果により波長を1000倍程度引き伸ばされ電磁波 として全天に存在していることを予言しました。温度換算で約5ケルビン。 ジョージ・ガモフは20世紀初頭にオデッサで生まれレニングラード、現在の サントペテル大学、ゲッティンゲン、コペンハーゲン、ケンブリッジ、ジョージ ワシントン大学、コロラド大学と世界を渡り歩いた異色の天才物理学者です。 生化学にも精通していてワトソン、クリックよりも早くDNAが遺伝情報として 機能している論文も発表しています。多才な科学者でもありました。 一方で、定常宇宙論は、一様・等方の宇宙を時間軸にも適用し永遠不変と したので一見したことろ安心できる宇宙観で一般大衆には人気がありました。 定常宇宙論提唱の動機はケンブリッジ大学の物理学者フレッド・ホイル、 ハーマン・ボンディ、トーマス・ゴールドの3人が、ある日スリラー映画の 夜の死(フィードバック現象で結果が原因に作用する内容)を見て 思いついたとされています。1950年のことですから、ジョージ・ガモフの ビッグバン宇宙論と同時期でした。 ビッグバンという名称はガモフ自身が付けたわけではなく当時はライバルの イギリスの定常宇宙論者フレッド・ホイルがガモフの論文を軽蔑して自爆の 理論と酷評したことからこのような刺激的な名前になりました。 しかし結果的に自爆したのはフレッド・ホイルの方で「C場」「リトルバン」 「超爆発」などと次々と修正理論や新理論を展開しましたが受け入れられる ことはありませんでした。 ジョージ・ガモフはユーモアをそなえた人で「アルファ・ベータ・ガンマ理論」 発表にあたっては、α・β・γとゴロ合わせをするため勝手に他人の 名前(著名なノーベル賞受賞の数学者)を使い本来2名である論文を3名 の連名で発表したという愉快な人物です。   ガモフは原子核物理を根拠にしていたので、そこから現在の宇宙の元素を 求めるには無理があります。 1950年代になって日本の物理学者林忠四郎はビッグバンに素粒子論を 導入しました。日本の得意な理論物理学の分野ですが目立った進展は 見られませんでした。60年も昔の時代に勇気あるカミカゼ日本人です。 1965年に発見された宇宙黒体輻射がビッグバン理論を裏付ける最初の 観測結果となりましたが同時に別の問題を生じることにもなります。 観測精度の問題ですが、宇宙が等方・均一でありすぎたのです。 この問題は30年後の衛星探査によってゆらぎが観測され解決します。 1980年にまずアメリカの素粒子物理学者アラン・グース(Alan Guth)が インフレーション宇宙論を発表したことが休眠状態のビッグバン理論を たたき起こします。 この理論は、ビッグバン理論がかかえていた多くの課題を一気に解決する ものとして支持を集めました。それほど衝撃的な理論だったのです。 平坦性問題(宇宙の一様性)、地平線問題(宇宙の大きさ)、大規模構造 (宇宙のゆらぎ)、をインフレーション理論は解決します。 A・アルブレヒト、P・シュタインハート、A・リンデ、佐藤勝彦、等々、著名な 物理学者の論文がインフレーション理論を大ヒットさせることになります。 何事もそうですが、熱が冷めてからあらためてよく考えると、新たな問題の 方がたくさん発生して、かえって混乱してきたような気もします。 ビッグバン宇宙論に異を唱える大人たちは、根本的な問題は何も解決して いないと怒っていますが、怒るだけで解決策を持ち合わせてはおりません。 大人たちの怒りも当然で、真空の相転移、位相欠陥、物質と反物質の 非対称性の起源、宇宙像、宇宙の起源、については残されたままになって います。加えて最近は暗黒物質が状況を混乱させています。  ロウ    ラムダ H²≡[ā/a]²=(8πG/3)ρーkc²/a²+Λc²⁄3   いきなり、こんな訳の分からない式を登場させて申し訳ございません。 あなた方はできる子供たちですからギリシア文字にも慣れ親しんでください。 これはフリードマン方程式といって、アインシュタインの一般相対性理論に 基づく一様で等方な宇宙をフリードマンが考案した「宇宙の運命」式です。 アインシュタインは宇宙の膨張を認めず宇宙項Λ(ラムダ)を導入したの ですが後日撤回しています。この宇宙項が今では宇宙定数として復活し 「真空のエネルギー密度」になっています。とても大きな数値です。 インフレーション宇宙では、宇宙が初期に加速度的膨張したことになり、 光速度を越える膨張速度を認めています。もしくは光速度以内で膨張し た場合でも非物理学的なメカニズムで現在の宇宙に至ったと説明して いますので理解に苦しんでいる子供たちがたくさんおられます。   まず減速膨張について説明します。 もし、宇宙項のΛ(ラムダ)がなかった場合、宇宙は膨張するわけですが、 宇宙の中に含まれるエネルギー、重力によりその膨張速度は遅くなって 減速膨張になっていきます。一様・等方の宇宙ではなくなってしまいます。 フリードマン方程式は一様・等方なので位置によらず時間のみに関する 微分方程式で、時空の発展と物質の密度・圧力を関連づけております。 計算すると、ハッブルパラメーター(H)の2/3が宇宙の年齢になり、 この宇宙の年齢は80億年になってしまいます。 減速膨張の場合、宇宙の地平線問題にも矛盾を生じます。 宇宙の膨張の早さと、物質の相互作用が光速を越えないことを考えると 宇宙の南天から観測される宇宙黒体放射と、北天からのそれとが同じで あってはならないのに、まったく同じものが観測されています。 インフレーション宇宙論は決して完成された理論とは思えませんが、 多くの問題を解決してくれましたし、将来への展望を与えてくれました。 そこで量子力学理論を出発点とした宇宙の誕生を描いてみました。 複雑な計算式から得られた宇宙誕生の歴史は次のようになっています。 10ー44秒後、温度が1032K(ケルビン)のとき、重力が枝分かれします。   オリジナルのビッグバン理論では、特異点から宇宙が誕生したと   なっていますが、これは大きさがゼロでエネルギー密度が無限大 を意味し、理論としては失格なので排除されました。 宇宙は、真空のゆらぎからエネルギーの壁を通り抜けて誕生しま す。量子論では、これを「トンネル効果」と呼びます。 このときの宇宙の大きさは10ー33㎜程度の小さなものでした。 現在最も有力な「超ひも理論」によりますと、宇宙は10次元で誕生 し、素粒子の正体は長さが10ー33㎜程度の閉じたひもとしています ので、誕生直後の宇宙は10ー33ミリの大きさにいたします。 ひも理論によると宇宙は10次元で誕生し、 右まわりに振動するひもと、左まわりに振動するひもの2種類あり 右まわりの振動からグラビトン(重力子)がつくられ、左まわりの ひもからその他のゲージ粒子と物質をつくる素粒子が生まれます。   現在の宇宙を運営している4つの力の中で重力は極めて特殊な 存在で、素粒子の世界で重力のふるまいをうまく説明できるのは 今のところ、この理論だけになっています。 ひも理論についてもう少し学ぶことにいたします。 ひも理論の歴史は古く、今から半世紀も前の1960年代に登場します。 強い力が電場の束(たば)からできた「ひも」に似ていたことから 出発します。 この電場のひもの数学式は、まれに見る美しさと強力さを持ったもの でしたが、その意味するところは誰にもわかりませんでした。 ここで日本人の天才物理学者が登場します。南部陽一郎です。 この時代の日本人の頭脳は世界トップクラスで、南部陽一郎は この数学式の意味を「ひも」であることを解明します。 これを機会に、電場「ひも」理論は、重力場「ひも」理論になり、 「ひも理論」から「超ひも理論」へと名前を変えて発展していきます。 「超ひも理論」の解は10の20乗ほどの数があり、この解の多さが、 大統一理論の確立をさまたげています。 10次元宇宙は、この恐ろしいほどたくさんある解のひとつです。 この解によりますと、私たちは10次元宇宙に住んでいることになります。 6つの空間は、縮んで縮んで縮みきって小さな小さな円になっている そうですが、どうすれば検証できるのか、誰も説明できません。 最近登場した「階層」理論によりますと、重力が支配する大きなスケールの世界 と、粒子が支配する小さなスケールの世界は「階層」が異なり、事象に変化が 生じます。時間軸と空間軸はどの階層でも共有していますが速度が異なります。 さらに、粒子世界の階層では時空が分離するという事象さえ生じてしまいます。 時間や空間が不安定な階層に住んでいる粒子にとって住み心地は悪く、粒子も きっと特定な時間や場所にとどまってはいられないでしょう。 この不安定な階層が粒子に不可解な行動を引き起こさせます。時空が安定した マクロな世界に住んでいる私たちから観察すれば理解に苦しむ行動です。   この理論は不可解な粒子の動きを見事に数式化いたします。 階層理論は心情的には理解しやすいのですが、時空の分離という極端な発想の 転換が必要です。空間軸の変化は超ひも理論と共通していますし、もし時間軸が 変化すればどうなるのか、相対論とも関係しそうな興味深い理論です。   5.391x10のー44乗秒をプランク時間と呼んで物理理論が破綻する   臨界時間としています。量子力学では、まさにこの時間帯です。 10のー40秒後、温度10の30乗ケルビンあたりからビッグバン理論はインフレーション   理論の真空のエネルギーによって宇宙は指数関数的に大膨張を開始。   この初期の膨張の瞬間にインフレーション宇宙論は加速度的に   超光速で宇宙が膨張したと論じています。宇宙の南天も北天も     全天とともに一様に等方に急膨張しました。   銀河の運動速度に対する制限をなくしてしまうと宇宙の地平線 問題や平坦性問題もなくなり、宇宙のわずかなゆらぎが今日の グレートウォールやボイドの起源であったことも説明できます。 10のー36秒後、空間が30桁以上も急拡大します。 一定のエネルギー密度を保持したまま宇宙は急速に滑らかにかつ 均一に急膨張。これは素粒子が天の川とかアンドロメダ銀河の 大きさになる比率に相当します。これがインフレーションです。 このような表現をすると宇宙は銀河ほどの大きさになったと誤解を 与えかねませんが、もとの大きさが極めて小さな粒子だったので インフレーション後の宇宙の大きさは、わずか20㎝程度です。 信じられないでしょうが、手のひらにのるサイズです。 10のー35乗秒後、温度が10の28乗ケルビンのときに強い力が分岐します。 10のー23乗(100ゼプト)秒後、温度が10の25乗(10ヨタ)ケルビンの時 真空のエネルギーが熱に変換。急激に温度低下。 ここで、E=mc²が適用され物質生成の条件が整っていきます。 10のー10乗(10ナノ)秒後、温度が10の15乗(1ペタ)ケルビンの時 4つの力のうち、残りの「電磁気力」と「弱い力」が分岐。 放射優勢の時代が終わり素粒子の時代がはじまります。 10のー7乗(100マイクロ)秒後、温度が10の14乗(100テラ)ケルビンの時 まず重い素粒子が生成されます。 光子同士が衝突。クォーク、反クォークが対生成されます。 グルーオンが陽子、中性子、中間子を生成します。 このグルーオンというのは名前の通りネバネバとした糊のような 粒子で重力場に陣取ってハドロン(中間子+バリオン)の 内部でクォークを取り仕切る役割をしています。   量子色力学では赤や青や緑のカラーに変色しクォークに自分の 色と力を分け与え識別する役割をしています。SU(3)対称性の 場面においてもゲージボソンとして似たようなことをしています。 量子色力学(quntum chromodynamics)の3つの色に6つの香り   ( U b s c d t ) を加えるとクォーク式が完成します。   10のー4乗(10ミリ)秒後、温度が10の13乗(10テラ)ケルビンの時 反粒子が消滅。正粒子が10億個あたり1個多かったので正粒子が 生き残りました。地球上の人間がたったの7人になる確立です。 宇宙の晴れ上がりは自由電子がなくなる38万年後ですがそれより 以前にニュートリノの晴れ上がりがあったと予測されています。 それは電子と陽電子が誕生する直前と考えられこの時間帯です。 宇宙が高温高圧で混み合っていた時代にはニュートリノでさえ動く のにままならぬ状態でした。それが粒子・反粒子の対消滅によって 粒子数が半滅したため自由度が与えられ宇宙空間を飛び回れる ようになりました。たくさん存在していたのでニュートリノ背景放射が 観測されるはずです。     10のー1乗(1デシ)秒後、温度が10の12乗(1テラ)ケルビンのとき 軽い素粒子が生成されます。 光子同士の衝突で電子(エレクトロンe⁻)と陽電子(ポジトロンe⁺)が 対生成されます。 高エネルギーのフォトン=γ線が、エレクトロンとポジトロンを生成 する現象を対生成といい、逆にエレクトロンとポジトロンが結合して つくる原子をポジトロニウムといいます。 寿命は短くすぐに対消滅してフォトンが生成されます。 10の2乗(1ヘクト)秒後、温度が10の10乗(10ギガ)ケルビンのとき   元素合成が始まります。   高エネルギー加速器で再現できる状態、すなわち、共鳴吸収、   共鳴散乱、中間子原子、ハイペロン原子核、クォーク・グルーオン   プラズマなど短命の数百の素粒子がプラズマ状で入り乱れていた のが、陽子、電子、中性子が強い力(核子力)によってまとめられ ヘリウム4や重水素の原子核になっていっていきます。少量の ヘリウム3やベリリウム、リチウムの元素も同時につくられました。 元素合成初期には、中性子が陽子へ崩壊する量は少なく、 中性子が増え、連鎖的にヘリウム4の量が増えていきます。 重水素やヘリウム3は燃え残りなので少なくなっていきます。 観測によってヘリウム4と重水素の量を測定すればあとは光子の 数密度によってバリオンの存在量が予想できます。 10の13乗(10テラ)秒後、温度が10の6乗(1メガ)ケルビンのとき   光子と衝突する自由電子がいなくなり宇宙が晴れ上がります。 それまでは10テラ秒間も高温プラズマガスの渦が巻く真っ暗闇の 中で宇宙誕生の行事は進行していたのです。プラズマは中性ガス になりました。10テラ秒とは30万年に相当します。   10の15乗(1ペタ)秒後、温度が10の3乗(1キロ)ケルビンのとき 恒星や銀河の形成が始まります。 この時代から以後のことは宇宙衛星探査機によってかなりのことが 検証されています。   宇宙誕生から38万年後3000K温度の時に宇宙が晴れ上がります。 それから137億年後、ビッグバンの超高温放射熱は電磁波帯域まで 減衰しサブミリ波とミリ波の中間あたりのマイクロ波として宇宙の全天 から検出されます。これがガモフの予言した宇宙背景放射でとても 137億年昔のものとは思えない強力な電磁波です。 絶対温度に換算して2.725±0.001度の極低温です。 1965年、ベル研究所に勤務するアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンは   衛星電波受信用ホーンアンテナ試験中に全天から放射される波長7cmの 電波源に悩まされていました。本来の任務は衛星通信のため波長21センチの UHF帯の中性水素の受信状態を調べることでした。     このマイクロ波は全天のあらゆる方向からやってくる強力で指向性のないもの でした。さらに詳しく調べようにもミリ波の領域になると地上からの観測では 大気中の水蒸気が観測の邪魔をします。 結局、2年もの時間をかけ、2人はほとんどの雑音電波は取り除きましたが この7センチ波だけは発生源がわかりません。 そこで近くのプリンストン大学に相談した結果、黒体輻射であることが判明 したのです。 (日頃私たちが使用している中波ラジオ(535KHz~1605KHz)は内蔵のフェライトコア  バーアンテナだけでもかなりの数の宇宙からの電波を受信できます。おおよそ  雑音の10パーセントが宇宙からの電波で、射手座の方向にアンテナを水平にする  とより多くの宇宙からの電波が受信できます。ラジオでは背景輻射受信は無理ですが) これが宇宙黒体輻射=宇宙マイクロ波背景放射の発見につながりました。 これはビッグバン宇宙論を裏付ける最初の観測結果でもあったのです。 1989年打上のKOBE(コービー)衛星がこの宇宙マイクロ波背景放射を詳しく 観測し温度分布を明らかにしました。それはビッグバンが高温の熱平衡状態 であることを証明し、EHF(ミリ波)帯で波長が2ミリのあたりにピークがある ほぼ完璧な黒体放射であることを検証したのです。 ガモフは黒体放射を5ケルビンと予想しましたがこれは断熱膨張の時間を 若干短めに見積もったためで観測結果2.725±0.001Kより少し高くなりま した。結果、宇宙のエネルギー密度は4.17x10ー13erg/㎤であることが判明 できて、現在の光子(フォトン)の数は411個/㎤であることもわかりました。   光子の数密度が分かればバリオンの存在量も計算できる。というように 今までの予想値が次々と解明されていったのです。   2001年6月、さらにWMAP(ウィルキンソン・マイクロ波・異方性・探査機) ダブルマップ衛星 Wilkinson Microwave Anisotropy Probe が地球上空 150万kmのラグランジュ点に打ち上げられます。この重力が安定した地点は 地球や太陽からの影響も最小で、精密な観測に適しています。 角度分解能は0.3度、温度測定精度10万分の2度で全天の温度分布を 精密測定しました。2003年2月最初の観測結果が発表されました。 (1)宇宙は平坦。 (2)宇宙の年齢は137±2億年。 (3)宇宙誕生から約2億年後に最初の星が誕生。 (4)宇宙誕生後約38万年後に宇宙が晴れ上がる。 (5)宇宙の構成要素は73%がダークエネルギー、23パーセントが暗黒物質、   バリオン(星や銀河など目に見える物質)は4%。概算値です。 (6)宇宙の温度分布に10万分の1程度のかすかなゆらぎ。これも概算値。 その後もWMAPからは多くの宇宙論パラメーター(宇宙を特徴づける数値) が、かってない高精度で検出されています。 宇宙誕生から2億年間は、希薄なガスだけがほぼ均等に広がっていました が、この若干の揺らぎが引力によってガスに濃淡の差をつくるきっかけを 与えることになりました。   いったん、ガスに濃淡の差が生じるとあとは時間さえかければその差は ますます顕著になり拡大していきます。濃い部分には強い重力が働き、 水素ガスは押しつぶされてやがて核融合反応を開始します。135億年前、 宇宙で最初に核融合反応を開始した恒星のファーストライトがひときわ まぶしく輝きます。   引力の作用は、星々を千億個単位で銀河に成長させ銀河は銀河団を形成 し銀河団は網の目状の超銀河団へとより大きなグループになっていきます。   天の川銀河は130億年前に誕生しアンドロメダ銀河など30個程度の銀河団 をつくっています。そしてこの銀河団は、6200万光年離れた距離にある 乙女座超銀河団に含まれているのです。宇宙の大規模構造から見れば 太陽は乙女座超銀河団の小さな小さな砂より小さな一粒です。 ビッグバン理論はまず宇宙の年齢を決定するハッブル定数に悩まされます。 しかしこれはやがて解決しました。ハッブル定数のオリジナルデータが、 アバウトでいい加減だったのです。ハッブルの名誉のためにも付け加えて おかねばなりませんが80年前の観測精度と当時のアインシュタインブーム の影響で観測データという理論的裏付けがあったため容易に受け入れられ たという社会的背景もあったのです。 その後の精密な観測によって、ハッブル定数は数回修正されましたが、 まだ確定には至っていません。 その値は72Km/s/Mpcあたりで、宇宙の年齢はざっと139億年になります。   WMAPの観測では137±2億年となっているのでほぼ一致することから 宇宙の年齢に関しては137億年として統一され一般に使用されています。 大統一理論はまだ確立されてはいませんが、力の分岐の際には必ず 温度の低下による真空の相転移が起こっていることを示しています。 相転移とは同一物質が固体や流体(液体や気体)に変化することで、 真空が相転移するときに多数の点状の欠陥が生じそれがモノポールとして 現在まで残っているはずです。 近代物理学の発展は対称性という概念によって大きく進化してきました。 イギリスの物理学者ポール・ディラックは1931年、電場と磁場の間で 対称性が破れているのはおかしいと考え、磁場にもS極またはN極しか ない単極の磁荷をもつ粒子が存在すると考えたのも当然です。 量子力学によると、ℏc/2eからℏ=h/2πによってモノポールの素磁荷は 素電荷の68.5倍、異極の磁荷は電荷のそれの4700倍。かなりの大物です。 1969年ソ連・セルプコフ研究所・陽子シンクロトロンにては未検出でした。 1972年米国・フェルミ国立加速器研究所・陽子シンクロトロンにても未検出。 その後も米国・ブルックヘブン国立研究所、欧州セルンでも未検出。 高エネルギー科学者たちは、これはおかしいと考え、モノポールは陽子の 30倍質量と予測します。 さらに加速器実験は続き1972年米国・カリフォルニア大学・ローレンス バークレー研究所では超伝導コイルを利用した新型検出装置で、当時 アポロ宇宙飛行士が持ち帰ったばかりの月の石まで調べましたが未検出。 これだけ調べても検出されないのはモノポールの質量が桁はずれに大きく 陽子の10の16乗という化け物のような謎の超巨大な素粒子だからということに。   結局、モノポールはインフレーションによって引き延ばされ薄められ 観測にかからないということになり、この宇宙に存在はするのですが、   現在の粒子加速器のパワーでは検出は無理とあきらめてしまいます。 この説明はひも理論やM理論の余剰次元の説明とよく似ています。 存在はするのですが小さく丸まって観測にかからぬ存在になったのです。 素粒子理論では相転移が起きる際には場の対称性が破れ、ヒッグス場に おいてエネルギーの集中領域が取り残されます。この領域が位相欠陥です。 2次元ドメインウォール、1次元コズミックストリング、3次元テクスチャー、 そして点としてのモノポール。テクスチャーは長い間、宇宙大規模構造の 源として注目されてきたのですが今では話題になることもなくなりました。 現宇宙を支配する4つの力を創造したのはビッグバン理論。 4つの力を統一しようとするのが大統一理論。方向は逆だが目的は同じです。 両者にとって共通の利益は陽子崩壊です。超高エネルギーの世界では、 4つの力も、素粒子も、違いはなくなり、クォークがレプトンに変わり、 陽子を構成している3個のクォークのうちの1個がレプトンに変わり、 陽子の代わりにパイ中間子と陽電子ができるのも自由自在です。 数多くある大統一理論の中でもSU5は最有力候補です。このモデルでは 陽子の寿命を10の31乗年と見積もっています。これはビッグバンにとっても 好都合で、この宇宙は数百エクサ年から数十ゼタ年も余裕を持って 存在できることになります。 陽子の寿命が10の31乗年ならば、陽子を10の31乗個集めて観察を続ければ、 毎年1個が崩壊する確率に。ということで1970~1980年にかけて 各国が競って、巨大水タンクを宇宙線を避けるため地下深くに設置。 米国はエリー湖の地下600mに8000トンの純水タンクIMBを、日本は 岐阜県神岡鉱山跡地下1000mに3000トンの純水タンクカミオカンデを 設置。この設計は日本の物理学者小柴昌俊東大名誉教授によるものです。 陽子崩壊検出が射程距離内にはいり、ニュートリノ背景放射でも見つかれ ばビッグバン理論はますます活気づきます。 検出方法は陽子崩壊により飛び出した陽電子が水中を走る際に発する チェレンコフ光をタンク内に並べた高感度検出装置でとらえるという単純な もの。1000トンの純水の中には陽子と中性子をあわせて10の33乗個含まれて いるので毎年数百個の陽子崩壊が検出されるはずであるが今だに未検出。 1987年2月、幸運にも近くにある、地球からたった16万光年しか離れて   いない大マゼラン星雲(南天の赤偉ー70度)近くの、タランチュラ(毒グモ) 星雲に近接した10倍太陽質量以上の恒星が超新星爆発を起こしました。 この恵みの神ともいうべき超新星SN1987Aは宇宙空間に大量のニュートリノ をまき散らし間もなく地球に到達しました。米国IMBの検出数8個に対し、 日本のカミオカンデは11個のニュートリノを検出しノーベル賞を受賞します。   この出来事はカミオカンデを陽子崩壊検出器からニュートリノ検出器に変身 させることになり、恒星進化論に決定的な確証を与えることにもなりました。 タランチュラ星雲は南天の極に近い位置だから地球の裏側からニュートリノ がやって来たことになります。その結果SN1987Aは1.6倍太陽質量の鉄コア が爆縮して1.4倍太陽質量の中性子星が残されたことが確認されました。  またあらゆる電磁波(γ線~電波)の波長帯で詳細な観測ができたので γ線やX線放出が理論値より5倍も早いこと、超新星内部の物質混合が 予想より大規模であることなど恒星進化論に大きな貢献をしました。 ノーベル賞受賞のインパクトは大きく1996年にはスーパーカミオカンデに バージョンアップしてタンク容量は3000トンから50000トンになりました。   この効果は絶大で、早くも1998年にはニュートリノ振動を観測。今まで 質量がないと見られていたニュートリノに質量があるという発見をします。 このように主目的の達成がおくれても、目的外の発見でノーベル賞にまで つながるのが科学のおもしろいところで宇宙背景放射の発見も同様です。 サムライ小柴博士のおかげで陽子崩壊の可能性も1桁向上しました。 Dr、Neutrinoは今や小柴博士の代名詞で世界中で通用しています。 陽子崩壊が観測できなくとも、陽子の寿命を延ばしさえすればこの問題は 先延ばしにできます。事実、SU5理論では陽子の寿命を10の32乗年としても、 許されます。運が良ければすぐに見つかると読んでいたのです。 一方で、素粒子物理学においても飛躍的な技術進歩をとげていました。 この原因のひとつに素粒子物理学の黄金の時代・幸福な時代がありました。 1965年~1985年の20年間、理論の予言がすぐに加速器によって観測され 加速器万能の加速器神話をつくってしまったのです。 いずれは必ず加速器で発見されるという仮定のもとで素粒子の理論研究が 猛スピードで進んで行き、そしてその結果振り返ってみると空席だらけの 未検出だらけの、素粒子標準モデルができあがりました。 1960年代は加速器で続々と発見される素粒子に振り回され素粒子動物園 (ParticleZoo)とまで酷評されていましたが、1970年代なって整理されて いきます。なぜ素粒子は数百種類も検出されるのか、それは寿命が短い くせにそのまま消えずに子孫を残すこと、超対称パートナー(反粒子)の 検出よって数が2倍になること、そして最大の要因は大きすぎる質量の差に ありました。ヒッグス粒子は質量問題を一気に解決する魔法の杖なのです。 1980年代、素粒子は、質量、スピンパリティ、アイソスピン、バリオン数、 電荷、ストレンジネス、寿命、とあらゆる角度・方向から徹底分類整理され、 ほぼ現在の素粒子標準モデルができあがりました。   何をおいてもヒッグス粒子の検出が最優先。これが発見されなければ、 標準モデルは総崩れ。ビール腹のピーター・ヒッグスおじいちゃんは入院し CERNの科学者の30人程度が2階から飛び降りるとまで言われています。 大型ハドロン加速器の最高速度は今や光速よりわずか10Km遅いだけの 299782km/秒にもなっています。しかしひも理論のひもをはじめ、 グラビトンやモノポールなど重量級の大物素粒子を確実に検出するには、 リング長を天の川銀河より大きくする必要があります。 世界初の大型粒子加速器は1954年にカリフォルニア大学放射線研究所に つくられたベバトロン(Bevatron)です。60億eVの陽子シンクロトロンで 反陽子や反中性子などの発見に活躍した歴史的な粒子加速器で現在 世界各地で稼働している大型粒子加速器の先駆けとなりました。   粒子加速器の仕組みは、原子核から陽子を取り出し真空中に閉じ込めた後 巨大な電磁石のリング内に発射、陽子は電場の力によって加速されやがて 光速に近づきます。 時計回りに高速回転する陽子と、反時計回りの陽子とを測定器・観測機の 備えられた地点で衝突・分解させると膨大なエネルギーが放出されます。 衝突の確率を高める「ルミノシティー」が加速器の性能を大きく左右します。 同時に多くの粒子が検出されこれら多くの粒子は寿命・重量・スピンなどの 性質が実に様々で、その数は数百種類にもなり1950~1970年は素粒子が 氾濫して無秩序な状況になりました。 1980年代になってようやく素粒子標準理論が確立しましたが素粒子物理学 は不可解なものによって別の不可解なものを理解しようとする状態になりま す。本来物理学は複雑な現象を単純化する学問なのですが今では多重 仮説の上に成り立っているのが素粒子物理学です。 素粒子標準模型にはまだ大きな欠陥がありましたがベバトロン以後半世紀 経過して、ある理論が大きな注目を浴びるようになっていきます。それが 宇宙の解明にも直結するヒッグス理論なのです。 この理論はLHCでの検証が可能ですので、LHCでの毎秒数千万回起きる 衝突痕から、もしヒッグス粒子が見つかれば素粒子標準理論が確立し 数百種類の素粒子が大きく整理されることになります。しかし順序は逆で 多重仮説によりすでに素粒子は整理されていてヒッグス粒子は検出され なければならない運命にされていたのです。 2008年9月待望のCERNのハドロン型大型粒子加速器LHCが完成し 試運転を開始。しかし4兆電子ボルトまでエネルギーを上昇させたところで 加速器は大爆発。大量の高価な超電導磁石が破壊されました。 磁石は1000個以上もあるのでその点検だけでも数ヶ月はかかります。 原因は接合部分が高温で熔けてしまい高圧放電により爆発したのです。 これまで1兆円を超える巨額投資を行ってきたLHC。年間予算は700億円。 総人員5000名余り。この間フェルミ研究所のテバトロンは4兆電子ボルトでの ヒッグス粒子検出をこころみていたのですが未検出。パワー不足でした。   ヒッグス粒子の質量は、陽子の150倍と見積もられており、理論的には 最低でも7兆電子ボルトを必要とします。 2009年12月修理を終えたLHCが再び実験を開始。そのパワーは最終的 にはテバトロンの7倍を超えます。幸いその後は順調で2011年後半も 実験を重ねています。データ解析は数年後になります。 2011年の実験結果は早くても2014年です。 なぜこんなに時間がかかるのでしょう。作業内容を覗いてみましょう。   LHCには全長27kmにも及ぶリング内の4カ所にCMS、ATLASをはじめ 多くの検出装置が設置されています。CMSにはX線カメラ、赤外線カメラ、 紫外線カメラに通常のカメラが27ナノ秒間隔で起きる衝突を撮影するので す。これは1秒間に4千万回という回数になります。 そして1億分の1の確率で起きる現象を解析するのです。 想像しただけでも死んでしまいたくなるような作業になります。 解析に数年もかかるのはこのような理由によります。 検出装置といっても半端な大きさではありません。直径3.7mのリングを すっぽりと包み込むような装置は5階建てビルの大きさがあり、 その重量は7000トン。パリのエッフェル塔と同じ重さです。 ATLASでの測定はさらに複雑な作業になります。 解析方法はまず宇宙誕生直後の素粒子分布図を作成し検出の素粒子と 照合するという緻密な作業です。 前例のない作業で、データはテラバイト級の莫大な量。 その都度、複雑なアルゴリズムを作成し、何回も、何回も、照合を繰り返し ます。 さらに、物理学での検証とは再現性を要求されますので、これらの実験を 複数回繰り返し、いずれにおいてもヒッグス粒子が検出されなくてはなら ないのです。ここで再び死にたくなりますが、先にはノーベル物理学賞が。   次号からは、量子重力宇宙論や、最新の観測結果によるダークマター、 ダークエネルギー、そしてダークフローなどが登場し宇宙の謎を次々と 解明していきます。   **@wikiへようこそ -ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 -このページは自由に編集することができます。 -メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名、トップページ、メンバー管理、サイドページ、デザイン、ページ管理、等)することができます **まずはこちらをご覧ください。 -[[@wikiの基本操作>http://atwiki.jp/guide/category2.html]] -[[用途別のオススメ機能紹介>http://atwiki.jp/guide/category22.html]] -[[@wikiの設定/管理>http://atwiki.jp/guide/category6.html]] **分からないことは? -[[@wiki ご利用ガイド>http://atwiki.jp/guide/]] -[[よくある質問>http://atwiki.jp/guide/category1.html]] -[[無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ>http://sns.atfb.jp/view_community2.php?no=112]] -[[@wiki更新情報>http://www1.atwiki.jp/guide/pages/264.html]] 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