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*第33話「鬼の目にもナミダ!? 思い出の旧校舎」 *あらすじ  広大な敷地を敷地を誇るアリオル学園。歴史の古い建物も多くあり、ちょっとした建築マニアにも知られている存在である。しかし、学校は生き物。生徒たちや時代の変化に応じてそれぞれ変わっていく必要がある。そして、学園の片隅にある小さな旧校舎もその命が尽きようとしていた。  学校を巡回するのはいつもの日常。その中に旧校舎も含まれてた。あとしばらくしたら、その巡回ルートも変わってしまう。もしかしたら、それが無くなってもしばらくは通ってしまうかも知れないと思うと、自分の頑固さに苦笑してしまう。そんなことを考えながら、旧校舎前を通りがかると、一人の少女が佇んでいるのに気がついた。あれは確か……二学期から転校してきた生徒だったはず。 「そこで何をしているの?」 悪い癖だが、ついつい詰問口調になってしまう。これだから生徒から“鬼”なんていわれてしまうのね。だが、そんな声の様子に恐がる様子もなく、少女が振り返る。 「あ、この建物綺麗だから見ていたんです」「綺麗……」「何て言うか、かぐやの家みたいに古くて落ち着く感じがして……」 そう言いながら微笑む生徒の顔に思わず、笑みがこぼれてしまう。生徒はその顔を見て驚いた様子だ。 「何か変なことでもありましたか?」「いえ、先生が笑うのをはじめてみたので」「わたくしだって笑いますよ」 妙に可笑しさがこみ上げて、二人で笑った。  ダークネスの本部では、いらついた様子で旧幹部の三人たちが話し合っていた。「最近、あの新参者ばっかり贔屓されてないか?」「まあ、俺たち実績が伴ってないしな」「あいつらだって今の所は同じじゃないの」 表立って実績をあげているわけではないが、ガトールとモークライが何かを企てていて、その準備を着々と進めていることは確からしかった。「このままじゃ俺たちお払い箱だぜ」 ウォルケンの言葉に全員が青ざめる。「よし、俺がプリキュアを倒す」 その言葉と共にクバートの姿が消えた。 「ねえねえ、掲示板に貼ってあるお知らせ読んだ?」 朝、教室にはいると同時に則子がまひるとかぐやに声を掛けてくる。隣には美香と雪奈がいて、さっきまでその話題について話していたらしい。 「読んでない」「同じく」 首を左右に振るまひるとかぐや。「では、教えてしんぜましょう」 則子が得意げに話し始める。何でも学校の敷地の奥にある旧校舎の一部が取り壊されるので工事期間の間は立入禁止地域に入らないようにという通達が出たとのことだった。 「なーんだ、私たちに関係ないじゃない」 まひるはちょっと期待外れだったらしい。「話はこれからよ」と美香。「私はあまりお勧めしないけどな」と雪奈。折角だから旧校舎が壊される前に中を見に行こうということらしい。「あの旧校舎が七不思議のひとつだって知ってた?」「七不思議って、深夜の音楽室でピアノが鳴るとか初代校長の銅像が走り回るとかって奴」「そうそう」 美香の話にまひるが答える。「え、この学校、そんな話があるの……」 かぐやの表情が暗くなる。「そんなの噂だけに決まってるじゃん。どこの学校にだってあるよ」と則子が気を使う。その直後に急に表情を険しくして則子が…「で、旧校舎なんだけど。誰も使っていないのに明かりが点いてたり、女性の霊が徘徊してるって噂があるんだよね」「きゃー!」 かぐやが思わず悲鳴を上げ、周囲の生徒から一斉に注目されて、どぎまぎする。  まひるも以前、あさひが委員会で遅くなり旧校舎の近くを通った時に、校舎内に女の人の影が見えてびっくりして逃げた……という話を思い出して皆に話して聞かせた。青ざめる一同。が、則子はすぐに立ち直って「これはやはり調査する必要がありそうね」とニヤリと笑う。「やっぱり冒険だよね」とまひる。  「わ、私は行かないわよ」 かぐやが首を激しく振りながら辞退する。「おや、さすが優等生ですなあ、次期会長さん」 美香が則子を突付きながら言う。「生徒会長は生徒の模範だもんねー」とニヤニヤしながら言う則子。「そっかー、かぐやは立場があるもんね。残念だけど仕方ないか」とがっかりするまひる。「まあ、私もクラス委員って立場なんですけどねー」と雪奈。「ああ、もう分かったわよ。行きますよ、付き合いますってば!」 かぐやが観念した表情で一緒に行くことにした。「今日は幸いクラブもないし、放課後に冒険だね」「おー!」  放課後、旧校舎の方へ行く5人。作業に使う囲いや重機などは見えるが、人影はない。「そう言えば、旧校舎のこの辺をちゃんと見るのって初めてかも」 まひるたちは重厚な感じの外観を見ながら感心したような声を上げる。鍵が掛かっているかと思っていたが、何故か鍵は掛かっておらず簡単に侵入することができた。不思議に思ったが、たぶん工事関係者が立ち入ることができるようになっているのだろうと結論づけた。中に入ると古めかしいが、ちゃんと手入れされているようで、埃が積もったりしている様子はない。「へー。綺麗ね、ここ」 皆が周囲を見回しながら歩いている。木製の机や椅子、お洒落にデザインされた手すりや窓枠など、まひるたちの女子棟もかなり歴史のある建物だが、そちらはコンクリート製なので趣が大分違う。ある部屋には卒業生たちの記念品が納められており、アルバムなどもあった。見てみると着物をきた学生が写っており、時代の流れを感じさせる。 「こんな綺麗なところなら幽霊とか出ないよね」「さあ、わからないよー。何か恨みを残して死んだ学生とか…」 あちこち見ながら進んでいくと、全員がピタッと止まる。「……何か、声が聞こえない?」「委員長も聞こえた?」「私も聞こえた……」  気のせいではなく確かに人の声だ。一人ではない、二人? 会話のような気がする。「もしかして、七不思議の女の幽霊?」 恐々と進む。そして声のするドアの前に立つ。しばらく躊躇した挙句にドアを開けて中に飛び込む。「!」 まひるたちを待っていたのは、小さな応接室のような部屋の中で紅茶カップを手にびっくりした表情で見つめる二人の姿だった。 「ま、まひるにかぐや……どうしたの?」「さくら? 何で、ここに?」「校長先生!」「何ですか、あなたたち。月宮さん、次期生徒会長までが何てことですか」「ごめんなさーい!」  しばらく全員で正座させられて説教を受ける羽目になってしまった。ようやく解放されて、校長先生自ら入れた紅茶を受け取る。「美味しい…」 紅茶にうるさいかぐやが言うのだから、美味しいのだろう。話を聞いていくと旧校舎で明かりが点いていたり目撃された女性の姿は、校長先生のことだったらしい。 「さくらは何で、ここにいたの」 まひるが聞くと、この建物を見ていたら校長先生が内部も見せてくれることになって、説明を聞いた後で思い出話を聞いていたのだと言う。まひるたちも続きを聞くことにした。 「この校舎は、わたくしが先生として勤務して初めてクラスを持った所なの」 校長先生が話し始めた。いつもの“鬼姫”先生ではなく、教壇に立っている先生のように優しい表情で話す姿に驚く一同。アリオル学園の前校長先生と結婚して一生懸命学園を守ってきた姿に、少し感動してしまった。 「私、この校舎が壊されることに反対です! 署名運動して、阻止します」 さくらが突然立ち上がって訴え始めた。彼女なりにいろいろと感じるところがあったのだろう。その言葉に則子とかが賛同する。色々と意見が入り乱れて、収集不能に陥る。 「ちょっと、静かにして! 私にいい考えが……」 かぐやが騒ぎを治めようとした時だった。急に室内が静かになる。ほっとしてみると、則子や美香がソファにぐったりしたように眠り込んでいる。起きているのはまひるとかぐやとさくらだけだ。「「「!!」」」 闇の空間の支配下に置かれている。部屋をでると校舎の中に生徒があふれ、昔の様子が蘇っている。「まひる、かぐや、プリキュアに変身して」 さくらはそう叫ぶとピンクに変身する。まひるとかぐやはキュアパストを取り出して変身した。校舎の外に飛び出すと一人の怪人が立っている。「久しぶりだな、プリキュア。今日こそ、お前らを倒す」「誰だっけ?」「クバート様だ、忘れるな!」 クバートが手直の重機に闇の仮面を投げる。  鉄球クライナーが誕生して、二人に襲い掛かる。鉄球で跳ね飛ばされる二人。高笑いするクバート。鉄球は勢い良く旧校舎を破壊する。「何てことをするピピー」 ピンクの悲鳴があがる。「オレンジ、パープル、ブレスを呼ぶピピ」 ピンクの気合に押されて、アドベンタルキーを解放するオレンジたち。ブレスを装着したサンディとナイトがダブルキックで鉄球クライナーを倒す。「今よ!」「うん」 必殺技を発射し、クライナーが消し飛んだ。あまりに強力な技の威力を喰らって吹き飛ばされたクバートは捨て台詞を残して消えた。  闇の空間が消え、再び部屋の中に戻る。「?」 一同何が起こったのか分からない様子でキョトンとしていたが、校長先生が何か思い出したように口を開いた。 「そう言えば、月宮さん。さっき何か提案しようとしていたわね」「はい、旧校舎のお別れ会を開いて全校生徒に見てもらうのはどうですか」 かぐやの提案を聞いてしばらく思案していた校長先生だったが、やがてニッコリと笑いながらうなずいた。「良い考えだと思うわ。次の職員会議で議題に掛けてみましょう」 次にさくらの方に視線を向ける。「さくらさん、この校舎の事を好きになってくれてありがとうね。でも学校は、生徒と共に生きていく生き物。あなたたちのことを考えて旧校舎の跡地に新しい施設を作るの。だから、今度は新しい施設も好きになってね」 その言葉にコクンとうなずく、さくら。皆の話題はお別れ会について移っている。そんな生徒たちを見ながら、“鬼姫”先生の目に笑みが浮かんでいた。 *ストーリー設定メモ (作品内にこんなシーンが欲しいという設定やイラストを記載します) 09.07.29設定 ・ストーリー構成案の際に出されたアイデア > ピンクと校長の話(ピンクがお化けになる話) 09.08.21設定 ・ピンクがお化けになる設定について > ルルンのように正体バレしていない状態でやるのは難しくないか? 噂になるためには日数が必要で、その間さくらがいなくなる訳だし > 例えば何か隠し部屋に入り込んで出られなくなる >  ↓ > ピンクなら出られると思い変身、ドタバタやる >  ↓ > 誰かが影を目撃してびっくり、噂になる > 隠し部屋にある何かにはまってそこに放課後通うってのは? 入口が小さくて出入りする時にピンクに変身、その姿を目撃されるとか 09.08.24設定 ・ストーリー案(その1) >+鬼姫と呼ばれる校長先生 >+何か秘密とか弱点はないかと・・・? >+かぐやいわく、最近ピンクの帰りが遅いのよねー >+放課後、学校の人のあまり訪れない場所で妙な音がするという噂が立つ >+まひるたちで確かめてみることに(一応、かぐやは止める) >+そこは何かいわくのある場所で「○○の話」とかある >+訪れると、何かが飛び出してきてギャー! >+一度は逃げ出すが、再チャレンジ >+校長先生が通りかかって、何をしてるんです! ここには何もありませんよ! >+済みません・・・でもそっと見ると、そんなところに部屋が! >+翌日、その部屋を訪れてみるとそこにはさくらが・・・ >+何やってんのー! ・ストーリー案(その2:幽霊話を生かして) >+アリオル学園7不思議がある >+ひとつひとつはたわいもない話なんだが、最後の一つだけ本当に恐い話が >+そこは学園の離れの旧校舎の一部で、生徒は立ち入り禁止になっている >+時々女性の姿が目撃されていて、幽霊という噂がある >+則子が情報を仕入れてきて、肝試しを提案! >+気が進まないものの調査にトライしてみる・・・ > その建物が無くなった前理事長にまつわる何かで、目撃されるのが織姫先生。仕事が忙しいかったりしてストレスがたまると、その場所を訪れて思い出に浸っている。時々泣いちゃったりとか・・・ ※アリオル学園の七不思議について(内容については要検討の余地あり・・・) >+誰もいない音楽室で音楽が流れる。ベートヴェンの目が動く >+礼拝堂のマリア様から血の涙が流れる >+焼却炉のフタが勝手に開き、手が出てくる >+男子校舎のあった場所は、昔池で自殺があった >+教頭先生は、銀行を退職したのではなく、実は銀行で横領してくびになった(おいおい!) >+生徒会に入ると影が薄くなる >+旧校舎に開かずの部屋があり、女の幽霊が現れる。時々、すすり泣きも聞こえる(←今回はこれを題材に使う?) > →まひかぐやさくらをストーキングするダークネスのメンツが図らずも七不思議の再現をしてしまうとか ・ストーリー案(その3) >+夜に校舎を歩き回る幽霊の噂に夕方残って仕事することが多いあさひがビビる >+さくらと一緒に帰宅→怪しい影が! >+まひるが大事なノートを忘れてかぐやとさくら(好奇心でついていく)で学校へ ・ストーリー案(その4) > 校長の憩いの場所に好奇心旺盛なさくらが迷い込んで、校長とマターリして仲良くなって幽霊騒動でどたばたして、ダークネスが思い出の何かでクライナー作って襲ってきて、校長先生の思い出をうんぬんかんするのは、この私達が許さない > 取り壊す予定になっている旧校舎。工事が入る前にそこで干渉に浸る校長。迷い込むさくら&あさひ。さくらとあさひを探しにきたまひかぐ。思い出話に花が咲いたところで、ダークネス強襲 ・ストーリー案(その4) >+旧校舎って立ち入り禁止だよね、何か秘密があるんじゃね? 例えば、七不思議とか? >+そう言えば、女の人が時々出没するとか、誰もいないのに明かりがついてるとか >+それって探検してみない? 冒険だよね! れっつらごー! >+内部にこっそり侵入 >+あ、この扉開いてる。中に入ってみよう >+アルバムやいろんな書類の詰まった倉庫みたい >+誰かきたよ、お化け? >+入ってきたのは校長先生で、椅子に座り紅茶を入れて、アルバムをめくりながら微笑んでいる >+げげっ、あの鬼姫先生がアルバム見て笑ってるよ! >+独り言から生徒思いの先生であることを再認識 >+その時、クライナーが! >+先生の大切な思い出を壊そうなんて許さない! >+クライナー撃退 >+見つかってお小言・・・でも先生の目が笑ってるのをみて、こっちも笑顔 ・ストーリー案の基本について > 幽霊話をメインにする案は放棄(結構、設定的に無理があるため) > 校長先生と旧校舎をメインにした良い話風なストーリーで ・こんなシーンが欲しい >校長先生の思い出話でいい雰囲気になってるところに「旧校舎の取り壊しはやめさせるべきです!」とか言い出して、空気読めないさくらをいさめる校長先生が見たいです > その校舎は、校長先生がはじめて教壇に立った場所だったとか > さくらが取り壊し反対運動を始めちゃうとか > 「ここはあなたたち生徒のためにある場所…自分の思い出にいつまでもすがって独り占めするわけにはいかないわ」 > 思い出は、封じ込めておくものではなくて、一緒に生き続けるものみたいな・・・感じ ・登場幹部は、[[クバート]]です。 ・登場クライナーは、[[鉄球クライナー>クライナー名鑑31]]です。 *次回予告 ---- *第33話のタイトル候補 ・「思い出の旧校舎 校長先生と(学校の)七不思議」 ・「旧校舎を冒険しよう! 校長先生の思い出」 ・「思い出を壊さないで! 校長先生の旧校舎」 ・「旧校舎の思い出 校長先生の秘密」 ・「思い出は永遠に 校長先生の想い」 ・「さくらと校長先生 大切な旧校舎の思い出」 ・「鬼の目にもナミダ!? 思い出の旧校舎」 から話し合いで「鬼の目にもナミダ!? 思い出の旧校舎」が選ばれました。 ---- *第33話の話合いの際に出された全体の設定メモ
#ref(第33話title.jpg) *あらすじ  広大な敷地を敷地を誇るアリオル学園。歴史の古い建物も多くあり、ちょっとした建築マニアにも知られている存在である。しかし、学校は生き物。生徒たちや時代の変化に応じてそれぞれ変わっていく必要がある。そして、学園の片隅にある小さな旧校舎もその命が尽きようとしていた。  学校を巡回するのはいつもの日常。その中に旧校舎も含まれてた。あとしばらくしたら、その巡回ルートも変わってしまう。もしかしたら、それが無くなってもしばらくは通ってしまうかも知れないと思うと、自分の頑固さに苦笑してしまう。そんなことを考えながら、旧校舎前を通りがかると、一人の少女が佇んでいるのに気がついた。あれは確か……二学期から転校してきた生徒だったはず。 「そこで何をしているの?」 悪い癖だが、ついつい詰問口調になってしまう。これだから生徒から“鬼”なんていわれてしまうのね。だが、そんな声の様子に恐がる様子もなく、少女が振り返る。 「あ、この建物綺麗だから見ていたんです」「綺麗……」「何て言うか、かぐやの家みたいに古くて落ち着く感じがして……」 そう言いながら微笑む生徒の顔に思わず、笑みがこぼれてしまう。生徒はその顔を見て驚いた様子だ。 「何か変なことでもありましたか?」「いえ、先生が笑うのをはじめてみたので」「わたくしだって笑いますよ」 妙に可笑しさがこみ上げて、二人で笑った。  ダークネスの本部では、いらついた様子で旧幹部の三人たちが話し合っていた。「最近、あの新参者ばっかり贔屓されてないか?」「まあ、俺たち実績が伴ってないしな」「あいつらだって今の所は同じじゃないの」 表立って実績をあげているわけではないが、ガトールとモークライが何かを企てていて、その準備を着々と進めていることは確からしかった。「このままじゃ俺たちお払い箱だぜ」 ウォルケンの言葉に全員が青ざめる。「よし、俺がプリキュアを倒す」 その言葉と共にクバートの姿が消えた。 「ねえねえ、掲示板に貼ってあるお知らせ読んだ?」 朝、教室にはいると同時に則子がまひるとかぐやに声を掛けてくる。隣には美香と雪奈がいて、さっきまでその話題について話していたらしい。 「読んでない」「同じく」 首を左右に振るまひるとかぐや。「では、教えてしんぜましょう」 則子が得意げに話し始める。何でも学校の敷地の奥にある旧校舎の一部が取り壊されるので工事期間の間は立入禁止地域に入らないようにという通達が出たとのことだった。 「なーんだ、私たちに関係ないじゃない」 まひるはちょっと期待外れだったらしい。「話はこれからよ」と美香。「私はあまりお勧めしないけどな」と雪奈。折角だから旧校舎が壊される前に中を見に行こうということらしい。「あの旧校舎が七不思議のひとつだって知ってた?」「七不思議って、深夜の音楽室でピアノが鳴るとか初代校長の銅像が走り回るとかって奴」「そうそう」 美香の話にまひるが答える。「え、この学校、そんな話があるの……」 かぐやの表情が暗くなる。「そんなの噂だけに決まってるじゃん。どこの学校にだってあるよ」と則子が気を使う。その直後に急に表情を険しくして則子が…「で、旧校舎なんだけど。誰も使っていないのに明かりが点いてたり、女性の霊が徘徊してるって噂があるんだよね」「きゃー!」 かぐやが思わず悲鳴を上げ、周囲の生徒から一斉に注目されて、どぎまぎする。  まひるも以前、あさひが委員会で遅くなり旧校舎の近くを通った時に、校舎内に女の人の影が見えてびっくりして逃げた……という話を思い出して皆に話して聞かせた。青ざめる一同。が、則子はすぐに立ち直って「これはやはり調査する必要がありそうね」とニヤリと笑う。「やっぱり冒険だよね」とまひる。  「わ、私は行かないわよ」 かぐやが首を激しく振りながら辞退する。「おや、さすが優等生ですなあ、次期会長さん」 美香が則子を突付きながら言う。「生徒会長は生徒の模範だもんねー」とニヤニヤしながら言う則子。「そっかー、かぐやは立場があるもんね。残念だけど仕方ないか」とがっかりするまひる。「まあ、私もクラス委員って立場なんですけどねー」と雪奈。「ああ、もう分かったわよ。行きますよ、付き合いますってば!」 かぐやが観念した表情で一緒に行くことにした。「今日は幸いクラブもないし、放課後に冒険だね」「おー!」  放課後、旧校舎の方へ行く5人。作業に使う囲いや重機などは見えるが、人影はない。「そう言えば、旧校舎のこの辺をちゃんと見るのって初めてかも」 まひるたちは重厚な感じの外観を見ながら感心したような声を上げる。鍵が掛かっているかと思っていたが、何故か鍵は掛かっておらず簡単に侵入することができた。不思議に思ったが、たぶん工事関係者が立ち入ることができるようになっているのだろうと結論づけた。中に入ると古めかしいが、ちゃんと手入れされているようで、埃が積もったりしている様子はない。「へー。綺麗ね、ここ」 皆が周囲を見回しながら歩いている。木製の机や椅子、お洒落にデザインされた手すりや窓枠など、まひるたちの女子棟もかなり歴史のある建物だが、そちらはコンクリート製なので趣が大分違う。ある部屋には卒業生たちの記念品が納められており、アルバムなどもあった。見てみると着物をきた学生が写っており、時代の流れを感じさせる。 「こんな綺麗なところなら幽霊とか出ないよね」「さあ、わからないよー。何か恨みを残して死んだ学生とか…」 あちこち見ながら進んでいくと、全員がピタッと止まる。「……何か、声が聞こえない?」「委員長も聞こえた?」「私も聞こえた……」  気のせいではなく確かに人の声だ。一人ではない、二人? 会話のような気がする。「もしかして、七不思議の女の幽霊?」 恐々と進む。そして声のするドアの前に立つ。しばらく躊躇した挙句にドアを開けて中に飛び込む。「!」 まひるたちを待っていたのは、小さな応接室のような部屋の中で紅茶カップを手にびっくりした表情で見つめる二人の姿だった。 「ま、まひるにかぐや……どうしたの?」「さくら? 何で、ここに?」「校長先生!」「何ですか、あなたたち。月宮さん、次期生徒会長までが何てことですか」「ごめんなさーい!」  しばらく全員で正座させられて説教を受ける羽目になってしまった。ようやく解放されて、校長先生自ら入れた紅茶を受け取る。「美味しい…」 紅茶にうるさいかぐやが言うのだから、美味しいのだろう。話を聞いていくと旧校舎で明かりが点いていたり目撃された女性の姿は、校長先生のことだったらしい。 「さくらは何で、ここにいたの」 まひるが聞くと、この建物を見ていたら校長先生が内部も見せてくれることになって、説明を聞いた後で思い出話を聞いていたのだと言う。まひるたちも続きを聞くことにした。 「この校舎は、わたくしが先生として勤務して初めてクラスを持った所なの」 校長先生が話し始めた。いつもの“鬼姫”先生ではなく、教壇に立っている先生のように優しい表情で話す姿に驚く一同。アリオル学園の前校長先生と結婚して一生懸命学園を守ってきた姿に、少し感動してしまった。 「私、この校舎が壊されることに反対です! 署名運動して、阻止します」 さくらが突然立ち上がって訴え始めた。彼女なりにいろいろと感じるところがあったのだろう。その言葉に則子とかが賛同する。色々と意見が入り乱れて、収集不能に陥る。 「ちょっと、静かにして! 私にいい考えが……」 かぐやが騒ぎを治めようとした時だった。急に室内が静かになる。ほっとしてみると、則子や美香がソファにぐったりしたように眠り込んでいる。起きているのはまひるとかぐやとさくらだけだ。「「「!!」」」 闇の空間の支配下に置かれている。部屋をでると校舎の中に生徒があふれ、昔の様子が蘇っている。「まひる、かぐや、プリキュアに変身して」 さくらはそう叫ぶとピンクに変身する。まひるとかぐやはキュアパストを取り出して変身した。校舎の外に飛び出すと一人の怪人が立っている。「久しぶりだな、プリキュア。今日こそ、お前らを倒す」「誰だっけ?」「クバート様だ、忘れるな!」 クバートが手直の重機に闇の仮面を投げる。  鉄球クライナーが誕生して、二人に襲い掛かる。鉄球で跳ね飛ばされる二人。高笑いするクバート。鉄球は勢い良く旧校舎を破壊する。「何てことをするピピー」 ピンクの悲鳴があがる。「オレンジ、パープル、ブレスを呼ぶピピ」 ピンクの気合に押されて、アドベンタルキーを解放するオレンジたち。ブレスを装着したサンディとナイトがダブルキックで鉄球クライナーを倒す。「今よ!」「うん」 必殺技を発射し、クライナーが消し飛んだ。あまりに強力な技の威力を喰らって吹き飛ばされたクバートは捨て台詞を残して消えた。  闇の空間が消え、再び部屋の中に戻る。「?」 一同何が起こったのか分からない様子でキョトンとしていたが、校長先生が何か思い出したように口を開いた。 「そう言えば、月宮さん。さっき何か提案しようとしていたわね」「はい、旧校舎のお別れ会を開いて全校生徒に見てもらうのはどうですか」 かぐやの提案を聞いてしばらく思案していた校長先生だったが、やがてニッコリと笑いながらうなずいた。「良い考えだと思うわ。次の職員会議で議題に掛けてみましょう」 次にさくらの方に視線を向ける。「さくらさん、この校舎の事を好きになってくれてありがとうね。でも学校は、生徒と共に生きていく生き物。あなたたちのことを考えて旧校舎の跡地に新しい施設を作るの。だから、今度は新しい施設も好きになってね」 その言葉にコクンとうなずく、さくら。皆の話題はお別れ会について移っている。そんな生徒たちを見ながら、“鬼姫”先生の目に笑みが浮かんでいた。 *ストーリー設定メモ (作品内にこんなシーンが欲しいという設定やイラストを記載します) 09.07.29設定 ・ストーリー構成案の際に出されたアイデア > ピンクと校長の話(ピンクがお化けになる話) 09.08.21設定 ・ピンクがお化けになる設定について > ルルンのように正体バレしていない状態でやるのは難しくないか? 噂になるためには日数が必要で、その間さくらがいなくなる訳だし > 例えば何か隠し部屋に入り込んで出られなくなる >  ↓ > ピンクなら出られると思い変身、ドタバタやる >  ↓ > 誰かが影を目撃してびっくり、噂になる > 隠し部屋にある何かにはまってそこに放課後通うってのは? 入口が小さくて出入りする時にピンクに変身、その姿を目撃されるとか 09.08.24設定 ・ストーリー案(その1) >+鬼姫と呼ばれる校長先生 >+何か秘密とか弱点はないかと・・・? >+かぐやいわく、最近ピンクの帰りが遅いのよねー >+放課後、学校の人のあまり訪れない場所で妙な音がするという噂が立つ >+まひるたちで確かめてみることに(一応、かぐやは止める) >+そこは何かいわくのある場所で「○○の話」とかある >+訪れると、何かが飛び出してきてギャー! >+一度は逃げ出すが、再チャレンジ >+校長先生が通りかかって、何をしてるんです! ここには何もありませんよ! >+済みません・・・でもそっと見ると、そんなところに部屋が! >+翌日、その部屋を訪れてみるとそこにはさくらが・・・ >+何やってんのー! ・ストーリー案(その2:幽霊話を生かして) >+アリオル学園7不思議がある >+ひとつひとつはたわいもない話なんだが、最後の一つだけ本当に恐い話が >+そこは学園の離れの旧校舎の一部で、生徒は立ち入り禁止になっている >+時々女性の姿が目撃されていて、幽霊という噂がある >+則子が情報を仕入れてきて、肝試しを提案! >+気が進まないものの調査にトライしてみる・・・ > その建物が無くなった前理事長にまつわる何かで、目撃されるのが織姫先生。仕事が忙しいかったりしてストレスがたまると、その場所を訪れて思い出に浸っている。時々泣いちゃったりとか・・・ ※アリオル学園の七不思議について(内容については要検討の余地あり・・・) >+誰もいない音楽室で音楽が流れる。ベートヴェンの目が動く >+礼拝堂のマリア様から血の涙が流れる >+焼却炉のフタが勝手に開き、手が出てくる >+男子校舎のあった場所は、昔池で自殺があった >+教頭先生は、銀行を退職したのではなく、実は銀行で横領してくびになった(おいおい!) >+生徒会に入ると影が薄くなる >+旧校舎に開かずの部屋があり、女の幽霊が現れる。時々、すすり泣きも聞こえる(←今回はこれを題材に使う?) > →まひかぐやさくらをストーキングするダークネスのメンツが図らずも七不思議の再現をしてしまうとか ・ストーリー案(その3) >+夜に校舎を歩き回る幽霊の噂に夕方残って仕事することが多いあさひがビビる >+さくらと一緒に帰宅→怪しい影が! >+まひるが大事なノートを忘れてかぐやとさくら(好奇心でついていく)で学校へ ・ストーリー案(その4) > 校長の憩いの場所に好奇心旺盛なさくらが迷い込んで、校長とマターリして仲良くなって幽霊騒動でどたばたして、ダークネスが思い出の何かでクライナー作って襲ってきて、校長先生の思い出をうんぬんかんするのは、この私達が許さない > 取り壊す予定になっている旧校舎。工事が入る前にそこで干渉に浸る校長。迷い込むさくら&あさひ。さくらとあさひを探しにきたまひかぐ。思い出話に花が咲いたところで、ダークネス強襲 ・ストーリー案(その4) >+旧校舎って立ち入り禁止だよね、何か秘密があるんじゃね? 例えば、七不思議とか? >+そう言えば、女の人が時々出没するとか、誰もいないのに明かりがついてるとか >+それって探検してみない? 冒険だよね! れっつらごー! >+内部にこっそり侵入 >+あ、この扉開いてる。中に入ってみよう >+アルバムやいろんな書類の詰まった倉庫みたい >+誰かきたよ、お化け? >+入ってきたのは校長先生で、椅子に座り紅茶を入れて、アルバムをめくりながら微笑んでいる >+げげっ、あの鬼姫先生がアルバム見て笑ってるよ! >+独り言から生徒思いの先生であることを再認識 >+その時、クライナーが! >+先生の大切な思い出を壊そうなんて許さない! >+クライナー撃退 >+見つかってお小言・・・でも先生の目が笑ってるのをみて、こっちも笑顔 ・ストーリー案の基本について > 幽霊話をメインにする案は放棄(結構、設定的に無理があるため) > 校長先生と旧校舎をメインにした良い話風なストーリーで ・こんなシーンが欲しい >校長先生の思い出話でいい雰囲気になってるところに「旧校舎の取り壊しはやめさせるべきです!」とか言い出して、空気読めないさくらをいさめる校長先生が見たいです > その校舎は、校長先生がはじめて教壇に立った場所だったとか > さくらが取り壊し反対運動を始めちゃうとか > 「ここはあなたたち生徒のためにある場所…自分の思い出にいつまでもすがって独り占めするわけにはいかないわ」 > 思い出は、封じ込めておくものではなくて、一緒に生き続けるものみたいな・・・感じ ・登場幹部は、[[クバート]]です。 ・登場クライナーは、[[鉄球クライナー>クライナー名鑑31]]です。 *次回予告 まひる「いよいよ文化祭ね、頑張らなくっちゃ」 かぐや「私も生徒会に入って最初の大仕事だわ」 まひる「かぐやも大変だよね。ところで買出しに付き合ってくれる?」 かぐや「いいわよ。で、どこへ行くの」 まひる「ちょっと駅前のショッピングモールまで」 かぐや「じゃあ、私のマウンテンバイクで行くと楽よ」 ま&か「冒険! プリキュアデイズ、『波乱の予感! 文化祭準備は大忙し』」 まひる「ピカピカ輝き見つかるかも!」 まひる「ねえ、このモールって最近雰囲気変わったの?」 かぐや「えーと、これクライナーの中じゃないかしら?」 ---- *第33話のタイトル候補 ・「思い出の旧校舎 校長先生と(学校の)七不思議」 ・「旧校舎を冒険しよう! 校長先生の思い出」 ・「思い出を壊さないで! 校長先生の旧校舎」 ・「旧校舎の思い出 校長先生の秘密」 ・「思い出は永遠に 校長先生の想い」 ・「さくらと校長先生 大切な旧校舎の思い出」 ・「鬼の目にもナミダ!? 思い出の旧校舎」 から話し合いで「鬼の目にもナミダ!? 思い出の旧校舎」が選ばれました。 ---- *第33話の話合いの際に出された全体の設定メモ

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