――ここはとある或る事が原因で「砂漠化」してしまった未来の世界。
全ての生命は危機に瀕しており…、人類や生物は『絶滅』に陥っていた…。だが、太陽を拝める日はもうこないのかも知れないと嘆き、徒身を潜め、過ごす日々を過ごしていた。
そんな中、立ち上がり最後の手段を試みようとする者も少なくなかった…。
耐え切れず、自らの最期を成し遂げていく…。
虚しく「残る亡骸」を残った者や生物達は見つめ、時には屠り、貪り喰うしかなかった。生命を繋ぐ為に。
食料は既に底が突いていた…。
ソレはしたくない行為…。でも、しなければ生きられない。『苦しい選択』だった…。
そして、月日が流れ…。朝がきて、夜がくる…。その繰り返し…。
命を繋いで生存者達は朝や昼間には「地下」でひっそりと過ごし、夜になると「地上」へ向かう。
地上は砂漠と化していて、朝や昼間には炎天下で、肌が焼け爛れてしまう為…、直射日光を避けるには外へは『夜』のみ出る事しか出来ない状況だった。
何かを求め、彷徨い、朽ちていく…。そんな状況だが、ソレを遠目で監視する影が一つあった。
「双眼鏡」を片手にその影は何かを見つめている。怪しい笑みを浮かべながら…。
何かって?ソレは…その影にとっては貴重な動く「資料」でしかない目に映るモノである…。
その影は『目的のモノ』を得たのか、満面な笑みをし、その場所を去った…。
――ここは荒廃した区域にある『地下研究所』。
外は砂漠化したが研究所は地下にある為、倒壊せずに済んだらしい…。
一部の生存者はソコへ避難していた。主に生存した博士や研究者が多く、ソコで密かに何かの「研究」をしていた…。
その研究に先程のモノが使用されているのは言うまでもない…。
そう…。『生存者』を使った「人体実験」をしているのである…。
唯でさえ、今では『稀少価値』と化している人類を「研究対象」にするなど以ての外であるのに…、彼らにとってはソレもあくまで『素材』としか見ていなかった。
そんな彼らを小さな「檻の中」でおどおどしながらじっと見つめる視線。
暗くて、表情まではよく分からないが…、見た所、小柄な少女の様だった。
金茶色の髪と瞳をした少女。片目は鮮やかな「深紅の瞳」。髪は背中まであり、少しウェーブの入った三つ編み。
幼い表情で彼らを見ていた。首と手足には『手錠』が掛けられていた…。
服は既に形が崩れ、まるで布切れを纏っている様なモノである。首には『被験者番号』が書かれたモノが下げられていた。
そう、この娘は『生存者』の一人で、この「人体実験」の為に…、『或る場所』から連れて来られた一人なのである。
近くに居た研究員の一人が彼女に近付く…。手にはファイルが握られていた。
少女はソレに気付き、少し警戒しながら檻の奥へ下がる。瞳には『恐怖』しか映らなかった。
研究員はファイルを開き、口を開けた。
「…へぇ、この娘が…?被験者の一人の…」
研究員はファイルを捲りながら呟く…。
ファイルには「彼女」についての詳細が書かれている様だった。
研究員はファイルを声を出して、読んだ。
「…えーと、名前は…」
ファイルのページをなぞりながら読む。
丁度、指が触れた場所に名前があった。名前は…。
「……Roots…ルー……ツ。」
…『Roots』、「
ルーツ」と英語で書かれていた。
後、ファイルには『写真』が添付されていた。何処か大人しい表情で見つめた「彼女の写真」が載っていた。
「……可哀想に。まだ幼いのに…、こんな実験の為に…身を委ねなければならないなんて…」
研究員は溜息雑じりに少女を見つめ、呟く。彼女はまだ10歳だった…。
「出来るならば、「代わって」やりたいよ…」
そう言いながら、研究員はファイルを「テーブル」に置き、項垂れる。
ソレを余所に…?突然、扉が大きく開いた。ソレと同時に扉が閉まる音もまた聴こえた。
「…ッ!?」
研究員は驚き、ソコへ目を向けた。ソコには…
一人の博士が立っていた。…白衣を靡かせ、少女の居る『檻』を凝視しながら佇んでいた…。
研究員は最初はポカーンとした顔で見つめていたが…、何かを思い出して、焦った顔をした。
「……あ、貴方は…!『Dr.フェニックス』ではないですかぁ!?何故ここへいらしたのですか!?」
研究員はその博士の名前を口にした。……『Dr.フェニックス』。ソレがその博士の名前である。
名前を呼ばれたその博士は研究員に目を向ける。
「…いやぁ、ご苦労…御苦労。」
目線だけ檻の少女に戻し、研究員に声を掛ける博士。
声を掛けられ、お辞儀をする研究員を横目に博士は少女に近付く。表情はとても凄まじかった。
「……ほぉ、この小娘があの『場所』で無傷で居た少女か?」
「…ッ!!?」
怯える少女を余所に物欲しそうに見ていた。今にも連れ去りそうな瞳。
「…Dr.フェニックス?如何が召された?」
不思議に思い、尋ねる研究員。
その問いに応える様に博士は振り返り、斯う告げた。
「…この小娘は私の…『実験』に使うとしよう…!!」と…。
「…え?実験!?」
あまりにも突然な発言に言葉に詰まる研究員。
…だが、そんな研究員を余所目に博士は行動を開始する。……そう、恐ろしい実験の始まりだった。
……逃れる事の出来ない。…『七年間の地獄』の幕開けだった。
「…さぁ、始めようか。……私の『極秘実験』計画をな…!」
笑みを浮かべ、少女に迫る博士。
少女は檻から引き出され、倒れこむ。逃げようにも逃げられない。
首と手足には手錠が嵌められており、身動きが取れない。少女に「逃げる術」はなかった。
「…うぅっ。……怖いぃ。」
身体は震え、怯え。泣き叫ぶ事さえ、出来ない。
その間に博士は少女の頭を鷲掴んだ。そして、グイッと顔の前に引き寄せられる。
「ひぃ…!?」
恐怖に煽られ、低い叫びを放つ。
そして、その後。激しい痛みに襲われ、意識が途絶え倒れた。
「…フフッ。…コレで長年の「夢」が叶う!」
博士の手には注射器が握られていた……。
最終更新:2012年03月10日 19:45